「ははは。ははは。」
神殿のようなところに、一際、聞こえるような声で笑っている人がいた。
「まさか、こうなるとは、私も思っていなかった。」
そう言って、近くの椅子に腰掛けた。
「しかし、あの少年も馬鹿だな・・・。私の思うがままに動いてくれる。」
そう言って、近くの鏡を見た。
そこにはハヤテたちの姿が映っていた。
「はあ、これで、人類の文明も終わりだ。醜い終わり方だな。しかし、これは、人間が自分で首を締めただけだ。」
そう言っていると、一人の少年が近づいてきた。
「どうですか、パティオンさま。」
「ははは、これを見てみ。」
そして、少年も鏡を見た。
「うわあ…。かわいい…。」
そう少年は言った。
「はははっ。まあ、神に仕えさせるには調度良いだろう。」
「でも、なんで、人間を滅亡させようと。」
「それはだな。人間が、知恵と憎しみを増やして行ったからだ。」
「どういうことなんですか、それは。」
「ソフィア。お前には分からないだろうが、人間は文明を発達させてきた。しかし、今、人類は、滅びなければならない運命にあるんだよ。それは、18世紀から始まった、産業革命、そして、自由主義や、科学に発展が考えられる。」
「それは、一体、なんなのですか。」
「ああ、人間は、大量にモノを作るために、そして豊かになろうという幻想にとらわれて、他の人や動物、自然を破壊してきた。
自由主義を世界中に推し進めて、そして、ある国は、世界の中心になり、ある国は、それによって国民が飢え死にしそうになった。また別の国は、それを必死に食い止めようとしたが、力不足で、人々は争い、死んでいった。また、精神的にもダメージを受けた。
人々はそうやって、自由を求めながらも、自分がはい上がって、他の者を捨てることを繰り返した。
そんな不条理な世界を、この神の世界では求めていない。
なぜ、人間は、いつまでたっても、仲良くやっていけないのか。なぜ、ある人たちはその心理を追求しようとするが、なかなかできない。それは、もしかすると、心というものを与えたからかもしれない。
そんな動物を生きさせておけば、いずれかは、地球や宇宙の隅々まで破壊されて、やつらも自滅してしまうだろう。
その前に、私たちがそれらを消し去らなければならないのだ。
たとえ、真理に近い人でも、心をもっている限りはな…。」
そう言い終わると、少年は納得した。
そして、パティオンは、一眠りしはじめたのだった。
その頃、まだハヤテの取調べがつづいていた。
取調べが終わったあと、ハヤテは、面会者がいることを知らされた。
「虎鉄さん。」
「ハヤテ、」
虎鉄は、ハヤテを見た瞬間、泣きくずれそうになった。
警察も、困っていた。
取調べが進展しないからである。
しかも、アンテナなどの破損はあったものの、住人もだんだん、この件についてはさっさと済ましてほしいというような態度が見えてきた。
「ちょっと無理があるかもしれないが、保釈してもいいのではないか…。」
そういう声が上がった。
担当の上野毛碓四(かみのけうすし)も頭を触りながら、なくなく承諾した。
東京に仕事が残っていたからだ。まあ、その仕事が残っているのは、今までの事件を溜めているということもあるが…。
そうして、ハヤテは、釈放となり、その後、起訴猶予となったのであった。