「はははっ。くそー。これで、さらに借金が…。」
この不景気、泣きをみるものもいるけど、この泣いている男は、白皇学院に攻め入り、見事玉砕してしまったあの謎の男である。
「大泉さん。配達物です。」泣いている男に配達物が来た。
「なんだろう。」
開けてみると、やはりそれは催促状だった。
それに大泉は泣きつづけるのだった。
その頃、三千院家。
「早いもので、あと少しで、ナギもハヤテ君も高校3年生ですね。」
「そうですねえ。」
ハヤテは、そう答えた。
「ところで、そろそろ大学に向けて、ハヤテ君も勉強しないとまずいんじゃないですか。」
マリアさんがそうハヤテに言った。
「いや、僕は、高校を卒業できただけでも…。」
ハヤテは、約1億5000万円をしておきながら、高校にも通わしてもらっているという思いがあるのである。
「いえ、一流の執事になるのでしたら、大学も出ておかないと…。世の中も、大学を出ることが前提になっていますから。」
そうマリアさんに言われて、ハヤテは、ありがたがりながら、うなづいた。
そして、泣き始めた。
「ハヤテ君、それぐらいで、泣きつくのはやめて下さい。そのうち、部屋の中が涙で溢れちゃいそうになっちゃいますよ。」
マリアに忠告されたハヤテは、泣くのをやめた。
それを見ていたナギは、こういった。
「なんて、世界一、可愛いんだ。」
女子にそんなことを言われていいのかと思うような発言をかけられたハヤテだった。
「それで、話がまだ…。」
マリアさんがそう言った。「はい。」
ハヤテは聞く体制に入った。
「白皇学院の大学に入るのに某東京にある国立大学並に難しい問題が出されるのですが…。ハヤテ君ならきっとかっとされて、入れないですよね。」
「えー。」
それにハヤテは驚いた。
何せ、ギリギリ白皇学院に進学した身である。
それは、不可能だった。
「ハヤテ君には、流石に予備校に通わないと無理そうなので、一応、紹介状を書いておいたので、明日の放課後にでも行ってきてみてください。」
そう言われたハヤテは、次の日の放課後、その紹介状に書かれている場所に行くために電車に乗った。
しかし、その後、想像を絶することが待ち受けていた。
まずは、黄色い電車に乗り込んだ。
しかし、ここからが試練。なんと、各駅停車に乗ったものの、ほんの500mくらい走っただけで駅に着いてしまうのである。
これでは、いつお茶が水に着くか分からない。
ということで、次の都立家政駅で降りて、走った。
これならば、電車より早い。
そして、高田馬鹿に着いた。「はあ。まさか、あんなに遅かったとは…。」
本当に、しょっちゅう止まるのでは、電車を利用した気にならない。
「げっ。」
ハヤテはふと紹介状を見て驚いた。
なんと、5時半までしか受付が開いてないというのである。
その時点で、もう5時を過ぎていた。
すぐに電車に飛ぼ乗らなければ、5時半までにお茶が水に着くわけがなかった。
電車に急いで乗った。
もう、ハヤテの息は切れかかっていた。
しかし、都心の電車はいつでも満員である。
しかも、息を何時までも切らしていると逆に監視カメラに撮られているので、変質者として、裁判になりかねない。
急いで、息を元に戻した。
そして、電車を乗り換え、ようやくお茶が水に着いた。
「これが、あの…。」
ハヤテが予備校の校舎を眺めているとその前を小さな女の子が自転車で通り過ぎていった。