魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第11話:大混乱 集まる鍵の少女達

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「む? 貴様は小鴉か? それと何だその頭の悪そうなのは?」

 

「ええっ!? それってば若しかして私の事?」

 

 行き成りな科白に吃驚なキリエ、それは全くの心外だと心中で思った。

 

「あやや、口が悪いなぁ」

 

「ふん、我の口調に文句など言わせんわ!」

 

「ほんま、王様やねぇ」

 

 偉そうな口振りは確かに王様らしいかも知れない。

 とはいえ、キリエ的には彼女らの話には付いていけないけど、王様が現れてくれたのなら良い機会なのだろう。

 

「折角だ、王たるこの身の無敵の力! さっそく披露してやるとしよう!」

 

 はやてのシュベルトクロイツに似た杖を手にして、王様――ロード・ディアーチェがニヤリと笑う。

 

「我が主!」

 

「リインフォース!」

 

 リインフォースが合流、目の前のはやてそっくりな2Pカラーを見遣る。

 

「あれが嘗て闇の書の中に在った【闇統べる王】」

 

「はい。私達マテリアルを纏める王です。とはいえ、降臨したばかりでは魔力が不安定、今なら戦って勝つ事も難しくありません」

 

「んん、なら取り敢えずは制圧しよか」

 

 必要不可欠なマテリアル三人娘、そしてフローリアンであるキリエも居た。

 

 連絡を受けて未来からの来訪者、ヴィヴィオ・ゼーゲブレヒトとアインハルトとトーマとリリィは確保、この二人を確保したならば残りはアミティエ・フローリアンのみだ。

 

 ヴィヴィオは本来の流れではなのはの義娘らしく、高町ヴィヴィオとなっていたと聞くが、ゼーゲブレヒトを名乗った辺り未来では随分と歴史が違うらしい。

 

「さあ、一踏ん張りやな」

 

「では、我が主」

 

 はやてとリインフォースが向き合う。

 

「「ユニゾン・イン!」」

 

 ユニゾン。

 

 融合騎と呼ばれる特殊なデバイス、リインフォースはそんな融合騎の一騎。

 

 融合すると多少の外見が変化し、パワーアップしてしまえるから便利。

 

 元々、大容量な魔力持ちの八神はやては並列処理が苦手なのだが、ユニゾンしたリインフォースがそちらの処理も可能となり。

 

「ほう、融合したか」

 

 【闇統べる王】は余裕な態度でリインフォースとの融合をしたはやてを見る。

 

 今のはやては騎士甲冑な姿は元より、髪の毛や瞳の色に変化があった。

 

 剣十字(シュベルトクロイツ)を握るはやて。

 

 正確にはシュベルトクロイツとは、未来ではやてが今の杖の代わりをデバイスとして造った物だが……

 

「大空聖衣・(クロウ)! スタンバイ!」

 

《Ready Setup》

 

 黒い鴉を象った機械的なオブジェが顕れた。

 

 夜空に輝く星々。

 

 古来、人はその並びへと名前と形を見出だした。

 

 星座と呼ばれるそれは、基本的に生物を象る。

 

 空を翔るモノ。

 

 海を泳ぐモノ。

 

 地を走るモノ。

 

 無論、無生物な星座とて存在している。

 

 顕微鏡座やら杯座やら、アルゴ船を形作る要素には艫座や竜骨座や羅針盤座や帆座なども在るが、これらは生物でなくとも大海聖衣にカテゴライズされる。

 

 とはいえ大半が生物で、故に大空と大海と大地という名前を持たせたのだ。

 

 なのはとフェイトと加えてすずか、この三人に与えたのは空を舞う鳥を象った大空聖衣。

 

 そしてはやてに与えたのも烏座から大空聖衣だ。

 

 尚、これらの読み方だがオリジナル鋼鉄聖衣から、大空聖衣(スカイクロス)大海聖衣(マリンクロス)大地聖衣(ランドクロス)と呼ばれている。

 

(うん、優斗君の事やから狸関連の星座が有ったら、間違いなくそっちを造っとったんやろうね)

 

 小狸座とか?

 

 残念だが小狐座ならあるのだけど。

 

「な、何だそれは!?」

 

「夜空に煌めく星々の並び……星座を象る鋼鉄聖衣! 大空聖衣(スカイクロス)(クロウ)や!」

 

 小鴉なだけに。

 

「よもや我も知らぬ武装を持ち出すとはな! だが、我とて長々と雌伏の時を過ごしてはおらぬわ!」

 

「待って下さい王よ」

 

「うん? ……貴様まさかシュテルか?」

 

「ロード・ディアーチェ、この姿ではお初です」

 

 呼ばれて振り向けば何と無く解る気配、自分と比べ見た目が中学生くらいだからすぐに気付かなかった。

 

「何故シュテルが小鴉と共に在るのだ!?」

 

「それは記憶を喪い彷徨っていたのを、彼女らを纏める方に救われたからです」

 

「むむ?」

 

 仲間な筈のマテリアル−Sたるシュテルがまさかの離反、ディアーチェとしては戸惑いを隠せない。

 

「序でに言うならレヴィも確保済みですよ」

 

「な、何だとぉぉっ!?」

 

 マテリアル三基の中で、既に二基があちら側に与している……そんな情報を受けては驚くしかない。

 

「という訳でディアーチェも来ませんか?」

 

「ぬぬぅっ!」

 

 おいでおいでしてる。

 

「ディアーチェのしたい事は理解もしますが、地球で下手に暴れたらユートに潰されますよ?」

 

「塵芥などに潰される筈があるまい! 【砕け得ぬ闇】さえ手に入れば!」

 

「そちらも既にユートにより回収されてます」

 

「なっ!? ぬわんだとぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 最早、ディアーチェとて開いた口が塞がらない。

 

「それにやりたい事に理解は示しますが、私はユートの傍に在りたいので参加は出来ませんよ?」

 

「シュテル! 貴様は!」

 

 真っ向から裏切り宣言、然しながらシュテルは元々の所属が紫天ファミリーというだけで、記憶喪失状態で彷徨ってユートに拾われた時点でユート陣営、記憶が戻ると同時に紫天陣営に戻るかユート陣営に残るか選んだだけ。

 

 ユートの嫌いな、不利になったから裏切る裏切者という訳ではない。

 

 まあ、ユートの場合だと傭兵の仁義みたいなものが根底に有り、それに関してはファイゼル・リッターと仲良くなったのが大きい。

 

 ハルケギニア時代にて、彼方側――ゼロの使い魔――の世界に習合されていたエレンシア大陸より来て、早い内にユートと接触を持った【新生フェンリル】。

 

 そのリーダーとなるのがファイゼル・リッターだ。

 

 エレンシア大陸での戦争――エレンシア戦役が終結して後、戦闘集団で在り続けるのは難しいと考えていたファイゼルは、政治関連を仲間だった二人に任せて大陸を出奔。

 

 愛するラピスを筆頭に、ファイゼルの新しく創った傭兵団【新生フェンリル】で船旅に出る。

 

 その果てに流れ着いたのがハルケギニア大陸。

 

 ファイゼルはユートと共に提唱された傭兵の纏めを積極的に行い、最終的には戦争が無ければ必要とされない傭兵を、冒険者という形で活かす仕事に就いた。

 

 ハルケギニアにはユートが創ったダンジョンが存在するし、ハルケギニア大陸で出されるクエストでお金は稼げる為、傭兵達は皆が基本的に冒険者と化した。

 

 それは兎も角として……

 

 傭兵は雇い主を絶対に裏切ってはならない。

 

 これがファイゼルの言う傭兵の仁義、下手に傭兵が裏切ったりすると他の傭兵も裏切るのではないか? と懸念されるからだ。

 

 だからエレンシア大陸に於いて、傭兵は裏切者を許したりはしない。

 

 仮に味方であれ裏切者の傭兵は処分されるのだ。

 

 但し、裏切っても構わない事が唯一存在する。

 

 即ち、雇い主が先に裏切った場合という訳だ。

 

 偶にあるらしい。

 

 報酬の払い渋りとかで、雇い主が傭兵を裏切るという事態が。

 

 ある意味で当然の仁義、だけど守られるとは限らないから堪らない。

 

 取り敢えずシュテルのは全くの別物だった。

 

「くっ! よもやシュテルが彼方に付くとは……な。しかもレヴィは既に確保をされているとか! 更には【砕け得ぬ闇】もだと?」

 

 ぐぬぬ! とばかりに、ディアーチェはシュテルを睨み付けた。

 

「お願いですディアーチェ……降伏しろとかは言いませんから、私達と一緒に来て貰えませんか?」

 

「くっ、信用ならんわ!」

 

「私は貴女と同じく紫天の下に集う者。マテリアルなのですよ?」

 

「どうやら男に絆された様に見えるが? 大方、その男のモノに貫かれアンアンと啼かされたのであろう? 快楽に堕ちよって!」

 

「……ポッ」

 

「無表情で頬を染めるな! 何だか無性に腹が立ってならんわ!」

 

 数百年前に跳ばされて、ほむらとシュテルはベルカの群雄割拠に巻き込まれ、戦わざるを得なかった。

 

 そうなるとユートは血に酔う事もあり、敵兵に女が居れば荒々しく壊しかねない勢いで犯す事も。

 

 それが無辜の民にまでも波及しない様、シュテルがその身を捧げたのである。

 

 幸いにも人間ではなく、マテリアルでプログラム体なシュテルは、肉体的にはそれなりに頑丈だったから受け容れ、受け止める事も何とか出来た。

 

 問題は同じく過去に跳ばされた暁美ほむら。

 

 彼女は魔法少女であり、然しながらソウルジェムから解放された存在。

 

 同じ魔法少女でも此方のリリカル製と異なる。

 

 インキュベイター製となる“魔法少女”と呼ばれる存在は、ソウルジェムという小さな宝珠に魂を移し、肉体は謂わばラジコンみたいに動かす器と化す。

 

 その気になれば痛みなどキャンセル出来てしまい、壊れても魔力で修復してしまえる。

 

 ソウルジェムこそ本体。

 

 原典で巴 マミが『マミられ』て死亡をしたのは、飽く迄も頭に着けた飾りとしてのソウルジェムが砕けたからだ。

 

 万が一にもソウルジェムが無事なら仮令、頭から喰われていても修復して生き永らえていたであろう。

 

 まあ、だから実は肉体だけなら不老を貫けたかも知れないが、精神までは人間の侭なのは痛い話。

 

 尚、この世界ではほむらがあれで仲違いしてないにせよ、普通に『マミられ』掛けたがユートにギリギリで救われている。

 

 実際には『マミられ』たのを、権能の【刻の支配者(ハイパークロックアップ)】で時間遡行して助けた。

 

 正確には遡行ではなく、時間の巻き戻しだけど。

 

 あれは普通に時間遡行も可能だが、巻き戻しというのも可能としている。

 

 違いは時間遡行が空間を跳んで過去へ戻るのだが、時間巻き戻しは正にビデオで巻き戻しをするかの如く戻っていく。

 

 そして後者はパラレル化をしない。

 

 『マミられ』たマミと、『マミられ』なかったマミの世界線が、別に創られたりはしないという訳だ。

 

 巴 マミは先輩キャラを演じ、男慣れなどしていない寂しん坊な少女だから、『チョロイン』みたくあっさりとユートに惚れた。

 

 まあ、マミの力を借りるのに時間が掛からないのは良い事だろう。

 

 それは置いといて……

 

 暁美ほむらは魔法少女とはいえその身は人間。

 

 数百年なんて生きられる訳がないのである。

 

 だからユートはほむらに選択肢を与えた。

 

 選択肢は三つ。

 

 一つ目はこの古代ベルカの時代を数十年間を生き、極普通に老いて死ぬという過去時代で終わるルート。

 

 二つ目がコールドスリープなりハイバネーションなりをし、数百年という年月を永らえて過去に跳ばされた直後で覚醒するルート。

 

 三つ目がいっそユートの閃姫となり、共に数百年間を生き抜くルートだ。

 

 ほむらはシュテルを見て更には、ユートと仲良しなオリヴィエやヴィルフリッドを見て、意を決した様に選択肢に答えた。

 

 つまり閃姫となるルートを選んだのである。

 

 ユートは殊更にほむらを性的な目で見てこないが、実はそれが結構ショックだったりするし。

 

 それは即ち、暁美ほむらが魅力的には映ってないと言われた様なもの。

 

 確かに巴 マミに比べれば胸は薄いけど……

 

 そんな自虐に走ったり。

 

 それで閃姫契約の話。

 

 閃姫とは異世界に於いてユートの特殊な武姫だが、この世界でのユートは使徒の事を閃姫と呼んだ。

 

 契約条件はそれ程に厳しくもない。

 

 処女である事。

 

 契約を受け容れる事。

 

 敵意が無い事。

 

 とはいえ、処女でなくとも一応の契約は可能だが、その場合は真の契約者より特典が少ない。

 

 それでも精神強化は有り難いであろう。

 

 ほむらは紅くなりながらも喜んで受け容れた。

 

 実際年齢的には兎も角、幾らかの逆行でそれなりに精神年齢は高い。

 

 知識はどうあれ契約するのに必要な行為に関して、ほむらは確りと理解を示していたのである。

 

 シャワーを浴びてバスタオルに包まれた凹凸の少ない肢体、当然ながら眼鏡も掛けてないし髪の毛もいつもの御下げではない為に、この時ばかりはあのほむらを彷彿とさせる姿。

 

 目付きだけが違う。

 

 キスを受け容れ、愛撫を受け容れ、そして自分自身の胎内でユートの分身をも受け容れて契約をした。

 

 古代ベルカの時代を生き抜く為には力も必要だし、閃姫契約をすれば身体能力もブーストされるから便利は便利である。

 

 魔法少女としては最弱、故にそれ以外の力が必須。

 

 実際にほむらが戦う際、暴力団の事務所から拳銃を失敬したりして、武装頼りな戦い方だったのだから。

 

 魔法少女として多少の、ちょっとした時間操作くらいは可能だが、元々の魔力が低いのは如何ともし難い実状であろう。

 

 それに幼気な少女の姿、敵性国家の一般兵士にとっては殺すよりも愉しい事をしたいだろうし、正体を隠す意味でも仮面ライダーに変身をさせた。

 

 時間逆行的な意味合いからオーディンでも良いが、敢えて仮面ライダーカイザを用いてみる。

 

 カイザドライバーを腰に装着、各種のツールを装備したほむらがカイザフォンに【913】と入力して、【ENTER】キーを押す。

 

 『変身!』と叫びながらカイザフォンをドライバーのバックルに装填すると、黄色のダブルストリームが身体を走り、黒のアンダースーツとアーマーが鎧う。

 

 尚、魔法少女の力も併用可能だから寧ろライダーになった方が強い。

 

 仮面ライダーカイザとはいえ、別に一回変身したら灰になって崩れ去る訳でもなければ、オルフェノクの印が必要な訳でも無い。

 

 何しろそいつはユートの創った聖魔獣カイザだし、単純な能力で云うなら悪魔や天使や堕天使の最上級を相手取れる。

 

 主役級の仮面ライダー、ファイズやブレイドならば更にパワーアップをして、魔王級とも充分以上に殺り合えるのだ。

 

 否、パワーアップしなくともカンピオーネの肉体を持つユートが変身したら、それだけでも魔王級の力を越えてしまう。

 

 それは元々が仮面ライダーにも勝るとも劣らない、そんな身体能力に+をして仮面ライダーの力が有るのだから当然かも知れない。

 

 幾らベルカの騎士とはいっても人間、魔法で身体の能力を上げてもやはりタカが知れている為、そんなのを――仮面ライダーを相手に勝てる筈も無かった。

 

 聖王オリヴィエ――双子座星聖衣。

 

 覇王イングヴァルト――獅子座星聖衣。

 

 拳士ヴィルフリッド・エレミア――牡牛座星聖衣。

 

 この三人に黄金星聖衣を与えていた為、ユート側は基本的に仮面ライダーでの戦闘が主だ。

 

 折角だから、シュテルにはルシフェリオンとルシファーズハンマー繋がりからデルタギアを渡しておき、ユート自身はファイズでの戦闘をしていた。

 

 レジアスへ渡したのが、【ライオトルーパー】を元にしたツールだったのは、真王ユートとその妻――という事になっていたらしい――シュテルとほむらが使った仮面ライダーが所謂、【仮面ライダー555】系であったからだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ユートに快楽責めされ、心を堕とされてしまったのは否定しません」

 

「せぬのか!?」

 

「した処で無意味です」

 

 数百年間をほむらと共に寄り添ったのだ。

 

 今更、ユートから離れる選択なぞ選べはしない。

 

 選べる程に浅い繋がりではなくなっている。

 

「ですがそれだけにユートをよく知る機会に恵まれ、私は彼と敵対する道が貴女の志しを妨げると、その様に判断をしました」

 

「チッ、流石に口はよく回る様だなシュテル」

 

「御褒めに与り光栄です」

 

「褒めとらん! 嫌味に決まっておろう戯けめが!」

 

 激昂するディアーチェ、シュテルは涼しい表情。

 

「まあまあ、余り怒っても精神衛生上よくありませんから。少し落ち着きませんか? ディアーチェ」

 

「だ、誰の所為だと……」

 

 “頭痛が痛い”と謂わんばかりに頭を抱える。

 

「それでどうです?」

 

「何故に今までのやり取りから、我がシュテルに賛同すると思えるのか?」

 

「ダメ……ですか?」

 

「ええい! 上目遣いして涙ぐむな! いったい何を覚えて来とるんだ!」

 

「私がこの仕草でユートの男の子を舐めて上げると、ユートは悦びますから」

 

「聞いとらんわ! お前の艶話しなんぞ!」

 

 少し顔が紅い辺り何も感じてない訳ではなさそう。

 

「ふう、成るべく説得は尽くした心算ですが」

 

 バッッ! 服を裾からはためかせると、腰には少し派手なバックルが付いてるベルトが装着されていた。

 

「――ぬ?」

 

 シュテルが右手に持つはデルタフォン、それに向けて――「変身っ!」――と叫んだ。

 

《STANDING BY!》

 

 そして電子音声と待機音が響くそれを……

 

《COMPLETE!》

 

 デルタムーバのスリットへと装填した。

 

 白いブライトストリームがシュテルの身体を走り、アンダースーツとアーマーがその身を鎧う。

 

 白と黒のモノトーンで、赤いアルティメットファインダー、拡張性は無いけど仮面ライダーデルタは出力がファイズやカイザを上回っていた。

 

 それに拡張性が無いのは飽く迄も原典。

 

 付けようと思えば普通に付ける事も可能であるし、何よりシュテルは魔導師な訳だから魔法も扱える分、多少のデメリットも補って余りある。

 

 デルタフォンとデルタムーバを合体したブラスタ、わざわざそれを引き抜かなくても手にルシフェリオンを出現させた。

 

「少し痛い思いをして貰いますが、我慢をして下さいディアーチェ」

 

「我と戦うかシュテル!」

 

 互いに杖を持ち相対するシュテルとディアーチェ。

 

「あら? 私はどうしたら良いのかしら? 王様が戦うとなると……ねぇ」

 

 キリエはパチクリと目を瞬かせ、頭を掻き上げながら拳銃を手にする。

 

「キリエさん、あんたの事は私が相手を……」

 

 『する』と、はやてが言おうとした瞬間に……

 

「待ちなさいッ!」

 

 新たな声が響いた。

 

「今度は何やの?」

 

「あらあら、アミタったらまたかしらぁ?」

 

「アミタ? アミティエ・フローリアンさんかい! 全く以て千客万来やね」

 

 確かに声のした方を見遣れば、赤毛を御下げ一本に結わい付けた女性。

 

 然しながら、武器や服装の意匠は色違いでキリエと同じものだ。

 

「黒羽白髪なお嬢さん……ピンクで不肖の妹が御迷惑をお掛けしました! この場は私が何とかします! なので皆さんは下がっていてください!」

 

「ちょ、アミタ! 手を出さないでってば! だいたい貴女ウィルスは?」

 

 キリエ訊ねるとアミタは握り拳を作り言い放つ。

 

「あんなもの気合いで!」

 

「はぁぁぁっ!?」

 

「そう! 気合で何とかしてみせます! それこそが私の中に燃え上がるお姉ちゃん魂ぃぃぃっ!」

 

「って、どんな魂や!?」

 

 ポーズをビッ! と決めながら気合を入れアミタ、その姿にははやてだけではなくキリエにディアーチェにシュテルまで呆然。

 

「さあ、参りますよっ! エルトリアの【ギアーズ】たるアミティエ・フローリアン! この世界の運命は私が変えますっ!」

 

「貴女は仮面ライダーエグゼイドですか!?」

 

 シュテルはシュテルで、アミタにツッコンだ。

 

 

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