よう、俺ヤムチャ。
最長老さまの元へ到着した。
予定より遅れて二日半で着いたぜ! 何気にナメック星って地球よりデカいんだよ!
いやしかし道程で特に目立ったアクシデントもなくてよかったよかった。まあ、その間に情勢は少しずつ変わってきてるけどな。原作は死んだものとして考えた方が良さげなくらい。
変化で一番厄介なのが、ベジータとナッパが大暴れしている現状だ。大暴れと言っても隠密による襲撃だからより厄介。粗雑なイメージのあるサイヤ人だが、ナッパは兎も角ベジータは頭がキレるからな。
一つ目の村を潰した後しばらく息を潜めてやがったんだが、奴らが次に狙ったのは運が悪い事にヤムチャB &天津飯(4分の1)が率いていたナメック星人の集団だった! 大勢の気が動いているのを不思議に思ったんだろうな。ドラゴンボールの持ち出しを恐れて慌てて襲撃してきたってところか。
当然、俺と天津飯は即座に迎撃。交互に太陽拳を放って目潰ししながら繰気弾やどどん波による牽制を繰り返した。害悪戦法?それ褒め言葉な。
気のコントロールを覚えたばかりな2人には少々酷な戦法だろうが、こちとら必死なんでな。という訳でこのヤムチャ容赦せんっ!
ただやはり俺の立てる計画は途中で頓挫しちまうのがお約束のようで、十分時間を稼いだ頃に離脱しようとしたんだが、ブチギレたナッパの『クンッ』に巻き込まれたヤムチャBが仙豆もろとも殉職しちまった。
ヤムチャBは……今回もダメだったよ……。
まあただでさえ貧弱なヤムチャボディを更に4分割してるんだもんな、サイヤ人コンビとまともにかち合うことなどできる筈もなく。
あと身体能力と共に動体視力が大幅に落ちている事に気付けたのは思わぬ収穫だったぜ。ベジータの動きが全然見えなかった。天津飯はそんな事ないらしいんだけど、ここら辺も地球人と三つ目星人の違いなのかな。
でもまあ、ナメック星人の一団が無事最長老様の下に辿り着けたから良かった。天津飯が居なかったら多分みんな殺されてたよ。
仙豆もまだまだ残ってるし、損害は軽微である。
とまあこんな感じでピリピリとした拮抗状態が続いてるって状況だ。ギニュー特戦隊……奴らが到着するまではこの状況が続くと思われる。
俺たちはその隙にパワーアップを済ませてしまおう。
しかし最長老様ねぇ……。昔は安易に俺の強化計画に組み込んでたけど、実際どんくらいのもんなんだろうか。原作クリリンは戦闘力1000から2000の間でパワーアップして10000以上。推定5倍か10倍のパワーアップだった。なら今回は?
確か最長老様のアレは眠っている潜在能力を開放するってやつだったよな。文面じゃこれから先の成長を全部持ってくるみたいなニュアンスなんだが……クリリンはそれからも多分強くなっていっただろうし、悟飯なんてさらに潜在能力開放を老界王神に施してもらっている。つまり……どういうことだってばよ……?
いっそのこと深く考えずにただのパワーアップってことでカタをつけちまおうかね? 超神水みたいな感じの。
「おっ、あの建物でいいのか? デンデ」
「はい! あそこに最長老様は住まわれています」
最長老様の家はなんとも形容し難い場所に建っている。立地の悪さはカリン塔とどっこいどっこいだな。神様といいピッコロといい、ナメック星人は高いところが好きだったりするのかね? 例のポコピーを思い出しながらそんなことを考える。
入り口にはナメック星人唯一の戦闘タイプであるネイルが佇んでいた。なるほど、こりゃ強いぜ。戦闘力4万は伊達じゃないな。
あまりの気の大きさにZ戦士一同は色めき立った。一方でネイルがあまりにもピッコロに似てるものだから悟飯は何度も顔を見ている。ホントそっくりだよな、今にも殴りかかってきそうな感じとか。
「……最長老様がお待ちだ。中へ入れ」
「あ、はい」
軽く会釈しつつ中へ。
そして最長老様とついに接触を果たした。長かった……ここまで本当に長かった!
「お初にお目にかかります。地球人のヤムチャです」
「ク、クリリンです」
「……天津飯だ」
「餃子」
「そ、孫悟飯といいます」
「そうかしこまらなくてもよろしいですよ。よくぞデンデをここまで送り届けてくれましたね。ありがとう……」
最長老様からお礼のお言葉を頂いた。送り届けたと言ってももうホント……文字通りデンデを抱えてここまで来たからね。風圧とかその他もろもろでデンデには多大な負担をかけたと思う。すまない。
「アナタ達の活躍は把握しています……フリーザたちを相手に立ち回ってくれていること……深く感謝します。特にそこのアナタの父親……彼には頭が上がらない」
「そ、そんなこと言われないでください! お父さんは戦わずにはいられなかったんだと思います。デンデやボク達を助けたい気持ちもあったと思うけど、一番は……」
最長老様はとても疲れているように見えた。衰えによるものもあるが……やはりこの数日で子供たちが大勢死んだことが原因だろう。
こりゃ寿命も縮まるよ。
ひとまず俺が話を切り出す事にする。
「色々と話したいことがありますが、如何せん内容が内容。かなり時間がかかってしまう。なのでよければ俺の記憶を読み取ってくれませんか? 余計な記憶がたくさんありますが……」
「いえ、私もそうするつもりでしたので……。しかしなぜ私が心を読み取れることを?」
「そこら辺も俺の記憶を読み取っていただければ分かるかと思います」
「そうですか。それでは失礼」
最長老様は俺の頭に手を乗せると、暫くしてムッと難しい顔をする。まあ……俺の記憶は色々と特別だよな。
十数秒程度が経ったぐらいで最長老様は俺の頭から手を離した。
「……ふむ、アナタのような方は初めて見ました。中々変わった人生を送られたのですね。アナタの記憶には非常に興味が湧きます。それにしても……まさかそのような事になってしまうとは……とてもじゃないが信じられない」
「ええ……しかしそれをやってのけてしまうのがフリーザという存在なのです。ご存知でしょう? 悟空とフリーザの戦いを!」
誰だって「明日地球が吹っ飛ぶよ」なんて言われても半信半疑だろう。だが、俺の記憶にあるそれは確かに原作でナメック星が辿った末路なのだ。
最長老様もそこらへんは重々承知しているはず。
みんなが「何話してんだ?」って顔でこっちを見ているので大丈夫だよの意を込めてサムズアップのジェスチャーを送る。
呆れられた。解せない。
「アナタの言っていることが全て本当のことなのは分かっていますよ。そしてその本来のモノとのズレも……」
フリーザ来襲のタイミング、ナッパの生存、悟空の死……どれもが大きなズレだ。まあ殆ど俺のせいなんだろうけどな!!
「急ぎ手を打つ必要がありますが…… いずれにせよアナタ達の仲間を生き返らせるのが先ですね……。それが最善の手でしょう」
最長老様はこの後の俺発案フリーザ討伐プランも読み取っていたようだ。
ドラゴンボールを掴むと、俺へと手渡してくれた。
「どうか私の子供たちをよろしくお願いします……。アナタ達が最後の希望だ」
「任せてください。あと……その……」
「分かっていますよ。アナタ達の眠れる力を引き出してあげましょう。ほんの手助けにしかならないでしょうが……」
良かった。拒否られるようなことはないと思っていたが、やっぱりやってもらうまではそわそわするもんだ。
最長老様は再び俺の頭へと手を置くと何やら念じ始めた。そして間もなく、俺のうちから凄まじいエネルギーが噴き出した。
力が……力が漲るぞ……!!
「す、すげぇ……! あっという間にこんなに強くなっちまった! 勝てる! これならフリーザ(第一形態)に勝てるぞッ!!」
ヤムチャ流界王拳を使えば第三形態までいけそうだ! ……まあ、最終形態にはどう足掻いても勝てそうにないのがアレなんだけどね、うん。
それにしても凄いパワーアップだな……今までの修行がバカらしくなってくるぜホント。
おっとっと……パワーアップに感動するのは後! 次はみんなの番だ。そうすればギニュー特戦隊なんてけちょんけちょん間違いなしだろう。
俺に続きクリリン、餃子、天津飯の順で能力を解放していく。なお悟飯が最後なのは暗黙の了解というやつだ。一番伸び幅がデカいだろうし。
うーむ、戦闘力的にはやはり5倍程度の上昇か。これに界王拳を併せれば全員がギニューを超える力を出せる事だろう。
ただ急激な身体能力の向上は自らのスペックを見誤る一因になる。己の力量を完全に把握せずして界王拳で無茶するのは自殺行為だ。最悪爆発するからな(体験談)
まず身体を慣らさねぇと。
「では当初の予定通りここに滞在させていただこうと思います。ベジータに場所が割れてるので絶妙なタイミングで仕掛けてくるでしょうが……」
「今すぐ、という事でなければ問題ないでしょう……。その間にパワーアップした身体と感覚をあわせれば、彼ら相手にも戦えますよ。それに、ここにはネイルが居ます」
そう、このネイルさんの存在が大きい。界王拳無しで常時戦闘力4万を軽く出せるのは戦力として非常に頼もしいんだよな。ナメック星人の特性で継戦能力も頗る高いし。
とりあえず最長老様の言う通り、身に余る力を身体に慣らしていくことから始めよう! ネイルさんも稽古に参加してくれるようなので益々ありがたいぜ。
んでもって、身体が仕上がり次第ベジータ達のドラゴンボールを奪いに行ってやろう。
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一方その頃、ベジータ陣営もまた一つの決断に至る。
「いいかナッパ、オレが合図したら噛み砕けよ。早すぎても遅すぎても死ぬぞ」
「な、なぁやっぱりやめにしようぜ? 万が一ってこともあるだろ?」
「だからまずお前がやるんだ。早くしろ、その豆の可能性に賭けるか、今すぐオレに殺されるか。二つに一つだ」
「ぐぐ……テメェ絶対ロクな死に方しねえからな!」
悪態を吐きながらナッパは歯を食い縛る。その姿を認めたベジータは、何の躊躇いもなくエネルギー波でナッパの腹を撃ち抜いた。当然致命傷である。
おびただしい量の血を吐き散らしながら仰向けに倒れる。気がみるみる減っていく様をベジータは観察していた。
そしてそれが消滅する寸前に手を叩く。
数秒後、ナッパは目を剥きながら立ち上がった。
「し、信じられねえ……本物だぜ」
「そうか。にわかには信じ難いが……なるほどこいつは良いものだ。オレ達サイヤ人のためにあるような豆だな」
まさに天からの贈り物。ようやく自分にツキが回ってきたかと、内心ほくそ笑む。
ナッパに食べさせたのは、地球人から奪った緑色の豆。この豆が持つ効能は地球で確認していたが、いざそれを目の当たりにすると改めてその理不尽さに慄いた。この豆に比べればフリーザ軍の誇るメディカルマシーンなど子供の玩具ではないか。
だが同時に飛躍のチャンスであると計算高いベジータは勘付いていた。
ナメック星人を襲撃した際、あのいけすかない地球人と三つ目野郎に妨害され非常に気分を損ねていたが、その後に奇跡の豆をくすねることができたのを考えれば値千金の一戦だった。
ナッパの馬鹿がキレて無作為な攻撃を繰り出さなければもう少し手に入ったかもしれないが、四粒だけでもよしとする事にした。
死の淵から蘇るほどに戦闘力が増大していくサイヤ人の特性。本来はそういうものがあるんじゃないかとサイヤ人の間で囁かれていた程度のものだったが、ベジータとナッパはそれを短期間で何度も体験するに至った。
そしてこの豆があれば短時間かつ比較的安全にその特性を利用することができるのだ。むしろカカロットやラディッツの馬鹿げた成長スピードはこれによるものだと結論付けてすらいた。実際、それは半分正しい。
「へへ……また戦闘力が上がっちまったぜ。これだけの力があれば確実にラディッツの野郎をぶち殺せるな!」
「調子に乗るな単細胞野郎。貴様の伸び率なんぞたかが知れている。そんなことよりも次はオレの番だ。残り三粒全て使うぞ」
「ぜ、全部食っちまうのは勿体なくないか? いつどんな怪我を負うか分からないだろ」
「心配するな。オレが死の淵から蘇り超サイヤ人に覚醒すれば脅威は無くなる」
「お、おう」
これ以上自分への分前は無いと言われ、思わず禿頭を撫で上げる。そしてお前は大丈夫でも
ヤムチャB、仙豆を奪われてしまう痛恨のファンブル。ただそれはそれでベジータの強化に繋がるのでまあええやろの精神です。なお勝てないかもしれない模様
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