中に入った二人の前には、沢山の料理が並んでいた。
銀座に数年前に売っていたというアワビラーメンや、大間のマグロを使ったトロの握りなど、和洋中の料理が並んでいた。
ナギとハヤテが席に着いて、先ほどの話を聞こうとしたとき、老人は、再び、玄関の前に行ってしまった。
「食べてもいいのか?」
ナギがハヤテに聞いた。
「ダメですよ。もしかすると、毒が仕込まれているかもしれないですし…」
そのとき、なんと、ヒナギクと雪路(ゆきじ)が現れたのだ。
「あれ、なんで、ハヤテくんとナギがここにいるの?」
ヒナギクがハヤテとナギに訊いた。
「なんで、ヒナギクがここに?」三人で不思議がっているとき、雪路だけは、席に就いて、
「うわー、美味しそうなのがいっぱいある。しかも、ワインまで…。えへへ。」
と、先に食べようとしていた。
「待ってよお姉ちゃん。」
ヒナギクが止めようとするが、その勢いは止まらない。
ヒナギクたちもお腹が空いていたので一応、席についた。
そして、謎の晩餐会は始まった。
ナギは喜んで、寿司に手をつけた。
しかし、その横で、ハヤテとヒナギクは箸をつけてなかった。
何か怪しい。
そういう気持ちが二人の中にあった。
「うへっ!」
雪路が突然、奇妙な声を上げて倒れた。
続いて、間をおかずにナギも倒れた。
「大丈夫、お姉ちゃん!」
「大丈夫ですか、お嬢様!」
ハヤテとヒナギクは、二人の所に行った。
「はははっ、」
それを待ち構えていた一人の男が、二人の前に姿を現した。「あなたは一体誰ですか!」
ハヤテがその不気味な笑いを浮かべていた男に問い掛けた。「ようこそ、高野ワールドへ。私は、高野華男(たかのはなお)。これを企画したものだ。」
その男の話を遮るように、
「お嬢様になんてことを!」
とハヤテが言った。
「ほう、随分と素直なお嬢様だとこと。そして、その横の女も、酒に釣られて、あなたを連れてくるとは…」
その男は嘲り笑うように言った。
「しかし、僕の計算通り、綾崎ハヤテと桂ヒナギクを残すことができた。」
「それは、どういうこと。」
ヒナギクが男に言った。
「あなたたちを私の傘下に入れて、世界征服をするのが、わ・た・し・の・ゆ・め!なんだこりゃ!!」
「なんか、随分と使い古されたネタを今の平和な世の中で、あえて唱えますね…」
ハヤテは明らかに呆れ顔で言った。
ヒナギクは、高野の最後のオカマ言葉とギャグを飛ばされて、気持ち悪がっていた。
「さて、そんな呑気な事を言ってていいのかしら?だいたい、君たち、今は外界から遮断状態なのよ。携帯を見てみろ、ボケ!」
高野の言われる通り、携帯をみると確かに圏外になっていた。
「ほら、みなさい。で、あなたたちは素直に私の傘下に入ってくれるのかしら?」
「そんなわけ、ないじゃないですか!」
ハヤテは、高野に向かって蹴りを入れた。しかし、高野は素早く跳ねのけた。
「私、こういう暴力苦手なのよね。っていうことで料理勝負を仕掛けようと思うの。綾崎ハヤテ、あなたは、得意でしょ。」
「はい、勝ったら、あなたには、二人を起こしてもらいますよ。」
「そんなの分かってるわ。解毒剤を持ってるわ。じゃあ、早速、勝負に移りましょう!」不気味な高野との勝負がはじまろうとしてます。って、私、神の出番、これだけかよ…