龍の軌跡 第一章 BLEACH編   作:ミステリア

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どうも!ミステリアです!

まずはすいません。再び一ヶ月程間が空いてしまいました。

仕事の配置換えで今までやった事の無い仕事をやり、土曜日は普通に出勤。

日曜日や家に帰ってもくたくたで布団に倒れ込んで泥のように眠る日々。

正直、ネタは出来ているのに全く書けずに辛かったです。

なのでこのお盆休み(作者は14日~18日まで休み)で溜まったネタを全て出そうと思います!

明日か明後日頃に再び投稿する事をここに誓います!!

では、まずは一話目!どうぞ!!


第二十二話

――龍一郎サイド――

 

「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」

 

俺の発した単語に、一護さんだけでなく皆の表情が強張った。

 

最後の月牙天衝

 

一護さんが元五番隊隊長・藍染惣右介を倒す為に体得した力で、自らを斬魄刀と融合する事でその力を別次元のものへと昇華させることが可能となる。

 

しかしその力を一度発動させれば死神としての力の全てを失う代償を伴っているため、文字通り使えば死神としての『最後』を迎える技なのだ。

 

一護さんは過去にこの技を使い、一度は死神の力を失いはしたが、浦原さんやソウルソサエティの死神達の力によって死神の力を復活させ現在に至っている。

 

そして俺はこの力を卍解から派生した一つの形と位置付ける為に、卍解四式とした。

 

その必要性があったからだ。卍解のその先へといく為に。

 

「何故貴様はそんな危険なものをわざわざ創り出したのだ?」

 

戸惑いを露わにしたルキアさんが問う。

 

まぁ実際は俺が創り出した訳ではなく、原作に出たものに勝手に名を付けて位置付けたのだが、それを説明すると原作の事まで話さなければならなくなるので、敢えてそこには触れずにルキアさんの問いに答える。

 

「そうする必要があったんです」

 

「必要って?一体何にだ?」

 

眉を顰めて聞く恋次さんに俺は一拍の間を空けて口を開いた。

 

「禁解(きんかい)へと至る為です」

 

「禁解だと?」

 

「それがさっき言っていた他に存在するものの最後の一つという訳かい?」

 

俺の言葉に今まで口を閉ざしていた朽木隊長が声を出し、京楽隊長が確認をするように問い掛ける。

 

そんな京楽隊長に俺は頷いて「その通りです」と前置きをして本題に入った。

 

「禁解は卍解を遥かに超えた究極の解放形態です。その名前の由来は個人が持つには強大すぎる力だという事と、もう一つの理由から禁じられた解放。即ち禁解と名付けたんです」

 

「随分と大袈裟やな。それほどのものなんか?」

 

「そうですね。大体卍解壱式時の10倍位の戦闘力があります」

 

「卍解の更に10倍だと!!」

 

平子隊長に答えた俺の言葉に、日番谷隊長が思わずといった様子で叫ぶ。

 

「まぁ…その力を得るにしても得た後にしても、色々と厄介な制約などが存在するんですがね」

 

「先程貴公が言った禁じられた解放となった所以の、もう一つの理由とやらにその制約が関係しているのか?」

 

七番隊隊長・狛村左陣さんの鋭い質問に、俺は「問題は4つあります」と言って皆に見えるように親指を除いた四本の指を開いて見せた。

 

「一つ目は禁解を習得する条件が、卍解壱式から四式までを全て習得するという非常に難易度が高い点です」

 

それはつまり最後の月牙天衝も習得しなければならないという事だ。

 

その事に気付いた隊長達の顔色が若干だが曇りを帯びる。

 

唯一の救いは、あくまで条件が習得だという一点だ。力を発動さえしなければ死神の力を失うことはないのだから。

 

「二つ目の問題ですけど、これは禁解に限らず卍解弐式や参式にも当てはまる事なんですが、これ等全ての解放は特定の形態でなければ解放する事が出来ないという点です」

 

「…どういう意味だ?」

 

俺の説明に皆が要領を得ないといった表情で首を傾げ、ルキアさんがこの場にいる皆の意見を代弁して問いた。

 

そこで少し説明がざっくばらんだったかと反省した俺は、分かり易く噛み砕いて解説する。

 

「つまり卍解弐式や参式、そして禁解を解放するには、予め定められた特定の形態にしておかないと解放する事が出来ないんです。

現に先程恋次さん戦っていた時に、俺は卍解参式を解放する前に壱式を解放していましたが、あれはそうしなければ参式を解放する事が出来ないからです」

 

「そうか。確かに卍解状態でいる事に時間制限がある貴様にとって、わざわざ一度解放してから参式を解放し、限られた時間を削る行為にメリットは無い。

しかしそれを敢えてやったのは、そうしなければ参式を解放する事自体が出来ぬから…という訳か」

 

「そういう事です。ついでに言うと、定められた特定の形態は各々の斬魄刀によって違っています」

 

先程の戦いを例に挙げて解説する事で、ルキアさんを皮切りに皆の顔に納得の色がようやく見えたので話を次に進める。

 

「そして3つ目の問題が、禁解に至れる斬魄刀はある先天的な『素質』を持つ斬魄刀のみで、卍解壱式のように全ての斬魄刀がその境地に至れる訳では無いという事です。

そして4つ目の問題が、先程言った禁解が禁じられた解放と呼ばれる所以となった理由なんです」

 

取り敢えず一旦ここで話を区切り、何か質問はないかと皆に視線を向けたが、いよいよ話が佳境に差し掛かってきたのを察したらしく、皆が無言で俺の次の言葉を待っていたので、俺は口を開いた。

 

「まず4つ目の問題となる所以なんですが、実は禁解を解放すると斬魄刀の名前が変わってしまうんです」

 

俺のその一言に、動揺の波紋が広がる。

 

斬魄刀は死神自身の魂から生まれる。いわば自身の分身だ。そして名前とは己と斬魄刀との繋がりの証に他ならない。

それが変わるなど、己と斬魄刀の『個』を否定するのと同じ行為だ。

 

原作でも一護さんが言っていた。斬魄刀はそれぞれに名を持ち、意思を持ち、命を持っていると。

 

そしてその事を斬魄刀から名を聞いた者。つまり持ち主と斬魄刀とが一対一で行われる契約でもある始解へと至った者は、その事を十二分に承知している。その点から見てば皆の反応は当然といえば当然だった。

 

皆の目に険が帯びるが、俺は話を続ける。

 

「というのも、実は3つ目の問題でいった素質こそが、4つ目の問題の答えなんです」

 

「何なんだ?その素質ってのは?」

 

「『進化』ですよ」

 

一護さんの問いに俺は即答して解説を加える。

 

「禁解は『解』という字こそ付いてはいますが、実際は斬魄刀の力を『解放』する訳では無く、強制的に『進化』させて力を引き出しているんです」

 

「斬魄刀が進化だと?そんな事が……「じゃあ聞きますが、卍解弐式や参式等は卍解から派生した形態だと言いましたが、何故派生が起こったのか分かりますか?」」

 

戸惑うルキアさんに被せて問う俺に皆は虚を突かれた表情をして一瞬言葉に詰まったが、そんな中ですぐに答えを出した人がいた。

 

「成程。派生とは即ち進化の派生。斬魄刀自身が己の進化の先を探るべく、各々の能力に特化した様々な姿を試みた形態。それが卍解弐式・参式・四式ということか」

 

淡々と答えた朽木隊長に俺は「その通りです」と言って頷き、全てを纏める。

 

「禁解の正体が斬魄刀の進化の到達点だからこそ、進化の先を探った結果で生まれた卍解弐式から四式の体得が必須であり、進化の到達点だからこそ進化の素質が必要であり、進化をするからこそ斬魄刀の名前が変わってしまうんです。

そして禁解が可能な斬魄刀である進化の素質のある斬魄刀が誕生する確率は、約一万本に一本程だとされています」

 

「そらなんとも、確率の低い話やな」

 

溜め息混じりに平子隊長が吐き出し、浮竹隊長が「一ついいかい?」と前に出た。

 

「何ですか?」

 

「今白哉や君の言った通りだとすると、卍解弐式等も進化の素質を持っていなければ体得する事が出来ないのかい?」

 

浮竹隊長の問いに皆がハッとした顔になり、俺に視線を向ける。

 

そう。卍解弐式・参式・四式が禁解に至る為に様々な進化を試みた形態であるのなら、それらを体得する為には自らの斬魄刀に進化の素質が備わっている事が必要不可欠となる。

 

逆に言えば自らが持つ斬魄刀に進化の素質がなければ、体得する事は不可能だという事だ。

 

己の持つ斬魄刀にその素質が備わっているのか今現在判別する事が出来ない以上、隊長達が俺の答えに注目するのはある意味当然といえた。

 

しかし俺は視線の槍が刺さるこの状況で、努めて明るく答えた。

 

「確かに浮竹隊長の言う通り、卍解弐式等にも進化の素質は必要です。ですけど今此処にいる人達ならばおそらく卍解弐式か参式を体得する事が出来ると思います」

 

「何故それが言い切れる」

 

「皆さんが隊長格という実力者だからですよ」

 

明るく答えたのをふざけた態度と取ったのか、目に険が宿る日番谷隊長に俺は即答した。

 

「分かっているとは思いますが、皆さん達隊長格の実力は並の死神とは比べられない程に一線を画しています。それこそ普通の死神から見たら化け物と見られる程に」

 

現に恋次さんも真央霊術院時代に「隊長・副隊長レベルは化け物だ」と言っている。それ程に隊長格クラスは秀でた力を持っているという事だ。

 

俺の発した化け物の一言に幾人かが不快そうに顔を顰めるが、皆大なり小なり思い当たる節があるらしく否定せずに黙していた。

 

「それ程の力を持っている隊長格の斬魄刀なら、進化の素質を宿している可能性は充分にあると思います」

 

俺はそう断言した後に「尤も、禁解にまで至れるかどうかは分かりませんが」と濁して付け加える。

 

だがここだけの話。実は俺は前世で卍解弐式等を創り出した時に、一護さんや護廷十三隊で卍解を体得している人達に『卍解弐式や参式が使えたらこういう形態かな』と勝手に想像していたのだ。

 

この世界に来た最初の頃は、神の力が原作キャラにまで及んでいるのかどうか分からなかったので浦原さん達には言わなかったが、エルフィが隊長達に扱う事が可能だと断言した所をみると、どうやら神の力は俺だけでなく世界の事象にもかなりの影響を及ぼしているらしい。

 

閑話休題

 

「他に何か聞きたい事はありますか?」

 

「うん。こっちの聞きたい事は全て聞いたよ。有難う」

 

取り敢えず言うべき事は全て言ったので、俺はぐるりと皆を見て聞くと、代表して京楽隊長が礼を返してきたので、今度は俺が皆に聞いた。

 

「所で、俺の処遇はどうなったんですか?」

 

そもそも恋次さんとの戦いは、俺の力を見て処遇を決める目的もあった筈だ。

 

俺なりに全力で戦って、現段階での全てを出し切った。

 

たとえそれが少々情けない結果で終わったとはいえ、それを隊長達がどう取ったのかはやはり気になる。

 

俺の問いに平子隊長が失念していたといった口調で「あぁ。そうやったなぁ」と言い、苦い顔をした。

 

「一応お前がソウルソサエティに居る事は認められはしたんや。

尤も、副隊長相手に引き分けたお前の実力を認めた訳やのうて、四十六室のせこい思惑が主な理由やと思うけどな」

 

苦々しく吐き捨てる平子隊長に砕蜂隊長が「口が過ぎるぞ」と眼を鋭くする。

 

まあ、ソウルソサエティにおいて絶対的な決定権を持つ最高司法機関である中央四十六室に対してかなり無礼な事を言っているので、砕蜂隊長の反応は当然のものだとは思うのだが…。

それよりも思惑というお世辞にもあまり良い印象を感じさせない単語を使った事に俺は

引っ掛かりを感じた。

 

「思惑というと?」

 

「簡単な話や。卍解から派生した解放を使えるお前が危険でもあり、利用価値がある存在と見られたんや。そんで自分等の手の届く所に置いて監視していた方が得やと判断したんやろ。まぁ総隊長の爺さんは、お前をあまり危険な目に合わせとうなかったから、最後まで反対しとったみたいやけどな」

 

「成程」

 

砕蜂隊長の殺気混じりの視線を完全にスルーした平子さんの解説に、俺は表面上では苦い顔をして納得の言葉を紡いだが、内心では概ね予想通りかと頷いていた。

 

いきなり現れた得体の知れない敵の情報と、その敵に対抗できる力を持ち、隊長達を更に上へと至れる方法を知り、この戦いに自ら加勢を申し出ている俺は中央四十六室から見れば、葱を背負って鍋の中に入ってきた鴨のようなものだろう。

 

だがこの展開は俺の予想の範囲内だ。むしろ危険分子として俺を排除しようと動かなかった事に内心ホッと安堵する。

 

「それなら、俺はこのままソウルソサエティに留まるという事ですか?」

 

「あぁ、君は八番隊。つまり京楽の所で世話になる事になっている」

 

浮竹隊長の紹介に京楽隊長が「宜しくね」と朗らかに笑い、俺は「お世話になります」と頭を下げる。

 

「君の事は既に護廷十三隊全隊に報告が届いている。何か聞きたい事があったら、遠慮なく声をかけてくれ」

 

「とはいっても、どこの隊も十日後に起こる戦の支度で大童だ。訪ねるのは構わないが、邪魔だけはするなよ」

 

浮竹隊長の有り難い申し出に返事をしようとしたが、それよりも僅かに速く横から釘を刺した日番谷隊長の言葉に、俺は『やっぱりか』とニュアンスを含めて「はい」と返した。

 

「俺や一護に聞きたい事があるんなら早めに言うんやで。明日には俺と拳西とローズの隊は一護と現世に向かう事になっとるからな」

 

「えっ?一護さんだけじゃなくて、平子隊長達もですか?」

 

「あのバウスってのが、現世とソウルソサエティに一斉攻撃を仕掛けるって言っていたからな。現世にも戦力を送る事にしたらしいんだ」

 

「俺と拳西とローズは現世の地理にも明るいからな。それで選ばれたんや」

 

一護さんの説明を平子隊長が付け加え、俺は成る程と納得の意を示した。

 

確かに元仮面の軍勢(ヴァイザード)である三人の隊長達だけでなく、副隊長の吉良イヅルさ

んと檜佐木修兵さんは現世でバウントが活動していた時や、草冠宗次郎の一件の時に日番谷隊長を捜索に行ったりと、現世に行った経験は恋次さんとルキアさんには僅かに劣るが、それに次ぐ程に豊富だ。

 

現世に派遣される任務ならば、正に最高のメンバーを選んだといえるだろう。

 

「で、何か聞いときたい事はあるか?」

 

再度聞く平子隊長に、俺は「いえ。特には無いです」と返した。

 

「さて、聞きたい事は全て聞いたし、我々はそろそろ戻ろうか」

 

「そうだな。戦の支度にかからないといけねぇしな」

 

全ての話が一段落した所で呼び掛ける浮竹隊長に、日番谷隊長を筆頭に皆が首肯した後に砕蜂隊長、ローズ隊長、朽木隊長、六車隊長は無言で部屋を出て行き、一護さん、浮竹隊長、ルキアさん、恋次さん、平子隊長、狛村隊長はそれぞれ俺に短く一言かけて部屋を出た。

 

そして最後に京楽隊長が「後で暇を見つけて迎えに来るよ」と言って退室し、部屋の中には俺とエルフィのみとなった。

 

「さて・・・・・・と」

 

「どうするつもりだ?」

 

「どうするって?」

 

人目が無くなったのを確認し、大きく伸びをして体を解している所に聞いてくるエルフィに俺は問い返した。

 

「龍。汝は分かっている筈だ。今のままの力ではあのバウスには勝てないという事を」

 

「だろうな」

 

あっさりと認めるのが分かっていたのか、エルフィは動揺の欠片も見せなかった。

 

現時点の段階で、俺が才牙で使えるの最強技であるエクセリオンブレードのゼノンウィンザードを不意打ちでぶつけても、バウスの冥力壁を破ることが出来なかった以上、1対1でまともにぶつかれば敗北は必至だ。

 

「ならばどうするつもりだ?現状の段階でバウスとぶつかるのは、無茶を通り越して無謀だぞ」

 

「そんな事は百も承知だ。だからバウスが来るまでの間に鍛錬を積んで強くなる」

 

「目星はついているのか?」

 

胡乱な表情をして聞くエルフィに俺は大きく頷いた。

 

「さっき恋次さんと戦う時に使った『遊び場』で鍛錬をしようと思ってる。あそこなら充分な広さがあるから、影分身の術で四体の分身体を出して、全ての才牙を練習する事が出来る。それぞれが距離を取れば、ボルティックアックスを振るっても多分大丈夫だろうしな」

 

思っていたよりもしっかりした考えを持っていたのが意外だったのか、エルフィは「ほぅ」と感心の呟きを漏らしたが、直ぐに欠点を指摘してきた。

 

「だが1人だけで鍛錬をするのは、お世辞にも効率の良いやり方とは言えないぞ」

 

「分かっているさ。だから各隊の実力者達の中で、比較的才牙に近い斬魄刀を持つ人から教えを乞いたり、鍛錬として実際に戦ったりする。

写輪眼を使えば自分の動きとするのも割と早く出来るしな」

 

「影分身と写輪眼を平行して使うのか?疲労が凄まじい事になるぞ」

 

「短期間で強くなるには多少の無茶は必要だろう」

 

きっぱりと言い切った俺を見て、エルフィはやれやれといった様子で吐息を吐き、「無理が度を過ぎたら、我は迷わずに止めるぞ」と告げる。しかしどうやら反対意見は無いようだ。

 

取り敢えず相棒の許可(?)を貰った俺は左掌に右の拳を打ち込んで、「よしっ!」と今後の鍛錬に向けて自らに気合いを入れたのだった。

 




次から5~6話程、ソウルソサエティでの修行編となります。

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