インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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第111話 3学期開始!!

 

 冬休み明け、IS学園3学期登校初日。

 ホームルーム前の1年1組は、クラスメイト達の賑やかな声が響いていた。

 

「――――――という訳で、ホントもうヤになっちゃう。なんか知らない友達が沢山増えててさ」

「友達で済んでいるだけいいじゃありませんか。こっちなんて、お見合い写真が送られて来てるんですよ」

 

 その中の1人、相川清香が冬休み中の出来事を話し終えると、聞いていた四十院神楽からは、予想の斜め上を行く返事が返ってきた。旧華族出身という家柄故か、一般庶民には中々無い悩みだ。

 

「うわぁ。ソレ、どうしたの?」

「勿論断わりました。どの殿方も主体性というか、覇気の無い方ばかりで。逆に覇気のある方ですと、私ではなくISパイロットである事の方が重要みたいで」

「ソレも嫌な話だね」

「ええ。一夏さんくらい覇気があって優しい方だったら良かったのですが」

 

 四十院は何となく一夏を例に挙げたが、彼を世間一般の基準に当てはめると、顔良し、性格良し、頭の回転も悪くなくて、運動神経抜群、挙句姉はモンドグロッソ優勝者という、所謂超勝ち組の部類だ。

 そんなものを基準にされては、勝てるお見合い候補など殆どいなくなってしまう。

 

「そうだね。私も久しぶりに家に帰ったらさ、なんか中学の時に仲良かった男子に迫られちゃった」

「まぁ、大丈夫でしたか?」

「うん。ちゃんと断ったから。でもなんか幻滅しちゃった。昔はさ、サッカー部のキャプテンで凄い恰好良く見えたんだ。そして高校では強豪校のエースストライカー。確かに凄いんだけど、なんか媚び媚びなのが見え見えで」

「例えば?」

「帰省したらすぐにね、「遊ばない?」ってメールが来たんだ。仲良かったから二つ返事でOKしたの。そしたら―――」

「そしたら?」

「何人かのグループで遊びに行ってたんだけど、気付いたらいつの間にか2人きり。挙句、「実は俺、昔からお前の事が」なんて言われちゃって」

「あら。それは、ちょっと。もう少し雰囲気というか、労わりというか、気遣いが足りませんね」

「でしょ!! だから丁寧にお断りして、帰ってきちゃった。そっちはどうやって断ったの?」

「こっちは正攻法です。「未だ学生の身。まだまだ学ぶ事がありますので、殿方にうつつを抜かしている暇はありません」と言って」

「なるほどね。――――――ところで話は変わるけど冬休み中って、一夏君、結構テレビに出てるよね」

 

 冬休み中、一夏にはテレビ出演の依頼が相次いでいた。

 元々ISを動かせる男として有名なので、こうした話があるのは、そう不思議な事でもない。

 だが出演依頼の理由は、彼が1年前にISを動かせる男として、世に出た時とは大きく違っていた。

 1年前は、あえて悪い表現をするなら客寄せパンダだ。

 男でISを動かせるという物珍しさが1番の理由だった。

 しかし今は違う。

 NEXTの直弟子であり、セカンドシフトしたシルバリオ・ゴスペル(銀の福音)をほぼ単機で撃破し、キャノンボール・ファストでは他国の代表候補生と互角以上に渡り合っている。

 こうして目に見える結果を残している事に加え、日々のトレーニングで精神的にも成長しているのか、時折年齢以上の落ち着いた振る舞い見せるようになっていた。また世界で10人といないセカンドシフトパイロットであり、優しく他人への気遣いも出来るというのだから、人気の出ない方がおかしいだろう。

 ファンの数は順調に増え続け、出演した番組はいずれも高視聴率をマークしていた。

 更に付け加えるなら、同じテレビに出演した人達(特にアイドルや女優)からも評判が良く、それがまた別の出演依頼を呼び込むという形になっていた。

 

「見事な立ち振る舞いでした。クラスメイトとして鼻が高いです」

「そうだね。中学の時の友達から、色々聞かれちゃった。そっちは?」

「こちらもです」

 

 ある意味で当然の成り行きだが、帰省した1年1組の面々は、昔の友人達から晶や一夏の事を色々と聞かれていた。

 1番多かったのは携帯番号やメールアドレスを教えて欲しいというものだったが、それはクラス内の取り決めで、教えない事になっていた。何故ならこの2人の番号、幾つもの予備が用意されていて、知らない人間からかかってくるようになったら速やかに変更されてしまうからだ。

 加えて言うとこの2人は多くの注目を集めている身でもある。情報漏洩した場合、どのルートから漏れたか調査されるという事は、クラス内では周知の事実だった。

 

「あと出ていると言えば、箒さんもだよね」

「確かに、よく見かけましたね」

 

 相川の言葉に、四十院は肯きながら答えた。

 篠ノ之束の妹にして、世界唯一の第4世代機ISパイロット。

 この絶大な知名度と比較して、今まで箒のメディアへの露出は意外と少なかった。勿論“比較して”というだけの話でそれなりに出てはいるのだが、本人の放課後の訓練を優先する姿勢から、知名度に比べれば少々少なめだった。

 だが冬休みともなれば、そうもいかない。

 メディアはここぞとばかりに出演依頼を申し込み、否が応にも露出の機会が増えていく。

 そして箒自身は余り意識していないが、彼女のスタイルは姉譲りのナイスバディである上に、容姿も整っている。更に美人にありがちな高飛車さが無いので、こちらも一夏と同様に出演者や視聴者からの評判が良く、それがまた別の出演依頼を呼び込むという形になっていた。

 

「でも一番出てたと言えば、やっぱり――――――」

「おはよう」

 

 相川がまた新しい話題を切り出そうとしたところで、話題にされようとしていた当人、薙原晶が教室に入ってきた。

 

「あ、おはよう」

「おはようございます」

「おはよう。テレビ見たよ~」

「しょーちん。オハー」

 

 クラスメイト達の挨拶に応えながら、室内を進み席に座る晶。するとクラスメイトの1人が近づき、相川が話題にしようとしていた事を口にした。

 

「ねぇ晶くん。ヨーロッパはどうだった?」

「一応、普通の観光のはずだったんだけどなぁ………何て書かれているのかな?」

 

 ぼやく様に答えた彼の視線は、クラスメイトの持つ雑誌に注がれていた。

 

「見たい?」

「余り見たくない」

「だーめ。見せて聞かせちゃう」

 

 言葉とは裏腹に戯けて答える晶に、クラスメイトも悪戯っぽく答える。

 そうして他人の口から自分の行いを聞かされた当人の感想は――――――。

 

(………どこの聖人君子の話だ? 美化され過ぎだろうに)

 

 というものであった。

 地下都市建造現場の視察はまだ良い。アレは束の計画で、代理として視察しただけだ。だが問題はその後だった。

 曰く、フランス訪問はIS委員会フランス支部の不正を正す為のカモフラージュだった。

 曰く、ドイツ訪問は不遇の子達を救う為の方便だった。

 曰く、イギリス訪問は画期的な警備システム提供の為だった。

 

 等々。

 

 正直本人からしてみれば偶然の産物以外の何ものでもないので、背中がこそばゆくて仕方がない。

 

「………まっ、信憑性は話半分程度かな?」

「本当に?」

「本当さ。よくある三文記事だろう。それよりもさ――――――」

 

 晶としては、記事にあるような正義感に駆られて行動した訳では無いので、適当に煙に巻くつもりだった。

 しかしそこに、クラスメイトの増援(欧州3人娘)が現れた。

 

「晶。謙遜は美徳って言うけど、謙遜のし過ぎは良くないよ」

「そうだな。恥じる事の無い行動なら、堂々と言えば良い」

「その記事の情報ソース。割と信用出来る筋ですわよ」

 

 丁度教室に入ってきたシャル、ラウラ、セシリアが順に口を開き、煙に巻く事を許してくれなかった。

 

「本当??」

 

 クラスメイトの目がキュピーンと光り、話に飛びつく。

 

「本当だよ。あんな事があったその日には、もう委員会本部が動いていたから。ね、晶」

 

 シャルの「あんな事」という言葉に、クラスメイトが身を乗り出す。

 

「子供達の事を知った後の行動も早かったな」

 

 続くラウラの言葉は、訪問時の苦労の意趣返しか、口元に僅かな笑みが浮かんでいた。

 

「頂いたアレですが、各方面から問い合わせが随分来ていますのよ」

 

 そしてセシリアの言葉で、クラスメイトが騒ぎ出す。

 

「ね、晶くん。「あんな事」のところを詳しく!!」

「引き取った子供達ってどんな子達?」

「セッシーにあげたものってどんなの!?」

 

 次々とされる質問に、晶は差し支えの無い範囲で答えていく。だがそんな情報でも本人の口から語られる言葉は、雑誌の推測混じりの情報よりも、遥かに詳細だった。

 そうして話している間にホームルームの時間となり、織斑先生が入ってくる。

 

「――――――全員、揃っているな」

 

 教壇に立った織斑先生が教室を見回して言い、更に続けた。

 

「まずは各々、冬休みを満喫してきたか? そしてISパイロットの卵として見られた感想はどうだった?」

「友達も親も喜んでくれました!!」

「知らない友達が沢山増えてた」

「だろうな。他には無いか?」

 

 生徒達の言葉に織斑先生が肯きながら答え、再び教室を見回す。

 すると――――――。

 

「街を歩いてると、知らない人に声を掛けられる事が増えたかな」

「友達が少し変わっちゃった」

「両親にお見合いを勧められました」

 

 飛び出した少々ネガティヴな発言に驚く生徒達。

 しかし織斑先生は、それを当然のものと受け止めていた。

 

「全員、今皆が言った言葉をよく覚えておくといい。良くも悪くも“力”は人を変える。そしてお前達は、その“力”を扱う人間になるという事を忘れるな。何か困った事があったら、誰かに相談してみると良い。話してみるだけでも、意外と状況というのは変わるものだ。無論先生達も相談に乗るから、何かあっても決して1人で抱え込まないように」

 

 冬休み前にも言っていた事だが、織斑先生は冬休み明けに話す話題として、真っ先に“人付き合い”の問題を持ってきた。

 これは彼女自身が世界最強(ブリュンヒルデ)と呼ばれ、その“名声”と“力”に引き寄せられるように、多くの人間が近寄ってくるのを経験しているからだった。無論、近づいてきた全ての人間が悪人という訳では無い。だが確実に、何らかの下心を持って近づいてくる人間もいるのだ。

 加えて言えば他者の悪意に引っかかり、誘惑に負けたISパイロットの末路も知っている。

 教師として、生徒達にそのような経験はさせたくなかったのだ。

 こうして、1年生の3学期が始まったのだった――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 3学期初日の夜。

 放課後の訓練を終えて自宅(束宅)に帰った晶は、ドイツで引き取った8人の子供達とテレビ電話で話をしていた。

 何か問題があった訳では無い。行っているのはコミュニケーションと現状確認。つまり、他愛の無いお喋りだ。

 そして話を聞く限り、更識の人間はキッチリ子供達をサポートしてくれているようだった。衣食住に始まり、学力や言葉で悩む事が無いように、家庭教師兼通訳まで用意してくれている。

 そうして話が一段落したところで、晶は銀髪の少女、クロエ・クロニクルに尋ねた。

 

「――――――ところで、後輩になる決意は変わらないのかな?」

 

 彼女は日本に来て直ぐに、IS学園受験の意志を示していた。

 そして流石は“遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)”と言うべきか。受験勉強をする時間など無かったはずなのに、見事主席合格を果たしていた。

 

「勿論です。貴方と束博士の役に立つには、IS学園に通うのが一番だと思いますので」

「お前の人生だ。俺達の役に立とうなんて、考えなくて良いんだぞ」

「助けてくれた人の役に立ちたい、というのはダメですか?」

「ダメじゃないが、お前の人生はお前のものだ。自分の為に使っても良いんじゃないかと思ってる」

「ならこう言いましょう。私は私の為に、御二方の力になりたいのです」

「………決意は硬そうだな」

「はい」

 

 ニッコリと笑うクロエを見て、晶は思う。

 IS学園に通いたいという話を聞いた時にも思った事だが、無人ISのパーツにされかけた少女が、ISパイロットになるべくIS学園に通う。何という皮肉だろうか。

 

(もしかしたら、止めるべきなのかもしれないか………)

 

 今まで幾度も思った事を、再び思う。だが同時に、彼女の人生は彼女のものという考えも脳裏を過る。そうして内心で迷った末、結局何時も通りの結論にたどり着く。彼女の人生は彼女のものという考えが勝ったのだ。

 

「分かった。これ以上言うのもヤボだろう。これから先、頑張れよ」

「勿論です」

「あと分かっているとは思うが、学園では俺が引き取ったと言う話は余り言わないように。嫉妬や妬みっていうのは恐ろしいからな」

「分かっています。“人”の怖さは良く知っているつもりですから」

 

 しかし彼女が引き取られた人間という話は、多少なりとも情報に通じていれば、比較的容易に入手可能な情報だった。

 引き取る際、正規の戸籍情報を得る為に表のルートを通したためだ(ただし、クロエが“遺伝子強化試験体”という情報のみ、ドイツ側が隠蔽した)。

 なので晶の言葉は、彼女が学園で余計な敵を作らない為の助言、という以上の意味は無かった。

 

「確かにそうか。愚問だったな。ところで――――――」

 

 そうしてこの後暫しの間、晶は引き取った子供達と雑談に興じるのだった。

 なお晶自身は知らぬ事だが、彼女達のサポートを任されている更識家は、彼女達を“人財”とみなしていた。何故なら皆、無人ISのパーツとして選定された人間だけあって、素養も悪くない上に、容姿もクロエ・クロニクルを筆頭に平均水準を大きく上回っている。加えて、命の恩人()に対して好意的という、およそ最も裏切り辛い感情の持ち主達だ。

 このため更識家では、彼女達が将来どんな分野に進んだとしても、潜在的な味方であり続けるだろうという予想が立っていた。

 そして裏切り難い優秀な味方の得難さを骨身に染みて理解している更識家は、彼女達を教育する事にした。

 

 ―――とは言っても、スパイやハニートラップの技術を仕込むという訳ではない。

 

 派遣している家庭教師達への命令は、「それぞれの長所を伸ばす形で、優秀な人材に育て上げろ」という至極真っ当なものだった。それだけで彼女達が社会に出た時、更識家は優秀な情報源を得る事ができるだろう。少々気の長い話ではあるが、先行投資するだけの価値はあると、更識家は判断していたのだった――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方の頃、IS学園の教師達は、新たな問題に頭を悩ませていた。

 

「彼女をどう扱いましょうか? 入学試験は首席合格。面接結果も申し分ありません。ただ、保護者が………」

 

 職員会議で来年度入学する生徒達のクラス分けが行われていたのだが、とある生徒のところで、会議が止まってしまったのだ。

 

「彼、ですからね………」

 

 ここIS学園では、保護者がどんな人物であれ(表向き)特別扱いはしない。将来ISという超兵器を扱う生徒達に、下手な特別意識を持たせないためだ。

 だが来年度入学するクロエ・クロニクルの保護者は薙原晶。束博士の切り札にして、卓越した指導教官。世界に10人といないセカンドシフトパイロットの内、2人は彼の指導によるものだ。

 そして教師とて人間だ。クロエへの指導が彼の耳に入り、万一「あの教師は大した事がない」などと言われたら、受けるダメージは計り知れない。そんな不安が教師達の脳裏を過ぎった時、織斑先生が口を開いた。

 

「皆が何を心配しているか、大体の想像はつく。ある意味で当然の心配だろうな。だがヤツは、我々が真っ当な教師である限り、口を挟んでくる事は無いだろうよ」

「千冬、理由を聞いてもいいかしら」

 

 諸事情(第84話)により、教師として赴任してきているナターシャが尋ねた。

 

「ヤツがその気なら、これまでにもっと我々(教師)に干渉しているさ。不当な扱いをしない限り、大丈夫だろう」

「なるほどね。でも、根拠としては弱いんじゃないかしら? 引き取った子が可愛くて、色々口を出してくるかもしれないわよ」

「アイツがか? ありえんな」

「そこまで言い切る根拠は何かしら?」

 

 ナターシャの切り返しに、千冬は何を今更と言った表情で返した。

 

「アイツは、こと戦うという一点において妥協しない。アイツにとって、パイロットになる事は戦場に立つ事と同じだ。だからもし可愛いと思って口を出してくるとしたら、手心を加えてくれ、ではなく、将来戦場で生き残れるようにもっと実力を伸ばしてくれ、という方向だろうな」

「なるほどね。下手な心配はするだけ損、ということね」

「そうだ。むしろ手心を加えて、例えば何かの窓口になってもらう、という話を持ち掛ける方が遥かに危険だな。もしも私の言葉が信じられないなら、自分でやってみると良い。結果がどうなっても、私は知らんがな」

「千冬がそこまで言うなら、下手な心配は必要無いんじゃないかしら」

 

 ナターシャが同僚達を見まわしながら言うと、それぞれが肯いていた。

 どうやら織斑千冬(ブリュンヒルデ)の言葉なら、とりあえず信じられるらしい。

 そうして彼女のクラスが1組に決まると、再び会議が進み始めた。しかしまた、別の生徒のところで会議が止まった。

 

「五反田蘭。入試結果は中の上。ただ背景調査によれば、一夏君と縁がありましたね。大丈夫でしょうか?」

 

 教師の1人が心配しているのは、一夏の関係者、という部分だった。

 一年前ならいざ知らず、今の一夏はNEXTの直弟子であり、他国代表候補生と遜色無い実力を持つセカンドシフトパイロットだ。そんな人間とコネクションをもっているというのは、良い事だけではない。嫉妬という感情は、時として容易く人を暴走させるのだ。

 

「もし彼女が一夏君との関係を自慢するようでしたら、速やかに注意するようにしましょう。それは決して、彼女の為になりません」

「それしかないですね。では次――――――」

 

 彼女も1組に決まり、再び会議が進んでいく。

 そして今度は、とある生徒(オリキャラ)の事が話題に上がった。

 

「リア・フェルト。中々面白そうな生徒ですね」

 

 山田先生の言葉に、別の先生が尋ねた。

 

「どの辺がですか?」

「お姉さんが探偵のせいかもしれませんけど、IS委員会支部の面接担当(※1)が、面白いコメントを残していますね」

 

(※1:IS学園入試の筆記・面接は各国の支部が担当している)

 

 その言葉に、他の教師達も手元の端末に視線を落とした。

 筆記テストの成績は中の中。面接結果も平均的。だが脅迫など非合法な事から身を守る方法や法的対処については、学生レベルとしては突出しているとあった。

 

「なるほど。姉の手伝いをしている内に、自然と身についたのでしょうね」

「こういう危機意識の高い生徒ばかりだと、我々も少しは楽なんですがね」

 

 別の教師が、ポロッと本音を溢す。

 だがそれも、ある意味で仕方のない事であった。

 IS学園に入学してくる生徒達は、ISパイロットの輝かしい一面に憧れて入学してくる者が多い。

 従って、こういう危機管理能力の高い生徒というのは、残念ながら少数派なのだ。

 例えるならアイドルに憧れる者が、アイドルの負の側面を余り意識しないのと同じ、と言えるだろう。

 そうして再び会議は進んでいき、クロエ・クロニクル、五反田蘭、リア・フェルトの3名は、来年度1年1組として入学する事が決まったのだった――――――。

 

 

 

 第112話に続く

 

 

 

 




PS:作者的3人の大雑把な分類
・クロエ・クロニクルは天才肌。教科書的な事は沢山知っている。
 でもちょっと世間知らず。
・五反田蘭は良くも悪くも一般人。
 ただ本人は気づいていないが、ISの機動制御については、それなりに才能あり。
・リア・フェルトは学力・体力・IS機動いずれも(現状では)平均的。でも雑学豊富。

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