ネオ・ボンゴレⅠ世も異世界から来るようですよ?   作:妖刀終焉

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今回はちょっと短め

この作品ってあんまり恋愛要素ってないよね


ノーネーム来る!

 黒ウサギかの口から伝えられた事実。それは自分が所属しているコミュニティを助けて欲しいとのこと。

 

 以前の彼女のコミュニティは東区画でも最大手のコミュニティだったが、3年前に敗北したことでコミュニティを存続させるのに必要な人もコミュニティの名も旗も奪われ"ノーネーム"となってしまった。

 

「それでオレたちを」

 

「はい、貴方方がやるきになった辺りで全てを話して協力してもらおうかと思ったのですが……」

 

 彼女も永遠に皆を騙し続けるつもりはなかったらしい。そもそもノーネームに所属する以上騙し続けることなど不可能なのだから。

 

「えっと、ずっといなきゃいけないわけじゃないんだよね?」

 

「はいっ! それは勿論です」

 

「ならずっとは無理だけど、オレも力を貸すよ」

 

「本当ですか!?」

 

 ツナの言葉に黒ウサギはパアっと笑顔になりツナの手を握る。ツナは恥ずかしくなり顔を背けた。黒ウサギは可愛くてスタイルもよく直視できなかった。

 

「皆にもこのことは説明したほうがいいんじゃないかな」

 

「ですが……いえ、そうですね。力を貸してもらうのですから騙すのはよくありませんよね」

 

 とツナの意見もあり、黒ウサギは考えた末に残りの三人にも事情を話そうとしたのだが……

 

「もう一人いませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児”ってオーラを放っている殿方が」 

 

 そう、いつの間にやら逆廻十六夜の姿が忽然と消えているのだ。

 

「ああ、十六夜君のこと? 彼なら「ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」と言って駆け出していったわ。あっちの方に」

 

 と飛鳥があっさりと指差すのは上空4000メートルから見えた断崖絶壁。遠すぎて先が見えない。

 

「な、なんで止めてくれなかったんですか!」

 

「「止めてくれるなよ」と言われたもの」

 

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

 

「「黒ウサギには言うなよ」と言われたから」

 

「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう皆さん!」

 

「「うん」」

 

(チームワーク力皆無だこの人たち!! いやある意味チームワーク発揮しているけど)

 

 黒ウサギはツナはともかく残り三人が信用できるか怪しくなってきている。自分から一歩歩み寄ろうとした傍から既に問題が起こったし。

 

(ああできれば捕まえて"箱庭の貴族"と謳われたこのウサギを馬鹿にしたことを骨の髄まで後悔させたいですけど残り二人も勝手な行動をとる可能性がありますし。かといってツナさんに見張らせておくのも不安が残りますし)

 

 黒ウサギは負のオーラを纏いながらブツブツと呪詛のそうな言葉を呟いている。そして黒ウサギはツナの人柄は信用しても統率力までは期待していなかった様子。

 

「じゃあ黒ウサギはここで二人を見てて、オレが向こうを見てくるから」

 

 その言葉に黒ウサギは驚愕し、残り二人は感心した。

 

「向こうにある"世界の果て"にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣がいて人間では到底勝てないような」

 

「大丈夫……」

 

 ツナは手袋をはめ、ケースから丸薬、死ぬ気丸を取り出して飲んだ。

 

「すぐに戻ってくる」

 

 ツナの額にオレンジ色の炎が灯り両手についた手袋は一瞬光ったと思えば金属が埋め込まれたグローブへと変化している。さっきまでのおっとりした顔つきもキリっとしてまるで別人だ。

 

(え、誰?)

 

(綺麗な炎)

 

(……すごいです)

 

 この場にいる皆が驚いているが一番驚いているのは黒ウサギだ。

 

「沢田さん……なんですよね?」

 

「ああ、行ってくる」

 

 グローブに炎が灯り、それがジェット噴射のように吹き出してものすごいスピードで飛んで行ってしまった。

 

「空……飛びましたよね?」

 

「「うん」」

 

「何者なんでしょうか?」

 

「「さあ?」」

 

 ツナの豹変振りと彼の能力(ギフト)の一端を見た彼女たちは唖然としてツナの飛んでいった空を見上げるばかりであった。

 

 

 

 

 ツナが空を飛んでいると前方で間欠泉のごとく水しぶきが上がっている。まさかと思ってそこへ行ってみるとこれ幸いにと逆廻十六夜がいた。

 

 炎の轟音に気がついた十六夜がツナの方を向く。

 

「……お前、沢田か?」

 

「ああ、お前を連れ戻しにきた」

 

「へえー、それがお前のギフトってやつか?」

 

「さあな」

 

(性格変わりすぎだろ!! 二重人格か?)

 

 死ぬ気モードでもハイパー死ぬ気モードでも本質が変わるわけではないから二重人格というのとは少し違う。

 

「早く帰るぞ、黒ウサギが待ってる」

 

「ちょーっと待ってくれ。このギフトゲームが終わったらな……」

 

『まだ……まだ試練は終わっていないぞ、小僧共ォ!』

 

 水の中から怒り狂った巨大な蛇が出てきた。全身が白く首の辺りに縄が巻きついている異様な装飾が施してある。角も生えていて龍に見えなくもない。

 

「……あれは何だ?」

 

「なんか偉そうに『試練を選べ』とかなんとか、上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ。俺を試せるのか試させてもらったのさ。結果は、まぁ残念なヤツだったけどな」 

 

 彼はどうやらこの蛇に気まぐれで喧嘩を売ったらしい。その上蛇を怒らせるほど痛めつけていると見える。

 

「手助けはいるか?」

 

「いらねえ。お前の実力も見てみたいけどお楽しみはまた今度だ。それに……」

 

『貴様……付け上がるなよ人間風情が! 我がこの程度のことで倒れるものか!!』

 

 蛇の唸りに応えて蛇神の周囲の水が数百トンほども巻き上げられ、それが独立した生物のように竜巻の形を取る。怒りのあまり人間風情とやらに本気を出してきたようだ。

 

「これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。勝手に手ぇ出したらお前から潰すぞ」

 

 ニヤリと笑ってそう答える。ツナもそれを理解し一歩引いた。

 

『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』

 

「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」

 

『フン――その戯言が貴様の最期だ!』

 

 竜巻はどんどん肥大化していき周囲を破壊しながら十六夜へと襲いかかる。不用意に身体を近づけようものなら確実に身体がバラバラになってしまうだろう。

 

「――――ハッ――――しゃらくせえ!」

 

 しかし彼にしてみれば大した事はなかったらしい。襲いかかってきた竜巻をそれを上回る拳の一撃で消し去ってしまったのだ。

 

 そのまま十六夜が蛇の顔に一撃を見舞い、水面に倒れこむ。十六夜の初めてのギフトゲームは彼の完全勝利となった。

 

「何て出鱈目な……」

 

「黒ウサギ?」

 

 ツナが振り返ると髪がピンク色に変わっているがそこに黒ウサギがいた。待っていると言ってた筈だが、残り二人はどうしたのだろうか。

 

「あの二人は速攻でコミュニティに送ってきました。今はジン坊ちゃん……ああ、コミュニティのリーダーの方なんですけど、その人に任せています。で、何で水神が気絶してるんですか?」

 

「十六夜が倒した。オレが証人だ」

 

「マジでございますか!? 二人がかりならまだしも十六夜さん一人で!?」

 

「ああ」

 

 あの蛇はどうやらかなり強い神で普通なら人間では倒せないレベルだったのだろう。だから黒ウサギはあれほど驚いている。

 ツナは白蘭の使役している龍の方が厄介そうだったと心の片隅で思った。

 

「……ま、まあそれはともかく!ゲームに勝利した以上そちらの水神様からギフトを頂くとしましょう!」

 

「あ?」

 

 十六夜も黒ウサギが来ていたことに気がついたようだ。

 

 ツナは戦いが終わったことで死ぬ気モードを解く。

 

((やっぱ変わりすぎだろ(です)!!))

 

 二人は死ぬ気モードのツナと普段のツナの落差を見てやはり衝撃を受けた。

 

「なにせ水神様本人を倒しましたからね。きっとすごいギフトを頂けますよー♪」

 

 黒ウサギは水神との交渉の末に『水樹の苗』という木の苗を手に入れていた。水源を確保できたととても喜んでいる。ノーネームになってしまい水の確保すらも難しくなってしまったのだろう。

 

 ギフトを手に入れて浮かれている黒ウサギに十六夜は『何故自分たちを呼んだのか』という疑問をぶつける。十六夜もツナが帰りたいと言って慌てている黒ウサギを見て黒ウサギのコミュニティが切羽詰っているというのをなんとなく予想していたようだ。

 

 黒ウサギは十六夜にもツナと同じことを説明。利用しようとされていたことに怒るかと思いきや意外にも十六夜はコミュニティ復興の話に乗ってきた。

 

「沢田さんの言ったとおり、誠意を伝えれば協力してくれるんですね」

 

 十六夜が協力するのは誠意が伝わったというのとは少し違うが。

 

「いや、オレはまだ何もしてないし。それと『ツナ』って呼んでくれない? 元の世界でも皆からそう呼ばれてたからなんかむず痒いんだ。逆廻君も」

 

「へー、友達いんのか」

 

「いるよ!」

 

 その後三人は黒ウサギのガイドで世界の果てを少し(十六夜があっちへふらふらこっちへふらふらしたから厳密には少しじゃない)観光しながら東区画の都市へと向かった。

 

 

 

 

 結論から言うと、残り二人も借りてきた猫のように大人しくしているわけがなかった。二人とも十六夜に負けず劣らずの問題児だということを再確認できただけでも良かったのかもしれない。

 

「フォ、"フォレス・ガロ"とゲームをするーーー!? 何でそんなことになってるんですか!?」

 

「「腹が立ったから後先考えずに喧嘩を売った。反省も後悔もしていない」」

 

(犯罪者より性質悪い言い訳だーーーーーー!! しかも反省しないの!?)

 

 無表情で弁解をした二人を黒ウサギは何処からか取り出したハリセンで叩く。

 

 黒ウサギが十六夜とツナを迎えに行っている間に"フォレス・ガロ"というコミュニティのリーダーに絡まれてそのまま喧嘩になり、飛鳥がギフトゲームで決着をつけようと提案してしまったらしい。

 契約書類(ギアス・ロール)には『参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する』とある。つまり負けたらノーネームはなくなってしまうのだ。

 

(いきなり大ピンチなんですけどーーーーー!?)

 

 ツナは黒ウサギのことがだんだん不憫に思えてきた。コミュニティ以外の意味で。

 

 黒ウサギはフゥ太と同じか少し年上くらいの少年と話している。彼がノーネームのリーダーであるジン・ラッセルだ。

 

「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 

(まだ子どもなのにすごいな)

 

 彼は幼いながらもそれなりの貫禄を持っている。ユニもジッリョネロファミリーをあの年齢でまとめているが、やはりカリスマと信頼がなければ難しいのだろう。

 

「はぁ~……。仕方ない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。"フォレス・ガロ"程度なら十六夜さんかツナさんのどちらか一人いれば楽勝でしょう」

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねぇよ」

 

 十六夜には彼なりの美学というものがあるらしい。自分が売った、もしくは買った喧嘩には手を出させないし、他人が売った、もしくは買った喧嘩に手を出すつもりはないらしい。

 

「わかってるじゃない。沢田、貴方も当然、不参加決定よ」

 

「勝手に決められたーーーー!?」

 

「ああもう、好きにしてください」

 

 黒ウサギは半分やけくそでそれを許可した。彼女の胃に穴が空く日は近いかもしれない。

 




ツナの活躍の場をなかなかつくることができん

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