ガノタの野望 ~地球独立戦争記~    作:スクナ法師

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2ターン目 作戦ターン

 

 

 

 

V作戦。

 

 

それはジオン公国に追い込まれた地球連邦軍が発案した起死回生の一手。

 

連邦軍初のMS(モビルスーツ)開発計画。 別名RX計画とも呼ばれる。

 

朝定食(鮭の切り身)を食べた後に執務室でPSPを起動させたところ、画面の項目に昨日は無かった項目を見つける。

 

“特別”と言う見知った項目に期待を寄せながら開いてみると二つの作戦プランが…

 

 

→“V作戦”

 

“ビンソン計画”

 

 

「ブホッ!?」

 

リアルで吹いた。

 

 

やべぇー、キタコレ!

 

V作戦。 平たく言えば、ガンダム開発計画。 作戦発動することにより、戦闘機にしてMSのコックピットにもなるコアファイター、MSのガンタンク、ガンキャノン、ガンダムに、これらを運用する母艦ペガサス級が開発される事になる。

 

また、ビンソン計画はマゼラン級とサラミス級にMSの運用能力を付けて、いっぱい作ろうぜ! という計画だ。

 

 

ビンソン計画は一先ず置いておき、V作戦を発動させる。

 

『さて、ジャブローのモグラ共を説得するかな…』

 

「えっ…?」

 

『ハロ?』

 

「えっ…?」

 

いつのまにか部屋に潜り込んで居た連邦軍の制帽を被った髭もさのハロと見詰め合う。

 

 

ともかく作戦発動後に開発欄を見てみると、早速コアファイターとペガサスの開発プランが出ていた。

「コアファイターは明後日に、ペガサスは一週間後に完成って、はやっ! ちょっぱや!」

 

嬉しい誤算だ! ワショーイ!

 

 

ついでにビンソン計画も発動してマゼランとサラミスの改良型を開発する。

 

マゼランは4日、サラミスは3日後に完成予定だ。

 

 

「よっしゃー! 連邦宇宙軍再建するぞーー! 地球連邦軍ばんざーーい!!」

 

 

再建じゃなくて、新設だけどね。

 

「ふんふふーふーん♪ ふんふふーふーん♪ ふんふふーふーんガンダム~♪ …そういえばハロ? 昨日は寝てる間に異常は無かった?」

 

昨日は疲れてぐっすりだったが、一度だけ嫌な予感がして目が覚めた事が気になっていた。

 

『ハロ! デブリガ一ツコロニーニ向カッテ来タカラ撃チ落トシタ』

 

「ふ~ん。 被害は出なかったの?」

 

『ナイ、被害ナイ』

 

スペースコロニーだからデブリ対策は万全か。

 

 

今日はボールとセーバーフィッシュの生産ラインを減らして、空いたラインでコロニー内の防衛用に61式戦車を少数生産しよう。

 

 

今日の昼食は何にしようかな?

 

 

 

 

 

 

 

星の海を渡る船があった。

 

船体に、白地に赤丸の国旗を描いたその船は、音の届かぬ真空の空を静かに進んでいた。

 

船の名前はアシガラ。 日本帝国宇宙軍に属するものだった…

 

 

「艦長、予定宙域に間もなく到着します。 タイムテーブルに遅れは有りません」

 

「ご苦労」

 

船内ではあるミッションを受けた宇宙服姿の兵士達がコンソールを見つめながら自が職務を全うし、あらゆる事態にも対応しようとしている。

 

「…アメリカ軍の宙域にレーダー反応有り、アメリカ宇宙軍の艦艇と推測。 …観測員も確認。 無線確認を行います。 こちら日本帝国…」

 

「やれやれ。 向こうさんもお早いお着きで」

 

口髭を蓄えた30第後半の男は、宇宙ヘルメットを外して被っていた制帽の位置を直してぼやく。

 

およそ18時間前に補充された新兵の慣熟を兼ねた警戒任務に就いた彼らは、その任務の途上で日本帝国側で初めて“アレ”を目撃した部隊だった。

 

その後彼らは本来の任務から解かれ、新たな任務として“アレ”の監視を続けている。

 

 

半日ほど経ち、艦長が帰りの燃料等をそろそろ考えていた頃に、宇宙軍指令部からまた新しい任務が 下される。

 

不明存在への接触である。

 

通信、出来れば直に会って少しでも相手の正体を探れと言う普通の軍人とは畑違いな任務を上層部に押し付けられ、命令を受理した時に艦長の顔は歪んでいたと言う。

 

「帰りには補給物質を満載した輸送艦を迎えに寄越すなんて、上も大盤振る舞いですね艦長?」

 

「帰れればな」

 

 

若い副官の言葉に苦笑を交えつつ答える艦長。

 

「脅かさないで下さい。 少なくともBETAの様に問答無用で攻撃はしないと私は愚考します。 我々が見た光学兵器の威力と射程なら… 彼らにその気が有れば我々は既に蒸発しているでしょうから」

 

「…そうだな。 年を取るとどうにも悲観的に見る癖が付くようだ。 よし! 彼等の気が変わらない内に挨拶と行くか」

 

「了解! 全ての通信回線をオープンにして、アンノウン(所属不明)に通信を送れ!」

 

 

 

 

 

 

 

「先ほど照会のあった日本帝国宇宙軍所属のアシガラが、全方位回線でアンノウンに通信を送り始めました!」

 

薄暗い室内にベッドセットを着けた若い通信兵の声が響き渡る。

 

「ふむ、速きこと風の如しか…」

 

「艦長、何ですかそれは?」

 

「日本の過去の将軍が残した戦法の一つだよ」

 

「はぁ。 …向こうに先を越されてしまいました」

 

「我々も予定通りに…」

 

 

アシガラと目標も目的地も同じにして、同宙域を進むもう一つの艦影。

 

アメリカ合衆国宇宙軍に所属する宇宙艦“リバティープライム”。

 

宇宙軍指令長官から大統領直々のオーダーを受けた同艦は、進宙一年に満たない真新しい姿を漆黒の宇宙(そら)に輝かせていた。

 

 

サイズ的にはアシガラとさほど変わらないが、アシガラが6年前のロートル艦で リバティーが最新鋭艦ということもあって、性能には格段の開きがあった。

 

もっとも、アシガラ乗組員はその差を技量で縮めようと切磋琢磨しているが…

 

 

 

そのリバティのブリッジ、艦長席に座るのは、軍人としては珍しく金髪を背中の中ほどまで伸ばした30半ばの男性だった。

 

彼の隣には副官とおぼしき眼鏡の女性が立っていた。 年は20代半ばと思われ、プラチナの髪をアップに纏め理知的な顔に細く切れ長な目が見るものに冷たい印象を与えている。

 

「了解しました艦長。 オープン回線で此方からもアンノウンに向けて通信を送れ! 各員は第二種警戒体制から第一種警戒体制に移行! 不測の事態に備えろ!」

 

副官の指示に、俄に活気づくブリッジを見て艦長は満足気に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

ロンデニオン・コロニー

 

 

お昼ご飯を食べようと、執務室からハロ食堂へ向かっている道中に、頭の中で閃光が疾った…

 

 

「おぉう… 嫌な予感とプレッシャーを感じる…」

 

思わず辺りを見回し異常が無い事を確認。 どうやら見えないところで何か起きてるみたい…

 

 

『ハロ! 緊急! 緊急!』

 

「聞きたくなーい!」

 

 

そこに「ていへんだ! ていへんだー!」と言わんばかりの雰囲気のハロが飛び込んできたので耳を塞いでしまった。

 

 

そんな事をしてもどうにも為らないので仕方なくハロに事情を聞くと、オープン回線で通信を送りながらコロニーに近付く二隻の艦…アメリカ合衆国と日本帝国の軍艦が近付いて来ているとの事。

 

…わーお。 うっかりしてたよ、そうだよね~こんなデカイもんが地球と月の間に在ったらそりゃ~気付かない筈はないよね~。

 

『艦隊警戒体制!シンジガ許可シタラ撃チ落トス!』

 

らめぇーーーえ!!

 

撃ち落としちゃダメー!!

 

なに喧嘩を売ろうとしてるんですかハロさん!?

 

『喧嘩ハ気合イト先制パンチ!』

 

 

「喧嘩じゃねえ! 戦争になるわ! アンタは本当にハロか!?」

 

『チェッ』

 

「かわいくねーー!!」

 

 

恐いよハロ。 ん? ピンクのハロ?

 

『ミトメタクナーイ!』

 

あっ逃げた…

 

 

 

何で種ハロが混ざってるんだ?

 

 

 

…今はそれよりもお客さんの対応か。 通信機能付きの執務机が有るのを思いだし、踵を返して戻る事にした。

 

 

 

 

執務室へと戻り、椅子に腰掛けても直ぐには通信を開かずに、先ずは身嗜みを整える。

 

長めの癖毛を手櫛で撫で付け、朝方にハロが着替えとして用意してくれた一年戦争当時の連邦軍士官服の皺を伸ばして深呼吸…

 

どう対応するか考えてはいないが、出ないわけにもいかない。 こうなったら行き当たりばったりの当たって砕けろだ! いつかは接触しなきゃならん相手だ。

 

震える指でコールボタンを押して通信担当のハロを呼び出す。

 

 

『ハロ?』

 

「コロニーに近付いてるアメリカと日本の艦に通信を繋いでくれ、…待った! 先ずは受信だけして相手の通信を聞かせてくれる?」

 

『ハロ!』

 

ザッザザ…

 

 

…れ々はアメリカ合衆国宇宙軍所属艦・リバティプライム。 貴殿らはアメリカ合衆国の宙域を侵害している。 先ずは通信を開いて此方との話し合いに応じて欲しい。 我々に敵対の意思は無いので信用して頂きたい。 繰り返す…

 

 

ザッザザ…

 

 

 

…は日本帝国宇宙軍所属艦・アシガラ。 貴方達は日本帝国の警戒宙域に入っている。 事情聴取の為、先ずは通信回線を開いて話し合いに応じて欲しい。 また此方には敵対の意志が無い事を日本帝国政府が保証する。 賢明な判断を期待する。 繰り返す…

 

 

「ポチっとな」

 

 

通信を一旦切り、机に両肘を突いて組んだ両手で口元を隠すポーズで考える。

 

領宙侵犯してたか… こりゃ不味い。 攻撃されても文句は言えないのに、両国とも話し合いで対応したいと言ってきてるのは有難い。

 

確かコロニーには姿勢制御と移動用のバーニアが付いてたな? よし! 取り敢えず謝って直ぐに移動しよう。 罰金とか罰則が発生するなら、コロニー銀行に保管されている金塊と保存してある天然食料で許して貰おう。 ポチっと…

 

「ハロ。向こうと通信を繋いで」

 

『ハロ!』

 

 

 

「んっ、んっ! …此方はロンデニオン・コロニー管理者です。 アメリカ合衆国並びに日本帝国の方々、応答願います」

 

 

通信回線をオープンにすると相手の画像がウィンドウ内に表示された。

 

ぶっちゃけそこら辺の規格が合うのに少し驚いたがそれは置いておこう。

 

ウィンドウ内の画像は2つ。 アメリカと画面の隅に表示されている画像にはブロンド長髪の渋めの男性が、日本帝国と表示された画像には口髭がダンディズムを誘うナイスミドルな男性が映し出されていた。

 

「初めまして。 私は当コロニー、ロンデニオンの管理者でシンジ・フジエダと申します。 以後、宜しくお願い致します」

 

先ずは挨拶を。 名乗りを逆にしたのはちょっとした誤魔化しだ。 これなら日本人のような日系人のようなで相手も判断がつけにくいだろう。

 

因みに会話は英語だ。

 

「初めまして、私はアメリカ合衆国宇宙軍所属、リバティプライムの艦長を勤めるジョン・イーストウッド大佐です。 この度は通信に応じて頂き感謝致します」

 

えらく柔らかな物腰のアメリカ軍人さんが敬礼してくれる。

 

「自分は日本帝国宇宙軍所属、アシガラの艦長を勤めております坂田 弥彦大佐であります。 通信に応じて頂き感謝します」

 

これまた実直そうな帝国軍人さんがビシッと敬礼してくれる。 此方も敬礼を返さないと不味いかと思ったので敬礼してみる。

 

「お勤めご苦労様です。 え~あなた方の宙域に私どもが入ってしまったというお話ですが?」

 

「…あぁソーリー。 あなた方…ロンデニオンコロニーでしたかな?」

 

「はい」

 

イーストウッド艦長が俺を少し驚いた表情で見ていたが直ぐに元に戻った。

 

「ロンデニオンコロニーはアメリカ合衆国の管理する宙域に侵入しております」

 

「失礼。日本帝国の宙域にもです。 正確には両国の宙域境界線の上を跨ぐ形ででありますが…」

 

わーい。 どんだけミラクルな領宙侵犯なんだよ…

 

「すみません。 直ぐに移動しますんで攻撃は勘弁して下さい」

 

土下座したくなる気分を押さえて頭を下げて謝る。

 

すると二人の艦長は驚いたかのように目を見開き、俺を凝視している。

 

「ミスターフジエダ。頭を上げて下さい」

 

「そうです。我々が困ります」

 

「罰則ですか? 罰金ですか? ちゃんと払いますんで核ミサイルをぶち込むのは勘弁して下さい」

 

「「いやいや、いやいや」」

 

 

早くも俺の異世界人生終了か!?

 

「取り敢えず落ち着いて下さいフジエダさん。当艦にもアメリカさんにも攻撃の意思は有りませんから」

 

「そうですよミスターフジエダ」

 

おおう!? 何て寛大な軍人さんなんだ。 ゲームでは大半がピリピリした軍人さんばかりだったからミサイル撃たれるかと思ったよ!

 

「…すみません、取り乱してしまって」

 

「いや? 私は何も聞かなかったし見なかった。 坂田艦長もそうですよね?」

 

「…ええ。 私も知りませんが?」

 

人の情けが身に染みる…

 

 

「それで話を戻しますが、ミスターフジエダ? 取り敢えず今回は我々が幾つか質問をしますのでお答え願いますか?」

 

「…答えられる事ならば」

 

「有難うございます。 坂田艦長、申し訳ないが先に此方から質問させて頂きたい。 回線はこのままオープンにしますので我々の質問と同じ内容以外の質問は此方が終わった後で…」

 

「…よろしいので?」

 

「どうせ似たり寄ったりの質問でしょうから。 本格的な質問は後日、政府の役人が行うでしょうし…」

 

「…了解しました。 その方が時間の節約になってフジエダさんの負担も少ないでしょうし」

 

ええ人達や。 ええ人達すぎて安心したのか、腹が減ってきた。

 

 

「…そうだ。 お二人は食事はお済みで?もしまだでしたら当コロニーでご一緒にどうです?質問はその後に…」

 

少しでも相手の心象を良くするために食事に招待しよう。 いやさ、泊まっていって貰おう。

 

 

…いや正直、だだっ広いコロニーで独りで居るのも寂しいしね。 ハロが居ても人肌が恋しいのよ、こっちに来たばかりだし。

 

 

「それは…有難い申し出だが…坂田艦長?」

 

「ええ、…よろしいのでは? 本国も了承するでしょうし。 連絡は入れて置いた方が良いでしょうが」

 

イイ男二人がウィンドウ越しに顔を合わせて相談する姿は、そっち系の人が見たら喜びそうだな~。 ていうか、来てくれないかな~

 

 

「…了解いたしました。 ご招待をお受けします」

 

「此方もお邪魔させていただきます」

 

やたー!

 

「それでは迎えの船を出しますのでそれに付いて港にお入り下さい。 大したおもてなしも出来ませんが、食材の量は豊富に有りますので宜しければ手の空いた方もお越し下さい」

 

 

「有難うございます。 それでは後ほど…」

 

「失礼します」

 

「ロンデニオンコロニーは皆様のご到着を御待ちしております」

 

 

そこで一旦通信を切り、各々が食事会の為に動き出す。

 

コミュニケーションは大事だよね? いずれはこの世界の人々とも交流しなきゃならないんだから、遅いか早いかの違いだ。 …でもちょっとだけ早まったかな?とは思う。

 

まだこの世界の詳しい情勢とか分かんないけどさ、もしかしたら招待した艦の人達に拘束されたりするかもしれないけど、俺一人じゃ何も出来ないから、この世界の人達と一緒にやってかないと生き残るなんて無理だし…

 

いかんいかん。 ネガティブしたらポジティブに切り替えないとね。

 

「ハロ? お客様の迎えにサラミスを二隻行かせて? 後は…港に迎えの車も用意して… 俺もお出迎えするから玄関に車を廻しといて。 ハロ食堂も綺麗に掃除しといてね?」

 

『ハロ! 了解、任セロ!』

 

「宜しくね~」

 

 

 

 

 

 

アメリカ合衆国宇宙軍・リバティプライム

 

 

「…皆様のお越しを御待ちしております」

 

通信モニターの映像が途切れてブリッジが静寂に包まれる。

 

今まで対応していたイーストウッド艦長は敬礼を解くと、息をゆっくりと吐き出しながら艦長席のシートに体を沈めた。

 

目を閉じて少し項垂れる形になって黙考する彼に、傍らに立った美しい副官は声を掛ける。

 

「よろしいので?」

 

彼は姿勢を変えることなく、口元だけを僅かに歪める。

 

「構わないよ。 大統領からの指示は可能な限りの接触と情報収集だ。 政府の役人達も俺達が先駆けとしてロンデニオンコロニー内部に入った前例が有れば後々有利になるだろう。 逆にここで断って日本に一歩先に行かれるのは不味いだろうしな? もっとも日本もうちと同じだろうけど…」

 

 

そこで言葉を区切り、制服のポケットをゴソゴソと漁りストローの付いたチューブを取り出して口を付ける。

 

「…相変わらずこのチューブコーヒーは不味いな。 だいたい、コーヒーの旨みの元である香りが楽しめないのはナンセンスだ」

 

顔を歪ませながら飲み干したチューブをクシャリと握り潰してポケットに突っ込む艦長を副官は呆れた表情で見ていた。

 

「そんなにお嫌なら飲まなければよろしいのでは?」

 

「宇宙飲料でこれが俺にとって一番ましなんだよ」

 

先程までの冷静な態度とは打って代わり、子供の様に舌を出して悪態を付く艦長。

 

「…艦長。地が出ています」

 

「…ああー、向こうでは美味いコーヒーが飲めるといいな~。 …若い責任者だったな?」

 

「はい…」

 

「若くて大胆な奴なのか若くてバカなのか… どちらだと思う?」

 

「今はどちらとも…」

 

「俺の勘では… 止めておこう。 外れたら恥ずかしいしな。 クリス、君も食事会には来るんだ」

 

艦長に愛称を呼ばれて咎めるように目を細める副官。 しかし艦長はどこ吹く風と言わんばかりの表情をしている。

 

「…艦長、今は職務中です。 その呼び方はお止めください。 それに艦長がお留守の間は副官の私が…」

 

「たまには良いじゃないか従妹殿。 留守は航海長に任せる。 食事会なら花の一つもあった方が良い」

 

「しかし…」

 

困惑する副官を意地の悪い顔で見やる艦長と、副官の珍しい表情を静かに盗み見るブリッジクルー男性一同。

 

クルー達は心の中で艦長に賛辞を送った。

 

 

グッジョブ! と

 

 

 

「これは艦長命令だから。 おっ? エスコート役の到着らしい」

 

リバティの右側面をラベンダー色の船体が通りすぎ、後方でターンして並走する。

 

並走する艦、サラミス級は主砲のメガ粒子砲やミサイルランチャーの方向を上方一杯に上げて礼を示していた。

 

 

「これはご丁寧なエスコートでいたみいる。 …ん、何だ?」

サラミスのブリッジ付近にチカチカと発光しているものを見つけ疑問を浮かべる艦長。

 

 

「識別灯の点滅じゃない……? …の …後に…れたし…。 当艦の後に続かれたし、か… 発光信号とはまた随分と古風な事を」

 

 

先行しだしたサラミスの後を追い、リバティプライムはロンデニオンコロニーへと進み出す。

 

 

 

「これは…!?」

 

日本帝国宇宙軍所属艦、アシガラ艦長の坂田は驚きに声を詰まらせた。

 

ブリッジの窓から見える光景は予想以上で、港の設備やアシガラを曳航する武装が施された丸型の作業ロボット、港の奥に係留された多数の艦船に戦闘機とおぼしきものまで。

 

その全てがとてつもなく高い技術によって作られているのが見るだけで彼は理解出来た…いや、理解出来なかった。

 

ブリッジ内の誰もが彼と同じ驚きで目を見開いている。

 

この世界でも宇宙開発は活発で、今は放棄されているがBETAが来襲する前から既に月面基地等があり、地球の衛星軌道上にも国連の中継基地、ステーションがあるが、これ程のモノを宇宙で造り上げるのは彼らの技術では到底不可能であった。

 

坂田は考える。

 

もしも同規模、同レベルのモノが地球側に在るならば、各国の宇宙軍はどれ程に助かるだろうか?と。

 

 

そう坂田が思考の海に沈み込む間にも艦の係留作業は続き、港の奥に在る区画分けされた場所に運び込まれる。

 

アシガラの隣には同じく曳航されて来たアメリカ合衆国艦のリバティプライムの姿も見えた。

 

ボールが二隻の係留作業を完了させると、それを待っていたように区画入り口が分厚いゲートに塞がれ、それを見た両艦のクルーが焦りを見せる。

 

「おい! 後ろが…!?」

 

「閉じ込められた!?」

 

「落ち着け! 別に取って食われやしない!」

 

騒ぐ者たちに飛ばされた艦長達の叱責に一応の落ち着きを見せるクルー達。

 

しかしそれとは裏腹に、叱責した艦長達の心には疑惑の波紋が広がる。

 

“嵌められたか?”

 

フジエダの一見無害そうな見かけは擬態で、友好的な招きは此方を油断させて捕らえる為の罠であったのか?と…

 

 

 

 

五分後… その疑惑は解消される。

 

何故ならば、当の本人が宇宙服も着ずに彼らの目の前、係留区画に現れたからだ。

 

良く言えば柔らかい、悪く言えば締まりの無い笑みを浮かべて宙を馴れた動きで漂いながら二隻に近付き、背後には横断幕を付けた緑色の球体を従えての登場にクルー達は二通りの反応を示す。

 

一つは脱力。

 

単身丸腰で笑みを浮かべ、背後には“ようこそ☆ ウェルカム☆”と書かれた横断幕を見れば罠の可能性は無いと緊張を解かれた者。

 

 

もう1つは再度の驚愕…

 

宇宙艦二隻を収納してもまだ余裕のある広さの区画を、僅か5分程で空気が充たされたエアロック空間にするなど彼らの常識の範囲外だった。

 

 

「…そら恐ろしい程の技術力だな…」

 

坂田は艦長席で誰にともなく呟いた。

 

「…はい。 あの光学兵器といい、この港湾設備といい我々の科学と技術を遥かに超えております。 …彼等は何者なのでしょうか?」

 

呟きを聞いていた傍らの副長もまた、驚愕とも畏怖とも取れる感情に目を見張る。

 

「それはこれから追々と分かって行く事だろう…」

 

「向こうさんは話してくれますかね?」

 

「何となくだが、彼ならばある程度は話してくれると思う」

 

被っていた制帽を被り直しながら、なにかしら予感めいた感覚を坂田は覚えた。

 

「艦長の勘…ですか?」

 

「そうだな… 宇宙に上がってから私の勘も良く当たるようになったからバカにもできんぞ? …副長もお招きに預かるか?」

 

「よろしいのですか?」

 

艦長からの思わぬ申し出に喜色を顔に滲ませる副長。 それを見て苦笑を浮かべ、若さを感じた艦長は頷きながら席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

「ウェルカム☆」

 

いらはい、いらはいと何処から出したのか日の丸と星条旗の手旗を振り歓迎の意を身体中で表すフジエダを見て、彼女は頭痛を覚えた。

 

 

若くしてアメリカ合衆国宇宙軍 大尉を拝命した彼女、クリスティーナ・アンダーソンはこれ迄に様々な人物を見てきたが、彼の行動は理解に苦しんだ。

 

背は175cmの自分と同じ程でブラウンの瞳、童顔に癖のある黒髪。 それらの容姿とシンジ・フジエダと言う名前から日本人、もしくは日系人だと思われるのだが… 彼の行動は、彼女のイメージする日本人像に当てはまらない事に違和感を感じた。

 

 

確かに日本人らしい所作を感じるのだが、同時に日系人とは違うアメリカ人に近い感覚を覚えるのだ。

 

そんな風に彼女が違和感に気を取られていると、イーストウッド、坂田両艦長に挨拶を済ませた件の彼が彼女の目の前ににこやかな笑みで立ち止まった。

 

「はじめまして。 当コロニーの管理者をしておりますシンジ・フジエダと申します」

 

ペコリとお辞儀をする彼に釣られてぎこちなくお辞儀を返そうとした彼女は、はっとしてその場に直立不動になり鮮やかな敬礼をして見せる。

 

「失礼しました。 自分はリバティプライム副長のクリスティーナ・アンダーソン大尉であります」

 

彼女の動きに一瞬キョトンとした表情を浮かべた彼だが直ぐに笑顔になって右手を差し出してきた。

 

「よろしくお願いします」

 

「は、はあ… よろしくお願いします…」

 

彼女の白い手を握りブンブンと降って満足して手を離すと、他のクルーにも同じように挨拶していくフジエダ。

 

一通り挨拶を済ませた彼は、スイッチの付いたT字型の物を皆に配り案内を始める。

 

 

「ではご案内しますので、私のあとに着いてきて下さい。 先程お渡しした物はこう使います」

 

フジエダは人差し指と中指の間からT字の先端を出して、壁へと向けてるとスイッチを押した。

 

パシュッ。T字の先端から吸着盤の付いたワイヤーが射出されて壁に張り付いたのを確認すると、もう一度スイッチを押す。 すると今度はワイヤーが巻き上げられて壁へと引き寄せられて行く。

 

単純な発想の道具だが無重力状態の方向転換と移動には役に立ちそうな物に、その場に居た者は軽い感嘆の息を洩らした。

 

(…このような物を当然に使いこなす… 宇宙での生活がかなり長いと推測できるけど… 本当に何者なの?)

 

 

増していく疑惑に目を細めて彼を見つめるクリス。

 

 

しかし、当の本人がその疑惑を聞けば何時の間にやら身に付いた能力ゆえに苦笑しただろう。

 

 

 

 

移動ワイヤーで通路まで進んだ一行は、壁に設置された取手を掴んで牽引されるタイプのリフトを使用してフジエダの後を追う。 途中何度も振り返りながらハロの紹介や設備の説明を行い一行を退屈させないようにする心遣いに、大半の者がとりあえずの好感を抱いた。

 

 

そうして一行は港から車が用意されて載せられている巨大なリフトに移り下へと降りて行った。

 

「皆さんすみません 。 本当は一般用のエレベーターがあるのですが、数回に分けてお乗り頂くのも面倒かとも思いましてので搬出用のリフトにお乗り頂きました」

 

「お気になさらずに。 我々としましても珍しい物を多くみられましたので」

 

「そういって貰えると助かりますアンダーソン大尉。 代わりと言っては何ですが、ロンデニオンで一番の景色がもうすぐ見られますよ」

 

斜め下に滑り降りるリフトの下からゴウンゴウン!という重い音が鳴り出すと、周囲に設置された人口の照明とは違う自然光の明るさが下から漏れ出す。

 

リフトの側面と壁面との隙間から射す光は徐々に強くなり、やがてリフトの正面部分が下から開けてくる。 差し込む光に目が眩み、手を翳して光に目が慣れるまで待つフジエダを除くリフトに乗った人々は、飛び込んできた景色に本日一番の驚きを見せた。

 

 

 

眼下には緑豊かな古い街並みが運河のようなモノに挟まれて真っ直ぐに続き先が霞んで見える。 正面には白い雲が浮かび、白い鳥の群れが翼をはためかせている。 そして上を見上げれば眼下と同じような街並みが左右の斜め上に二つ、奥へと続いていた。

 

クリスは普段の彼女からは想像出来ない表情… 目を見開き口を開けた惚けた表情を浮かべていた。

 

幸いにも彼女の隙だらけの表情は誰の目にも留まる事は無かった。 他の者も皆、彼女と同じような表情で呆けていたからだ。

 

「どうですか? 良い景色でしょう?」

 

「…はっ!? しっ失礼しました」

 

「私も最初(昨日)見た時には驚きと感動で暫く動けませんでしたから」

 

呆ける彼女にこやかな笑顔でそうフジエダが語ると、

 

「いやはや驚きましたよフジエダさん」

 

「真空の宇宙に大地が…世界があるとは… すごいですよミスターフジエダ」

 

坂田、イーストウッドは驚きがまだ残る顔で近づき感想を述べる。

 

そんな二人の艦長とフジエダが談笑する姿を見てようやく冷静さを取り戻した彼女は、再び眼下の景色を眺める。 リフトと街並みの間には緩やかな傾斜の地面に森と草原に湖の景色が広がり、野を走る馬と湖で羽を休める白鳥の姿が見て取れる。

 

「このロンデニオンは、500万人の人が居住可能な古いコロニーです。 …気に入って頂けましたか?」

 

とある人物のお言葉を流用したフジエダの言葉に振り返る事無く、頷いて答えるクリス。 彼は彼女のそんな後姿を見て満足そうに頷いた。

 

 

日本とアメリカの軍人さん達をお招きしての食事会はつつがなく終了した。

 

食堂の料理とは言え天然食材100%の料理は、宇宙生活が長い方々に大変喜んで貰えたようだ。

 

そして今は食後のお茶を楽しみながら、お客様達の本題へと入ろうとしていた。

 

「うん…やはりコーヒーはこうでなくては…。 さて、それでは質問に入りたいのだが、よろしいかなミスターフジエダ?」

 

「ええ、いいですよ」

 

イーストウッド艦長が湯気の立つコーヒーをテーブルに置き、俺も湯呑みに入った緑茶をテーブルに置いて姿勢を正した。

 

 

丸いテーブルにはイーストウッド艦長、アンダーソン大尉と坂田艦長に彼の副長の小林大尉が着いて、他の方々は別のテーブルにて飲み物片手に此方の様子を伺っていた。

 

「まあ、そう固くならないで…。 それでは先ずは改めて氏名と年齢、所属組織と階級と役職を教えて貰えるだろうか?」

 

軽く頷き答える。

 

「シンジ・フジエダ。年は24才、所属は…ロンデニオン・コロニー。階級は無し、役職は当コロニーの管理者と防衛部隊の司令を兼任しています」

 

「ではロンデニオン・コロニーは何処の国家、もしくは組織に属するのですかな?」

 

「如何なる国家、組織にも属しておりません」

 

「…ロンデニオン・コロニーが当宙域に来た理由は?」

 

「BETAと地球人類との戦いに人類側への援助をする為です」

 

 

その後も幾つかの質問に、答えられる範囲で答えを返して行く。

 

 

 

 

 

 

 

「…それでは私たちの方からの質問は以上です。 後日、合衆国政府の担当の者がこちらにお伺いして改めてお話があると思いますので、その節にはよろしくお願い致します。 …坂田艦長からの方からは?」

 

その言葉に口髭を右の人指し指で一撫でして一瞬だけ思案しする坂田艦長。

 

そして彼は姿勢を正して俺に向き直り正面から見詰めてきた。

 

「では我々からも…よろしいですかな?」

 

「どうぞ」

 

「それでは… 率直にお伺いします。 貴方は本当に地球人類ですか?」

 

その言葉に周囲に居る誰かの息を飲む音が耳に届く。

 

「ええ。 地球人類です。 もっとも、地球上のどの国家にも戸籍や記録は在りませんが…」

 

少しだけ悲しさと寂しさが沸き上がる。

 

「しかし、これだけの技術とモノを個人所有する等とは…どちらも地球人のレベルとはかけ離れ過ぎていると思われますが?」

 

 

「そうでしょうね… しかし此方も参戦するにあたり、上から支給された物ですから何とも…」

 

「その“上”と言うのは明かしては頂けませんか?」

 

「申し訳ありませんが…」

 

坂田艦長に頭を下げながら断りを入れる。

 

俺自身が直接の面識が無い存在、神様の事を話せる訳がないし、聞いた所でこの世界の人達はいい顔はしないだろう。

 

 

「頭を上げて下さい。 どの組織にも機密の一つや二つは在りますよ」

 

「…ありがとうございます。 少しだけ話が逸れましたが、私は“人”です。  お疑いが晴れないなら、私の細胞を採取して検査して頂いてもかまいませんよ?」

 

「…それではお言葉に甘えて後程。 それでは次の質問を」

 

「はい」と答えて冷めた緑茶を少しだけ口に含み渇きを癒して質問に備える。

 

 

「このコロニーに入った時から気になっていたのですが、住人の方々はどちらに?」

 

「居ませんよ? このコロニーの住人は、私とハロだけです」

 

「!? 本当ですか?」

 

「はい」

 

坂田艦長を始め、皆が驚きの表情を見せる。

 

そりゃ驚くよね。 こんなに大きなコロニーに一人しか住んでないんだから。

 

ハロに皆の飲み物のおかわりを頼んで皆が落ち着くのを待つ。

 

 

程なくして飲み物が運ばれて来て、湯気と香り立つお茶を啜る。

 

やっぱ緑茶は落ち着くわ~

 

「このロンデニオンに一人で…。 よければ理由をお聞かせ願えませんかな?」

 

「理由ですか…。 いいですよ?」

 

 

頷き先を即す艦長から視線を逸らし、両手の中に遊ばせた湯飲みの中を見つめる。

 

「そうですね… 本来、上が直に介入しようとしたらしいのですが、無理だったので私が選ばれたという訳なんですが… 私は事故に巻き込まれて、故郷も家族も失くしていましたからちょうどいいと思ったのでしょうね。 私が一人なのはこの事に関わる人間を最小限にしたかったのでしょう。 私は二度と戻る事は出来ませんが、帰る場所も待つ人もありませんから…」

 

真実をぼかしながら淡々と答える。 緑茶の表面に写る自分の顔がやけに歪んで見た。

 

「…言い辛い事をお聞きして申し訳ない」

 

頭を下げてきた坂田艦長に「いいんですよ」と答えて緑茶を呷る。 苦味が際立つ…

 

それにしてもこうして話してみると、改めてあまりに怪しすぎる自分の存在に自嘲の笑みが抑えられない。

 

「ん?」

 

誰かの息遣いが耳に入り辺りを見渡すと、食堂に居る全員がかわいそうな人を見る目で俺を見ていた。

 

…なんぞ? なんか居た堪れなくなったので、話を続ける。

 

「まあ、そういう訳です。 上はBETAが地球人類を滅ぼそうとするのを阻止するために私とハロをコロニーごとこちらに送り込んだという訳です。 よろしいですか?」

 

色々と疑問が残るだろうが、今の俺にはこれ以上は話せない。

 

「ありがとうございました。 それでは我々からの質問はこれで終わりにします。 後日また、こちらからも政府の者がお伺いしますがよろしくお願い致します」

 

「了解です。 …あの、それでコロニーを移動させなければならないのでしょうか?」

 

「いいえ。 上からは危険がなければ、政府の者が改めてお伺いするまではこの宙域に留まって頂きたいと。 なお他国との無用なトラブルを避けるために、周辺宙域に警備の艦を配置させて欲しいと…」

 

「我々の方も合衆国政府より同じような指示を受けております。 周辺警備の許可を頂きたいのですが?」

 

ふうむ。 警備を建前とした監視だろうね。 当然の処置だし、こちらとしては地球との窓口代わりに使わせてもらおう。

 

「了解しました。 それで警備に就かれるのはもしかして…」

 

「はい合衆国からは我がリバティープライムが」

 

「日本帝国からはアシガラが警備に就かせて頂きます」

 

「分かりました。 皆さん…改めてよろしくお願い致します」

 

席を立ち、周りを見渡してから頭を下げると、二人の艦長を始めとする両艦のクルーが席を立ち「こちらこそ」 「はっ!」等の声と共に敬礼が返ってきた。

 

 

 

 

 

 

しかし仕事とはいえ、こんな宇宙のど真ん中に勤務とは大変だな…

 

二隻とも結構大きい艦だけど、乗組員の人達も軍人とはいえ閉鎖空間に長時間居ればストレス溜まるだろうし…

 

…おお、ならば!

 

人的交流の一環として、

 

「どうでしょうか? 此方の警備に就いて頂く間、ロンデニオンに滞在なされては?」

 

「はぁ。 それは嬉しい申し出ですが、よろしいのですかミスター?」

 

「ええ。 空いている部屋や家は沢山有りますし、大したおもてなしは出来ませんが、滞在中の住居やお食事はこちらから提供させて戴きます」

 

「それは嬉しいのですが、そういう意味ではなくて…」

 

「イーストウッド艦長は他国の者をそんなに簡単に招き入れても良いのかと気にしておられるのですよフジエダさん」

 

「もちろん構いません。 仮にあなた方が、本国からこのコロニーを制圧せよと命じられたらその時はその時で対処します」

 

「…ざっくばらんな方だ、貴方は」

 

その辺は考えればキリがない。 疑念だけでは物事は進まないしそこらへんを見抜く力が海千山千の政治家さん達に勝てるとは思わない俺は、こういうやり方しか出来ない。 

 

慎重になりすぎて、各国と揉めている間にも地上では人が死んでいく。 ならば、多少甘く見られようがこちらから出来るだけ歩み寄ろうと思う。

 

人間は俺一人だけの小さな勢力だ。 いかにハロが高性能で兵器の運用操作が出来てもそれだけでBETAに勝てるとは思えない。 やはり人手が必要だ。

 

「ただ面倒くさいだけだと思っているだけかもしれませんよ? …お二方にはアメリカ、日本へのメッセージを1つ頼みたいのですが?」

 

「分かりました」

 

「お伝えします」

 

「…ロンデニオンに地球人類と敵対する意思はありません。 その証拠にロンデニオンは地球各国からの求人と移住を考えております。 軍人、民間人合わせて500万人を予定しています。 詳細はまだ決まってはいませんが、難民の受け入れも前向きに検討しております。 また、協力して頂く人や国家にはロンデニオンが持つ、技術や兵器を提供する計画です。 詳細は出来次第にお知らせ致しますので、その節にはどうかご検討下さりますように」

 

 

 

さあ、新世界での俺の人生(たたかい)を始めよう。

 

 


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