我輩はレッドである。   作:黒雛

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 嘘ショートストーリー01

 遊戯王GX第一話 視聴

レッド「なるほど。これが新世代篇に置ける前作主人公のオサレなシーンというわけか。――よし」

 数日後。

レッド「キミ、ポケモンマスターを目指しているのかい?」
ゴールド「はい! これから冒険の旅に出発するんです!」
レッド「ラッキーポケモンだ。こいつらがキミのところに行きたがっている」

 ルギア
 ホウオウ
 スイクン
 ライコウ
 唯一神
 セレビィ

ゴールド「………………」
レッド「頑張れよ(スタスタスタ)」


ゴールド「………………」
ゴールド「……………………」
ゴールド「…………………………お」
ゴールド「お、俺のシナリオぉぉおおおおおおおおおーーッ!!」


レッド「いやー、良いことした後は気持ちがいいなあっ!!」

 以後、新世代が始まる毎に無限ループ。


第十一話「VSタケシ ②」

「……おい」

「何か?」

 

 おかしなことでもありましたかね? とレッドはいけしゃあしゃあに首を傾げる。

 タケシは眉間に寄ったシワを揉みながら、

 

「キミは何度もこのジムに足を運んで俺の戦い方を学ぼうとしていたよな」

「その節はどうも。大変参考になりました。…………“つるぎのまい”(ボソッ)」

 

 すっ呆けたような声音である。

 

「一体どこが参考になったのか聞いていいか?」

「そりゃこれからのバトルで判断してくださいな」

 

 初手は完全にレッドお得意の奇策だった。

 今回はいつものバトルとは違った戦術を駆使して戦うため、序盤にアドバンテージを稼ぎたかった。冷静に戦況を見渡すためにも、心の余裕が欲しかった。

 

「釈然としないが……そうさせてもらおう」

 

 タケシは戦闘不能になったカブトを戻して、次のモンスターボールを投げる。

 光のヴェールを弾いて出現したのは、イワークだった。

 予想通りである。タケシの一番手はカブトだったりオムナイトだったりイシツブテだったりとバラけていたが、二番手はレッドが見る限り百パーセントイワークを繰り出していたのだ。

 そして最初に繰り出す技は――

 

「イワーク、“たいあたり”だ!」

 

 それはお馴染みの技。

 ゲームでは初期に登場する、いわゆる弱攻撃に分類される技だが、あくまでそれはゲームの話。イワークのような巨体が使用すれば充分な脅威となる。

 真っ直ぐと飛んでくるイワークの速度は、それほど速くない。攻撃を優先して先手を取っていなければ、確実に回避できる。

 

「よし、ルカリオ。“しんそく”で避けろ」

「なに? “しんそく”だと……!?」

 

 タケシが驚くのを尻目に、ルカリオが疾駆する。

 その速度は技の名に恥じぬ速力を誇っていた。残像を残しながらフィールドを走るルカリオをイワークは懸命に追いかけるが、距離は開く一方だ。

 

「ならば――そこだ!」

 

 と、縦横無尽に駆けるルカリオの動きを見切ったタケシが指示を出す。的確に指示を受け取ったイワークが何もない空間に――ちょうどルカリオが駆け抜けるであろう場所に自慢の巨躯を叩きつけようとする。

 

 しかし、レッドは、タケシがルカリオの動きを見切ることを読み切っていた。伊達に数週間の時間を観察に費やしていないし、ジムリーダーなら未来視に近い読みをして見せるはず、と信頼していた。

 故に指示は出さない。予めルカリオに仕込んでいた戦術通りに、ルカリオは行動する。

 “しんそく”により一時的に超強化された脚力を駆使して高く跳躍する。

 回避と同時に、これは攻撃の起点となる。

 重力に従い落下するルカリオはそのエネルギーを利用した“グロウパンチ”を穿つ。

 フィールドに叩きつけられるイワーク。ルカリオは一旦距離を取った。

 

「よくやった」

 

 僅かなインターバルの間に労いの声をかけるとルカリオがうるさいくらいに返事をする。

 予め戦術を仕込んでおけば、一々指示を出す必要はなく、ポケモンは素早く次の行動に移れる。トレーナーは相手の動きを読むことを重点に置き、それに従い仕込んでいた戦術を展開する。

 読みに勝った方がバトルを制する――まさにトレーナー同士の頭脳戦である。

 戦術より戦略を重きに。

 ジムリーダーは、タケシはいろんな制限を受けている。ならば完封くらいして見せなければこの先のバトルを制してポケモンマスターになるなんて夢のまた夢だ。

 

(相手がこう来るだろうから、こうする。自分ならここで、こうする。……まるでポケモンの通信対戦みたいだよなぁ)

 

 もちろんゲームと現実では求められる知識や技術がまるで違うから参考にならないが。

 

「まさかそのレベルで“しんそく”を使えるとはな。それに技を使用してからの起き上がりも速い」

「まあ、レベル上げそっちのけで身体を鍛えるようにしてたんで」

「優秀だな」

「うん、超知ってる」

「…………」

 

 言いながら、次の手を思考する。

 やっぱり自分はこういう頭脳戦より直感の方が良いよなぁ、とやり辛さを感じながら、やっとの様子で鎌首をもたげるイワークを見遣る。

 

(うわー、こっち攻撃のステータスだいぶ上がってんのに、まだ起き上がるかー)

 

 どうやら上手い具合にダメージを逃がしていたようだ。

 チラリとスタジアムに設えられている電光掲示板を一瞥する。イワークのHPはギリギリのラインで踏みとどまっていた。

 この、HPを確認できるシステムはポケモン図鑑にも搭載されている。HPゲージが底に尽きると戦闘不能と見なされ、以後、HPを回復しない限りそのバトルでの使用は反則となる。たとえポケモンに意識があり、バトル続行の意志を示そうと、だ。

 それ以上はポケモンの命に関わってしまう。HPゲージのシステムは安全装置なのだ。

 

 どうする? 風前の灯であるイワークに視線を戻して考える。

 観察した結果、タケシがイワークに指示する技は“たいあたり”が多く、次点で“かたくなる”。その次は“いわおとし”、そして“しめつける”の四つだった。

 警戒するべきは“しめつける”。

 あれに締めつけられると一切の行動が不可能になる。バッジを一個も所持してないから、しないだろうが、タケシの確殺コンボは“しめつける”で行動を封じてからの一方的な蹂躙劇だ。ゲームではしょうもない技なのに。

 

 ルカリオは元々攻撃と素早さの二種を重点に育成しており、回避に特化しているため、滅多に攻撃が命中することはないが、念には念を入れるべきか。

 

「ルカリオ、“はどうだん”」

 

 ルカリオは腰を落とし、上半身を捻って両手を重ね合わせる。

 すると重ね合わせた両手にエネルギーが集まる。膨張するエネルギーの塊を収斂させ、そのあまりの密度にエネルギー体が悲鳴を上げている。

 

 解放。

 

 咆哮と共に、両手を前に突き出した。

 極限まで凝縮したエネルギー体は一切の霧散も許さずに虚空を迸る。

 

「跳ね返せ!」

「ヴェ?」

 

 イワークは尻尾を振るい、ジャストミート。まさかのピッチャー返し。

 

「マジでか!?」

 

 レッドは、ルカリオと一緒に驚いた。

 真っ直ぐに返ってくる“はどうだん”に対応できず、ルカリオは直撃してしまった。

 特攻に努力値こそ振ってないが、ミドルレンジに対応するために“はどうだん”の技術は磨いていたのだが、それが災いとなってしまった。

 格闘タイプでありながら鋼タイプでもあるルカリオに、格闘タイプの技は抜群なのだ。

 吹っ飛んでしまい、二度、三度、バウンドしてルカリオは復帰する。

 防御、特防ともに努力値を割り振っておらず、しかも完全に直撃をしてしまったルカリオのHPはぐんぐん減ってしまい、半分を超えるまで到達した。

 

「そのイワーク、絶対今まで使っていたイワークと違うだろ!」

「よく気づいたな」

 

 タケシは不敵に笑う。

 

「きみがかなりの使い手であることはわかっていたからな。少し意地悪をさせてもらったよ」

 

 お前人間じゃねぇ!

 咄嗟にレッドは叫びそうになったが自重する。珍しく、奇跡的に自重する。

 

「そのルカリオ、レベルにそぐわない素早さを誇っているが、その反面防御が薄いと見た。悪いが、足を奪わせてもらう。“がんせきふうじ”!」

「チッ、避けろ!」

 

 イワークがフィールドのあちこちに大きな岩石を投げ飛ばした。降り注ぐ岩石をルカリオは次々とかわしていくが、フィールドに転がる岩石がルカリオの行動範囲を制限していく。

 直撃こそはしなかったが、最後の一つがギリギリのところに落下して、その衝撃がルカリオを痛めつける。

 

「とどめだ、イワーク! 岩石ごと巻き込んで“しめつける”!」

 

 まずい。見ればルカリオの全方位を塞ぐように岩石が聳えている。イワークはそのまわりをグルリと囲み、そのまま締めつけようと……。

 四の五の言っている場合じゃない。

 相手がこちらの技を利用するなら、こっちも利用するまでだ。

 

「ルカリオ、岩石を足場にして“とびひざげり”を決めろ!」

 

 険しい表情を浮かべていたルカリオが一縷の希望を見い出したように煌々と戦意を燃やす。

 

「なに!? 岩石を踏み台に――」

 

 岩石を踏み越えて跳躍したルカリオは、その勢いのままイワークの頭部にある突起物に狙いを定める。

 空気を穿つ――別名・シャイニングウィザードは正確無比にイワークの急所に命中し、その突起物をへし折った。

 大きく仰け反ったイワークは、その身体を巻き戻すことなくフィールドに伏した。

 

「イワーク、戦闘不能! 勝者、レッド!!」

 

 審判が宣言し、またしても新進気鋭の若者が登場したことに観戦席にいた人々は歓声を上げる。しかし、グリーンやブルーに比べて歓声が少ない気がするのはなぜだろう。“はかいこうせん”でもぶち込んでやろうか?

 勝利の雄叫びを迸らせているルカリオに「お疲れ。見事だったぜ」と労いの声をかけると、その雄叫びを上回る咆哮を上げた。すいと背後から現れたラティアスが『感謝の極みでございます、主様ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああアあああああああああアアーーーーッ!!! ――――だって』とルカリオの雄叫びを翻訳する。

 

 そう、無駄に熱いのだ。あのルカリオは。

 レッドを主様と呼び、ラティアスを姫様と呼び、ピカチュウをお師匠様と呼ぶ――らしい。ちなみにリオルからルカリオに進化した際、調子に乗ってピカチュウに喧嘩を売った結果、一秒間に十発ほどの“かわらわり”を受け、“アイアンテール”で打ち上げられた後に、対バンギラス用に習得していた“ばくれつパンチ”でトドメを刺された。あのときばかりはレッドも「ピカチュウさん」と名称を改めたものだ。

 そして(ルカリオ)は変わってしまった。

 一体どこのBASARA幸村だ。

 少し呆けていたタケシは我に返ったように苦笑して、イワークをモンスターボールに戻すとこちらに歩み寄ってくる。

 

「おめでとう」

「どうも」

 

 差し出された手と握手を交わし、小さく頭を下げる。

 

「見事な戦いだった。まさか岩石を踏み台に“とびひざげり”を命令するなど思ってもみなかったよ。足場も悪く、技自体の命中率も低いのに躊躇なく繰り出すとは、豪胆というか無謀というか」

「“とびひざげり”は“インファイト”と同じくうちのルカリオのメインウェポンですからね。空戦になった場合を想定して、相当に修行を積んでいたんですよ」

 

 敢えて“インファイト”の手札を晒し、隠し札を隠蔽する。

 

「相当の修行か。なるほど。キミは特別許可証を貰っていたんだな。それならそのルカリオの完成度も頷ける」

「どやぁ」

「――が、まだもう少し身体を絞れるな。体幹はしっかりしているから柔軟性と瞬発力は申し分ないが、筋肉の付き方が少し甘い」

「ぐぬぅ……!」

 

 的確な反撃にレッドは呻いた。

 素早さを重視した戦闘スタイルのルカリオにゴツゴツした筋肉は無用の長物だが、だからとひょろいのも問題である。その匙加減が難しいのだ。

 

「わかっているのなら、俺から言うことはもうないさ。どう仕上げるのかはキミの仕事だ。さあ、俺に勝った証に、ポケモンリーグ公認のグレーバッジを授けよう」

 

 そう言ってタケシは灰色の――石のように角ばったバッジを渡してくる。

 

「チャッチャチャーン、チャチャチャッチャチャーン、チャッチャーチャララン」

「なんだそれは?」

「バッジ入手時のBGM」

「キミは不思議だな」

「そんなこと言われたのは初めてなんだけど」

『マスターってば、基本『頭がおかしい』とか『鬼畜』とか『外道』とか悪口ばかりだもんね』

「まったく、こんな聖人君子に何たる暴言か」

『夢でも見ているの?』

 

 悪意なく、ただただ純粋に――と言った様子で『んー?』と小首を傾げるラティアスの頬をこねくり回しながら、

 

「次はハナダジム……水タイプか」

 

 相変わらず炎タイプのポケモンに厳しい環境である。

 どうにかしてヒトカゲに自信を持たせたいレッドとしては、少しげんなりとしてしまう。

 

「ん? 確かにオツキミ山を越えた先はハナダシティだが、ジム巡りに順番があるわけじゃないんだ。遠回りになるだろうが、手持ちのポケモンの相性と相談しながら挑戦するジムを選べばいいさ」

「なるほど。そういう手もあるか」

 

 こねくり回していたラティアスの頬を解放する。

 

「それより、一つ尋ねたいことがあるんだが、大丈夫か?」

「いいよ。急ぎの旅じゃないし」

「すまないな。数週間前の話になるんだが、このジムの中に今、世間を賑わせているロケット団の一員が潜伏していたんだ」

「へー、そりゃ大変だ――――あ」

 

 ハイパーボールが心当たりをゲットした。

 

「だが、幸い、というべきか、そのロケット団は俺たちが発見したときは既に何者かによって倒された後だったんだよ。……全裸に剥かれた挙句、その……なんだ、なぜか亀甲縛りで吊るされていたが」

「………………」

「まあ、散々みんなに迷惑をかけている連中だから、因果応報と言えばそれまでなんだが、それにしては少しやりすぎだと思うんだよ、俺は。だからロケット団を倒したトレーナーを探しているんだが、何か知らないか?」

「――――知らないな。まさか、そんな奴がいるなんて思ってもみなかったぜ……!」

 

 そう言って、レッドは激怒した。とりあえず、激怒してみた。

 迸れ、口だけの正義! ムカ着火インフェルノォオオオオーーッ!

 

「彼らにだって、もしかしたら悪に堕ちるやむを得ない事情というものがあるかもしれないのに、そんな一方的に彼らが悪の根源だと決めつけてそんな酷い暴力を振るうなんて! 信じられない。同じ人間のすることとは到底思えません! 俺、そういう『悪に人権はない』なんてほざく人間が死ぬほど嫌いなんですよ! 人を傷つける奴とか、マジ最低ッス! マジ許せないッス、もし見かけることがあったら説教してやりますよ! いや、もう、ホント許せねえ、マジぶっ殺してやんよッ!!」

 

 

 

「ロケット団は皆、一様に『赤帽子を被った黒髪赤眼の少年だった』と供述しているんだが」

 

 

 

「さらばだッ!!」

 

 

 レッドは一陣の風となった!

 

 

 

 

 

 

 




 最近貞操観念逆転モノのあべこべ小説が増えてきてますね。自分は、その流行を先読みして、貞操観念逆転モノを更に逆転させた物語を書こうと思い………アレ?

 というわけでニビシティ篇終了――しましたが、うん、普通に失敗した。オリジナルキャラとか戦術云々とか、色々試そうとした結果上手く回すことができずことごとく裏目に出てしまいました。戦術とか手持ちのモンスターが少ない状態でどうしろと言うんだバカヤローこのヤロー。

 次回のオツキミ山篇はこの反省を活かして、ロケット団改め血祭りオッケー団とわいわいがやがやうきうきピクニック始まります。



レッド「やられたらやり返す。やられてなくてもやり返す。サーチ&デストロイ。お金置いてけ」
カスミ「やめたげなさいよぉ!」

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