ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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結局雲雀と風が似てるのは何故?
血縁者なの?


激しき雷電来る!

 一つの雷は激しい衝撃を生みながら黒ウサギと謎の少女――リンとの間に落ちた。

 

「こ、これは……」

 

 黒ウサギは焦っている。ただでさえもうじき魔王バロールが召喚されてしまうかもしれないのに、新しい厄介事が舞い込んで来るのは勘弁したい。

 

 リンも想定外の出来事に雷の落下地点を静かに見つめている。

 

 雷によって立ち込めていた黒い煙は吹きすさぶ風によって払われ、露となった。

 

 ――そこにいたのは、

 

「ガハハー! ランボさん参上だもんね!」

 

 50cmにも満たない小さな身体。

 牛模様のタイツ。

 そしてもじゃもじゃ頭に牛のような角。

 

 齢5にして雷の守護者であるランボがそこにいた。

 

「あ、赤ん坊ですか……?」

 

「あははは、ウサギさんの次は牛さんだー! おもしろーい!」

 

 黒ウサギは拍子抜けし、リンは大笑いしている。

 その一方でランボはとぼけた表情をしながら周囲を見回していた。

 

「あれ~ツナは~? ツナー!! どーこだー!!」

 

「えっ?」

 

 黒ウサギはその呼ばれ方に心当たりがある。というより自分も普段から彼の事をそう呼んでいた。

 

(あの子はもしかしてツナさんの関係者ですか!?)

 

 彼は「もしかしたらオレの友達が来るかもしれない」と言っていた。あんな子どもだというのは計算外であったが、ノーネームの恩人の一人である人物の関係者を巻き込む訳にはいかない。ましてやジンやリリよりも幼い子どもがこの戦いに巻き込まれて生き残れる訳が無い。

 

「君! 早くここから離れてください!」

 

「あ! ウサギさんだもんね~!」

 

 黒ウサギのとった対処はランボに対して逆効果になる。ランボは腕白で好奇心旺盛な子ども。ウサギの耳をつけた黒ウサギに興味を持つのは別段おかしな事でもない。

 

 ただ、現状で『そのおかしくない行動』は仇となる。

 

「でも、ウサギさんと遊ぶのに邪魔だから消えてね」

 

 無情にもリンは後ろを向いているランボに、一本のナイフを投げた。

 

 黒ウサギはランボを抱きかかえて瞬時にそのナイフを回避。そしてリンを怒りの形相で睨み付けた。

 

「あなたの狙いは黒ウサギなのでしょう? この子は関係ありません」

 

「えーだってウサギさんと遊ぶのに邪魔だったんだもん!」

 

 黒ウサギは抱きかかえていたランボを静かに降ろす。

 

「ランボちゃんでしたか? ここは危険です。終わるまでここから出来るだけ離れていてくださいね? 終わり次第この黒ウサギが責任持ってツナさんの所まで送り届けます」

 

 リンの目的はあくまで黒ウサギの足止め。ならばランボは邪魔をしなければきっと被害は出ない筈。無理にランボに固執すれば黒ウサギに逃げ出すチャンスをみすみす与えてしまうことになるのだから。

 

 黒ウサギはその認識が甘かったことに気が付いていなかった。

 

 次の瞬間、ランボの身体はリンに蹴り飛ばされて宙に放り出される。黒ウサギが手を伸ばしても届かなかった。ランボは小さな身体は無情にも地面へと叩きつけられる。

 

 黒ウサギが逃げる隙を与えずとも子ども一人を排除する程度、彼女にとって造作も無かったし躊躇う必要もなかった。

 

「さっ、続きしようよ」

 

「あ……」

 

 しかし、黒ウサギが心配するほどランボも柔ではなかった。

 

「が・ま・ん……うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 ランボは普通に起き上がったものの、痛みを我慢出来ずにその場で大泣きしてしまった。そして泣きながらもじゃもじゃ頭から一つのバズーカを取り出している。

 

(な、なんでそんな物騒な武器を……ってちょ! 何故それを自分に向けてるんですか!?)

 

 ランボはあろうことがバスーカの発射口を敵であるリンではなく自分に向けている。知らないのも無理は無い。このバズーカの名称を10年バズーカといって現在の自分と10年後の自分を5分間だけ入れ替えることが出来るのだ。

 

「?」

 

 当たり前だがそれを知らないリンもランボの行動が理解出来なかった。どちらにしろ止めようにもリンも黒ウサギも間に合わない。

 

 ランボはバズーカの弾に零距離で被弾し、爆破の煙でランボの姿は掻き消された。

 

 

 

 

 

「やっぱり納得出来ません! 何故オレじゃなくてアホ牛なんですか!!」

 

「ま、ジャンケンに負けちまったから仕方ねーよな」

 

 選ばれずに機嫌を悪くしている獄寺、それを苦笑いしながら宥めている山本、そして未知の世界へ行けなくて残念そうにしている了平がいる。

 

「しかし赤ん坊、幾らなんでもランボ一人を行かせるのは危険過ぎるのではないか? 今回はミルフィオーレとの決戦のように暗示をかけてはおらんのだろう?」

 

「ランボもそれなりに修羅場を潜ってる。おまけに初代雷の守護者ランポウは常に最前線で戦ってたと聞くぞ。これくらいこなさねえとあいつも成長できねえだろ」 

 

 了平の意見に対してリボーンは己の思惑を述べた。ランボに眠っている潜在能力は守護者の中でもトップクラスだ。それを今回の戦いで伸ばそうというのだ。

 

「それに、ボンゴレとボヴィーノが共同で開発した新しい十年バズーカの弾を持たしてるから問題ねえだろ」

 

「10年バズーカの新しい弾……ですか?」

 

「ああ、ヴァリアーとの勝負から密かに開発してたらしいけどな。この前成功したらしく、一発だけランボに送られてきたんだぞ」

 

 リボーンはニヤリと笑う。 

 

 

 

 

「その名も20年弾」

 

 

 

 

 

 煙が晴れ、そこにいたのは筋骨隆々で茶色いツギハギのコートを着た一人の青年だった。しかし、その天然パーマの髪型と頭の両サイドについている角にはランボの面影がある。

 

 20年弾によって20年後のランボが現れたのだった。

 

「どちら様ですかーーーーー!?」

 

 何も知らない黒ウサギからしたら『ランボがバズーカを自分に撃ったらそこにいたのは見ず知らずの大柄な青年』ということになる。既に訳が分からない。

 

 そんな黒ウサギでも分かる事が一つある。

 この青年は強い。

 

「この感覚……そうか、オレはまた10年バズーカで呼び出されたのか。だが、若きボンゴレがいないな。若いオレはここで何をしてたん……おっとお嬢ちゃん、ナイフはおもちゃにするには危険な代物だ」

 

 突如現れた20年後のランボは現状を分析する暇も無くナイフを投げつけられる。それをいとも容易く人差し指と中指で受け止めた。

 

「ねえお兄ちゃん。今のは一体どんな手品なんですか?」

 

「手品というのは種が分かれば下らないものだ。なら知らない方がいいんじゃないか?」

 

 リンは20年後のランボが放つ威圧感に警戒の色を強める。

 

「あ、あの、もしかしてツナさん……沢田綱吉さんのお知り合いでしょうか?」

 

 黒ウサギは意を決して20年後のランボに話しかけた。

 

「若きボンゴレを知っているのか?」

 

「はい。ツナさんは――っと」

 

 黒ウサギは投げられたナイフを身体をずらして避ける。

 

「んもう! 私のこと無視しないでください!」

 

「ふぅん、仕方ない。若きボンゴレについて聞くのはあの凶暴そうなお嬢さんをどうにかしてからにしよう」

 

「助かります!」

 

 早速ランボは前に出た。

 

「サンダーセット!」

 

 ランボは自ら雷を呼び寄せ、その雷を浴びて角に帯電させた。

 

 これこそランボお得意の

 

電撃角+(エレットゥリコ・コルナータプラス)!!」

 

 二本の角をリンへと向けて突進していく。電撃角(エレットゥリコ・コルナータ)の最大の弱点であったリーチの短さを雷を自在に操って電撃を伸ばす事で克服したランボの必殺技だ。

 

(神格も無いのに雷をああも自在に操れるなんて……でも)

 

 そう。自分がそうであったように、リンにはどんな攻撃も通用しない。

 

 事実、リンは怪我一つ無くその場に立っている。

 

「成程、そういうことか」

 

「え~っと、今ので一体何か分かったんですか?」

 

「どういう原理かは知らないが、どうやらお嬢ちゃんには時間もしくは空間を操る能力があるらしい」

 

 傍から見ていた黒ウサギもそしてたった一度のやり取りでギフトをほぼ看破されたリンも驚いていた。

 

「先程、ウサギのお嬢さんに投げられたナイフがウサギのお嬢さんのすぐ後ろに落ちていた。これはおかしなことだと考えて、それで試しに回避の難しい電撃角+(エレットゥリコ・コルナータプラス)を使った。この技をあの至近距離で外すのはまずありえない。そう、時間を操って電撃を避けるか距離感を操って外すように仕向けるかしなければ、だ」

 

 しかし、種が分かったところでこのような規格外の能力に対抗する術がないのも事実。しかしランボは不敵に笑った。

 

「だが、強力であっても無敵(・・)ではないようだがな」

 

 ランボは指で髪の毛を数本摘んでいるのを見せた。その色は黒、しかもストレートだ。丁度リンの髪の毛と同じで髪質もほぼ同じものに見える。

 

「嘘っ!?」

 

「電撃に気を取られすぎていたようだな」

 

 ランボはリンのギフトを破りかけていた。ランボの言う通りリンのギフトは無敵では無いのかもしれない。

 

「どうする。続けるか?」

 

「う~ん。やっぱりいいです」

 

「ふぅん、何故だ?」

 

「いえ、お兄さんには興味あるんですけどウサギさんと同時に相手するのは難しそうだし。それに三人目も着ちゃったし」

 

「おや、気づかれてましたか」

 

 仮面をつけた騎士フェイス・レスが黒ウサギの隣に降り立った。

 

「もう充分時間も稼げたし」

 

「時間? 何のことだ」

 

 気がついたときにはリンの気配は完全に消え去っていた。

 

「ふう、そろそろ時間か……? 仕方ない……またボンゴレに会いたかっ――――」

 

 きっかり5分で20年後のランボは消え、元のウザイ5歳児のランボは現れた。

 

「さっきの青年が子どもに……? 彼は年齢操作のギフトでも持っているのでしょうか?」

 

「さ、さあ? ってそんな場合ではありませんでした!」

 

 今こうしているうちにも魔王バロールが召喚されようとしている。あれを貫けるのは現状で黒ウサギの持つ"インドラの槍"のみだ。

 

「おわっ!? たかいたかーいだもんね!」

 

 黒ウサギはランボを抱き上げて(置いていくわけにもいかないから)すぐさまこの場を去っていった。

 

 

 

 

 ――――吸血鬼の古城・黄道の玉座

 

 ツナ達はとうとう玉座、つまり砕かれた星座を捧げる場所まで辿り着いた。

 

 玉座には鎖で繋がれ、疲労しきっているレティシアが座っている。

 

「レティシア!」

 

 ツナと耀はすぐさま彼女の下まで走っていく。道行で妨害するものは何も無く、すんなりとレティシアまで辿り着くことができた。

 

「レティシア、しっかりして!」

 

「レティシア!」

 

 声が聞こえたのか、それとも別の原因があったのか、レティシアは小さな身体をビクリと跳ねさせて起き上がる。大分体力を消耗しているのか、全身汗まみれで頬は紅潮しあまり余力は残されていない用に見える。

 

「ここは……黄道の間……!? 何故此処に――――」

 

 レティシアが起きたことに二人は一安心し、心置きなくここの攻略に挑むことが出来る。

 

 一見この部屋に十二星座の欠片を埋め込むような場所が無いように見える。そこで耀は床や壁を丹念に調べる。

 

 石壁を調べていると何か窪みを見つける。ここに星座の欠片をはめる。

 

 どうやらこの部屋は円形になっているらしく、円形を12等分してそれぞれの窪みに欠片をはめ込むことで"砕かれた星座を捧げる"は完了する筈である。

 

 皆同様レティシアも耀を賞賛した。ツナの支えがあったとはいえ、どこか危なっかしかった彼女が自分が開催したギフトゲームを解き明かしたとは考えもしなかったからだ。

 

 そして最後の欠片が窪みへと填め込んだ。

 

 …………………

 

 ……………

 

 ………

 

 しかし、何も起こらなかった。

 

「…………………あれ?」

 

「ど、どういうこと?」

 

 耀としてはあれだけ自慢げに解説した答えが間違いでしたとは思いたくない。

 

 皆が顔を合わせる中でレティシアは冷や汗を流している。

 

「レティシア……?」

 

「……始まった」

 

「え?」

 

 

 

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』

 

 

 

 古城に轟音が響き渡り、雷雲の稲光が差し込む。

 

 "アンダーウッド"を滅ぼしかけたあの巨龍がまた現れてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しししっ、面白くなってきたじゃん」




最後のは一体誰でしょうねー(棒)

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