ハヤテのごとく next   作:謎沢

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第34話 不安の渦の中

そして、ハヤテと虎鉄は、再び、鉄道の旅を始めた。

しかし、その日は、雨がふり、列車に乗っても、綺麗な富士山は望めなかった。

ただ、ひたすら列車に乗っているだけの旅。

しかも、あの騒動によって、ハヤテも虎鉄も、肉体的にも、精神的にも疲れはててしまっていた。

そして、二人の記憶は、どんどんと睡魔によって、どっかに飛んで行った。

 

「ここはどこだ。」

ハヤテはとある町にいた。

日は傾き、空は夕焼けに染まっている。

まるで、昭和の街にタイムスリップしたような感じだった。

しかし、あたりには、人の気配すらなかった。

しばらく、ハヤテがそこに立っていると、不意に後ろから声が聞こえた。

「お前は、巫女だ。」

「誰だ。」

ハヤテが後ろを振り向いたが、やはり、さっきと同じように、人の気配はなかった。

「ほーら。お前の父と母が、ハヤテが世の中から消えて嬉しがっている。お前は、神の国に引き込まれ、そして、この現実社会から存在を抹消されるのだ。」

「うそだ。そんなの。」

ハヤテはそうおもって、目をつむった。

しかし、すぐに、さっきまでいなかった人の気配を感じた。

そう。ハヤテの父と母が目の前に立っているではないか。

ハヤテを、まるで奴隷のように、小さい頃から働かせた、張本人たちだ。

「ははっ、残念だったね。ハヤテ。お前は、この世に必要ないんだよ。なあ、母さん。」

「ああ、お前は、私たちのグルグル回る夢のためにしか存在してない。そして、これで、私たちには、さらに大金が…。」

 

「はっ。」

ハヤテはようやくそこで、現実へと戻ってきた。隣にいた虎鉄は、まだ夢のなかだ。

「まもなく、掛川、掛川です。ドアから手を離しておまちください。」

なんだったんだろう。今の夢。

ハヤテはそう思った。

ハヤテは、自分に最近起きた、見に覚えの無いことが関連しているのではないかと疑い始めた。

「一体、僕の身体に何が起きているのだ…。まさか、二重人格というものか…。」

しかし、それは、ナギたちも考えたことだ。

しかも、よく考えると、過去から、そのような状態ではない。ここ最近のことだ。

そして、次に考えたこと。

それは、霊に取り憑かれているのではないのかということだった。

もし、そうならば、一刻も早く、取り除いてもらわなくてはならいない。

電車は浜松へと、近づいていた。

ハヤテは、虎鉄を起こそうとした。

しかし、ハヤテは、虎鉄がどんな夢を見ているのか知らなかった。

 

ここは、オランダ、田園地帯が広がっている長閑な風景の中に一つの教会が建っていた。

「私たち。ついにここまで来たのね。」

ウエディングドレスを来た人が虎鉄に向かっていう。

「ああ、ここまでの道のりは長かった。いつも、女と勘違いして告白するものの、男だったりした。しかし、三世院ナギが、僕を同性愛というカテゴリーに導いてくれた。そして、ついに今日。結婚式を上げられるのだ。」

そして、ついに、婚約式がはじまった。周りでは二人を祝福してくれる歓声が響いていた。

「ついに、ついに虎鉄君が、結婚式を迎えるなんて。ウワーン。」

妹の泉が涙を流した。

「よかったではないか。虎鉄君が結婚出来て。しかも、ハヤ太くんと結婚するなんて。これは、動画研究部のビデオとしては最高の出来だ。」

朝風がそう言った。

そして、ついに神父から、あの儀式の言葉をかけられた。

「アナタハ、この綾崎ハヤテをこれから末永く愛すことを誓いますか?」

「はい。」

そして、虎鉄は、ハヤテにキスをしようとした。

 

そして、電車の中で悲劇はおきたのだ。

ハヤテが顔を横に向けて、虎鉄を起こそうとした瞬間、虎鉄が襲ってきたのだ…。

そのとき、1秒間、電車の中に強風の冷房がかかり、時間が止まった。

 

そして、すぐにハヤテはビンタを一発食らわしたが、ハヤテの心はそれだけでは収まらなかった。

周りは、男同士がキスしているという時点で、身体が硬直していた。

そして、徐々に、ハヤテたちの周りから人が消えて行ったのである…。

 

電車は、浜松に着く手前のことであった。


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