魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第10話:王様 降臨するは闇統べる王

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 今、八神はやてに絶望の時が訪れていた。

 

 それは少し前……

 

「やっと見付けた」

 

 はやてとシュテルの前にピンク髪の女性が現れる。

 

「王様、初めましてぇ……私はキリエ・フローリアンと申しますぅ」

 

 ともすれば媚びていると取られかねない、甘ったるい喋り方ではやてに自己の紹介をしてきた。

 

「はぁ、初めましては確かにそうやけどな。あんな、キリエさんいうたかな? 私はキリエさんが言う王様ちゃうんよ」

 

「……へ?」

 

 はやてからの言葉に対しキリエは、全く意味が解らないと首を傾げる。

 

「私の名前は八神はやて。【夜天の魔導書】の現在のマスターです」

 

「夜天の魔導書? えっと……【闇の書】は?」

 

「綺麗サッパリ消えましたから、今はもう存在しとりませんよ」

 

「はい?」

 

 【闇の書】の中に存在してる永遠結晶エグザミア、【アンブレイカブル・ダーク】というシステムの核。

 

 【闇の書】が消滅したならエグザミアは?

 

 【システムU−D】は?

 

「私らの目的もキリエさんと同じや」

 

「私と同じ?」

 

「そ、王様やね。ちょお、目的があってな? 王様の確保をせなあかんねん」

 

「目的……ねぇ」

 

「キリエさんも一緒に来ぃへんか?」

 

「んん? 私も?」

 

「キリエさんの目的も実は識っとるんよ。必要なのは永遠結晶エグザミア。それを手に入れてエルトリアの【死触】をどうにかしたいゆうんやろ?」

 

「っ!? 何で? まさかアミタと接触したの?」

 

「アミタ? ああ、お姉さんのアミティエ・フローリアンさんの事やね。それは違うよ、私らは事情に詳しいブレインが居るだけや。王様の確保もそのブレインが予め、私らの司令官さんに言っとった事やもん」

 

 どうあっても原典通りにはいかないから、ある程度の指標をユートは司令官のクライド・ハラオウンへと伝えてあり、それを基にしてファジーに動かしているのが現状だ。

 

 例えばなのはがキリエに会う可能性もあったけど、この場合はなのはが王様に接触をしただろう。

 

「どや? 優斗君なら悪い様にせぇへんよ?」

 

「……悪いけど信用は出来ないわね」

 

「やっぱりかぁ。出逢うたその日に信用してくれ云うんは虫が良すぎやな」

 

「貴女が王様じゃないなら用は無いわね」

 

 飛び去ろうとするキリエだったが……

 

「私が居ますよ」

 

 待ったを掛ける者が此処に居た。

 

「……誰?」

 

「王の補佐役、理の構築体(マテリアル)たるシュテルと申します」

 

「! マテリアルッ!? どうしてそれがソコの娘と一緒に居るのかしら?」

 

「記憶を無くして彷徨っていた私を、ユートが拾ってくれましたので」

 

「……」

 

「今ならレヴィ……つまり【力】のマテリアルも共に居ますね」

 

「っ! 後は王様だけか。しかも【砕け得ぬ闇】たるエグザミアも確保済みね」

 

 シュテル・ザ・デストラクターとレヴィ・ザ・スラッシャーの構築体、そしてロード・ディアーチェが揃えば【システムU−D】の制御はし易くなる。

 

 ユートが彷徨うシュテルを拾ったのは、伊達や酔狂などでは決して無い。

 

「はっ!」

 

「この感覚は……王?」

 

 魔素が集まる。

 

 それを基にプログラム体がリアライズ、はやてに似た実体を作り始めていた。

 

 ぶっちゃけ、目付きを悪くした銀髪青目なはやて。

 

「ふふふ……はははっ……はーーっはっはっはっ! 黒天に座す闇統べる王! 降っ! 臨っっ!」

 

 その名はいと高き王――【闇統べる王(ロード・ディアーチェ)】。

 

「漲ぎるパゥワァァーッ! 溢れるぞ魔力ッ! 奮えるほど暗黒ゥゥゥゥウウウッッッ!」

 

 バッと両腕を開きながら叫び笑うディアーチェ。

 

「ホンマに中二病全開や」

 

 原典では気にしなかった筈だが、ユートに出逢って少し感覚が変わったのか?

 

 自分に似た“美少女”の発言に、八神はやては絶望にも似た表情を浮かべてしまうのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 相生家。

 

 今現在、相生呂守の部屋に璃亜が訪ねて来ている。

 

「兄さん、ボク達はどうするのかな?」

 

「どうって?」

 

「彼からは好きにして構わないって言われてるけど、ボクらはこれからどう動いていく?」

 

「……そう言われてもな。聖衣は取り上げられてないから確かに、地球で聖域に参加するのもアリだろう。ミッドチルダに渡って時空管理局に入るなり聖王教会に入るなりも可能だ」

 

 とはいえ、現段階で時空管理局というのは悪手。

 

 ユートは子供がどうの、違法がどうのには無頓着みたいに言ってはいたけど、そもそも原作でクイントが死亡し、メガーヌが利用をされていたりしたのだって管理局の不備からだ。

 

 トップである最高評議会からしたら、ゼスト隊とは極めて邪魔で不愉快な存在だったのだろう。

 

 況してや、自らの暗部を探る連中を生かしておくなどある筈もない。

 

 結果、ゼスト隊は全滅。

 

 他のメンバーは描写すら無かったが、隊長のゼストは死亡後にレリック・ウェポンの実験体に、クイント・ナカジマは死亡後に家族の許へ遺体が還された。

 

 メガーヌ・アルピーノは肉体的には生きていたが、謂わば仮死状態の侭に放置されており、ルーテシアに言う事を聞かせる道具扱いとなってしまう。

 

「……ミッドチルダに行けば助けられたりするか?」

 

「多分、意味が無い」

 

「何でだよ? そりゃあ、まだ俺らはセブンセンシズにすら目覚めていないし、黄金聖衣を持つには半端者かも知れないが、魔導師が相手なら敵は居ないぜ?」

 

 黄金聖闘士と呼ぶには、正しく半端者でしかないにせよ、それでもそこら辺の白銀聖闘士よりは強い筈。

 

 白銀聖闘士の最高峰とは極超音速――ハイパーソニックに達するマッハ5以上という速度。

 

 最低限でもマッハ2以上という超音速である。

 

 翻って魔導師は高速型のフェイトでさえ、最高速度はマッハ1に到達するか否か程度の亜音速が通常でしかなく、良くて音速にまで到達が出来る程度。

 

 それはスカリエッティの娘達の三番目も同じ。

 

 音速にまでは届くけど、超音速には届かない。

 

 だけどそれでも彼女らは並ぶ者の少ない高速型。

 

 聖闘士なら青銅聖闘士を相手にするのがやっとで、然し高速型の基本的な弱点である紙装甲は、聖闘士の原子を砕く拳に一発で沈められてしまうだろう。

 

 なのはみたいな防御力が高いタイプは、スピードがどうしても犠牲となる。

 

 つまり、相生呂守であれば半端者とはいえ魔導師に敗ける道理が無い。

 

 それは相生璃亜も同様。

 

「ユートさんはミッドチルダや時空管理局という組織は興味が無いらしいけど、それでもある程度の関わりを持てば放って置くのも違うって思うみたい」

 

「ん? 管理局に入局するって事か?」

 

「違う。ボクも話に聞いただけだけど、地上本部の方にテコ入れしたみたいだ」

 

「地上本部……? ああ、ゼスト隊やナカジマ一家やレジアスか?」

 

「将来的にはランスターやキャロもね」

 

 確かに今挙げたのは基本的には地上の局員であり、本局が関わるのは機動六課絡みの時くらい。

 

 機動六課が解散後には、ある程度の進路を融通する約束をしていた筈。

 

「エリオ・モンディアルはどうなるんだろうな?」

 

 主人公でもないのに何故か行き成りラッキースケベをキャロにかましたけど、エリオ本人は顔が紅くなって謝ったものの、キャロは特に気にした風でもなかったのが対照的だった。

 

 これでもう少し成長していた時期ならば、エリオの股間が潰されていてもおかしくなかっただろう。

 

 照れ隠しで股間を蹴り潰すとかで。

 

 二重の意味でラッキー。

 

 まあ、キャロが其処まで殺るかは兎も角として。

 

 そんなエリオ・モンディアルだが、ユートが若しも死んだモンディアル家子息のエリオ・モンディアルを救った場合、後に造られた記憶転写型クローンである彼は存在しなくなる。

 

 また、仮にエリオ誕生の為にオリジナルを見殺しにしたとしても、フェイトが管理局の執務官でないなら研究所から救われた後に、荒れたエリオがどうなるかなど火を見るより明らか。

 

 間違いなく【Fの遺産】の残滓として、ジェイル・スカリエッティに下げ渡されていくだろう。

 

 最高評議会が手を回せば後ろ楯も無いクローン体の小僧など、何とでも出来てしまうというのが謂わば腐れた現実というやつ。

 

 実際、モンディアル夫妻は紙を見せられてエリオを諦めていた辺り、明言こそされていなかったにしても最高評議会が手を回していた可能性が高い。

 

 法的機関からの追及で、諸々の手続きが成されていたからこそ、モンディアル夫妻はエリオを手放すしか無くなったのだろう。

 

 この場合、法的機関とは時空管理局しか有り得ないから解り易い。

 

 仮令、明言されていなくても法的機関=管理局。

 

 それも通常の部署などではなく、裏から最高評議会が手を回せる暗部だ。

 

 明言されていないのなら管理局ではない?

 

 それは都合の良い妄想。

 

 【Fの遺産】に最も興味を注いでいたのは誰だ? そいつを裏から操っていたのは一体何処のどいつだ?

 

 そしてそいつらは好都合な正義の皮を被った脳ミソであり、黎明期の頃ならばいざ知らず現在でも果たして正義足り得るのか?

 

 所詮、虎の皮を被っても狐は狐でしかない。

 

 正義の皮を被ったとしても悪は悪、そんな正義に悪と称されるならばユートは悪でも良かった。

 

 寧ろ、『俺は相当、邪悪だぜ!』と叫んでも構わないくらい。

 

 ユートは正義の味方では決してなく、況してや悪党という訳でもないのだが、それでもユートは【悪】であるのだろう。

 

「この場合、オリジナルを救えば原作のエリオ・モンディアルは誕生すらしないだろうし、オリジナルを見捨ててもフェイトちゃんが執務官じゃないから救われないよね」

 

「生まれる筈だったってのを無視すれば、問題とかは無いんだろうけどな」

 

 寧ろクローンなエリオの誕生こそイレギュラー。

 

 ユートが、オリジナルを見捨ててまでも誕生させる意味を見出だすのか?

 

「多分、この世界で誕生はしないんだろうね」

 

 璃亜もまだそれ程に長い付き合いではないにせよ、ちょっと考えればユートの為人はだいたい判った。

 

「彼は原作通りに進ませようとは思ってない」

 

「だからエリオを誕生させないと?」

 

「結局、どちらかしか選べないのならオリジナルを見捨てず、騎士のエリオ誕生をスルーするんじゃない? アニメだと生まれているんだから、モンディアル家のエリオに死ね……だなんて言えないでしょ」

 

「そうだな……」

 

 死ぬ運命を覆してでも、デメリットは若き竜騎士の誕生を潰す、メリットとはモンディアル夫妻に余計な罪禍を背負わせない。

 

 恐らくオリジナルであるエリオ・モンディアルは、魔力を碌に持たない一般人だと思われる。

 

 アリシアとフェイトという関係性を見れば解るが、オリジナルに魔力が無いからといって、クローン先に魔力が宿らないとは限らないのだ。

 

 プレシアの態度から彼女はフェイト――記憶転写型クローンを、人造魔導師としては造っていない。

 

 高い魔力を得ていたのは偶然の産物だろう。

 

 或いは、プロジェクトFで造られたクローンに魔力が宿る様に、スカリエッティが技術内に組み込んでいた可能性もあるが……

 

 どちらにせよオリジナルのエリオ・モンディアル、彼が魔導師や騎士となるのは有り得ない未来である。

 

 初めから魔力が高かったキャロ、ティアナ、スバルは別方向からアプローチをすれば良いし、エリオに関しては竜騎士エリオの誕生そのものを潰す方向性となるのだと、璃亜は何と無くだが理解をしていた。

 

「そういや、地上本部へのテコ入れって何だ?」

 

「兄さんは余りあの人には関わらないし、聞いてないのかもしれないけどね? 仮面ライダーの量産型ってのを大量に売ったって」

 

「量産型仮面ライダー? っても幾つか在るぞ」

 

 量産型仮面ライダー。

 

 その礎となるのは意外にも初代、仮面ライダー1号と仮面ライダー2号が活躍した【仮面ライダー】から登場した【ショッカーライダー】である。

 

 ショッカー風に云うと、そもそも仮面ライダーとは『バッタ男』という名前の改造人間だが、脳改造前に脱走をして仮面ライダーと名乗る様になった。

 

 つまり元々の技術自体はショッカー側に在る為に、その気になれば同じ怪人を量産も可能らしい。

 

 まあ、ショッカーライダーを造ったのはゲルショッカーなんだけど。

 

 一応、量産型とはいってもオリジナルとスペック的には同じとか、意外と性能は高く造られている。

 

 決してガンダムに於けるジムではない……とか。

 

 それ以降で量産型仮面ライダーは造られないけど、【仮面ライダー555】で満を持して? 登場したのが【ライオトルーパー】。

 

 TVでは数名だけでしかないが、劇場版ではリアルに一万名が登場している。

 

 その後の量産型といえば――【仮面ライダーメイジ】や【黒影トルーパー】や【ライドプレイヤー】などが出ており、明確な活躍をしていない【仮面ライダーアギト】での【仮面ライダーG5】や【仮面ライダードライブ】では【仮面ライダーマッハ】が量産されるみたいに云われた。

 

 【仮面ライダーネクロム】も劇場版に三体、TV版に一体が登場しているけど量産型と云えるか微妙。

 

「造ったのはライオトルーパーだって」

 

「ファイズからか……」

 

 そもそも、ユートの知識にはライドプレイヤーとか黒影トルーパーとか仮面ライダーネクロムは無い。

 

 G5は識っているけど、G3を鑑みれば戦力的には微妙だと考えたろうし。

 

 配備されたのもアンノウンが消えた後の筈だ。

 

 一番の強敵たるグロンギやアンノウンが消えた後に配備されたG5の能力は、少なくともG3−Xに比べれば案山子も同然というのがユートの認識。

 

 最低限でG3よりマシなレベルの大量生産品だ。

 

 G3が基本的にやられ役だったみたいに、怪人と戦うには足りないスペック。

 

 とはいえ、アギトの世界では怪人が居なくなっていたから、既にそれでも充分なスペックだったろう。

 

「実は最近、彼に会った。それで聞いたんだけどね、その時に御試しだって変身させて貰ったんだ」

 

「なっ! 羨ましいぞ!」

 

「兄さんはユートさんとは関わりが薄い、だからこそこういう時にハブられるんだよ?」

 

「うぐっ!」

 

 出逢いが良くなかったから苦手意識があるのだ。

 

「あれって、魔導師だけでなく非魔導師でも扱える様にしたデバイスだったよ」

 

「デバイスだって?」

 

「うん。電気を魔力に変換するコンバーターを装備していて、基本的には誰でもライオトルーパーになれるみたい。アンダースーツやアーマーも、魔力で形作られたバリアジャケットみたいなモノだったし」

 

「へぇ……」

 

 まさか本物という訳でもないとは思っていたけど、よもやのバリアジャケットだと云うのに感心した。

 

「然し電気を魔力に変換? どうやってだ?」

 

「そこまでは解んないよ。変換機(コンバーター)を積んでいると言ってたけど」

 

 全ての物質は暗黒物質、即ちダークマタを最源流としており、それは精神的なエネルギーも同様。

 

 神々の力たる神力(デュナミス)でさえ、そこは変わらないのである。

 

 神々とてマクロ宇宙発生の大爆発(ビッグバン)にて発生した存在、それよりも以前から在ったのは謂わば【大いなる意志(ビッグ・ウィル)】とされる存在。

 

 混沌の海そのものだ。

 

 それはアザトースであったりL様であったり様々、そんな幾つもの意志が宇宙の侵食者を討つべく放ったのがビッグバンだった。

 

 尤もそれは百億年程度のスパンで時間稼ぎしただけに過ぎず、未だに侵食者はこの宇宙の外から狙いを定めてきている。

 

 全ての支配を目論む機械の化け物だろうが、平行する世界すら統一して自らに染める魔神の我であろうが構わない、あの侵食者を討てるならば今の宇宙の破滅すら容認すると、彼の意志達は口々に宣っていた。

 

 そんな意志が放った無限の暗黒物質、ダークマタは人類からすれば未知でしかないモノだが、物質にして精神という矛盾すら孕んだ代物であり、魔素もやはり暗黒物質から生まれた派生したエネルギーだ。

 

 物質にして精神を地で往く魔素は、一つ所に留め置けば魔物を湧出させる。

 

 肉体の物質化(マテリアライゼーション)と精神と魂の固着化(ソウルアップ)が同時に起こり、一瞬にして魔物という生命体を産み出していた。

 

 そして魔素というのは、魔力の素焼きをしたモノ。

 

 例えば、魔素を体内へと取り込んだ魔法使いが如何にしてかは兎も角、精錬をして魔力へと換え魔法なり魔術なりを使う。

 

 型月辺りで云う大源とか小源が言い方に近い。

 

 ともあれ、電気も謂わば大元となるのはダークマタであり、ユートは機械的に電気をダークマタに還し、それを再び魔力化しているのがコンバーターユニットという訳だ。

 

 電気専用だから電気さえ有れば魔力を補充可能で、ライオットフォンを充電しておけば、魔法的デバイスとして活用が出来る。

 

「魔法具とか魔導具とか、そう呼ばれる物を扱うのは得意だって言ってた」

 

「限度があるだろうが」

 

「世界の現象に理不尽さは無く、全ては計算が可能なシステムとなっている……だから魔導具は造れるというのが持論だって」

 

「マジにか……」

 

「アジュカも大いに賛同してくれたとも言ってたよ」

 

「アジュカ?」

 

 少し首を傾げる呂守ではあるが、紹介された連中の中に塔城小猫やアーシア・アルジェントが居たのを思い出した。

 

「アジュカ・ベルゼブブ」

 

 四大魔王の一角であり、その手の技術には一家言を持つアスタロト家の天才、超越者アジュカ・ベルゼブブという存在。

 

 彼はこの世の法則の全て計算式で成り立つとさえ、言い放ち止まない程に別のナニかを世界に視ていた。

 

「あ、それから龍騎になっちゃったよ」

 

「何だ、そりゃ?」

 

「仮面ライダー龍騎」

 

「そりゃ理解しているよ。龍騎になったって意味が解らないと言って……は! まさか?」

 

「うん、彼が龍騎のカードデッキを貸してくれてね。あ、でもドラゴンナイトな変身だったけどね」

 

「ああ、鏡に向かってとかじゃなくて叫んだのか?」

 

 仮面ライダー龍騎の海外バージョン、【KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT】が存在しているが、あれは変身の時に『カメンライダー!』と叫んでベルトを顕現させている。

 

「一応、どっちも可能な様に造ったらしいけどね」

 

「鏡とか写る物が無かったってか?」

 

「うん」

 

「で、それもデバイス?」

 

「違うみたい」

 

「というと?」

 

神器(セイクリッド・ギア)で創った聖魔獣を着込む形らしいよ」

 

「……は?」

 

 神器は識っている。

 

 【ハイスクールD×D】世界に行っていたのだし、持っていても別に不思議ではないだろう。

 

「聖魔獣?」

 

「元々は【魔獣創造】って上位神滅具(ハイ・ロンギヌス)で、禁手になったら聖魔獣の創造が出来る様になったらしいよ」

 

「木場祐斗の神器である、魔剣創造の禁手と同じ」

 

「【至高と究極の聖魔獣】って名前なんだって」

 

「完っ全っに亜種だな」

 

「一部以外の仮面ライダーは聖魔獣で創ったみたい」

 

「一部以外?」

 

「仮面ライダーウィザードや仮面ライダービルド」

 

 より正確に云うならば、仮面ライダービルドを造ったのはユーキだ。

 

 エボルドライバーも一緒に造って、ダークライダー好きなユートに渡したし。

 

「まあ、取り敢えず仮面ライダー系は色々と自分の持つ技術を応用して造れる……って訳か」

 

 そして量産型として造られたライオトルーパーを、ユートは地上本部の未来のトップ――レジアス・ゲイズ少将に売ったらしい。

 

 中将になるのはもう少し先の事みたいだ。

 

「いずれにせよ、ミッドチルダにも干渉はしてるか。俺らは……どうするべきなのかね?」

 

 最初の璃亜の言葉を呂守は噛み締める様に呟いた。

 

 

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