そして、順調に作戦が進んでしまった大泉は、先程、侵入したところに再び戻ってきた。
そこには、確かに、車が来ていた。
中には、車の運転を指示した部下がいた。
「おお、作戦がうまくいったのか・・・。」
部下は、泣きそうなくらいの声で大泉に言った。
「ああ、執事が裏切ったんだぜ。ほら。」
横にはハヤテもいた。
そのとき、ナギがこう言った。
「ハヤテが、ハヤテが裏切る訳ないじゃないか。おまえたちみたいな奴のために。」
「ほほう。じゃ、なぜお前のことを守るために俺たちと戦わないんだ?」
そう大泉はナギに訊いた。
横では、ハヤテは黙っている。
「さあ、人質は車に乗った、乗った。しかし、この人質はうるさいな。少しは黙ってろ。」
そう大泉は、ナギを目隠しして、車に押込めた。ハヤテにも念のために目隠しをさせて、車に乗せた。
そして、とある工場街へと車を走らせた。
「おい。外に出ろ。」
車が到着して、ナギとハヤテは外に出た。
そして、ナギはそのまま、倉庫の中に閉じ込められた。
残りの部下は、見張りとして、外に立たせた。
大泉は残りのハヤテの扱いについて困った。
あくまでも人質の執事である。
もしかすると、裏切るかもしれない。
しかし、こちらには人員が十分いるとは思えなかった。
『でも、俺が倒した後、こちらのほうに随分と協力してもらった。あいつとしては、今後仕事に戻れないようなことまでしてもらった。きっと、今度も任せて大丈夫だろう。』
そう大泉は思い、ハヤテにも警備につかせた。
その頃、ようやく、警備のSPにマリアと執事長のクラウスは助けられた。
そして、急いでハヤテとナギを追いかけるように指示した。
「今度こそはハヤテ君には執事をやめてもらいますから。」
そうクラウスはマリアに言った。
「でも。」
マリアが反論しようとした。
「マリアまで、ハヤテ君を擁護する気ですか。」
クラウスは強い口調でいった。
「いえ。でも、ナギは、ハヤテ君のことが好きでこの屋敷の執事として雇ったんですよ。ハヤテ君をやめさせたら、ナギはますます引篭もりになってしまいますよ。」
「マリアはそんなことを言うようになったのか。だからといって、このまま得体の知れない執事を三千院家に置いておいていいとでもいうですか。」
「それは。でも、ハヤテ君にはきっとなにかあったんですよ。例えば・・・。」
マリアは言葉に詰まってしまった。
「マリアは一体、どうしたんですか。こんなことまでされてハヤテ君を置いておくなんて言うなんて…」
クラウスは少し呆れたような口調で言った。
「それとも、ハヤテ君を好きになったんじゃないでしょうね。」
クラウスはそうマリアに問いかけた。
「いや、それは…。」
マリアは顔を赤くした。
「…。いえ、そんなことはないです。ただ、私も心の中から何かが抜けたようになりそうで…。」
マリアの答えに、クラウスは思った。
『確かに、多分、ハヤテ君が抜けたら、何かが家の中央から消えたようになるかもしれぬ…。』
そうして、議論は平行線を辿った。