ヒナギクは、心配していた。
「ハヤテ君。このまま、永遠に会えないんじゃないか…。」
なぜか、ヒナギクはハヤテのことが気になっていた。
いや、自分でも、ハヤテのことが好きなことは気づいていた。
放課後、ヒナギクは、いつもの剣道部の練習をはじめてサボった。
「ヒナ、帰るのか。」
花菱が声をかけた。
「うん。」
そう言って、ヒナギクはさっさと歩いていった。
その後姿に、花菱までも不安を覚えた。
『やっぱり、ハヤタ君のことが、気になってしょうがないんだろうな…。』
家に帰ると、携帯電話を取り出して、歩のアドレスを開いた。
ともかく、周りが見えなくなっていた。
自分の感情が抑えられなくなっていた。
そして、すぐにヒナギクは、西沢の家へと向かった。
「ヒナさん、どうしたんですか。急に。」
歩は、驚いたように言った。
「歩、ハヤテ君が旅に出ているの知ってる?」
それに、歩は、
「いや、初めて聞いたわ。どういうことなの?」
そして、ヒナギクは、ハヤテが旅に出た事情を話した。
「そうだんたんだ…。」
歩は、そう言って、落胆した。
「ねえ、私たち、二人でハヤテ君を追いかけない?」
そうヒナギクは歩に提案した。
「いや、そんなお金もないし…。」
「でも、もしかすると、ハヤテ君、不幸だから、一生会えないかもしれないよ。」
「それは…。」
歩はその言葉に心配になった。
潮見高校をやめてからしばらく会えなくなったこともあったことを考えると、ヒナギクと行きたかった。
お金さえあれば。
でも、お金が工面できず、結局、ヒナギクの誘いを渋々、断った。
その頃、ハヤテと虎鉄は、浜松で口論となり、ハヤテの近くに虎鉄がいることができなくなっていた。
仕方なく、ハヤテの後を追うことにした。
ハヤテは、ひとまず改札に向かった。
時間は正午を過ぎたときだった。
「お昼ごはんでも食べるか…。」
そして、目についたのが、うなぎ…。
「うなぎかあ…。いや、うな重なんて食べたら、お金が無くなって、途中で餓死してしまう…。」
うな重は諦め、その隣にあったラーメン屋に入った。
「はい、いらっしゃい。」
店員の声が響く。
ハヤテは、メニューへと目をやった。
「浜松餃子…。そういえば、B級グルメで有名とか聞いたことあるな…。」
ハヤテは、浜松餃子とライスを頼むことにした。
そして、出てきたのが円形に盛られた餃子と中央に居座るもやし…。
「うわー、これはすごい…。」
食べてみると味も美味しく、お腹いっぱいになった。
そして、さきほど、駅ビルの中で購入した小型時刻表を見た。
「あー、この後は…。」
時刻表と格闘しながら、今日の宿泊地を決めた。
「今日は、頑張って、福井まで行くかあ…。名古屋で泊まってると、あとが辛くなるし…。」
そして、また列車の旅がスタートした。しかし、今回はひとりだ。
しかし、後ろの車両で心配そうにハヤテのことを見つめていた人物がいた。
そう、虎鉄である。
電車は複雑な関係の二人を乗せて、浜名湖と海に挟まれた地区を走っていったのであった。