魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

63 / 84
 今回は前回の続き。





第6話:戸惑い 未来を選ぶゲイズ父娘の決意

.

 その日の夜、レジアスは家に帰り着いて悩む。

 

 広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティやそれを紹介してきた最高評議会、それを切ればあの旧暦の頃より――噂では古代ベルカの時代から活動をしてきた時空管理局にも多大な影響力を持つ財団法人【OGATA】から、魔導甲冑という非魔導師すら魔導師みたいに戦えるデバイスを安く供給すると云う。

 

 その安さは有り得ないと云えるレベル、ユート曰くコストダウンに成功しているからこその価格であり、其処へレジアスが先の連中と切れる対価的な意味合いもあるとか。

 

 序でに、試験運用が可能な様に一〇機程を無料配布しても構わないと、確かに破格な申し出だと思った。

 

 試験運用で配布されたら親友のゼスト・グランガイツが指揮する首都防衛隊、そのゼスト隊に使わせてみるのもアリだろう。

 

 あの部隊は隊長のゼストがオーバーSランクと破格な上、地上陸士一〇八部隊に所属する隊長ゲンヤ・ナカジマの妻であるクイント・ナカジマやその親友であるメガーヌ・アルピーノ……二人が陸戦AAランクでいるから活躍しているが、それ以外の隊員ともなると一気にランクが落ちてしまい良くてBランク、下手をするとCランクである。

 

 非魔導師でさえ戦えるとなれば、ランクの低い魔導師に使わせる手もあった。

 

 とはいえ、ユートが曰くAAランクくらいになると防御力以外は余り意味が無くなるらしく、非魔導師か低ランク魔導師が扱う為のツールだと言ってたが……

 

「お父さん、どうしたの? 難しい顔したりニヤニヤしたり……」

 

 不気味なモノを視るかの如く、茶髪はレジアスとも同じだが明らかに顔は母親似と思われる実の娘であるオーリス・ゲイズが、ちょっと引きながら訊ねた。

 

「ム、オーリスか」

 

 ゴホンと咳払いをして、居住まいを正す。

 

「ちょっとあってな」

 

「は、はぁ……」

 

 まだ若い――原作時も若いよ? ――顔を困惑に染めながら気のない返事。

 

 【OGATA】の責任者ともなれば金持ちなんて、そんなレベルではない。

 

 だが、それでもコストに気を遣う辺り解っている。

 

 レジアス・ゲイズは知っている、あの巨大財団法人がミッドチルダにどれだけ貢献してきたかを。

 

 例えば、ミッドチルダには廃棄予定になってた区画が首都近郊にすらあるが、その幾つかを【OGATA】が買い取り、立派な都市に再生させたり学術都市として活用したりしていて、更に地上本部の方に非魔導師だが活躍が可能な人員を送り込み、中には訓練を施されて武装を持たされた上でそこそこの活躍をする者だって居た。

 

 非魔導師だから海の方に取られたりしなかったし、新暦になってこの数十年間を【OGATA】は支えてきている。

 

 個人に入れ込まない程度の干渉、然しながら遥かな古の昔より存在する組織。

 

 地上本部も可成りの恩恵を受けてきた。

 

 ミッドチルダの地上本部だけでなく、各管理世界の支部にしてもそうだ。

 

 本局には余り接触しない方向性だが、地上(おか)には恩恵が大きい。

 

 本局――海は扱う事件が地上など問題にもならないくらい大きいのだからと、地上の人員――高ランクの魔導師を主に引き抜いていったし、期待出来る新人も奪われていった。

 

 予算もかつかつな地上、毎年度予算案では海の優遇が余りにも酷い。

 

 それが原因で地上の犯罪発生率は高く、検挙率は低いと悪循環ばかり。

 

 そんな中で【OGATA】が地上に対し、ある程度の寄付や人員の確保なんかをしてくれていた。

 

 だから何とかなっていたのだとも云える。

 

 正直な話、レジアス自身もこれらは助かっていた。

 

 未来のユートが関わると決めたから、ある時期を境に寄付や人員の送り込みが行われ始める。

 

 また、その人員は非魔導師であるが故に時空管理局への入局――正確には本局に入るのを拒まれた者達。

 

 多少の腕はあるにせよ、所詮は非魔導師だから本局では必要とされない。

 

 事務や艦船のスタッフ、そういった事に従事出来ればまだ入局は出来たろう。

 

 エイミィなど艦船スタッフが魔導師である必要などないし、武装局員や執務官でないならそちら方面だ。

 

 それが出来ない者に門戸は開かれてない。

 

 謂わば彼、若しくは彼女らは武装局員になりたい、乃至はそれしか道を選べない人間であり、その思いも試験によって破れたのだ。

 

 未来ユートはそんな連中を集め、学術都市で学ばせつつ鍛えてもいた。

 

 その後、武装を持たせた上で地上本部に勤務可能な様に働き掛け、彼らは見事に務めを果たしている。

 

 魔導師になれる魔力が無いから、本局からの御誘いも全く無い為にそれなりの成果を挙げても引き抜きが無く、中には隊長格を任せられる者まで居た。

 

 装備品のお陰だし本局は取り上げようとしたらしいのだが、使い手を登録式にしていた上に管理局の技術では解除不可能ときては、取り上げる意味が無くなり捨て置かれたのである。

 

 レジアスとしては何年間か非常に助かっていた。

 

 自分が実質的なトップになったとはいえ、本局からの横槍を全て止めたり出来ないのが歯痒いが、そんな地上に理解を示す企業こそ【OGATA】だったからこそ、其処から派遣された二人の話を聞く気にもなった訳だ。

 

「そうだ、オーリス」

 

「はい?」

 

「明日、ゼストに地上本部訓練室に来る様に連絡をしておいてくれ」

 

「? 訓練室ですね、了解しました」

 

 首を傾げはしたものの、中将の顔で言われてしまっては二尉でしかない自分に反論は出来ず、すぐに居住まいを正して敬礼しながら命令に応える。

 

「それと今一つ」

 

「はい!」

 

「お前は財団法人【OGATA】の本社に行き、とある任務に従事してくれ」

 

「は、はぁ?」

 

 意味が解らないオーリスは思わずマヌケな返答。

 

「では、頼んだぞ」

 

「りょ、了解です……」

 

 取り敢えず、ゼストへと連絡をするべくオーリスは端末に細い指を掛けた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートが帰り際に一つの要請をしてくる。

 

 レジアスはユートからの要請に困惑はしたのだが、それを受ける方向性で返答をしてしまった。

 

 それは人員を一人だけで良いから、本社ビルに回して欲しいという。

 

 それも必ず非魔導師を。

 

 首を傾げたレジアスではあるが、【OGATA】には多大な借りなどもあったから頷いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌日、レジアスは地上本部訓練室へと赴きオーリスは【OGATA】の本社へと向かう。

 

「それでレジアス、わざわざ俺を呼び出した理由を聞かせてくれるか?」

 

 大柄な男――ゼスト・グランガイツが訊ねる。

 

 四十代ながら若々しく見えるゼストは、下品にならない程度に茶髪をざんぎり頭にしており、陸士の制服を着込んでいた。

 

「先日、あの【OGATA】の使者が来てな」

 

「何? レジアス、お前に接触をしてきたのか?」

 

「ウム、それで新しい装備の売買契約をしたいと申し出があった」

 

「それはあの……」

 

 当然ながらゼストだってこの名前の意味は知っていたし、それがどれだけ親友の苛立ちを慰めたかなんて計り知れない。

 

 海の側が言う事も理解が出来ない訳でもない。

 

 彼方は単純に見たなら、地上に比べて事件の規模も範囲も脅威も大きいから、多くの人員は必要となってくるだろうし、人員を動かす人件費や装備品に掛かる資金、艦船を一隻動かすだけでも多大な金が要る。

 

 予算を多く持っていき、地上から引き抜きはするし新人も優秀な魔導師を次々と持っていくのも、それに対処するのにはどうしても必要だからだ。

 

 だけど、だからといって本来ならば護るべき足元を疎かにしても良いのか?

 

 第一世界ミッドチルダ、言うまでも無く時空管理局発祥の地だ。

 

 そこが犯罪者の巣窟となって、密売や違法研究などが当たり前に行われるなど有り得ない。

 

 地上本部の怠慢?

 

 巫山戯るな……だ。

 

 千円掛かる防衛を百円でやれる訳が無く、百人必要な防衛が十人でやれる訳が無く、百食は必要な防衛が十食でやれる訳が無い。

 

 それを強要しておいて、怠慢の一言で済ますか?

 

 それでも遣り繰りをして十年間を保たせたレジアスの手腕、仮令それが犯罪者の力を使うアウトコースであれ、最高評議会の掌の上で踊る道化であれ、それは称えられる偉業だろう。

 

 だからユートは手を打ったのだ、レジアスが破滅をするその前に。

 

 その手こそレジアスに渡した【ライオットギア】、【OGATA】では型落ちにも等しいが、量産型魔導甲冑として地上では重宝をされる筈の戦力供給だ。

 

 ゼストも彼の財団法人は既知のもの――否、ミッドチルダに住まうなら誰しも知る程のもの。

 

 いつから存在したのか、もうミッドチルダの政府もよく判らない昔、旧暦の頃から存在するとも云われる名家でもあった。

 

「フム、その新装備というのはどんな物だ?」

 

 とはいっても、チラホラとレジアスの手に握られているトランクケースに目を向ける辺り、既に当たりは付けているゼスト。

 

「こいつだ」

 

 開けば大きめなバックルが上方に立てられ、赤色の派手なベルトに結ばれている代物に、アタッチメントと思われる機器。

 

 アタッチメントに関しては見た覚えがあるデザインと似ており、どうやらこれで一組になるのだとすぐにゼストは理解した。

 

「儂がこれを使うのでな、ゼストは儂と軽く模擬戦をしてくれんか?」

 

「な、何? それは本気かレジアス!?」

 

「勿論だとも。何、これを使えば儂でもある程度は戦えるらしいし、ちょっとした模擬戦くらいは出来る」

 

「む、ウウム……」

 

「それで装備の評価を頼みたいのだ」

 

「判った」

 

 どうやら随分と自信を持ったらしいと感じ、装備品の戦力評価の為だとあらば一部隊を預かる身として、決して否やは無い。

 

 セットアップして無骨なアームドデバイスを構え、その身には茶色を基調とした騎士甲冑を纏う。

 

 一方のレジアスもベルトを腰に巻き付け……

 

「変身!」

 

 叫びながら立てられているバックルを横倒しに。

 

《COMPLETE》

 

 電子音声を響かせつつ、黒いアンダーに青い甲冑姿となり、顔にΟを象る仮面を装着した簡素な兵士姿――ライオトルーパーとなる。

 

 違いは両側の頭に付いたセンサーで、コイツは指揮官用のライオットギアだった。

 

「それが新装備か!」

 

「そうだ。儂が彼らの計画に乗れば一万を可成り安値で購入が出来る」

 

「そうか、ならばレジアス……始めるぞ!」

 

「望む処だ!」

 

 頷くレジアス。

 

 地上本部に併設をされた訓練室、二つの巨体が互いにぶつかり合った。

 

 むさい青春のぶつかり合いとも云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 レジアスとゼストという四十路男が、遅めの青春を謳歌しているのと同じ頃、【OGATA】本社ビルに辿り着いたオーリス・ゲイズがユートと会っていた。

 

「初めまして、時空管理局地上本部勤務のオーリス・ゲイズ二尉と申します」

 

「緒方優斗……財団法人【OGATA】のCEOだ」

 

 より正確には未来ユートがではあるが、今のユートも同一人物だから特に問題などは無い。

 

「それで、ゲイズ中将より此処へ来る様に言われたのですが……私はいったい何をすれば?」

 

「娘を生け贄に差し出したって訳か」

 

「い、生け贄っ!?」

 

 余りに不穏な言葉に驚愕して、美しい顔を歪めながら目を見開くオーリス。

 

「そう、今この部屋に僕と君以外にだ〜れも居らず、扉には余計な茶々が入らない様にロックが……」

 

「えっ!?」

 

 ギョッとして試しに扉をガチャガチャ。

 

「あ、開かない!?」

 

 本当にロックされていて部屋の内部は空調も効いていて涼しいにも拘わらず、オーリスの額から汗が流れ落ちるのを止められない。

 

「丁度、この部屋には寝具も置いてあるんだ」

 

「ヒッ!」

 

 カツンと床を踏み締める音に息を呑んだ。

 

 はたと寝具――ベッドの在る方を見遣って、急激に身の……貞操の危険を感じとったか、オーリスは自分を抱き締める様に腕を肢体に巻き付ける。

 

「ま、待って……お願い……来ないで!?」

 

 オーリス・ゲイズ――それはレジアス・ゲイズの娘であり、明らかな母親似だから美少女ではあったが、父親の職業を誇りに少女の時代を歩み、現在の二十歳で二尉という魔導師でない身の上としては早い出世をする程度にエリートというキャリアを進む。

 

 だからだろう、駆け抜けた感がある思春期は遊びに夢中にならず、彼氏の一人も作らず勉強をしてきた。

 

 その為、男といえば父親かゼストくらいしかまともに見た事など無く、学生の時代の男なぞ名前を知っていればマシなレベル。

 

 今現在なら上司くらいは名前を知り、仕事の会話をしている程度だろう。

 

 一尉になれば父親の下へ配属になる予定で、そうなれば会話は部下との仕事のものくらいとなり、十年を駆け抜ければ三十路に到達してしまい、立派なオールドミス候補となる筈。

 

 キャリアウーマンと云えば聞こえは良いが、言ってしまえば仕事仕事で処女を拗らせたキツい女だ。

 

 二十歳の今はそこまででも無く、化粧もまだうっすらとしているだけで魅せられるし、経験も無かったからユートに迫られれば恐怖を感じてしまう。

 

 逃げたくても扉はロックされているし、部屋自体はそこそこの広さを持つが、逃げ場隠れ場が無いのだからいずれは捕まる。

 

 捕まってしまえば男と女では体力や腕力の差から、あっという間に押し倒されてしまう。

 

 そうなれば……

 

 ゾクッ! 背筋に氷でも入れられたかの様な寒気が奔った。

 

 彼氏が居る訳ではなく、婚約者が居る訳でもなく、プライベートな会話で思い出せる異性なぞ、父親と変わらぬ年齢のゼスト・グランガイツくらい。

 

 実のある会話という意味ではそれだけである。

 

 将来の予定がある訳ではないにせよ、だからといってこんな形で初めてを散らしたい筈もなかった。

 

 下がるオーリス、それを徐々に追い詰めるユート。

 

「い、イヤ……」

 

 弱々しい声しか出ない。

 

 護身用のスタンガンみたいな物は持っているけど、それを取り出す暇をくれるとも思えず、非魔導師たるオーリスに魔法なんて便利なスキルは無かった。

 

 ガタン!

 

 足を取られてバフッ! 背中から倒れたオーリスを柔らかく受け止めてくれたのはベッドと布団であり、気が付いて前を見れば追い付いたユートが笑顔を浮かべて両腕を頭の上でホールドアップ、細い手首を大きな手が片手でガッチリと掴んでしまい、オーリスの上に覆い被さってくる。

 

 脚で脚も縫い留められ、もう身動きが取れない。

 

「つ〜かま〜えた♪」

 

「あ、あ……赦して……」

 

 恐怖しかなかった。

 

 一度も開かれた事が無いというのに、こんな形での貫通なんてイヤだ。

 

 ユートの顔が近付く。

 

 顎をサワサワと触りながら上向かせられ、ナニをされそうなのか理解した。

 

 数センチ……一センチ……五ミリ……一ミリ……

 

 息が掛かる。

 

 もうダメと目をキュッと閉じて耐えた。

 

 でも中々、唇を塞がれる様な感触がこない。

 

「……?」

 

 ソッと目を開くと……

 

「クックッ」

 

 然も愉しそうにユートが笑っていた。

 

「冗談はこのくらいにしておこうか」

 

「じょ、冗談?」

 

「流石に嫌がる娘を相手に無理えっちは無いよ」

 

「――っ!」

 

 サッと解放されてすぐに身を縮め竦ませていたが、もう全く見ていない。

 

「ああ、胸元が見える様にブラジャーも外してくれていたら助かる」

 

「へ?」

 

「これから君にこいつ――人工リンカーコアを埋め込むんだからね」

 

「じ、人工リンカーコア? それはいったい?」

 

 聞いた事も無い単語に、オーリスは驚きを隠せないでいた。

 

「世間に存在する人造魔法師……じゃなく魔導師計画に喧嘩を売る代物、レジアス・ゲイズ中将にはその為に非魔導師を寄越して貰ったんだ」

 

 ユートの手の中には煌めく翠の宝玉が在る。

 

「心配しなくても非人道的な実験やら何やら、やった血塗られたアイテムなんかじゃない。完全な人体エミュレータで実験シミュレーションを繰り返して、成功した代物を永久禁固な犯罪者で臨床、完全に成功させたもんだからね」

 

 それこそ、ヤればセ○クスすら現状宛らの感覚すら得られ、斬れば殴れば普通に現実感半端ない感触を受けるし、血も流れて痣なんかも出来るエミュレータ。

 

 そこら辺のVRなぞ全くお話にならないVR。

 

 それで繰り返された臨床データで改良に改良を重ねていき、完璧に作用をするというデータから作り出されたモノを、居なくなっても惜しくない永久禁固刑に処されたり、死刑囚だったりを使って臨床試験をした結果、完全な完成品であるとされた物を量産化。

 

 商品ベースに乗せた代物である。

 

 違法研究所みたいに浚った人間で人体実験したり、クローンを大量に生産して実験したりと、非人道的且つ非効率な事は必要無い。

 

 時間なんかはダイオラマ魔法球で幾らでも稼げていたし、この頃にもなったら科学に魂を売った者とかが居たし、様々な意味合いで完成度も高まった。

 

「だから、ぜったい大丈夫だよ」

 

 オーリスは呆然と聞いていたが、正直に言えば信じられないと思ったもの。

 

 だけど何故か……

 

「判りました」

 

 そう答えていた。

 

 上着を脱ぎ、ワイシャツのボタンを外してブラジャーも取ってしまう。

 

 恥ずかしいからブラジャーは隠し、胸元を晒した侭でベッドに寝転がった。

 

「お、お願いします」

 

「任された。まあ、すぐに済むけど……ね」

 

 ユートは翠の宝玉を親指人差し指中指、三本の指で挟んでオーリスの胸元へと持っていく。

 

 肌に触れるとちょっとだけひんやりし、オーリスは思わず――『ア、ン!』と嬌声にも似た声を上げた。

 

 別にユートならテレポートを使い、直接的に体内に入れる事も出来る。

 

 事実、想子核(サイオン・コア)を使った際にそのやり方だったのだから。

 

 ズブズブとインストールカードと同じ様に沈み往く宝玉、オーリスは体内での発熱に本物の嬌声を上げ、ジュンと子宮の奥深くからナニかを感じていた。

 

 完全に沈み込んだ宝玉、人工リンカーコアはすぐに働きを始め、マナを吸収してオドへと変換すると――

 

「くっうっ……」

 

 初めて体内を回り始めた魔力による違和感があり、オーリスは呻いた。

 

 だけど確かに感じられる今までに無い感覚により、全能感とまでは云わないにしても、とても高揚していて気分が良い。

 

「これが魔力……ですか」

 

「まあ、人工リンカーコアで獲られるのは今の処で、魔力ランクがBまでだよ。魔導師ランクも頑張って上げればA〜AAだね」

 

「充分でしょうね、地上で使う分には」

 

 地上でもAランクとなれば上を目指せるのだから。

 

「おめでとう、オーリス・ゲイズ女史。今日から君は魔導師だよ」

 

 その後の十年間の頑張りにより、オーリス・ゲイズは原作では三佐だった階級が一佐という確かな形で、表れたのだと云う。

 

 尚、ゼストとレジアスの年季の入った青春の結果、【ライオットギア】購入は決定をされるのだった

 

 

.




 次回は過去へ……



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。