ハヤテが病院に入院してしまった三千院家では、執事長であるクラウスが頭を抱えていた。
「はあ、綾崎ハヤテに執事が変わってから、なんとなく、三千院家がうまく回らなくなったような気がする。そろそろ、あの少年を本当に辞めさせるときが来たのかもしれない。」
そうクラウスは思っていた。
そして、ナギは、対照的にハヤテのことを心配していた。
しかし、その心は、昔のハヤテの心配とは少し違っていた。
昔の心が100%だとすると今は、90%ぐらいであった。
ナギはそのことについて、ハヤテのことを信じているからだと自分に言い聞かせた。
しかし、それは違うような気もしていた。
そんな中でも、三千院家では今日も、ほぼ普通の日常が繰り返されていた。午後、クラウスは、ようやく方針を決めた。
そして、マリアを呼び出し、こう告げた。
「お嬢様の気を損ねないと判断した場合、即刻、綾崎ハヤテをクビにする。」
マリアは驚いて、聞き返した。
「クラウスさんは昔もそう言って、ハヤテくんを辞めさせましたよね?」
「ああ、しかし、マリア。雇ってから一年以上経つが、お嬢様に忠実に従っているか、最近は怪しくなっている。やはり、あの少年は不幸を呼ぶ少年だったのかもしれぬ…」
「ですが、クラウスさん…」
マリアは言い返そうとしたが、クラウスはこう言った。
「今回ばかりはしょうがない。しかし、まだお嬢様にこの話をしたら、絶対、拒絶するだろう。様子を見ながら長い間を掛けてじっくりやっていこうと思う。私だって本当なら辞めさせたくはないんだ…」
クラウスの浮かない顔にマリアも黙ってしまった。そんなことになっていることを知らず、ハヤテは病院のベッドで目を覚ました。
「あれ、ここは。」
気づいてみるとそこは病院だった。
「あれ、お嬢様は?」
見回すとそこには誰も居なかった。
「はああ、」
ハヤテは深いため息をついた。
最近の自分は相変わらず、人に迷惑ばかりかけているような気がした。いや、実際、最近は悪運がさらに酷くなったのではないかと思うくらい迷惑を掛けている。
そのような自分に執事をこのままやっていていいのだろうかと言う不安が再び襲いかかってきた。
いや、今まで、このことについて触れる時間がなかったのかもしれない。
今までは、もっと他のことを考えていて、こちらまで頭がまわってなかった。
そんな気がしていた
そして、ハヤテは瞑想に耽った。
何故か、三千院家を疑心暗鬼が包み込んでいった。
それは、今までの流れのツケが回ってきたのかもしれない。