科学の都市の大天使   作:きるぐまー1号

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ep.42 9月25日

 

 

 

「とーまぁぁぁぁ!!! がんばってぇぇぇぇぇ!!!」

 

 空は雲一つない綺麗な秋晴れ。残暑も無く、かといって寒いわけでもない絶好の運動会日和。学校の校舎脇、グラウンドを囲むように作られた仮設の観客席から不思議とよく通る黄色い声援が届き、競技開始を待つ周囲のクラスメイト達の視線――――殺意にも似た何かを含むそれが、名前を呼ばれた少年に殺到した。困ったような表情を浮かべながらも、チアガール姿でポンポンを振るインデックスに手を振り返す上条。更に視線の『圧』が上がり、男子の集団からは歯軋り、女子の集団からは溜息のようなものまで聞こえ出す。

 

「……おー、インデックス元気だなあ。やっぱり当麻がいると応援し甲斐があるんだろうなあ」

 

 自分の横で準備体操をする少年に向けられるそれらに気付きつつも軽く無視して、余念なくストレッチをしながら、勇斗はニヤニヤ顔で上条に声を掛けた。

 

「インデックスちゃん、小萌先生に応援のダンス習ってたからねえ。ずっと見せたかったんだと思うよ」

 

 上条を挟んで反対側、九重も人の悪そうな笑いを浮かべ、会話に混ざってくる。

 

「いやー、お暑いお暑い。せっかく涼しくなったのにこのザマか。砂吐きそうだな全く」

 

「…………そのインデックスの隣にいるのは誰なんですかね勇斗さん!」

 

 やや顔を赤くして、ヤケクソ気味に上条は叫んだ。――――いつもより反応がおおげさだなあ、なんてことを勇斗は思う。何かこうインデックスの事を『意識』してしまうような出来事があったのだろうか。……あったのかもしれない。1日目、勇斗が席を外していた時とかに。

 

「絹旗じゃねーの? それがどうしたんだよ」

 

 しかし勇斗はケロッとした表情であっさりそう言ってのける。そう、チア姿のインデックスの隣には絹旗が座っていた。彼女はインデックスほど大騒ぎをしてはいないものの、それでも楽しそうな笑顔をこっちに向けている。――――ちなみに、よく目を凝らしてみると彼女の脇には弁当(メイドバイ土御門舞夏(メイド))が山積みになっている。言わずもがな、インデックスのための食糧だ。

 

「なっ、何でそんなに冷静なんでせう!?」

 

「いやだって、この間病院で散々弄られたじゃん? あれでもう慣れちゃったZE!」

 

「……もう、そんな境地に……」

 

 上条はorzよろしく項垂れる。『この手の話』は弄られた側が恥ずかしがるからこそ面白いのであって、あまりに堂々としているカップル(?)を弄ってもそれほど面白いことにはならないのは知っての通りだ。――――そんな人には惚気話を聞く、というのも楽しいことだけれど。

 

『――――間もなく競技を開始します。選手はスタート位置についてください』

 

 スピーカーからそんな音声が流れた。勇斗はストレッチを切り上げ、立ち上がる。

 

「ま、そんな事は置いといて。いいとこ見せれるように頑張れよー」

 

「……上条さん的には、それ以上に無事に帰ることを目標にしたいです」

 

「これでまた怪我で再入院とかやらかしたら、そろそろインデックスちゃんも泣いちゃいそうだしね」

 

 指定のスタート位置についた。そこで、上条のセリフと表情に、流石の九重も、そして勇斗も、つられて苦笑いを浮かべる。まあ、上条がこんなネガティブな言葉を吐くのも無理はない。なぜなら、

 

『それでは只今より、第7学区・高校の部・棒倒し・学区決勝・開始いたします』

 

 始まる競技が競技だ。仕方ない。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

「やった……無傷だッ……!」

 

 上条当麻は安堵の涙を流さんばかりに大喜びしていた。学区決勝――――全国大会出場をかけた県予選における決勝戦のような位置づけの試合だった(とはいえ、『全国大会』は存在しないが)こともあり、激戦→ボロボロという流れを予想していたのだ。しかしその予想は裏切られた。いい意味で。

 

 立役者はやはりというか、2人の『レベル4.5』だった。大覇星祭開始前の「2人で暴れてやるか」という宣言通りの活躍。学区決勝に勝ち進むだけあって対戦相手の高校にはそこそこな数の強能力者(レベル3)と数人の大能力者(レベル4)がいたが、2つの『個の力』はそれを容易く吹き飛ばした。

 

 ――――そう。まさしく『吹き飛ばした』のだ。物理的に。開始の笛からコンマ何秒の世界で炸裂した、AIM拡散力場と水蒸気による大爆発。あれに対応出来る人間はこの学園都市全体を探してみても両手の指で数えられる程いるのかどうか。

 

 この街中に満ち溢れている力を自在に操ることのできる能力者と、水分さえあればそこから水蒸気による爆弾を作ることのできる能力者。レベル4.5。誰よりも超能力者(レベル5)に近い者たち。

 

 ――――改めて考えてみると、そんな高位能力者と友達をやれているのはなかなかに幸運なことなのではないだろうか。そう言えば超能力者(レベル5)の中にも数人、奇妙な縁で親しくなった奴らだっている。こんな贅沢な無能力者(レベル0)、この街にはそうそういるまい。

 

 競技場の外、インデックスとの合流地点へと向かう上条の視界に、薄い木の板と角材と釘で作ったお手製の屋台が見えてくる。この街の中では数少ない、街の外部のそれと同じような光景。ただし店番をしているのは、霧ヶ丘女学院とかいう常盤台に匹敵するくらいのお嬢様学校の女子高生。ビニールか何かで出来た屋根の下、これまた手作りの長テーブルが置かれ、その上にはお嬢様お手製のものと思しきイラスト付きのポップがあり、そこには『来場者数ナンバーズ』と書かれている。大覇星祭の総来場者数を予想するという簡単なゲームだ。実際の記録に近い数を予想した者から順位が決まっていく。上位の人間には豪華賞品。去年は最先端家具がばら撒かれたと聞く。

 

 ――――もしかしたら、今なら何か当たるのではないだろうか。

 

 上条は思う。棒倒しを無傷で切り抜けることができたのだ。家具やら特賞――――イタリア旅行か――――は絶対当たらないにしろ、万年ハズレの自分も、もしかしたらささやかな景品くらいは当てることができるのではないか。

 

 魔術師と戦ったり、暴走した御坂と戦ったり、その後も小萌先生とインデックスと姫神秋沙の着替えを目撃してインデックスに噛み付かれたり、吹寄制理のお見舞いに行ったらちょうど着替え中で枕を投げつけられたり、うんたらかんたら。後半なんかは見たくて見ているわけでもないのにボコボコにされたりでもうボロボロなのだ。ちょっとくらいこの苦労、報われたっていいだろう。

 

 そう考えて、インデックスと合流する前に上条はちょっと寄り道をすることにしたのだった。

 

「いらっしゃいませ! お兄さんもちょっとやってきます?」

 

「ええと……じゃあ3枚分お願いします」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

「いやぁ……相変わらず勇斗さんやる事超派手です」

 

「まあ決勝戦だし。あれくらいやっても罰は当たんないでしょ」

 

 人混みの中、連れ立って歩くのは勇斗と絹旗だ。大覇星祭初日、2日目と連続で入院した勇斗。そんな勇斗を2日連続で見舞ってくれた絹旗。そのお礼にと、勇斗は絹旗に食事を奢ることにしたのである。

 

「あれだけグラウンド抉ったら呼び出し喰らいそうですけど」

 

 絹旗の言葉通り、競技終了後のグラウンドの状況はひどかった。穴だらけで、整備のせいで以降の競技の開始時刻が繰り下げになったり、会場が変更になったりするほどだ。当然ながら、原因は勇斗と九重。グラウンド地表マイナス数センチの土の中で、収束させたAIM拡散力場と土壌中の水から得た水蒸気を一気に解放したのだ。作戦は単純。「地面ごと棒を吹っ飛ばせ作戦(立案・吹寄)」は、しかし絶大な効果を発揮し、勇斗達の高校に優勝をもたらしたのだった。

 

「こんだけ能力者に争わせてるんだし、開催側はあれくらいのリスクは負って然るべきじゃん? 観客は『これでこそ大覇星祭だ!』とか言って盛り上がってるしね」

 

 悪い笑みを浮かべて、勇斗はそう返す。

 

「……てことで、その件に関しては呼び出し喰らおうが無視だな」

 

「勇斗さんってそんなに悪い人でしたっけ?」

 

「後輩に美味しいご飯奢ってあげるくらいには優しい先輩です」

 

「超期待してます」

 

「任せたまえ」

 

 そんな感じの他愛のないことを話しながら、2人は歩く。――――相も変わらず人が多い事この上ない。もう大覇星祭も終わりが近いということで、最後の賑わいを見せているのかもしれない。

 

 ――――そう言えば、風紀委員(ジャッジメント)での訓練の賜物か、勇斗は人混みの中でも歩くのが早い。前方を歩く人の早さ、向き、人の流れ、……などを瞬間的に判断し、最短最速のルートを見つけ出す。人混みを縫って逃走する犯人を捕縛するのには必要な技術なのだ。対する絹旗はと言えば、そんなスキルは持っていない。これまでこの街の暗部に居て、そんな状況に迫られることなど無かったのだ。人のいない所に隠れているターゲットを、人に見つからないよう追い詰めて捕獲したり始末したりするのがこれまでの仕事。こんな超ヤバい人混みの中での追撃戦など未経験。

 

 ――――早い話が、

 

「勇斗さーん、歩くの超早いですー」

 

「ん……? あー、ごめんごめん!」

 

 いつの間にか遠くなっていた声の方に振り向き、勇斗は人混みの向こうの方――――人の流れ数本分ほど離れた所にいる絹旗に向かって叫んだ。立ち止まり、追いつくのを待つ。

 

「人超多すぎて人酔いしそうです」

 

 ようやく追いついた絹旗はもう疲労困憊、ぐったりした表情を浮かべていた。

 

「しかも勇斗さん、どんどん先に歩いていっちゃうし」

 

「いやあ悪い悪い。職業病みたいなもんでさ」

 

「ちゃんと気を遣ってください超優しい先輩」

 

「わかったわかった」

 

 そう言って、勇斗は絹旗の手を取った。――――病室でも思ったが、女の子の手とはなんと柔らかいのだろう。

 

「まあベタっちゃベタだけど、こうすればはぐれないよな」

 

「…………」

 

「……どうしたん? もしかして怒ってる?」

 

 絹旗の耳が赤い。顔が真っ赤になる程怒っているのか、はたまた恥ずかしがっているのか。

 

「……び、びっくりしただけです! 怒ってなんかいません!」

 

 怒っているような口調で、しかしどこか嬉しそうに、絹旗は叫ぶ。

 

「そうかそうか。なら大丈夫かな」

 

「……ええ、超大丈夫ですとも」

 

 ――――と、そこで絹旗が急に表情を変えた。顔の赤さも引き、手を離さないまでも、表情は真顔に、握る手も硬く強張る。

 

「ん、どうした?」

 

 違和感を覚えた勇斗が再び絹旗に問い掛けた。

 

「いえ……何か不穏な視線を感じたような……」

 

「……暗部絡みか?」

 

 勇斗も表情を変え、声を潜め、絹旗の耳元で囁く。

 

「可能性はゼロではないですが、……それとは質が違う気もしなくはないですね」

 

 同じように声を潜め、絹旗も勇斗に囁き返した。それを聞いた勇斗は肩をすくめて、

 

「……ま、流石にどんな連中だろうと、この人混みの中で手え出してきたりはしないだろ。もしなんかあったら、俺が守ってやるさ」

 

「……」

 

「……どうした?」

 

 再び動きを止めた絹旗。心なしか、また顔がちょっと赤くなっているような――――。

 

「……今のセリフ、超良いですね。ちょっと今、キュンと来ました」

 

「……それは何より。言った甲斐があったね」

 

 可愛い女の子の照れた顔が見れたんだし、役得です。――――なんて、勇斗は心の中で付け足した。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

「いやー、やっぱ仲良いよねあの2人。あんなにあっさり手をつなぐとは思わなかったなあ。……あ! 見てよ初春! 急に顔近づけたよ!」

 

「ぐぬぬ……!なんとも羨ましい限りです!」

 

 絹旗が感じた不穏な視線の正体は佐天と初春だ。興味津々な様子で勇斗と絹旗を物陰から見つめている。その2人が顔を近づけたのはこの2人のせいなのだが、彼女ら自身はそれに気づく様子は全く無い。

 

「移動するみたいだけど、どこに行くのかな」

 

「今の時間どこも混んでますからね……。どうするんでしょう」

 

 視線の先、しっかりと手を繋いだまま、2人は人混みを縫って動き始めた。佐天と初春も距離を保ったまま後を追う。――――2人は今変装をして後を追っている。特に初春のカチューシャは人混みの中でも良く目立つため、今は外した状態だ。あの(・・)初春が、あの(・・)カチューシャを外してまで尾行していることからも、彼女の本気具合がわかるだろう。

 

「……にしても、いいのかい初春くん」

 

 しばらく尾行を続けていると、不意に、真面目な表情で佐天は呟いた。

 

「何がですか?」

 

 セリフの上ではとぼけるように、しかし佐天の言葉に何かしら思い当たる節があったのだろうか、やや心なし目を逸らすようにして、初春はその佐天の呟きに反応した。

 

「見ての通り、あの2人はアツアツだよ。何でかっていうと、もう大して人混みも無くなってるっていうのに、手を離そうとしないからね」

 

 時間的にか場所的にか、しばらく歩いたことで人混みのピークはもう過ぎている。もう手を離したって迷子になることも無いだろう。しかしそれを知ってか知らずか、2人は互いに手を離すような素振りを見せることはない。

 

「つまり勇斗さん争奪レースではあの子がぶっちぎりトップ。初春含めて他の子たちは周回遅れって言っても過言じゃあないと思うよ」

 

「…………」

 

 痛い所を突かれでもしたかのように、初春の顔がわずかに渋さを帯びる。視線が不安げに、勇斗達と佐天の間で揺れていた。

 

「前に言ってたよね、初春。『勇斗さんカッコいいし頭いいし優しいしケンカ強いし、本当に「理想の王子様」みたいな人ですね』って。それが単なる『憧れ』だっていうならそれでいいと思うよ。でも本気で勇斗さんを『落としたい』なら、早く何とかしないと。自覚してるかどうかは知らないけど、あの子は多分勇斗さんを『落とし』にいってるよ。こういう時の佐天さんの勘はよく当たるよー」

 

 ――――『憧れ』と『恋愛感情』。その二者の混同は若い少年少女によく見られる。もちろん『憧れ』に基づく『恋愛感情』や、『好き』という気持ちから生まれる『憧れ』があるというのも一面としては事実だ。自分の好きな相手を尊敬したり、賞賛できる関係というものはとても素晴らしいことだろう。しかしまた別の側面として、例えば年上の塾の先生を『好き』になる女子中高生のように、『年上の男性に対する憧れ』と『先生個人に対する好意』の区別がつかなくなってしまう、……なんてこともあるのもまた事実なのだ。

 

「…………ま、その辺の自分の気持ちをちゃーんと見極めとかないと、後で辛いのは初春だからね! もし本気ならこの佐天さんが全面的にバックアップしてあげるから!」

 

「佐天さん……」

 

「なんだい初春、何しおらしくなってるのさー。いつもみたくスカート捲ってあげるから元気だしなさい元気を」

 

「ちょ、佐天さん!? だから往来のど真ん中で私のスカートに手を掛けるのはやめてくださいって!」

 

 そんなこんなの話をしつつ、2人は2人の尾行を続行するのだった。

 

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 

 

 

 

「というわけで、打ち上げを開始します!」

 

「「「「いえぇぇぇぇぇぇぇぇえええい!!!!!!」」」」

 

 月詠小萌の可愛らしい宣言と、もはや衝撃波か何かと間違う程の大歓声。大覇星祭の閉会式が終わり、勇斗達1年7組の面々はとある鍋料理の店にいた。目的は小萌が宣言したとおり、大覇星祭の打ち上げである。

 

 今回の大覇星祭は勇斗達1年生が例年稀に見る大活躍を見せ、学校別順位では歴代史上最高の順位で期間を終えることができたのだった。校長以下教員の面々も揃ってニコニコとした笑顔を浮かべ、特に目覚ましい活躍を見せたこの1年7組に『打ち上げ費用は全額用意しよう』と校長が直々に言いに来てくれるほどの喜びようだった。

 

 そんなこともあってか、これ幸いとテーブルの上に具材が所狭しと並べられている。特上の具を、人数の倍人前。酒は飲まず食い盛りな高校生の身からすれば、とてつもない贅沢だ。

 

「……あー、特別ゲストとして今日はシスターちゃんにも来てもらっているのですよー。とっても大食いなのでー自分の分を食べられる前にまずしっかり自分の分を確保するんですよー?」

 

 しかし小萌の横では目をキラッキラさせて食材を見回すインデックスが舌なめずりをしていた。祭りの期間中、インデックスの大食い力の片鱗を度々目にしていたクラスメイト達の雰囲気が一斉に引き締まる。――――これだけの量が用意されているとはいえ、あの少女は油断ならない。念話能力(テレパス)を使っているわけでもないのに、インデックスと小萌を除く全員の意思が1つになった。

 

 肝心の鍋は――――よく煮えたようだ。だし汁の美味しそうな匂いが場の全員の鼻をくすぐる。鍋奉行たちがそれを器によそい、それぞれに配る。

 

「みなさーん、手元に料理と飲み物はありますねー? ……それでは、声を揃えてー」

 

「「「「「「いただきまーす!!!!!!」」」」」」

 

 待ちきれないように、やや喰い気味のタイミングで、二度目の歓声が爆発した。それと同時に、我先にと皆が皆料理に喰らい付く。7日間も続いた体育祭をフルに戦い抜いた直後だ。普段は食の細い女子生徒ですら、普段では考えられないほどのスピードで箸を進めて行く。

 

 ――――それは大覇星祭中のなんやかんやで色々とボロボロになっている上条は言うまでもないし、大覇星祭中のなんやかんやで立場職務上色々と駆けずり回る羽目になった勇斗も同様だ。学園都市内外から猛者が集う大食い大会で飛び入り参加したあげく入賞を果たした“痩せの大食い”の九重、『裏方』で色々と駆けずり回った土御門、女の子を求めて学園都市中を放浪していた青髪ピアスに至っては勇斗や上条よりも食べる量が多い。

 

 ――――しかし、インデックスは更にその上を行く。

 

「な、何だこの子! 人間掃除機かよ!」

 

「ちょ、バカやめろ! 鍋は飲み物じゃねえよ!」

 

「締めのうどんがあるんだからだし汁は飲まないでー!」

 

 もうそういう職業のプロなんじゃないかと疑うぐらいの大食い早食いに、テーブルのあちこちで悲鳴が上がる。

 

「まだまだ足りないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 その打ち上げが阿鼻叫喚の地獄(比喩表現)と化すまで、そんなに時間は要さなかった。

 

 


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