絶対正義は鴉のマークと共に   作:嘘吐きgogo

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前に短編集で出していたおまけIF物です。

一発物の予定だったのですが、感想での評判が意外によく、続きを希望してくれた方が多数いましたので、外伝として連載することにしました。


*注意*

これはあくまで外伝なので、本編、絶対正義とは基本的に関わりはありません。
よって、これを読まなくても大丈夫です。

これは、もしウツホが海軍に入っていなかったとしたらという、ifものです。
時系列も「絶対正義」と違い原作とほぼ同じ時期に来た事になっています。

外伝も移転。


外伝:地獄は鴉のマークと共に 1話ー三つ足

――偉大なる航路のとある島

 

 町が一つしか無い小さな島、そこは今

 

 

「キャァ―!」

「助けてくれー!!」

「イテェよぉ、だれか!」

 

「「「ギャハハハ! 殺せ! 奪え!」」」

 

 海賊に襲われ、建物は所々激しく燃え上がり大量の煙が上がっていた。

 砲撃や放火により町は燃え、略奪する為の殺戮やただ己の欲求を満たす為に町の住人は血に塗れ、その遺体は未だ叫び声が響く町の至る所に放置されている。

 ありとあらゆる海賊が集う偉大なる航路ではさほど珍しい事も無い光景だ。海軍も奮闘しているが、全ての島を守れる程では無い。今回の様に、人知れず海賊によって滅ぶ島もある。

 それほどまでに、偉大なる航路は巨大で、航行が厳しいのだ。

 

 

 

 結局、海賊達がその小さな町の略奪を終えるのに、半時もかからなかった。

 住民は小さな子供から老人に至るまで皆殺しにされ、町はその建物のほとんどが燃え尽き、未だ残っている建物にも火の手が周り、その場に捨て置かれた住民の遺体と共に静かに燃え続けていた。

 

「やりましたね、船長!」

「あぁ、だが、しけてんなぁ~」

 

 海賊達は町の住人達から奪った財産や金目の物を、焼け果てて周りに遺体以外、何も無くなってしまった町の広場に集め、今回の仕事の成果を確認していた。

 部下の海賊達は、好き放題に暴れ回ったうえに金が手に入るので喜んでいるが、やはり小さな町では得られる成果も小さく、集めた物もたいした金額にはなっていない。部下達は暴れた後なので興奮しているが、部下程暴れていない海賊の船長は少々不満げだった。

 

「まぁ、良いじゃないっすか」

「そうそう、無いよりはマシですぜ!」

「ほら、そんな顔してないで船長もどうぞ」

 

 そんな船長を、奪った酒を瓶ごと口をつけ飲んでいる部下達が励まし、もう一つ持っていた酒瓶を船長にも渡す。

 海賊の船長は元々、深く考える性格でもなく、その短絡的な思考で「それもそうだな」と考え、部下から受け取った酒瓶に口をつける。

 海賊達が集めた金を前に酒を煽っている。

 その時

 

 

 

 

 ぐちゃり。

 

「う~ん。いまいちかな~」

 

 と肉を噛み締める音と、鈴を転がした様な高い少女の声が海賊達の後方から聞こえてきた。

 海賊達はその声に驚き振り向く。

 自分たちの仲間には女はいないし、この町の住人は先ほど自分たちが皆殺しにしたので、この場には分達しかいないはず。例え、町の住人の生き残りがいたとしても、この荒れ果てた町の様を見て、この様な陽気な声は出さないだろう。

 海賊達が振り向いたそこには

 

 

 背に一対の黒い翼を生やし、それに体を覆える程の大きなマントを引っ掛ける様に羽織った、見た目十代前半の黒い長髪の少女が、建物の瓦礫の上に座っていた。

 少女の右手には肘の辺りから六角形の奇妙な筒を填めており、逆の左の手は何も付けていない白く綺麗な少女の手だが、その手に持っている物のせいで、変わった右手より目立っている。

 

 

 ぐちゃり。

 

「お、おい」

「何だよ、あいつ!?」

「あいつ、手を……」

 

 その少女の異常な行為に、残虐な殺戮を行った海賊達でさえ不気味に思い、恐れを抱く。

 

 少女は左手に別の左手を持っていた。

 別に少女の左手が二本生えている訳ではない。少女が左手で、肩辺りまで付いた別の誰かの左手を持っていたにすぎない。その誰かの左手は所々煤けていて、傷口が真新しい事から、先ほど海賊達が襲った町の住人の物だと分かる。

 

 

 バリボリ。

 

 海賊達が自分に注目しているのにも関わらず、少女はその異常な行為を続ける。

 何も、少女が左手を持っていただけならば海賊達も恐れはしない。でなければ、住人の虐殺などできないだろう。

 そんな非道な海賊達を恐れさせる、少女の異常な行為とは

 

 

「恨みや嘆きが強いのは良いけど、やっぱり罪人じゃないと味は落ちるわね」

 

 ゴクン、っと貪っていたはじめは肩まであったそれを全て嚥下すると少女は物足りなさそうにそう告げた。

 

「……人の手を食ってやがる」

 

 そう、少女は海賊達が殺した誰かの手を喰らっていたのだ。骨を物ともせず全てをその小さな口で噛み砕いて。

 その衝撃的な光景に目を奪われていた海賊達の誰かが、急にがたがたと震えだす。

 なぜなら、その海賊は更に恐ろしい事実に気がついてしまったからだ。

 

「せ、船長……こ、こいつ」

 

 その海賊の震える声を聞いた船長は、ハッ、と我を取り戻し叫ぶ。

 

「な、何ビビってやがる! ただの頭がいかれちまったガキだ!」

 

 あれしきの事で怯えていたなどと部下に思われては威厳が保て無いと、船長は自分に言い聞かせる為にも部下に言うが、部下の男は未だ震えながら、顔を横に振り、告げる。

 

 

「ち、違います……こいつ……こいつ”三つ足”です!!」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 その一言に海賊達は凍り付く。

 そして凍り付いた体の変わりに視線だけをなんとかもう一度、少女に向けて確信する。

 先ほどは少女の食人という異常な行動で気がつかなったが

 

 黒い翼に白いマント。胸元に赤い目の様な宝石。

 そしてなによりも

 溶けた鉄が絡み付いた様な右足に、クルクルと光弾が回る二重の金色のリングが付いた左足。最後に、まるで一見、三本目の足の様にも見える右手に付いた、地面に付きそうな程に巨大な六角形の筒――制御棒。

 

 

 

 史上最悪の化け物、懸賞金八億八千万ベリー、”三つ足”霊烏路 空。

 

 世界政府、海賊、反乱軍。

 世界のあらゆる勢力の敵として認識され、世界各地を灼熱の地獄と変えている正真正銘の化け物。

 

 

 

「ヒィイイイ!」

「逃げろぉ!」

 

 ウツホの事に気がついた海賊達はなりふり構わずに全力で逃げ出す。

 その姿は皮肉にも、彼らが虐殺した町の住人にそっくりだった。

 

 

 

『”三つ足”に出会ってしまったならばとにかく逃げろ。お前に興味が無ければ生き残れるかもしれない』

 

 

 

 ジュゥウウウウウ!

 

「「「ぎゃぁああああ!」」」

「せっかちね、じっくり焼いた方が好きなのだけれど。美味しく頂く為には時間をかけて焼くのがコツよ」

 

 逃げ出した海賊の数人にウツホが放った光弾が直撃し、一瞬に燃え上がり絶命する。

『奴が腹を空かしていたら駄目だ。焼かれて骨まで食われてしまう』

 

 

「う、うぁあああ!」

「畜生! この野郎!」

 

 その仲間の姿を見て恐怖の限界に来た海賊の数人がウツホに向かい武器を振るう。

 

「何をごちゃごちゃ言っているの? 貴方達は食べられる為に私に向かって来たんでしょ?」

 

 ズルッ、と武器を振り下ろした姿のまま海賊達の体が肩口から横にずれ、そのまま、傷口から上半身が地面に落ちる。

 ウツホはいつのまにか制御棒から出ていた刃状の炎を消し、自分が切り裂いて落ちた海賊の上半身を一切気にもとめずに踏み砕きつつ、逃げた海賊達をゆっくりと追いかける。

『だからといって、奴に襲いかかっても駄目だ。地獄に引きずり込まれてしまう』

 

 

「馬鹿やろう! 早く船を出せ!」

「船長! まだ乗ってない奴らが!」

「ほっとけ! 死にてぇのか!?」

 

 停めていた船に乗り込んだ海賊達は追いつけなかった仲間達を見捨てて、直ぐに船を出し海へと逃げる。

 追いつくのを待っていては、自分達が殺されかねない。それに、多少の時間稼ぎにもなると考えていたからだ。

 

 

 運良く風を味方につけた海賊船は速度を出し、ドンドン島を離れていく。

 島からかなり遠くまで船が離れると、海賊達は「助かった」っと皆、安堵するが、その直ぐ後には理不尽な事態に対する怒りがわいてくる。彼らがそう感じること自体、理不尽だが。

 せっかく、手に入れた金品も置いてきてしまい、戦力となる仲間もかなり減ってしまった。

 また次の町を襲うのが大変になってしまった。と先ほどまで、命からがら逃げてきた者の考えとは到底思えない下衆な考えを巡らせていた。

 

 

 

 彼らがいる船の甲板が白く光るまでは。

 その異常な出来事に海賊達は、自分の考えがどうか外れていることを祈りつつ、空を見上げて、絶望する。

 

 

 

 

『もし、空にもう一つの太陽ができたなら……諦めろ』

 

 海賊達が見上げた先には、巨大な炎の塊が唸り声を当てて自分たちの船に向かって落ちてきていた。

 

 

 

 

 

『お前が地獄に引きずり込まれなくても……お前がいる所が地獄に変わってしまう』

 

 

 船がその巨大な炎の塊に飲込まれると、それは超高熱の熱風と共に海面に沿って溶ける様に一瞬で広がった。

 

 

 

 

 海が燃えている。島が燃えている。空が燃えている。

 見渡す限りの世界が赤く燃えていた。

 

 その世界の中でただ一人だけ生きている少女――ウツホは本当に楽し気にその様を見ていた。

 

「ふふふ、地上は新しい灼熱地獄に生まれ変わる。待っていて下さい、さとり様、こいし様。それに、お燐」

 

 ゴウゴウ、と燃え盛る炎によって染まる、赤い、赤い世界でウツホは一人、暗く底が濁った様な目で笑い続けていた。

 

 

 

 

 

「あっ! ご飯も燃やしちゃった!」

 




というわけで再投稿となりまして、外伝としてちゃんとスタートです。
こちらは本編の筆の進みが遅い時の気分転換や、ネタが思いつき次第書いていくことになりますので、毎回の更新はありません。

こちらは結構ダークな話が多くなりそうなので、苦手な方はすみませんが注意して読んでください。

本編とは違った雰囲気のウツホをお楽しみいただければ幸いです。


↓からは短編集の時のあとがきとなります。



『絶対正義』の、もしもverです。

このウツホは、ワンピ世界に来た時にから、不運の連鎖で狂っています。
騙され、見せ物にされて、売られそうになって、それが嫌で逃げ出すときに能力使ったら指名手配。迎撃していたら懸賞金増えて凶悪犯扱い。一度叩きのめされて、捕まりインペルダウンにも送られています。

踏んだり蹴ったりで何もかも嫌になって、精神がやられて来た時に、灼熱地獄後に似ている、インペルダウンのレベル4”焦熱地獄”をみて、ウツホに大覚醒。能力者と勘違いされていて、付けられていた意味の無い海楼石の手錠を溶かし、インペルダウンを半壊させ脱走しました。

妖怪の本能丸出しなうえ、中の人が狂っているので、地上を灼熱地獄に変えて、いもしない地底妖怪を地上に出て来れる様にしようと考えてます。
しかし、鳥頭なのは相変わらずですけど。

世界中を飛び回って、お腹が減ったり、気が向いたら島や船を襲っています。
世界最速の移動手段なので、居場所を掴む事すら難しいうえ、下手に手を出すと爆発すると言う、正に核爆弾的なあつかいで、世界政府も中々手が出せない化け物となっています。

このウツホは、その内、新世界で四皇辺りに殺される運命です。実はただ単に一人ぼっちで寂しすぎて狂っちゃっただけなんで、白ヒゲ辺りにぶっ飛ばされて「息子」ならぬ「娘」にしてもらえれば、幸せになれそう。
その前に、白ヒゲの家族殺しちゃいそうなんで、難しそうですがw


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