龍の軌跡 第一章 BLEACH編   作:ミステリア

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ふっかぁぁぁぁぁつ!!!!

何が復活かというと、実は前話の投稿をしてから数日後に某ウイルスに感染して入院していたのです。

そして退院するのに実に半月。

更に入院生活で垂直落下したテンションとモチベーションをなんとか上げるのに約10日。

そんなこんなでやっと書いてこの話を投稿したら約一ヶ月以上経過してしまいました。

作者の心情を顔文字で表すと Σ(゚△゚υ)!! という感じです。

今後はこの遅れを取り戻すべく頑張ろうと思います。


第二十話

――エルフィサイド――

 

「卍解…参式だと…」

 

目の前で起こっている事が信じられないとばかりに、我の横にいる黒崎一護が目を見開いて掠れた声で呟く。

 

周りの隊長格に視線を移すと、皆も黒崎一護と同じ心境らしく大小の違いはあれど驚愕の表情を浮かべていた。

 

戦いの場にいる2人は我等の視線など全て無視し、ただ互いに目の前の相手と向き合っていた。

 

そして阿散井恋次が卍解し、それと同時に龍一郎が先程よりも遥かに速く瞬歩で阿散井恋次の懐に入り込み、右のボディアッパーを腹部に叩き込む。

 

その一撃に阿散井恋次の身体が宙に舞うが、彼の者は即座に空中で霊子の足場を形成して体勢を立て直し、巨大な蛇の骨を思わせる蛇尾丸を振るって反撃を仕掛けた。

 

しかし龍一郎は襲ってくる大蛇を縫うように瞬歩で移動して再び阿散井恋次の懐に入り込み、彼の者の鳩尾に右のストレートを打ち込んだ。

 

「ぐはぁっ…!」

 

人体の急所に拳が突き刺さり、呻きと共に阿散井恋次の身体がくの字に折れ曲がり動きが止まる。

 

そして龍一郎はその隙を逃さず、自らの体重と霊力を込めた左のハンマーフックを人体急所のこめかみに叩き付けた。

 

その一撃をまともに受けた阿散井恋次は一直線に大地に向かって落下するが、地面に叩きつけられるよりも僅かに早く空中で身体を捻って体勢を立て直し、地に掌を付きながらもなんとか着地する。

 

一方龍一郎は攻撃の手を緩める事無く、追い討ちをかけようと霊子の足場を蹴って瞬歩で一気に接近し、突進の勢いを乗せた右ストレートを打ち込む。

 

だが阿散井恋次もそう何度も攻撃を通してくれはしなかった。狒狒王蛇尾丸を操り、その巨大な刃節を盾のように眼前に掲げて龍一郎の拳打を受け止める。

 

龍一郎は自らの一撃が防がれたと見るや、阿散井恋次の反撃を警戒したのか再度瞬歩を使い、大きく後ろに下がって間合いを取った。

 

この間、龍一郎が卍解参式を解放して僅か数秒程の出来事だった。

 

「速い」

 

「卍解した一護と同じ位のスピードやな」

 

「何なんだあれは…」

 

龍一郎の動きを見て六車拳西と平子真子が冷静に分析し、日番谷冬獅郎が呆然として呟きを漏らす。

 

「あれは龍一郎が卍解を起点として派生させ、想像し造り上げた新たな解放形態の一つ」

 

「想像し……造り上げたやと」

 

日番谷冬獅郎の疑問に答えた我に、平子真子が目を剥く。

 

それから刹那の間を置き、龍一郎と阿散井恋次の霊圧を込めた一撃がぶつかり合い、大気を震わせた。

 

我は二人の戦いに視線を送りながら話を続ける。

 

「正確に言えば、龍一郎が想像した物を神がその力によって実際の形としたのだがな」

 

「恐ろしいもんやな。神の力っちゅうのは」

 

平子真子が溜め息混じりに吐き出すのを見て、神の事を誤解しても困ると思った我は「一つ言っておくが」と一応補足しておく。

 

「いくら神といえど世界の理を曲げる事は不可能であり、存在させる事が出来ないものを生み出す事は出来ない。

逆に言えば、神の力を使ったとはいえ生み出す事が出来たという事は、世界の理を曲げる行為ではないという事だ」

 

「ちょい待てや。ちゅう事は…」

 

我の言いたい事が理解できたらしく、平子真子の顔色が変わる。

 

否、平子真子だけではない。倒し甲斐のある相手を見つけたと言わんばかりに爛々とした目で龍一郎を見る更木剣八を除いた全ての隊長格達が我に視線を向けていた。

 

その隊長達に我は無言で首を縦に振って纏める。

 

「つまり龍一郎が今使っている卍解参式を、汝等も解放し扱える可能性があるという事だ」

 

「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」

 

「言っておくが、我は卍解参式について詳しい事はあまり知らない。聞きたい事があるのなら、後で龍一郎に聞く事を進める」

 

皆が一斉に聞きに来るのを察して機先を制して釘を刺しておくと、皆は無言で何か言いたげな眼をしていたが、やがて龍一郎の戦いに視線を移していった。

 

襲い来る大蛇を躱して懐に入り込もうと接近する龍一郎に対し、阿散井恋次は先程まで見失っていた龍一郎のスピードに慣れてきたのか、蛇尾丸を的確に操って接近を拒んだり、瞬歩で下がって間を開けたりとほぼ互角の戦いを繰り広げていた。

 

「持久戦になりそうだな」

 

「だけど気になるねぇ」

 

「何がだ?」

 

浮竹十四郎が呟いた後に僅かに間を空けて口を開いた京楽春水に、日番谷冬獅郎が問う。

 

「いや、確かに龍一郎君は凄いと思うよ。…でも、なんだか酷く焦っているように見えるんだよね」

 

そう言って京楽春水は我に視線を向ける。

 

「エルフィちゃん。ひょっとして彼の卍解には時間制限があるんじゃない?」

 

「何故そう思う」

 

問いを問いで返す我に、京楽春水は確信を持った表情をして語る。

 

「彼はまだ未熟だ。そんな彼が莫大な霊力を消耗する卍解や、その卍解から派生した形態を使って無事で済む訳がない。となるとなんらかの制限があると考えた方が自然でしょ。

そして今の彼の焦りを感じる程の強引な動きを見ると、制限時間があると仮定すれば全部しっくりくるんだよね」

 

京楽春水の推理に、我は軽く目を開いて驚いた。

 

確かに京楽春水は軽薄な振る舞いとは裏腹に、思慮深さと他に勝る者は無いといわしめる程の鋭い心眼を持つとは聞き及んでいたが、成る程。噂に違わぬ強者という事か。

 

「で…どうだい?」

 

(別に特別隠そうとはおもってはいなかったのだがな…)

 

京楽春水の催促とも取れる問いに、我は吐息を一つ吐いて心の中で前置きをして首を縦に振った。

 

「その通りだ。龍一郎は卍解した状態で戦える時間が限られている」

 

「それは大体どれ位だい?」

 

「今の龍一郎では約30秒弱といった所だ」

 

「それは随分と短いねぇ」

 

「あぁ。あと十秒ほどで限界の筈だ」

 

網笠を目深に被り直して呟く京楽春水に、我は頷いて龍一郎に視線を向けた。

 

 

――龍一郎サイド――

 

(…まずいな)

 

刻一刻と迫るタイムリミットに、俺は焦りを露にしていた。

 

卍解したことによって増したスピードと、写輪眼の動体視力のお蔭で恋次さんの攻撃をなんとか避けれてはいるが、まともに攻撃を当てれたのは卍解参式を解放した時に動揺してうまれた隙を突いた最初の時だけだった。

 

とはいっても、あれから恋次さんの懐に入り込めなかった訳ではない。

 

懐に入り込んだ俺を恋次さんが上手く対処していたから、手が出せなかったのだ。

 

恋次さんの卍解。狒狒王蛇尾丸はその巨体と長さ故に小回りがきかず、接近すればするほどその巨大さが返って邪魔になって接近してきた相手に対しての行動にワンテンポの遅れが生じ、それが隙となる。

 

現に恋次さんは破面№15(アランカル・クインセ)イールフォルト・グランツとの戦いの時に、霊力を制限されての状態とはいえ同じ戦法で簡単に一太刀入れられてしまっている。

 

その点から見ても俺はかなり有効な戦法と考え、当初から接近戦を仕掛けていた。

 

………しかしその考えは甘かった。

 

接近して攻撃を仕掛けても、懐に入り込んだ瞬間にカウンターの膝蹴りを繰り出してきたり、円閘扇や斥などの鬼道で壁を作り出したりと、接近戦を仕掛けてくる相手に対しての対処が非常に上手く出来ていた。

 

考えてみれば、イールフォルト・グランツとの戦いから年単位の月日が流れている。恋次さんもその間に鍛錬を怠らなかっただろうし、自らの欠点を補おうとだってする筈だ。

 

戦う前にそこまで予想しておかなかった事に内心歯噛みしたが、今更そう思っても事態は好転しないと俺は即座に頭を切り替えて、咆哮を上げて襲い掛かってくる蛇尾丸を避けながら策を巡らせる。

 

(中~遠距離戦は論外。接近戦も難しい。おまけに卍解状態でいられるのはあと僅か。となると……)

 

思案を巡らせ俺の頭に浮かんだのは、到底策とはいえない一か八かの賭けといった方策だった。

 

だが時間が限られている今。恋次さんに一撃を入れられる手は他に思いつかず、俺は危険を承知で策を実行に移した。

 

噛み裂こうと口を一杯に開けて襲い来る蛇尾丸に対して、俺は敢えて避けようとせずに顎を引いて若干前屈みになり、顔の高さに拳を構える。

 

脇を締めて軽く握った右拳を顎に添えるように付けて左拳を前に出し、その左拳と対となすように左足を軽く一歩前に出して体を半身にする。

 

俺の最も得意とする構え。ボクシングの右構え(オーソドックススタイル)だ。

 

本来ならこの後、足を爪先立ちにしてフットワークを使うのだが、今回は違う。

 

フットワークは使わずにその場に足を止め、後方にある右足に向いている重心を前に出ている左足に乗せて体重を込める。

 

卍解の莫大な霊力を顎に添えている右拳に込めて、その右拳の手首を捻って『溜め』を作り、襲い来る蛇尾丸の鼻先に右のストレートを放つと同時に『溜め』を解放し、内側に錐揉み状に肘から拳を一気に回転させながら打ち込んだ。

 

俺の一番自信のあるパンチ。コークスクリューブローだ。更に言えば重心を前に置いて体重を乗せている為、通常のコークスクリューブローよりも破壊力は遥かに上回っている。

 

後続打が打てないという欠点はあるが、その攻撃力は俺の使う全てのパンチの中で一、二を争う程だ。

 

ガガァァァン!!!!

 

拳と大蛇が凄まじい音を立ててぶつかり合い、火花を散らす。

 

俺と恋次さんの力が拮抗し、まるで時間が止まったかのようにお互いの動きが一瞬静止した。

 

そして刹那の間を置き――

 

「おおぉぉぉっ!!」

 

咆哮と共に一気に拳を振り抜き、俺は大蛇を文字通り殴り飛ばした。

 

「なっ!」

 

打ち負けるとは思っていなかったのか驚愕する恋次さんに、俺は不敵な笑みを浮かべた。

 

確かに霊力の大きさも霊圧の質も、全てに置いて恋次さんは俺を上回っているが、それも工夫次第で打ち破ることが出来る。

 

一点に力を集中させて攻撃した俺と、普通に攻撃してきた恋次さん。どちらが上かは明白だ。

 

だがこの程度の小細工で恋次さんに一撃入れることなど到底出来はしない。

 

あくまで俺が狙うのは恋次さんが『あれ』を使うその時。今の攻防はその準備段階に過ぎない。

 

俺は不適な笑みのまま、無言で恋次さんに手招き(掌を上に向けて行うブ○ース・リー方式)をして挑発する。

 

それを見た恋次さんは一瞬虚を突かれた様な顔をしたが、直ぐに口角を上げて歯を剥き出しにして笑みを見せた。

 

しかし俺は見逃さなかった。恋次さんのそのこめかみにしっかりと青筋が浮かんでいるのを。

 

「…上等じゃねぇか」

 

低く唸る様な。それでいてよく通る呟きを発し、恋次さんは蛇尾丸を操って殴り飛ばされて崩れた体勢を立て直し、蛇尾丸に力を込め始めた。

 

すると骨を彷彿とさせる蛇尾丸の刃節と刃節の間を繋ぐ恋次さんの霊圧が強く輝き、蛇尾丸の口内に赤い光が灯る。

 

(来た!!!)

 

俺は狙い通りの展開に内心ガッツポーズをとり、あくまで表面上は不敵な笑みのままで地を蹴って瞬歩で恋次さんに向かって一直線に突っ込んでいく。

 

そんな俺を恋次さんは『へっ』と鼻で笑った後に、蛇尾丸の口内に溜め込んだ力を解き放った。

 

「甘ぇぜっ!!狒骨大砲!!」

 

蛇尾丸の口から放たれた赤い光線が真正面から迫り来る。

 

だが、俺はこれを待っていた。恋次さんの最強の攻撃。狒骨大砲を放つこの時を。

 

俺は駆ける足を緩めることのないままで、霊圧を限界にまで高めて吠える。

 

「卍解!!弐式!!」

 

咆哮と同時に俺の体が青い霊圧に包まれ、それが風圧にかき消されるかのように晴れた時、俺の出で立ちは再び変化していた。

 

動議と袴は普段の服装へと戻り、胸部と両腕と両肩にあった漆黒の防具と鉄甲は消え去る。そしてそれらに変わり、俺の手には一振りの刀が握られていた。

 

しかしその刀はただの日本刀ではなく、刀身の長さが4尺(約120cm)にもなる『物干し竿』と呼んでも差し支えない程の大太刀だった。

 

(…いくぜ)

 

俺はその大太刀を頭上に振り上げて上段に構え、霊圧を高め、刀身に力を集約し――

 

「はぁぁっ!!」

 

恋次さんの放った迫り来る赤い光線に振り下ろした。

 

大太刀が赤い光線を断ち切り、一筋の光が二つに分かれる。

 

これが俺の考えた博打ともいえる策。

 

恋次さんの最強の技である狒骨大砲を真っ向から潰し、返す刀で恋次さんに一撃を当てる。

 

無謀とも思うだろうが、活路だと思っていた接近戦も困難な以上、少ない時間の中で恋次さんに一撃を当てるにはこれしか方法が思い浮かばなかったのだ。

 

最強の技である狒骨大砲を真っ向から潰せば、恋次さんに精神的な動揺を与えれる可能性は非常に高い。

 

更に言えば多量の霊力を消耗する技を放った後ならば、恋次さんの動きに僅かでも鈍りが生じるのではないかと思ったからだ。

 

だから俺は恋次さんに狒骨大砲を撃たせる為に態と蛇尾丸と正面で攻撃をぶつけて打ち勝ち、挑発したのだ。

 

正直この時点で恋次さんが挑発に乗ってこなかったら、俺の考えた策は全て水泡に帰していたのだが、それは杞憂に終わった。

 

尤も、喧嘩に命をかけている十一番隊に一時的とはいえ入っていた恋次さんならば乗ってくると確信は持っていたのだが、それでもやはり不安は付き纏っていた。

 

そして恋次さんが狒骨大砲を撃つ為に霊力を溜め始めたのを確認し、俺は瞬歩で一気に間合いを詰めていった。

 

そんな俺を見ておそらく恋次さんは技の出足を潰しに来たのかと思ったかもしれないが、ただ単に間合いを詰める為と、斬撃の攻撃力に突進の勢いを上乗せする為の二つの目的があったからだ。

 

そして俺は新たに出来るようになったオリジナルの解放形態の二つの内の一つである卍解弐式を解放し、狒骨大砲に刃を振り下ろした。

 

普通に考えれば凶器の沙汰と思える行動だが、卍解弐式の特性によって長大な刃は赤い光の奔流を切り裂いて行き、徐々にだが確実に光線を放っている蛇尾丸の頭部へと進んで行く。

 

「舐…めんなぁっ!!」

 

だが恋次さんは、そんな状況をただ黙って見ているような甘い相手ではなかった。

 

狒骨大砲を放ったままの状態で更に蛇尾丸に力を込め、狒骨大砲を強化してきたのだ。

 

蛇尾丸の口内から放たれる光線がより太く、より大きくなり、赤い奔流の勢いがいや増す。

 

その勢いに負けて押し戻されそうになるのを、俺は地に足を付けて踏ん張ることでなんとか耐え、拮抗状態に持ち込む。

 

しかしこの拮抗は俺にとってマイナスにしかならなかった。

 

卍解を保持できる時間はもう何秒も無い。恋次さんを相手に卍解が解けるのは流石に拙い。

 

俺は全ての霊力を長大な刀身に集中し、地に足を踏みしめて渾身の力で袈裟斬りに振るった。

 

『バシュッ!!!』という音と共に赤い光線が砕け散り、光線の欠片が火の粉のように辺りに舞い散り消える。

 

「…なっ!」

 

最も自信のある技を打ち砕かれ、精神的な衝撃に恋次さんの動きが止まる。

 

(ここだ!!)

 

俺は狙っていたその隙を逃さず、即座に袈裟斬りに振るった長刀の刃を返し、切っ先を下にした下段の構えに変え、瞬歩で恋次さんの懐に入り込んだ。

 

(貰った!!!)

 

会心の笑みを浮かべ、俺は未だ呆然としている恋次さんに向けて握り締めた長刀を右に切り上げた。

 

 

 

 

 


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