魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第4話:遺失宇宙船 手に入れるは闇撒く王〈前編〉

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 アースラが地球のすぐ傍の次元空間に在るポートへ入り、固定されて入口が開くとクロノ・ハラオウン、エイミィ・リミエッタに、ユーノ・スクライアという主要メンバーが出てきた。

 

 他の乗組員は艦内で半舷休息を取らせている。

 

 地球は管理外世界だし、異世界の人間に対する法律が整備され、下手に入れる訳にはいかないからだ。

 

「直接的に会うのは久方振りになる、クロノ・ハラオウンにユーノ・スクライアにエイミィ・リミエッタ」

 

 フルネームで呼ぶ辺り、余り歓迎していないというのが本心だろうが、それは厄介事を持ってきた連中に甘い顔はしないだけ。

 

「今回は要請を受けてくれた事に感謝する」

 

 一同を代表してクロノが謝辞を述べた。

 

 初めて会った時に比べ、背丈が伸びて顔も少しだが大人びている。

 

 一六歳にもなれば成長期もそろそろ終わりだけど、当初がまだ伸び盛りだったからか、上手くすれば隣の副官より背が高くなりそうで何よりだ。

 

 流石に彼女より背丈が無いのは悔しいだろうし。

 

 最近になって、クロノはエイミィと恋人という間柄となったて聞く。

 

 順当な事だと思う。

 

 元より原典でもクロノはStSでエイミィと結婚、二卵性な双子の息子と娘を儲けていた。

 

 ユートか他の転生者共が何かしら干渉しない限り、原典の通りに進むのは他の世界でも確認した事実。

 

 逆に云えば干渉したら、まず間違いなく原典からは外れてしまうという事で、ユートは取り敢えずクロノとエイミィには不干渉を貫こうと考えた。

 

 幸いにも時空管理局に居るらしき転生者は、クロノとエイミィというよりかはエイミィに手出ししなかったらしく、二人は正に順当に付き合い始めた。

 

 クロノが一六歳でエイミィが一八歳の筈で、順当にいくなら二年後には結婚をするのではなかろうか?

 

 とはいえカレルとリエラはStS時点では三歳で、つまりエイミィが二二歳の時に仕込まれて、二三歳で出産をした計算となる。

 

 となると行き成り結婚ではなく、仕事が忙しいから婚約で落ち着いてクロノが二〇歳くらいで結婚をし、初夜からも遠くない時期に仕込まれたと視るべきか?

 

 ユートはそこら辺の設定までは識らない。

 

 ユートが原典介入して、ひょっとしたら付き合いやそれに伴うあれこれが変わった可能性もあり、必ずしも同じ流れになるとは限らないのも痛い。

 

「さて、厄介な事をしてくれたな? ユーノ・スクライア」

 

「うっ!」

 

「確か前にも言ったよな? 遺跡発掘を僕は是としていない。否定もしないが、下手な発掘は場合によっては危険を伴う。本人だけが死ぬなら勝手に死ねば良いんだが、それに世界を巻き込むなど言語道断だと」

 

「は、はい……」

 

「ま、今回は時空管理局に責任の多くがあるみたいだけど……な」

 

 【仮面ライダークウガ】の例もある。

 

 知らなかったとはいえ、グロンギを復活させた上に本人はさっさと退場して、後始末を生きていた人間にさせているとか。

 

「さて、それじゃあ早速だが行こうか」

 

「何処へだ?」

 

「発掘現場に決まってる。発見された遺失宇宙船(ロストシップ)は全部で七隻 だけど、闇の遺失宇宙船は六隻なんだ。ならば残りの一隻はヴォルフィード……形が残ってりゃ御の字なんだがね」

 

 原典ではデュグラ・ディグドゥ達は、特にヴォルフィードへと攻撃を仕掛けず去っている。

 

 だからアリシアと呑気に会話し、契約を交わす事が原典のヴォルフィードには出来たのだが、流石にそれは望み薄であろう。

 

「然し、アースラのクルーには半舷休息を言い渡しているんだが?」

 

「アースラ? 時空管理局のポンコツ艦なんか使えるものかよ」

 

「ポ、ポンコツ艦!?」

 

 最新鋭とかではないが、これでもアースラは充分な技術で造られた艦であり、決してポンコツ艦などでは無いとクロノは声を大にして言いたい。

 

 父、クライドが乗っていた二番艦エスティアと謂わば同型艦なのだし。

 

 L級二番艦エスティア、アースラの同型艦で嘗ての【闇の書事件】で暴走した闇の書に取り込まれた為、ギル・グレアムが魔導砲のアルカンシェルで消し飛ばした経緯がある。

 

「僕の艦であるアウローラを使う。あれはヴォルフィードやデュグラ・ディグドゥなんかの技術も使っている現代版遺失宇宙船だ」

 

「現代版?」

 

「要は君らで言う古代遺失物(ロスト・ロギア)を解析して再構築したみたいな、そういった艦だって話だ」

 

「なっ!?」

 

 失われた古代技術の再生とは、時空管理局であっても苦労に苦労を重ねる必要があった。

 

 それ程の偉業である。

 

「ユーキが居てこその技術再生だけど……な」

 

「ユーキか。確か君の妹という話だったが?」

 

「まぁね」

 

 前世での義妹に過ぎない上に、自分の槍をユーキの鞘に納める関係だけど。

 

「ユーキは科学、僕は魔法を主に研究発展させてきたからね。まぁ、尤も今ならお互いにそれぞれを手伝える程度に技術も知識も持ち合わせているけどな」

 

 流石に専門的に過ぎると無理だけど、ちょっとした技術ならユートも持つ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 機動光覇艦アウローラ。

 

 機動と名前が付く通り、高速機動が可能な艦だ。

 

 尚、光覇は神と似た意味合いで使っている。

 

 単純なシルエットだけならヴォルフィードに似て、中央にブリッジや居住区を含む機能を、その左右には武装を持たせたモジュールを装着させていた。

 

 ソードブレイカー自体を思い返せば解り易い。

 

 中央に有る居住区こそ、【ハイスクールD×D】の世界で我が家的に使っていた部分、その一部だった。

 

「これが遺失宇宙船の技術を取り込んだ艦なのか」

 

「見た目には普通だよね。アースラとそんなに変わんないかな?」

 

「だけど、外装はアースラと違って何処かしら有機的なフォルムだったよね」

 

 クロノ、エイミィ、序でにユーノが感想を述べる。

 

「内装なんて其処まで奇抜にする部分じゃないだろ。外装が有機的なのは遺失宇宙船の特徴だね」

 

 ヴォルフィードやらデュグラ・ディグドゥは疎か、海賊が拾って使っていた艦でさえそうなのだから。

 

「システム・ダークスターのキャンセル自体は不可能だが、僕が居れば致死系の能力にせよ何にせよ防御をする事が可能だ」

 

 冥王の加護とでもいうべきだろうか、相手を死へと至らしめるシステムに防衛が出来る。

 

 アウローラに積んでいるシステム・ダークスター、それを防げるのは実験済みなのだから。

 

「これは?」

 

「三角錐の形をしてるのが三〇〇m級攻撃艦【ガルヴェイラ】だ。魔王の弓……【颶風弓(ガルヴェイラ)】の名前を与えられた艦」

 

 ユートが現場に着くまでの暇潰しがてら、モニターに敵となる遺失宇宙船の姿を映し出した。

 

「特徴らしい特徴は無い。極めて平均的な機能を持たされた艦だよ」

 

 次に映し出されたのは、元となる武器のレプリカ。

 

「これが【颶風弓】だ」

 

「って、魔王の武器とやらの映像?」

 

 見た目に弓には見えないのだが、手にして精神力を汲み上げたならリムと弦を精神力で形成する訳だ。

 

「レプリカだ。飽く迄も、僕が造った……な」

 

 精神力を使い手から汲み出し、光の矢に換えて放つ【颶風弓】はアニメ版では切札的な武器となる。

 

 次の艦は蝙蝠に似た三枚の翼を持つ様な艦。

 

「三〇〇m級機動殲滅艦【ネザード】。攻撃力自体は大したもんじゃないけど、機動殲滅艦なだけあってか機動力は高い。ニードルレーザーもアースラの装甲なら紙を貫くが如くだろう。また、ヴォルフィードにも実装されているリープ・レールガンを持つ唯一の艦」

 

「リープ・レールガンとは何なんだ?」

 

「要はレールガンでリープ弾を放つ兵器。時空管理局の嫌いな質量兵器の類いってやつさ。リープ弾とは、命中した衝撃を切っ掛けに発動をする空間兵器でね、半径五〇mを何処とも知れない空間に放逐するんだ」

 

「何だって!?」

 

「あれの前にはどんな装甲だろうが御構い無く消し飛ばされるし、下手に装甲を貫通されたら終わりだな」

 

 相当に危険な兵装だ。

 

「こいつが魔王の爪……【毒牙爪(ネザード)】だな。見た目には杖に熊手みたいな三本の精神力の刃が爪の様に出る感じか」

 

 アニメ版【スレイヤーズTRY】に出てきた武器であり、当然ながユートが今もレプリカを持つ。

 

「一七〇m級機動駆逐艦【ラグド・メゼギス】だよ。二等辺三角形ってのが似合う艦体に、周囲には五基の慣性中和チップ」

 

 

「慣性中和チップとは?」

 

「物理法則上、如何なる物も動けば慣性が生じるが、それを正に中和するチップという訳だ。それにより、ラグド・メゼギスは物理的な法則を越えた動きを可能としている。例えば、真っ直ぐ高速で突っ込みながら行き成り横にスライドしてみたり……な」

 

「ば、莫迦な……」

 

 確かに物理法則を気にしない動きである。

 

「とはいえ、ネザードと同じく攻撃力は低い。武器はニードルビームくらいだ」

 

 ニードルレーザーとどちらがマシか? それはその時のシチュエーション次第であろう。

 

「機動力確保の為に装甲は薄いが、それでもアースラの通常兵装じゃあ弾かれて終わりだろう」

 

「判ったよ!」

 

 憮然となるクロノ。

 

(まぁ、攻撃力がアニメ版に準じていたら間違いなくヤバいけどな)

 

 アニメ版【ロスト・ユニバース】のラグド・メゼギスとは、グラビトン砲なんて重力兵器を搭載していた凄まじい火力の艦。

 

 そうでない事を祈る。

 

「この上下に精神力の刃を生むのが魔王の槍、【瞬撃槍(ラグド・メゼギス)】。僕もレプリカをよく使う」

 

「そ、そうか……」

 

 嘗てはタバサに使わせていたが、今は返還をされてユートが使っていた。

 

 使い勝手の良さから他より使用頻度が高い。

 

 次が映し出される。

 

「五五〇m級超長距離砲撃艦【ボーディガー】、見た目は基本が円錐形で特殊な武装は五基一組でボーディガーの放つ攻撃を操る照準(サイト)チップだ。これにより砲撃を曲げるのは御手の物だし、超長距離砲撃艦の名に恥じない距離を砲撃する事も可能」

 

 五基一組が一〇セット、つまりは全部で五〇基。

 

「これはまた、とんでもない代物だな……」

 

「とはいっても欠点も割とあってね、エネルギーチャージの問題から連続攻撃は出来ないんでタイムラグが生じるし、そもそも砲撃しかやれる事が無い」

 

「それは欠陥だな」

 

「とはいえ、奴等は本来だとデュグラ・ディグドゥの護衛艦。つまり五機で連携をするのが理想なんだ」

 

「――む?」

 

 ヴォルフィードに搭載された【消去(イレイズ)システム】さえ無かったなら、原典で連中はバラバラに戦う事は有り得なかった。

 

 嘗ては一括りに纏めて、六機がシステムで封印されてしまったし、エネルギーの問題から一機ずつ戦うしか無かったのである。

 

「ま、砲撃艦なだけに火力は高い筈だよ」

 

「だろうな」

 

 頷くクロノ。

 

「これが魔王の槌――【破神槌(ボーディガー)】だ。槌とか云いながら生じているのは斧の刃なんだけど」

 

 アニメではエルロゴスが主に使っていた。

 

「レプリカを持っているんだよな?」

 

「ま、造ったのは僕だから当然だろうね」

 

 余り使わないけど。

 

「四一〇m級重砲撃艦【ゴルンノヴァ】、見た目には翼を閉じた鳥って感じだ。六基の空間レンズを使って攻撃と防御をする。空間レンズを使えば『奴』は攻撃を収束も拡散も出来る」

 

 攻防一体で、リープ・レールガン以外では有効打を与えられない。

 

 但し、艦首の眼となっている部分は湾曲された空間の外を視るべく、レンズの範疇外となっていて唯一の弱点である。

 

「魔王の剣、【烈光の剣(ゴルンノヴァ)】。狂える魔王【闇を撒くもの】デュグラ・ディグドゥを、魔王自身の武器たるコイツにて天使キャナルが滅ぼした。それが遺失宇宙船を造り出した先史文明の神話だよ」

 

「そんな神話が?」

 

「そして、赤の竜神スィーフィードと【赤眼の魔王】シャブラニグドゥの世界、其処に撒かれていた【烈光の剣】は、魔王の腹心たる冥王フィブリゾが元の世界へと戻した。という事は、間接的にフィブリゾが魔王を滅ぼす手伝いをしたって事になる。仕える相手じゃない魔王とはいえ……な」

 

 何とも間抜けな話。

 

「そして、紡錘形を基本とした生体殲滅艦【デュグラ・ディグドゥ】。最初から教えた通り生体殲滅に特化した艦で、システム・ダークスターを持つ」

 

「あ、ああ」

 

「狂える魔王【闇を撒くもの(ダークスター)】デュグラ・ディグドゥの名を与えられ、先史文明を滅ぼし尽くした正しく魔王」

 

 ゴクリと固唾を呑む。

 

「最後に漆黒の竜神(ナイトドラゴン)ヴォルフィードの名を与えられた艦――一九五m級戦闘封印艦(ソードブレイカー)ヴォルフィードだ」

 

 サイ・バリア。

 

 サイ・ブラスター。

 

 リープ・レールガン。

 

 プラズマブラスト。

 

 消去システム。

 

 その時代の全てを懸けて造り出された最新最終艦、先史文明が最後に造り上げた正に『最後の希望』。

 

「果たして、何とかなるかどうか……」

 

「どういう意味だ?」

 

「僕がわざわざ発掘現場に向かう理由、それは破壊をされた可能性の高いヴォルフィードの回収だよ」

 

『『『『っ!?』』』』

 

 初めて目的を知らされ、全員が絶句をした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「発掘現場……何て事に。滅茶苦茶じゃないか!」

 

 ユーノ・スクライアが憤るのも無理は無い、発掘をしていた遺跡が攻撃に晒されてズタズタなのだから。

 

 ユートは余り良い顔をしないが、考古学者もそれはそれで矜持がある。

 

 勿論、単なる名誉欲に駈られた俗物もいるだろう、然しユーノには矜持というものが確かにあった。

 

「ユーノ、捜せ。ヴォルフィードを」

 

「う、うん。判ったよ」

 

 闇側の六隻の艦は影も形も無く、思っていた通りにヴォルフィードを攻撃したらしい。

 

「なのは、フェイトも捜索を頼むぞ」

 

「それは了解したけど」

 

「艦と艦の戦いになるなら私達って居るのかな?」

 

 この場には高町なのは、フェイト・テスタロッサの二名も来ている。

 

 勿論、夜天ファミリーの面々も来てて早々にはやてが指揮を執っていた。

 

 探索に関しては湖の騎士シャマルが担当しており、補助に盾の守護獣ザフィーラが付き、剣の騎士シグナムと鉄槌の騎士ヴィータは力仕事を担当する。

 

 主に瓦礫撤去だ。

 

「いや、最近ってか最初から【魔法少女リリカルなのは】らしくなかったから、ある程度の出番をね」

 

「うにゃぁぁぁああっ! 魔法少女じゃないよ!? ってか、そのタイトルで呼ばないでぇぇぇぇっ!」

 

 なのはは自身が主人公のアニメの事を聞かされて、余りにも恥ずかしくなったらしく、『リリカル・マジカル』とか言い辛くなっていたらしい。

 

「処で、また辛くて長い戦いになるのかな?」

 

「ん? ならないだろう」

 

「……へ?」

 

「再生怪人なんてワンパンで終わる事すらあるんだ」

 

「えっと……?」

 

 意味が解らないという顔のフェイト。

 

「あのね、フェイトちゃん……再生怪人っていうのは一回は登場した怪人が悪く言えば使い回されるんだ。そんな再生怪人って主人公に一蹴されちゃうんだよ」

 

「そういうものなの?」

 

「うん」

 

 流石になのはは理解していたのか、フェイトに懇切丁寧? な説明をした。

 

 それは理に叶っているかどうか微妙だが、フリーザでさえ再生怪人として現れた劇場版で、悟飯によって一撃の下に斃された程だ。

 

 当時は指先一つでダウンさせられた筈の敵だけど、その時ばかりは関係が逆転していた。

 

「白夜から聞いた【仮面ライダージオウ】の最終回、ン・ダグバ・ゼバでさえも僅か一蹴りだったみたいだからな。それと仮面ライダーエボルもか」

 

「ン・ダグバ・ゼバって? 仮面ライダーエボル?」

 

「ン・ダグバ・ゼバってのは【仮面ライダークウガ】に出てくるラスボスでね、究極の闇とか言われる最悪の存在だった。主人公であるクウガが同質の存在にならないと戦えないレベル。そいつが一蹴りらしいから再生怪人ってのは……」

 

 まぁ、主人公はそもそも全ての【仮面ライダー】の王な訳で、アルティメット・クウガより強かったのかも知れないが……

 

「仮面ライダーエボルは、僕も一応はレプリカとはいえ変身が出来る【仮面ライダービルド】のラスボス。まぁ、聞いた話しによるとブラックホールフォームじゃなかったらしいけどな」

 

「ブラックホールフォームって何?」

 

「主人公の仮面ライダービルドのハザードフォーム、それと似た強化アイテムで変身をするフォームだよ。僕は気に入って変身したりしてるけど、一応はダークライダーなんだよね」

 

 ラスボスだし。

 

「敵なんだよね?」

 

「ユーキが以前に造ってくれたエボルドライバーと、ブラックホールフォームに変身するエボルトリガーでなれるんだよ」

 

「ユ、ユーキちゃんって」

 

「因みに、ユーキは仮面ライダービルドに変身する」

 

 当然、スプラッシュとかハザードにジーニアスをも網羅している。

 

 何故にユートへ【エボルドライバー】を渡したのかといえば、ユートの特性がブラックホールだったからだった。

 

「まぁ、それは兎も角……デュグラ・ディグドゥらは以前にも戦っているんだ。僕からしたら再生怪人と変わりないよ」

 

「そ、そうなんだ」

 

「私達は初めてだからそれは複雑かな」

 

 ざっくりと説明を受け、タラリと汗を流してしまうなのはとフェイト。

 

「おおい、何か崩れ落ちた跡みたいなのがあんぞ!」

 

 話しているとヴィータが叫んで此方を呼ぶ。

 

「何か見付けたか」

 

「崩落の跡?」

 

「行ってみよう、ユート、なのは!」

 

 ヴィータの居る場所へと全員が駆け寄り、崩落の跡とやらを観察してみる。

 

「此処、確か遺失宇宙船が並んでいた場所に近いね」

 

 ユーノが言う。

 

「となると、この下へと落ちた可能性があるんだな。だったら万が一にも無事に残っているか?」

 

「だとしたら、僕としても面目が立つし嬉しいけど」

 

「取り敢えずは、爆裂呪文(イオラ)!」

 

 バカンッ!

 

 穴を塞ぐ岩の塊をイオラでぶっ飛ばす。

 

「ちょっ、何をやってくれてんの!?」

 

「爆裂呪文で瓦礫撤去」

 

 事も無げに言うユート、遺跡その物は既に木端微塵になっていたし、瓦礫の下が穴になっているのも確認済み、ならば多少は乱暴でも爆裂呪文で退かすのみ。

 

「降りるぞ」

 

 穴に飛び込むユートに続く形で全員が降りた。

 

 穴の底に有ったのは艦、有機的な黒い装甲を持った全長一九五m、中央に艦橋を据えて左右に武装を兼ねたモジュールを備えた正しく戦艦であったと云う。

 

「見付けた、ヴォルフィードに間違いない」

 

 嘗てソードブレイカーとしての外装をパージして、本来の姿に戻ったヴォルフィードを見たユートには、目の前の艦が本物なのを確かに識っている。

 

(折角だからな、ヴォルフィードにはやっぱり女の子の姿になって貰うか)

 

 ケイン・ブルーリバー、アリシア・ツォン・スターゲイザー、この二人をマスターとした際にフォログラムが女性型で人格も女性だったのは、初めて出逢ったアリシアを怖がらせない為の措置だった。

 

 結果、姿は自らを造った研究者の一人から構築し、名前はモデルの女性は長過ぎたから、ヴォルフィードの名に相応しくデュグラ・ディグドゥを滅ぼした天使キャナルから貰っている。

 

 どうせならその姿と名前で頼みたい。

 

 ユートは男だからムサい男を隣に侍らすよりかは、やはり可愛らしい女の子の方が良かったから。

 

「ちゃんと聞こえてるか、ヴォルフィード!?」

 

『――何者?』

 

 ノイズ混じりながら声を出すヴォルフィード。

 

「喋った? 艦が!?」

 

「煩い、ユーノ。デバイスだって喋るだろうが」

 

「それはそうだけど!?」

 

「兎に角、黙れ!」

 

「は、い……」

 

 口を閉じるユーノ。

 

「状況は理解してるか?」

 

『デュグラ・ディグドゥ達が解き放たれ、私は攻撃を喰らってこの様……』

 

「君は自分の造られた使命を覚えているよな?」

 

『デュグラ・ディグドゥらを封印する』

 

「既に先史文明と云われ、君を造った連中はデュグラ・ディグドゥの力によって滅びたが、それでも使命を果たしたいのか?」

 

『それが我が使命』

 

「なら、利害は一致する。僕も滅びを齎らすデュグラ・ディグドゥを許す心算は無いからな」

 

 ヴォルフィードは沈黙、ユートを視て考えているのであろう。

 

『貴方の傍には闇が在る。負の想念を喰らう存在だ』

 

「伝説の魔王【闇を撒くもの】デュグラ・ディグドゥと同質な存在、【赤眼の魔王(ルビーアイ)】シャブラニグドゥの五人の腹心……覇王グラウシェラーが産み出した覇王将軍シェーラ。彼女を管制人格としている艦船を持ってるからな」

 

『……』

 

 再び沈黙。

 

「既に彼女は一蓮托生だ。負の想念こそ喰らうけど、滅びを望む存在じゃない」

 

『了解した。どの道、貴方を頼らねば使命は果たせない様だ。今は信じよう』

 

 ヴォルフィードは取り敢えずだが、ユートを信じてみる事にするのだった。

 

 

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