あれこれあって、暫くの間旅に出ることとなったはやては予備校についた。
予備校に通うことになっていながら、あれこれあって、結局、受付以来、一度も予備校には行ってなかった。
担当の先生も知らず、とりあえず、受付に向かった。
「すいません・・・。」
ハヤテが受付で会員証を見せようとした瞬間、顔から表情が消えてしまった。
『は、半魚人!!』
あきらかにどこかのほのぼの日常アニメで情熱の○いバラを歌っている半魚人と呼ばれていた女性とクリソツであった。
しかし、まさか、その人物か確かめる訳にも行かず、いつもの営業スマイルを作り、この場を乗り切ってしまおうとおもった。
「すいません。実は、受付以来、一度も通ってなかったのですが・・・。」
そうハヤテ言うと、先方から辛口なコメントが帰ってきた。
「何、退学するの!!」
「いえ、、そうではなく、担当の先生に会いたくて・・・。」
「そうですか。それでは、ちょっと調べてきます。」
そう言って、受付の人は奥に行った。
「はあ…。」
なんだか、受付だけでこんなにつかれるとは思ってもいなかった。
「お待たせしました。残念ながら、今、現代文の小杉しかおりませんでしたが・・・。」
「分かりました。では、小杉先生に会ってもよろしいでしょうか。」
ハヤテはそう言って、受付の人に小杉先生のところに案内してもらった。
しかし、そこには、長蛇の列が待ち受けていた…。
そして、ハヤテは最後尾に並んで、1時間ほど待った。
そして、ようやくハヤテのところまで来た。どうやら、ハヤテが一番最後に並んだらしく、後ろには誰もいなかった。
「こんにちは、」
そう言った瞬間驚いた。
あきらかに、塾講師ではない。なにかアメリカのネバーランドから元黒人が来日して講師をやっているような錯覚を思わず、覚えてしまった。
「こんにちは。君の質問は何だい?」
華麗に回転して、椅子に座った。
「いや、じつは、先生の授業を受けようとしたのですが、いろいろあってそれどころじゃなくなってしまって…。せめて、何かを教授してもらおうと来たのですが・・・。」
「そうか。まずは、君に聞いておく。僕のことを差別してないかい。」
「えっ、それはないですが・・・。」
「いや、君にはその傾向がある。いくら表情でごまかそうとしてもダメだよ。」
「すいません・・・。」
確かに先生の言うとおりだった。自分の心の中に先生に対する偏見があった。
「現代文という教科には、まず自分の思い込みというのは禁物だ。出題者や作者の意図を考えて、問題を解くというのが、大学受験の現代文だ。そして、君は、先生のことを思い込みで差別をした。まずは、その点を忘れないで。」
「はい。」
「そして、君は一体、予備校に今まで来なかったんだい。」
「それは、いろいろと・・・。」
「色々じゃ駄目だ。僕が君の悩みを聞いてあげるから、素直に話しなさい。」
「実は・・・。」
そして、ハヤテは事情を説明した。自分の気がつかないときに、お嬢様を誘拐してしまったこと。そして、これから旅にでようと思っていることを。
「そうか。自分を見つめ直すために旅に出るのか。それはいいことだ。旅をすることで、君の古い思い込みが解消されるといいね。
そして、気がつかないときに誘拐してしまったという怪現象。それは、もしかすると今の科学では解明されていない未知の現象の一つだろう。先生の知識でも解決方法はわからないけど、いつかきっと解決されることを期待しているよ。
いつか解決することを君の心の奥底で願っているんだ。
そうすれば、絶対、叶えてくれるはずだ。
大学受験というものもそうなんだ。大学に受かるということを信じていれば、意外と叶ってしまうことなんだ。
科学的ではないと言われてしまうかもしれないが、とある実験で、勉強に対する意欲を意図的に操作して、どのような影響があるかを調べたんだ。そうしたら、プラス思考をしていた人間のほうが学力の伸びが大きかったんだ。それは、多分、何をやるにしても効果あると思う。
君も、旅によって何かを得られたら、それはすばらしいこと。とりあえず、僕が最初に配る冊子をあげるから、当分の間はそれを勉強して、そして、旅行でも何か勉強をしてくれれば、それでいい。」
そう言われ、ハヤテは泣きそうになった。
プリントをもらって、ハヤテはとりあえず、塾をあとにしたのだった。