夜が明けて、三千院家のSPは、ナギとハヤテがいると思われるところについた。
SPたちはお嬢様を慎重に助けだすために、入念に様子を探った。
そして、ナギは、目隠しを取られたものの、昨日のことがショックでただ倉庫の天井を眺めるだけしかできなかった。
『どうして、ハヤテがあんなことを…。』
いくらハヤテのことが好きだと言っても、誘拐をするという行為にはショックを覚えた。
昔も、何度か誘拐されたことがあった。
そして、ナギは徐々にひきこもりになっていたのである。
それを変化させたのがハヤテだった。
ハヤテのおかげで、辛い出来事もたくさんあったが、楽しかった。
しかし、今回のことはそれを打ち崩すものだった。
『一体、私のハヤテは何処へ…。』
そんなナギの心も知らずにハヤテは見張りをしていた。
「うわ。綾崎ハヤテが見張りやってるぜ…。」
「こりゃ、やられるかもな。」
「しかし、突入しなければ、マリアさんに嫌われてしまう…。」
SPたちはハヤテに戦々恐々としたが、それ以上にマリアに嫌われることが怖かったようだ。
そして、SPたちは、周囲の状況から、人数がこちらのほうが圧倒的に多く、突入可能であると判断して、それをマリアに報告した。
「そうですか。」
マリアは連絡を受け取ったとき、少し暗い口調で言った。
そして、突入を10時に設定した。
時間は刻々と近づく。
SP部隊を集結させて、倉庫を取り囲むように潜ませた。
そして、時計は、10時になった。
「突入せよ。」
その無線の掛け声と共に、装甲車や鉄球をつる下げたクレーン車が一斉に倉庫方向に飛び出してきた。
「親分、一斉にせめてきました。」
大泉の部下が大泉に伝えた。
「何。でも、こちらには、綾崎ハヤテという強力な助っ人がいる。そんなに簡単には奪い取れないはずだ。しかし、相手から攻めて来るとは、こちらとしては、交渉がやりやすくなる。」
大泉はそう微笑を浮かべながら話した。
実際、最初はこちら側のほうが優勢だった。
なんと、ハヤテだけで、鉄球のついたクレーン車を倒してしまった。
「クレーン車やられました!!」
その無線に三千院家側は身震いをおこさせた。
「なんだと…。」
ただその言葉しか出てこなかった。軽井沢で起きたとある事件のときには、家を壊して、無理矢理、中の人質を助けだすために使われたものであったが、今回はそれすらできずに、粗大ゴミと化してしまった。
しかし、その後に続いた特攻隊が無理矢理ハヤテを押した。
その弾みでハヤテが倒れた。
そして、取り押さえることに成功した。しかし、ハヤテは地面に頭を打ち付けた、外的なショックからか気絶してしまった。
しかし、これで砦を落としたのと同義だった。
「綾崎ハヤテを確保。」
ハヤテの動きをなんとか防げたSPは勢いづいて、倉庫正面も突破し、中にいるナギを無事に助けだすことに成功した。
大泉や部下も取り押さえられて、ひとまずは、三千院家に撤収することとなった。
そして、この事件を無事に解決することに成功したのだった。
しかし、まだこれだけでは片付けられない問題もあった。