ハヤテが事件を起こしたあと、白皇学園には一度も行ってなかった。
そんな中、白皇学園で一際、ハヤテのことが気にかかっていた人物がいた。
それは、ヒナギクであった。
ヒナギクは朝、クラスに入るとハヤテとナギの席を見て、こう呟いた
『はあ、ナギは屋敷でゲームとかしているんでしょうけど、最近はハヤテ君まで学園に登校してないわね。何かハヤテ君に不幸でもあったのかしら。』
よく考えると、今まで、ハヤテにも、散々不幸がかぶさっていた。
しかし、学校を休むまでの大不幸はなかった。
『うっ、なんで私、ハヤテ君のこと考えているんだろう。それよりも、学校生活のほうを考えないと。』
そうは思ったものの、ヒナギクはその日、いまいち他のことに力が入らなかった。
それ程、ハヤテのことが気にかかっていたのである。
そして、放課後、ついに耐えきれずに、ヒナギクは、三千院家に来た。
三千院家では、マリアに出迎えてもらった。
「こんにちは、マリアさん。」
「ええ、ヒナギクさん、こんにちは。今日はどうしたのでしょうか。」
「じつは、ハ・・・。」
ハヤテ君のことを気にしているから来たというのは失礼な気がして、もう一度。
「ナギのことが心配で来てしまいました。」
「そうですか。ナギはあいかわらず元気にしていますよ。ただ・・・。」
そうマリアは言いかけた。
「どうかしたのですか。」
ヒナギクはそうマリアに聞いた。
「いや、別になにも。ともかく、ナギのところへ。」
そう言って、マリアはヒナギクをナギのところへと連れていった。
「ヒナギクさんがお見えになりましたよ。」
「わかった。」
とナギが返事をした。
そして、ナギとヒナギクはお茶を飲みながら談笑をし始めた。
たわいも無い話をしながら、ヒナギクはハヤテのことが気になっていた。
しかし、ハヤテの姿は見当たらなかった。
そして、ついにヒナギクは我慢ができなくなって、ナギに聞いた。
「そういえば、ハヤテ君の様子が見えないけど、どうしたの?。最近、学校でも見かけなかったし…。」
それに、ナギはこう答えた。
「ハヤテは旅に出た。」
「旅に?」
それにヒナギクはビックリして聞き返してしまった。
『なぜ、ハヤテ君が、ずっと、ずっと、一緒に近くに居られると思ったのに…』
そう、ヒナギクは思った。
いや、もしかすると、ナギも思ってるかもしれない。
「ナギは、ハヤテ君がいなくて、寂しくないの?」
そうヒナギクが訊いた。
しかし、ナギは、
「うーん…。」
という曖昧な答えしか返して来なかった。
ヒナギクは直感した。ナギとハヤテの間になにかあったと。
すぐにヒナギクは、事情を訊いてしまった。ヒナギクの心がそうしたのだ。
それにナギは、この前、ナギが誘拐されたとき、ハヤテも加わってしまったことを話した。
「まさか。」
ヒナギクは、唖然とした。
今までのハヤテのイメージが崩れた。
ヒナギクは、言葉を失ったまま、家へと帰宅した。
「なんで、ハヤテ君が・・・。そして、なんで私はあんな少年のことを・・・。」
ずっと自問自答していた。
しかし、心のどこかで、
「いや、ハヤテ君は、そんなこと、絶対しない。」
という想いがあった。
ヒナギクとしては、そうあってほしかった。
その頃、もう一人、変態的なほど、心配していた人物がいた。
「お嬢!!、俺の、俺のハヤテは、ハヤテはどうしたんだ。」
「虎鉄君、そんなに泣かないでよ・・・。」
泉は、虎鉄の対応に困っていた。
虎鉄のこのような嘆きは、今日で3日目である。
そして、泉は、困り果てて、三千院家に電話をした。
「あっ、もしもし、ナギちゃん?」
「そうだが、何の用だ?」
「ハヤ太君で今、どうしてるの?」
「まさか、泉まで、ハヤテのことが・・・。絶対、ハヤテは・・・。」
「違うよ・・・。ナギちゃん。虎鉄君が心配しているんだよ・・・。」
泉は強く否定して、虎鉄が心配してることを言った。
ナギはいつもならば、虎鉄を批判するところだが、今日はその気がないらしく、普通に理由を説明しはじめた。
「そうか、実は、私を誘拐したことで、今、頭を冷やしに旅に出ている・・・。」
そのことを泉の横で張り付いて聞いた虎鉄は、急いで自分の部屋に行って、旅に行くための準備をした。
「ちょ、虎鉄君、何処に??」
泉が受話器を持ったまま、虎鉄に言ったが、虎鉄は一言だけ。
「ハヤテを探しに行ってくる。寝台特急「北陸」や急行「能登」よりも、ハヤテの方が大事だ!!」
そう言って、虎鉄は、瀬川家をあとにしたのだった。
「おい、どうした、泉??」
「いや、なんでもないよ。ナギちゃん。じゃあね。」
急いで泉は電話を切ったが、もうすでに手遅れだ。
そして、虎鉄は、急いでハヤテを追いかけるのであった。