ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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ちょっと遅くなりましたが投稿します。


対決と再会来る!

 飛鳥、耀、黒ウサギ、ジンが"フォレス・ガロ"とのギフトゲームへと赴いている間、ツナと十六夜は居住区で留守番をしていた。

 

 飛鳥や耀たちにも自分達が売った喧嘩くらい自分達で片をつけたいのだろう。十六夜は元よりツナの助成も受け入れはしなかった。

 

 十六夜は十六夜でふざけてるのか本気なのか"フォレス・ガロ"に負ければ"ノーネーム"を去るとまで言い出してツナの心配を煽る。

 

「ああ、大丈夫かな~? 皆怪我とかしてないかな~?」

 

(うっせえ……)

 

 ツナはさっきからこの調子、十六夜もそろそろツナのうわ言に聞き飽きてきた頃だ。

 

「お前が心配したって結果が変わるわけじゃねぇだろ」

 

「でも、今はそれくらいしかできないし」

 

 十六夜は頭をガシガシと掻いて溜息をつく。

 

 そして後に何かを思いついたようにニヤリと笑って言い放った。

 

「じゃあよ、ゲームが終わるまで俺達もゲームをしねぇか?」

 

「ゲーム?」

 

 

 

 

 東地区の外れ、何も無い場所に十六夜とツナは立っている。

 

 十六夜がツナに持ちかけたゲームは単純明快のガチンコ対決。制限時間は黒ウサギにこのことがばれるまで。勝利条件は戦闘不能になるか降参のどちらかのみ。

 

「やっぱ止めようよ、仲間内で争うなんて」

 

「いいじゃねぇか。お前は不安を紛らわすことができて、俺は暇つぶしができる。Win-Winだろ?」

 

(そんな一方的なWin-Win聞いたことねーーー!)

 

 十六夜は今だ片鱗すら見ていないツナの実力をはっきりと見極めてみたい。

 そして自身の退屈を紛らわせてくれる、全力を受け止められるに足りるのかを知りたい。

 

 ツナも十六夜は諦めないだろうと観念して死ぬ気丸を飲んだ。それに今回はリングを手に嵌めている。

 

「始めよう」

 

 ツナの額にオレンジ色の炎が宿り、毛糸の手袋はXグローブへと変化する。

 

「良いねぇ良いねぇ! そうこなくっちゃあなぁ! ――あ?」

 

 目の前にいた筈のツナを十六夜は見失う。慌てて周囲を見回すも、視認することができない。

 

(何処行きやがった!?)

 

 後ろの空気の揺らぎで十六夜は急いで振り返る。ツナは既に後ろへ回り込み手刀で十六夜の首を狙っている。

 

(いきなり俺の意識を狩りにくる気か!? しゃらくせぇ!!)

 

 十六夜は間一髪、上体を逸らすことででツナの手刀を回避。そのまま思いっきり仰け反ってサマーソルトキックでカウンターを入れにかかる。

 

(かわされた!? なら)

 

 ツナは十六夜の上がった片足を蹴って上に飛び、両手の炎の勢いを利用して飛び蹴りを見舞う。

 

「くっそ!」

 

 十六夜はとっさに両腕を交差してツナの飛び蹴りを防いだ。しかし勢いを殺しきれなかったのか少し後退した。

 一瞬でこの攻防を行った二人は距離をとる。

 

「ってえ、やるじゃねぇか」

 

「できることなら最初の一撃で決めたかったが……」

 

「たった一撃でやられるほど俺もヤワじゃねぇんだ、よ!」

 

 次に仕掛けたのは十六夜、全力で駆けて拳を握り相手を殴る。単純であるが故に強力な一撃をツナへぶつけようとした。

 ツナは当然上に飛んでそれをかわす。だが十六夜はこれくらい先読みしている。ツナや耀のように飛ぶことはできないが、跳躍力には自信があるのだ。ツナと同じ高さまで跳び一撃を見舞う。

 

「さっきのお返しだ!」

 

「グッ」

 

 とっさに後ろに飛んで威力を殺すことには成功したものの、これで痛み分けとなった。

 

 パワーであれば十六夜が、スピードであれば僅かだがツナが勝っている。

 

「ナッツ!」

 

「ガウッ!」

 

 ツナの掛け声とともに彼の相棒がその姿を現した。

 

「へえ……」

 

「ナッツ、形態変化(カンビオ・フォルマ)

 

 十六夜が感心していると、ナッツの目つきが変化し、ツナのXグローブと合体。Xグローブを覆う手甲(ガントレット)となった。

 

「おいおい、そういうのがあるんなら最初から出してくれよ」

 

 あれにまだ上がある。それを理解した十六夜はさらに自分の感情が昂ぶるのを感じた。

 

「十六夜に勝つにはこれしかないと思ったからだ」

 

「な~んだ。てめぇも結構負けず嫌いじゃねぇかよ」

 

 十六夜は獰猛な笑みを浮かべている。真の格闘家は一撃交し合っただけで実力を知ることができる等と誰が言ったか知らないが、あの応酬でツナは自分の好敵手足りうる男だと今認めたのだ。

 

 対照的にツナはいつもの冷静な顔を崩さない。

 

 相手が殴れば自分はガード、そしてカウンターを狙いにいく技術は関係のないステゴロが始まる。攻防は互いに譲らず、互いに攻撃がまともに入った回数は無し。一発でもまともに当たればたちまちアウトだからだ。

 

 二人の拳がぶつかり合い、距離をとった。

 

 辺りに静寂が行き渡る。

 

 次に動いたのは二人同時だった。

 

「オラァ!!」

 

「ビックバン・アクセル!!」

 

 しかしこの二人の激突は、

 

「そこまででーすッ!!!」

 

「「!?」」

 

 急いで戻ってきた黒ウサギの介入によって幕を閉じた。

 

 

 

 

「お二人とも、何か言いたいことは?」

 

「暇つぶしで戦ってた」

 

「十六夜君に無理やり」

 

 二人は黒ウサギに説教を受けている。十六夜は明後日の方向を見ながら聞き流していて全く反省の色が見られない。

 隣ではジンが冷や汗を垂らしながら苦笑いをしていた。この二人が本気でぶつかり合って次のギフトゲームに支障が出たかもしれないと思うと正直笑えなかった。

 

「はぁ、ツナさんもツナさんです。少しくらい大人しくしててください」

 

「と、ところでギフトゲームはどうなったの!?」

 

「……今、露骨に話を逸らしましたね?」

 

 "フォレス・ガロ"との戦いはガルドが鬼化していたせいで予想より苦戦を強いられたが飛鳥が"白銀の十字剣"を巧みに扱い、見事勝利を勝ち取った。しかし、ガルドとの戦いの際に耀が負傷。今は治療用のギフトで傷を癒している。

 

「おっと、忘れかけていたぜ。おい、御チビ。作戦の成功の為に奴らの旗印を探しに行くぞ」

 

「は、はい!」

 

「あ、ちょ! 話はまだ終わってませんよ!!」

 

 十六夜は"フォレス・ガロ"が収集していた旗印全てを回収し、傘下であったコミュニティの者達にジン直々に返還させる。衆人は未だ頭がついて行けていないのか呆然としていたが、旗印が返ってくると分かると我先にとジンの前に一斉に雪崩れ込んできた。ジンは潰されそうになるが、十六夜の一喝であっという間に列ができて返還もスムーズに行われる。

 

 "ノーネーム"はこの多くのコミュニティに大きな借りをつくったのである。

 

「そういえば昔の仲間が景品に出されるギフトゲームはどうなった?」

 

 その後、十六夜、ツナ、黒ウサギは本拠地へと戻ってギフトゲームの詳細を聞こうと黒ウサギに尋ねると、二人がそのゲームに出ることに歓喜したが、一転して泣きそうな顔になった。

 

 ツナが訳を聞くと、そのゲームが延期になるらしい。何でもギフトゲームに出される筈の商品に買い手がついたとかで中止になる可能性もあるそうだ。

 

「どうにかならないの?」

 

「どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手が付いてしまったそうですから」

 

「チッ。所詮は売買組織ってことかよ。エンターテイナーとしちゃ五流もいいところだ。"サウザンドアイズ"は巨大なコミュニティじゃなかったのか? プライドはねえのかよ」

 

「仕方がないですよ。"サウザンドアイズ"は群体コミュニティです。白夜叉様のような直轄の幹部が半分、傘下のコミュニティの幹部が半分です。今回の主催は"サウザンドアイズ"の傘下コミュニティの幹部、"ペルセウス"。双女神の看板に傷が付く事も気にならないほどのお金やギフトを得れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう」

 

 達観しているように話す黒ウサギだが、顔はくやしさで歪んでいる。当然だ、自分の仲間を取り戻すチャンスがやっと巡ってきたのにこんな形でそれが潰されてしまったのだから。

 

「まあ、次回を期待するか。ところでその仲間ってのはどんな奴なんだ?」

 

「そうですね……一言でいえば、スーパープラチナブロンドの超美人です。指を通すと絹糸みたいに肌触りが良くて、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです」

 

「へえ、女の人なんだ」

 

 そういえばまだ"元・魔王"だということ位しか聞いてなかったとツナは思い出す。

 

「それはもうとっても美人で素敵なお方ですよ! 名前はレティシア様、その美貌に加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くに居るのならせめて一度お話ししたかったのですけど……」

 

「おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」

 

 窓の方からこの場にいない第三者の声がして、一同は一斉にそちらを振り向く。そこにはコンコンとガラスを叩きながらにこやかに笑う金髪の少女が浮いていた。

 

「レ、レティシア様!?」

 

「様はよせ。今の私は他人に所有される身分。"箱庭の貴族"ともあろうものが、モノに敬意を払っていては笑われるぞ」

 

 我に返った黒ウサギが慌てて窓の錠を開けると、金髪の少女は部屋の中へと入っていく。どうやらこの少女が件のレティシアらしい。金髪にリボンを結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿させるロングスカートを着た少女はどう見ても黒ウサギが先輩と呼ぶには幼く見える。

 ツナと年齢もそう変わらないのではないだろうか?

 

「あ、すぐにお茶を淹れるので少々お待ちください!」

 

 久しぶりに憧れの先輩に会えたことへの喜びか、黒ウサギは小躍りしながらで茶室に向かった。そんな黒ウサギを見送りながら、二人は視線をレティシアと呼ばれる少女に移す。

 

("元・魔王"っていう位だからビアンキみたいな破天荒な人を想像してたけど結構落ち着いている人だな)

 

「どうした二人共?私の顔に何か付いているのか?」

 

 十六夜はツナを指差した。

 

「こいつがアンタに惚れたんだとよ」

 

「そんなこと一言も言ってないよ!!」

 

「あれ、そうだったか? 昨日そんな夢を見た気がしたんだ」

 

「夢の話ーーーーー!?」

 

 二人のやり取りにレティシアは上品そうに哄笑する。面白おかしそうに笑う姿も絵になる少女だ。

 

「ふふ、なるほど。君達が十六夜と……あのジョットの子孫か、白夜叉の話通り面白い二人だ」

 

「ジョット?」

 

 その言葉に十六夜は首を傾げる。十六夜はそのことを知らないのだ。

 

「誰だ、そのジョットっていうのは」

 

「? 聞いていないのか、そいつ(沢田綱吉)は数百年前に"サウザンドアイズ"の幹部をやっていた男の子孫だぞ」

 

「そ、それ本当ですか!?」

 

 紅茶のティーセットを持ってきた黒ウサギが帰ってきた。予想外の話を聞いたためかドアの開け方が少し乱暴になってしまったようだ。

 

「ちょ、ちょっと何で話しちゃうんですか!?」

 

「……秘密だったのか? 白夜叉はそんなこと言っていなかったが」

 

「すいませんレティシア様ツナさん、そのことについて詳しくお聞きしたいんですが」

 

「俺も興味あるぜその話」

 

 黒ウサギと十六夜に詰め寄られ、ツナは仕方なく自分がマフィアのボス候補であることは内緒にしつつ自分の祖先がこの世界と縁があったことを白夜叉に教えられたことを説明した。

 

 話を聞きながらお茶を入れていた黒ウサギが口を開く。

 

「大空のジョット……伝説の存在かと思ってましたが、まさか実在したなんて。しかもその子孫がツナさんだったなんて」

 

 初代ボンゴレは一体どれだけの功績を建てたのか、ツナは本気で知りたくなってきた。十六夜は十六夜でこの事実を今後どう利用していくかを考えている様子。

 

(もういいや、どうにでもなれ)

 

 ツナは色々諦めてきた。

 

「そういえば、レティシア様はどうしてここへ?」

 

「いや……用というほどものではない。新生"ノーネーム"の実力がどれほどか見に来た。ジンに合わせる顔がないのは結果として仲間を傷付けてしまったからだよ」

 

 レティシアはカップに口をつける。

 

「今回、私が黒ウサギに会いに来たのはコミュニティを解散するように説得しに来たのだ。コミュニティの再建など……それがどれだけ茨の道なのかお前が分かっていないとは思えなかったからな」

 

 図星なのか黒ウサギが黙り込む。

 つまりは警告だ。

 

「そしてようやくお前達と接触するチャンスを得た時……看過出来ぬ話を耳にした」

 

「それが俺達……ってことか?」

 

 今まで黙っていた十六夜が言い当てる。レティシアはそれに頷いて返す。

 

「そこで私は一つ試してみたくなった。その新人達がコミュニティを救えるだけの力を秘めているのかどうかを」

 

「結果は?」

 

 黒ウサギが真剣な眼差しで問いかける。レティシアは苦笑しながら微笑する。

 

「ガルドで当て馬にしたのだが、あの二人ははまだまだ青い果実で判断に困る。……そちらの二人に関しては参加してもいないから分からないが」

 

 ツナの方もジョットの子孫という評価だけでは実力には繋がらない。

 

「ならよ、試してみねぇか?」

 

「…………何?」

 

「実に簡単な話だ。その身で、その力で試せばいい―――どうだい、元・魔王様?」

 

 スっと立ち上がる十六夜。その意図に気付いたレティシアは一瞬唖然とするが、先程より弾けるような笑い声を上げる。涙目になりながらも立ち上がる。

 

「ふふ……なるほど。それは思いつかなんだ。実に分かりやすい。下手な策を弄さず、初めからそうしていればよかったなあ」

 

(この人も結構戦闘狂だったーーーー!!)

 

「ちょ、ちょっと御二人様?」

 

「ゲームのルールはどうする?」

 

「どうせ力試しだ手間暇をかける必要もない。双方が共に一撃ずつ撃ち合い、そして受け合う」

 

「地に足を着けて立っていたものの勝ち。いいね、シンプルイズベストって奴?」

 

 二人は笑みを交わし窓から中庭へ同時に飛び出した。




プリーモSUGEEEEEEE

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