絶対正義は鴉のマークと共に   作:嘘吐きgogo

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あ〜、今回は本当に失敗した気がします。
やりたい事は一応書けたんですが、まとめきれず、だらだらとしつこい文章になっちゃいました。
文章量もかなりな物に……しかも収まりきらずまた分割。難産ってレベルじゃあ無かったです。

今回は厨二病全開&今までの雰囲気とがらりと変わっていますので注意。



4話ー虚像

とある海賊SIDE

 

 マストの上から遥か遠くにある船を見続けて二日目、船の向こうにやっと目的の島をみっけた。

 急いで下にいる船長——赤骨海賊団、血骨のバーダイン船長に伝える。

 

「船長、例の島に着きやしたぜ!」

 

 偉大なる航路のあちこちにある島を行き来して、色んなお宝のたまり場となっている島。

 それが今回のターゲットだ。

 今までも、何度もその島の船を見つけてたんだが、体のいい所で逃げられちまっていた。

 今回はお頭がちまちま狙うより大本ごといただいちまおうてんで、ばれねぇ様にこっそり追いかけてきたってわけよ。

 

「お前等、まずは一発お見舞いしてやれや」

 

「「「「アイサー!!」」」」

 

 船上で船員達が走り回る。

 俺もマストからロープを伝って滑る様に降りて、その中に加わる。

 仲間達がいくつも大砲を町に向け、皆、まだかまだかとざわついている。血の気の多い奴らだぜ。俺もだけどな、ヒヒヒ。

 

「撃て」

 

 船長の一言で皆一斉に大砲に点火する。俺達の中で一発お見舞いするってのは、こういった事だ。

 放たれた大砲の弾は、それぞれ町の至る所に着弾した。

 

 

 その中の一発が、町の真ん中にあるでかい教会を盛大に破壊したのを見て、俺達は歓声を上げた。

 

 

 

 

 

 大砲を幾つも撃ち込みながら、港に乗り込む。

 町は既に至る所で煙を上げていて、あちらこちらで悲鳴が聞こえる。

 三十名を超える仲間達もあちこちに広がって、既に略奪を初めているだろう。

 

「うらぁ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 

 俺も負けずに目の前を逃げ惑ってる奴を背中から、持っている剣で斬り付ける。

 皆殺しにするかは船長が決める事だ。俺達は細かい事を気にせずただ殺せば良い。俺は楽しいし、皆殺しにしなくても、金品を奪う時の見せしめになってちょうどいい。

 

 何人か斬り刻んで、町の中央に向かう。建物の中に立てこもってる奴は他の奴にまかせて、俺は目についた奴を追いかけて順番に襲って行く。それが俺がいつも町を襲う時にしているポリシーみたいなもんだ。

 おっと。危ない、危ない。見逃す所だった。

 さっき入った大通りを真っ直ぐ進んで行ったので、道の端にうずくまってるガキがいるのを見逃す所だった。

 俺が剣を持って近づくと、ガキはこっちに気づいて震え始めやがった。

 

「ヒヒヒ、逃げ遅れたのか親とはぐれたのか知らねぇが、運がなかったな」

「うぅ……あっ!」

 

 ん? なんだ?

 震えまくって泣きかけてたガキがいきなり、目を見開いて間の抜けた顔になりやがった。

 その視線を追うと、俺の……後ろ?

 振り向いた俺が見たのは、顔面に迫ってくる茶色い何かだった。

 

「へぶぅ!」

 

 とてつもない衝撃を頭に受けて、俺は意識ごと吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

ウツホSIDE

 

 これで八人目。

 私は右手に付けた制御棒で、今まさに小さな女の子を襲おうとしていた海賊の頭をフルスイングでぶっ飛ばした。

 時間がなかったので、思ったより力が入ったがどうやら死んでいないようだ。歯が何本か抜けて白目向いてるが結構大丈夫そう。

 他の海賊をぶっ飛ばしたときも思ったけど、皆かなり丈夫だな〜。

 

「大丈夫?」

「う、うん」

 

 吹っ飛ばした海賊を近くの出店に使われている紐でふんじばった後、未だへたり込んでいる女の子に話しかける。

 どうやら見た感じ怪我は無いようだ。急に恐怖から遠ざかったため軽く放心状態みたいだけど。

 ここでこうやっているのも危険なので、さっさと女の子を抱える。

 

「わっ、わっ!」

「危ないから捕まっててね」

「へ? きゃあ!」

 

 羽に意識をやると、羽がバサッと一度、力強く羽ばたく。

 私は風を切りながら一気に町中を海賊に見つからない様に低空で進む。一回、飛び立ってしまえば、後は何度か羽ばたくだけでグングン進んで行く。

 

「うわぁあ」

 

 女の子から声が漏れる。怖いというより、楽しい感じの声だった。

 結構、図太いなこの子。

 私は、女の子を今までと同じく、途中で見つけた町の人達同様、町外れに連れていき、そこにいる大人の人にまかせる。

 どうやら避難してた中に親御さんがいたらしく、それを見た女の子は今頃、恐怖が戻ってきたのか泣き出してしまった。

 それを見た私が、町に戻ろうともう一度、羽に意識をやると、泣いてた女の子がこちらを向いて

 

「ありがとう! お姉ちゃん」

 

 と涙に濡れた目のまま笑顔で言ってくれた。

 私もそれに笑顔で答えると、また町に文字通り飛んで戻った。

 

 

 

 

 教会が崩壊した後、私は最初、何が起きたかわからなかった。

 辺りも急な事でパニック状態になっており、あちこちから悲鳴が上がっていた。

 どどどどど、どうしよう。い、いったいなにが?

 私もパニック状態だった。

 

 続いてまたもや先ほどと同じ、甲高い音と破砕音が町のあちこちから上がる。

 港の方からは警鐘の音も鳴り響ており、そこでやっと私はこれが海賊の襲撃だという事に気がついた。

 高台から海の方を見渡せば、ある船が目に入った。帆に赤い髑髏のマーク。その髑髏には上から剣が突き刺さってひび割れた穴があいている。

 海賊船だ。

 そこまで港から離れていないとはいえ、町の中央にあるこの高台に砲台が届くなんてどんな火薬使ってんの!?

 あまり、この世界を見た目通りの時代だと思わない方が良いかもしれない。

 

 ってそんな事考えてる場合じゃなかった。

 海賊と戦うと言っておいてこのざま。落ち着いて対処すればなんとかなるなんて所詮は机上の空論だったな。

 急いで羽織っているマントの内側に右手を突っ込む。ウツホのマントの内側はまるで宇宙の星空を表したかの模様が不可思議にうごめいている。

 マントから右手を引き抜けば、肘から先には今では見慣れた茶色い六角の棒——制御棒がはめ込まれている。

 このマントはウツホ()を包み込むマントル(外殻)、ウツホに関する物なら包み込んでくれる。

 原作にはそういった描写は無かったが、靴や飾りはまだしも、制御棒を普段から付けている訳も行かず、だからといって何処かに置きっぱなしにする訳にも行かず困っていたら、マントにすっぽりと入ってしまったのだ。

 日常品や他の服は取り込んでくれないが、この世界に来た時に身につけていた物は容量を無視して全て入るので、身につけていない物は普段この中にしまっている。

 

 制御棒を取り付けて、完全装備になった私は港の方向に大通りを避け、裏路地を進んで行く。

 広場にいた人達は、私が動き出したときは既に私とは逆方向、港から離れる方向に逃げていった。

 誰一人私と同じ方向には向かわない。海賊は港から来ているのだから当たり前だ。今、港に向かうのは海賊と戦う意思がある者だけだろう。

 つまり私は海賊と戦おうとしている。

 そう考えただけで息苦しくなる。この体で息苦しくなる理由なんて一つだ。

 怖い。

 恐怖を感じている以外に無い。まだ海賊と対面もしていないのにだ。

 所々で煙を上げる破壊された町の風景が、自分がここにいるのを場違いだと訴えてきている様にも感じる。

 それでも、恐怖を押し殺し港に進んで行くと

 

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 

 悲鳴が聞こえた。

 

「ッ!」

 

 それだけで体が強張る。

 恐る恐る裏路地から目をやれば

 

 

 

 そこでは人が剣で斬られ、血溜まりに横たわっていた。

 

 

 

 当たり前で、当たり前でない光景。

 海賊に襲われている町ではごく当たり前の光景。私の常識では全く当たり前でない光景。

 この世界では当たり前の光景。私の世界では当たり前でない光景。

 

 思考が停止する。

 その間にも逃げ惑ってる人々を海賊は襲っている。

 目の前の光景から目が離せない。

 

 あはははは。海軍に入る? この程度のことで動けなくなっている自分が?

 滑稽だった。

 楽観視するつもりは無かった。だから海軍に入ると決めた。

 それこそ楽観視していた事と気がつかずに。

 ここが現実と思いながらも、どこかでここが所詮ワンピース(漫画)の世界だと思っていたのだろう。ウツホの力が使えた事もそれに拍車をかけたのだろう。

 こっちに来てから平和で、直ぐに住む場所も仕事も見つかって、うまく行き過ぎた。

 体がそっくりになったからって、なにも馬鹿な(こんな)所までウツホに似なくてよかったのに。

 自分の命が危険になって初めて実感した。

 

 

 

 私は現実(ここ)にいるって。

 

 

 

 コツッ。っと靴の音が近くからした。

 自分の馬鹿さ加減に呆れていて、気がつくのが遅れた。

 大通りの海賊は既に他の所に言ったようだが、私がいる裏路地の方から別の海賊が来るのが壁越しに見えた。このまま進めば間違いなく見つかる。

 だからといって大通りには出られない。

 

 どうする? どうする!?

 

 どうしようというのだ?

 何もできない。怖くて逃げる事も、能力を使う事もできない。

 能力を使えば勝てるはずだ! 海蛇もそれでやっつけた!

 ここであれを使うのか? 町の人ごと蒸発するぞ?

 だったらもっと弱いのを使えば良い! 

 効かなかったら? 能力者の可能性だってあるぞ?

 火力が高くて周りをそんなにまき込まないのだってある!

 人間相手に使うのか? 蒸発するぞ?

 向こうは海賊だ! 今だって人を殺してる!

 で? 自分にはそれができるの?

 

 靴音はどんどん近づいてきている。チラリと見れば辺りを見回しながら、持っている剣をクルクルと回している。

 その剣には真新しい誰かの血が付いていた。

 

 

 それを見て私の心は完全に凍り付いた。

 膝を抱えて顔を埋める。途中、右手に付いた制御棒が見えた。そこにあるのがまるでなにかの冗談のようだ。

 ……できない。自分じゃあ何もできない。

 

 

 

 

 じゃあ、私(ウツホ)なら?

 

 

 

 

 ハッとする。さっきまで恐怖に固まってた頭が嘘の様にはっきりとしてくる。

 私ならどうする? こんな状況。

 簡単だ。こんなのピンチでも何でも無い。

 私ならどうする? 死体を見て。

 そんな燃料(もの)珍しくもない。毎日、お燐が運んでくる。

 私ならどうする? 今、私を危険にする()を?

 そんなの、決まってる!

 

 動け!

 未だ恐怖に縛られてる体を、無理矢理に動かす。

 海賊はまだこっちに気づいていない。

 だから、いけるはずだ!

 

 隠れていた場所から飛び出る。

 羽に力を込めて両翼を思いっきり羽ばたかせれば、一瞬で海賊の目の前まで近寄る。一瞬で過ぎ去るはずの風景が非常にゆっくりと感じた。

 相手はまだ何が起こってるかもわかっていないようだ。

 遅い。

 既にこちらは右手を思いっきり振りかぶっている。

 

 DB(ダッシュB攻撃)

 飛んだ勢いを付けて、思いっきり振りかぶった制御棒を、轟音と共に振り抜いた時まで考えていたのは、そんな言葉。

 ゲームのウツホの行動。ダッシュした後にBボタンを押せば、制御棒で相手をぶっ飛ばす。

 一大決心の元、行ったのはただそれだけの行動だった。

 

 

 

 ぶっ飛ばした海賊は見た目かなり派手にぶっ飛んだが、死んではいなかった。

 殴る時に一瞬、躊躇したからだと思う。

 あれだけ自己暗示をしておきながら、いざ殴る時には躊躇してしまうんだから、自分の小物っぽさに泣けてくる。

 

 しかし、一回ぶっ飛ばしたおかげか、先ほどまで感じていた恐怖はほとんど無くなり、次いで現れた海賊も気づかれる前に同じ様にぶっ飛ばした。

 正直かなり焦った。いきなり出てくるんもんだから。

 隙をついたとはいえ、相手もウツホの身体能力に付いて行けていないようだったので助かった。それと、殴る時に気がついたのだが、動体視力もかなり上がっているようだ。相手の動きや流れる背景が自分の動きと比べ、てんで遅かった。

 自分の事は結構、把握したつもりだったけど、全然わかっていなかったみたいだ。

 

 

 

 もう一人、二人と隙をついて倒せば結構、慣れたもんで、海賊に襲われている人も助ける事ができた。

 その時、真っ正面から対峙してしまったが、奇襲でなくとも同じ様に普通に倒せた。やはり私の動きはこいつ等には速すぎるみたいで、動きがまるで追いついていない。

 怖い事に変わりはないが、それで一気に安心感が増した。

 真っ正面から戦っても勝てる。これがわかったのは非常に大きい。

 未だに刃物を持つ相手と正面から戦うのはかなりの抵抗があるけどね。

 

 

 

 助けた人は、町の人たちが避難していった方向に飛んで連れて行けば、町外れに避難所みたいな所があり、そこに預けてるようにして何度か同じ事を繰り返した所、先ほどの女の子を助けて今に至る。

 あれから町に戻り、また海賊に奇襲攻撃をしかけて、ちょうど三人目を同じ様にぶっ飛ばした時

 

「てめぇか? さっきから俺達の邪魔してんのは?」

 

 バレた。

 声がかけられた方を向けば、微妙に癖の付いた金髪を肩まで垂らしている、細型の長身の男が部下らしき八名の海賊を引き連れていた。

 男は赤いコートを来ており、右腰には変わった形の刀を差している。

 その偉そうな雰囲気と見た目からして、この男が一味の船長だろう。

 できれば一人づつ確実に倒したかったけど、一度バレてしまえば奇襲はもうできないか。

 

「なんだぁ? ガキじゃねえか。こんなガキのしかも女にやられてんのかよ、家の船員達はよ」

 

 こちらを見下しながら、船長らしき男が吐き捨てるかの様に話す。

 

「いやいや、船長。いくらなんでも、こんなガキにやられるなんてありえないですって」

「そうですよ、大方そいつはよっぽど油断して罠にでもかかったんでしょう。邪魔してんのは別の奴でしょう」

「馬鹿な奴だ。赤骨海賊団の良い恥さらしだ」

「全くだぜ」

 

 それに続いて、周りの部下達が先ほど私がぶっ飛ばした海賊に指差して笑っている。

 油断してくれてるのは良いが、船長も含め全部で九人か。

 多人数を相手にするのは今回が初めての上、他の海賊に比べ明らかに格上だろう船長の男もいるという状況で足が震えそうになるを何とかこらえる。

 大丈夫、さっきまでと何も変わらない。どうせこいつ等は私の身体能力には追いつけない。

 そう自分に言い聞かせる。

 

「おい、何時まで笑ってやがる。良いからさっさと殺せ、どうせ今回は皆殺しだ。いつまでも時間かけてんじゃねぇ」

「へ、ヘイ」

 

 船長の男が一喝すると、私に向かって部下が三人近づいてくる。

 三人だけか。いっその事、船長ごと近づいてくれば一気に攻撃できたのに。

 近づいてきた三人は私が恐怖から動けないでいるとでも思ったのか——まぁ、あんまり外れてはいないんだけど——ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべて、一人がその手に持った剣を振りかぶった。

 それが振り落とされるのを待つ訳も無く、私は剣を振りかぶった奴の腹に制御棒を叩き込む。

 そいつが仲間の所に吹っ飛ばされるのを見る前に、引き戻した制御棒を円を書く様に横合いから叩き付け、残りの二人をまとめて壁に叩き付ける。

 あちらでは仲間が一瞬でやられたのを確認した海賊達が驚いているのが見える。

 その驚きが消える前に決める。

 私は羽に力を込め羽ばたくと、これまで同様に一気に距離を詰め、船長らしき男の頭に制御棒を叩き付けた。

 

 

 

 はずだった。

 

 

 私が砕いたのは男の頭じゃなくて、町の道。

 あれ……なんで? 

 浮かんだのは単純な疑問だった。

 右手を地面に叩き付けた状態のまま男の方を見ると、男は腰に手をやり、今まさにその柄を掴んだ刀で私を斬らんとしているのを加速した視界の中で捉えた。

 斬られる!

 体が勝手に身をすくめる。しかし、そのおかげで逆に助かった。

 頭を下げた突撃体勢のまま急に身をすくめたので、羽が勝手に羽ばたき私は転がる様に前に飛んだ。

 私はそのまま五メートルぐらい離れた所に無様に着地し、直ぐさま体勢を整えた。

 周りは何が起こったか未だ分からない様子だったが、船長の男は抜き去った歪な刀——刀身が赤く、金属というより何かの骨でできている様に見える——を肩に担いぎ、こちらを見て、感心したかのような顔で

 

「ほぉ、避けたか。速いとは思ったが、予想以上に速いな」

 

 そんな事をのたまいやがった!

 

「せ、船長! こりゃあ、いったい!?」

「あのガキ、いつの間にあんな所へ!?」

「お、おい! お前等、大丈夫か!?」

 

 遅れて他の海賊達が騒ぎだすが、そっちにかまっていられる余裕は無くなった。

 まさか、反応されるなんて!

 押さえていた恐怖がジワリと染み出してくる。

 もし、こいつに負けたら……いや、負けなんて無いか。

 なぜなら負けたと感じた時点で、私は死んでいるのだから。

 また恐怖で動けなくなる前に、気をしっかりと持つ。

 

「お前等は別の所に行ってろ、邪魔だ」

「えぇ!? 船長がやるんですかい!? こんなガ……、ヒィ! わ、わかりやした!」

 

 ギロリとまるでナイフのような視線で男が睨めば、口答えしていた部下は逃げる様にどこかに向かった。

 それに続いて、他の部下達も倒れてる仲間を担いですぐにその後を追いかけていった。

 それを確認すると男は担いでる刀をゆらりとしたに降ろす。

 

「俺は、懸賞金二千八百万ベリー、赤骨海賊団船長、血骨(ちぼね)のバーダイン」

 

 二千八百万ベリー。相変わらず高いのか低いのかわからないが、私の攻撃が避けられたことに変わりはない。

 最初は三百万ベリーぐらいのから来てほしいものだ。

 

「お前、かなり速いな。その格好を見るに能力者だろ?」

「……だったら?」

 

 本当は違うけど……いや、能力者っていうなら合ってるのかな?

 

「別に、聞いた……だけだ!」

 

 一足。たったそれだけで五メートルの距離を詰めてくる。

 男——バーダインはその勢いのまま刀を振り抜いた。

 

 

 

 が、私はそれを余裕を持って避ける。

 私が避けるとバーダインがまた刀を振るう。

 私が避けると執拗に刀を振ってくる。

 

 遅い……?

 

 私の攻撃を避けたから、同じくらいの身体能力があるかと思ったら全然遅い。

 さっきのがまぐれだとは思えないがけど。もう一度、試してみる事にする。

 よし、今!

 バーダインが刀に振るったのに対し、合わせる様に制御棒をバーダインの腹に向けて横合いから叩き込む。

 私は制御棒を振り抜いた。

 

 

 

 なんの手応えも無く、風切り音だけを残して。

 

 

 

 また!?

 横を見れば、振り抜いた格好のままの私に刀を振り下ろそうとするバーダイン。

 先ほどと同じ様に、とっさに羽に力を入れて前に飛び距離を離す。

 

 距離が離れれば、直ぐにお互いに向かい合う。

 そうすると計らずとも先ほどと同じ構図となった。

 

「っち、また避けたか」

 

 なんでだ!? なんであたらない!?

 

 手を抜いて攻撃をしていた? 

 だったら今ので死んでいてもおかしくないはずなんだけど。

 わからない。わからない!

 恐怖でどんどん不安になっていく。

 

「そろそろ、死ねや!」

 

 だが私が落ち着くのを待ってくれるはずも無く、バーダインはまたもや刀を振るいに突っ込んでくる。

 私は疑問を解決できないまま、またそれを避け始めることになった。

 

 

 

 

 

「はぁはぁ」

「はぁはぁ」

 

 たいした時間はかかってないが、あれから既に何度も同じ事を繰り返して、お互いに息も切れてきた。

 バーダインは刀を振りすぎて肉体面で疲労し、私は刀は避けれるのに何度攻撃しても当たらない事から精神面で疲労した。

 肉体面で疲労している分バーダインのが不利に思えるが、私はもう限界だった。

 身体能力は私の方が遥かに勝ってるのは、何度か繰り返しているうちにバーダインの様子からわかった。

 それなのに倒せない。攻撃は全部避けられて、逆にこっちが危険な目に合う。

 そんな状況に自己暗示でなんとか戦ってた私の心が耐えきれるはずが無かった。

 

 

 

 どうしようもなく、怖かった。

 

 

 

「あぁぁぁぁ!」

 

 無意識に押さえていた力を初めて全力出し、一瞬で低空を駆け抜ける。

 今までと比べ物にならない速度で風景が流れる。バーダインはまだ微動にもしていない。

 右手を肩ごと限界まで引き絞り、力の限り目の前の顔に上から叩き付ける。

 叩き付けられた制御棒からは更に弾丸のように火が吹き出て叩き付けた対象を真っ赤に焼く。

 

 

 叩き付けた対象——地面を。

 

 

 避けられた。

 横を見れば先ほどまでと同じ、バーダインが刀を振り上げている光景。

 唯一、違うのは私は全力を出した分、硬直が長い事。そして、向こうは先ほどと全く同じ条件だという事。

 ギリギリでかわしてた赤い刀は既に必殺のそれとなって私に向かう。

 バーダインは勝利を確信したのか、汗が浮かぶ顔に深い笑みを浮かべて叫んだ。

 

「どんなに速かろうが、来る場所が先に分かってりゃ関係ねぇんだよ! 馬鹿が!」

 

 刀の刃が私に向かうのが見える。このまま行けば左肩から右の脇腹に刃が抜けるだろう。

 

 

 

 左肩に衝撃と痛みを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ……死んだ。

 




もっと簡単な文章にできたら、こんなだるい分にならなかったのに……。

戦闘描写が難しすぎる……、一人称にこだわんないで三人称にした方がよかったかも。
初めて書いたせいか変な文書のオンパレードです。ごめんなさい。

今回の話しでやりたかった事は
一般人が力持っていてもいきなり殺しあいとか無理。
非常識な事ばかり起こると現実逃避に走る人もいる。
恐怖を感じすぎると狂う。
以上です。

今までと随分と雰囲気が違いますが、この話だけだと思います。

東方知らない人への設定
お燐:ウツホと同じく古明地さとりのペットの1人。
   灼熱地獄跡で怨霊の管理や死体運びを任されている妖怪。
   ウツホはお燐と共に灼熱地獄跡の管理を任されており、
   ウツホは火力の管理を担当。お燐が持ってきた死体が燃料。

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