魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第5話:激白 時空管理局への印象操作

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 愛は混乱の極みにある。

 

 この目の前の少年は今、何と言っただろうか?

 

「え? ウチの病院が? って、どういう……」

 

「落ちてきた災厄の種……それは周囲を巻き込み破壊を齎す。そして、その種は今夜遅くに槙原動物病院を襲うだろうね。その事件にあろう事か、高町なのはが関わる事になる」

 

「なのはが!?」

 

 逸早く反応をしたのは、父親の高町士朗。

 

「災厄の種の名前は【ジュエルシード】といってね、色は蒼白くて、形は菱形の宝石。内部にシリアルナンバーが振ってあり、ナンバーⅠ〜ⅩⅩⅠまでが存在している」

 

「古代遺物だと言っていたけど、どうしてそんな物が海鳴市に?」

 

「異世界……僕の居た平行世界の地球じゃなく、次元の海を隔てた異次元の世界が宇宙の星々の如く存在していて、中には滅亡してしまった世界もある。そんな世界の遺跡には用途不明だったり、とんでも無い何かを秘めていたりするんだ。それを古代遺失物(ロストロギア)と呼ぶ。ジュエルシードはそんなロストロギアの一種で、異世界の人間が掘り出して、運んでいる最中に事故が起きた。結果としてこの世界にジュエルシードが落ちた」

 

 士朗の質問に、出来るだけ噛み砕いて解り易く説明をするユート。

 

「問題はこのジュエルシードというのが、相当に厄介な代物だって事。ジュエルシードというのは分類すると【次元干渉型願望実現器】なんだよ」

 

 【次元干渉型願望実現器】という言葉に戸惑って、集まった者達がざわつく。

 

 何と無く代表し高町士朗が質問をする。

 

「名前からして凄いけど、どういう物なんだい?」

 

「膨大なエネルギーを持っていて、次元干渉……次元そのものを揺るがす事も出来てしまう上、願望実現器の名の通り、手にした者の願望を叶えようとする」

 

「願望を叶えようとするというと、金持ちになりたいとか願えばなれるとか?」

 

「どうだろうね、叶ったとしても歪な叶え方だから、不幸にしかならないよ」

 

「歪?」

 

「例えばさっきの『お金持ちになりたい』だったら、銀行の金庫を破壊して願った者の所に移動させるかも知れないし、『早く大きくなりたい』と願えば成長させるんじゃなく、物理的に巨大化させたり……」

 

 ユートの例え話を聞き、歪の意味を理解した。

 

 成程、危険なだけだ。

 

「危険性はそれだけじゃあない。有り余るエネルギーを秘めてるからね、それが暴走するんだよ。エネルギーが不定形の疑似生物になって暴れたり、現地の生物を取り込んでみたりね」

 

「あ、だからウチの病院が壊れる?」

 

「そういう事だね。既に、絶賛暴走中のジュエルシードがあって、それがとあるフェレットを追っている。心当たりがあるだろ?」

 

 充分過ぎるくらい心当たりが有り、愛が顔面蒼白になって涙ぐむ。

 

「ひ、昼過ぎに小学生の女の子が3人、フェレットを連れて来たわ」

 

「高町なのは、アリサ・バニングス、月村すずかだ」

 

 ガタン!

 

 士朗とデビットと忍が驚いて席を立つ。

 

「なのは?」

 

「ウチのアリサが?」

 

「すずかまで!?」

 

 ユートは落ち着き払い、座る様に促す。

 

 渋々3人が席に座り直したのを確認したユートは、続きを話し始めた。

 

「フェレットは実は人間、年齢の方はまだは9歳だけど仕事で遺跡を調べ、件のジュエルシードを掘り出したんだ。事故の責任を感じて回収に来たけど、残念ながら暴走体との戦闘で怪我を負ってね、フェレットになって代謝効率を上げて、治療に専念していた所を拾われたんだ」

 

 士朗は考え込み、思案してユートに訊ねてみる。

 

 一番基本的な、即ち……

 

「それらが真実だとして、君はどうして其処まで知っているんだ?」

 

 つまりはそういう事だ。

 

 まるで全知全能だと言わんばかりに知り過ぎてて、士朗にはどうしても其処が腑に落ちない。

 

 何より、知っているなら事前に何とか出来る筈だ。

 

「知っている理由に関してはまた後で。実はジュエルシードの在処は幾つかだけど知っている」

 

「っ!?」

 

「僕が月村邸を指定したのはそれが理由なんだよ」

 

「真逆、ウチに有るの?」

 

 忍が真っ先に反応する。

 

「多分、中庭……お茶を飲める場所の草むらに落ちている筈……」

 

「ノエル、ファリン!」

 

「はい、忍お嬢様」

 

「直ぐに捜しなさい!」

 

「わっかりました!」

 

 忍の命令に、ノエル──薄い菫色の短髪なメイドの女性と、ファリン──ノエルより濃い菫色の長髪に明るそうな性格をしたメイド少女が返事をして中庭へと向かった。

 

 ややあって……

 

「青い菱形の宝石……見付かりました」

 

 ノエルがジュエルシードを見付けて、会談をしている此処へ持って来た。

 

「これがジュエルシード。間違いない?」

 

「そうだね。僕が今日、海で確保した七つと含めて、これで八つ目。槙原動物病院に現れる暴走体が抱えているので九つになる」

 

 海には七つ有ったから、月村邸には無い可能性もあったのだが、見付かったならば暴走体が抱えているのは一つだろう。

 

 恐らく、原作に於けるどれかが無くなっている。

 

 確か、ユーノが二つ確保していたから、動物病院のを含めて現在は11個。

 

 残りでユートが覚えているのは……

 

 八束神社。

 

 プール。

 

 ゴールキーパーが拾う。

 

 街中。

 

 海岸沿い。

 

 温泉。

 

 他は詳しい場所まで知らないが、その内に暴走体が現れて見付かるだろう。

 

「さて、ジュエルシードの事だけなら然して問題も無いけど、此処からが重要になってくる。槙原動物病院の事も考えると、時間が余り無いからね」

 

 そう、ジュエルシードだけなら捜して封印すれば良いだけだから、問題にはならない。

 

「問題なのは、ジュエルシードみたいなロストロギアを手に入れる為に動く組織があり、いずれ地球に現れるだろう事」

 

「ロストロギアを手に入れる組織……か、それはどんな組織なんだい?」

 

「名前は【時空管理局】。次元世界を支配下に置き、管理する自称司法組織……実態は軍と警察と裁判所をいっしょくたにした組織。悪く言えば中世の宗教みたいな感じで、戦力を持ち、気に入らなければ国王さえ異端視出来、自分達は贅沢三昧して従う者に恩情を、逆らう者には断罪をって処かな?」

 

「時空管理局……」

 

 高町士郎は想像を巡らせながら思案する。

 

「何か、最低なんだけど」

 

 美由希は義憤に駆られているのか、プリプリと頬を膨らませていた。

 

「勿論、司法組織としての活動はしているけど、組織のトップからして自ら定めた法律に違反している」

 

 最高評議会の事だ。

 

 この時代で既に、ジェイル・スカリエッティを生み出して、彼に【無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)】のコードネームを与えて研究をさせていた。

 

 プロジェクトFと戦闘機人の二つを。

 

 しかも、スカリエッティこそがそういう技術で生み出されたという罠。

 

「時空管理局とそれに列なる世界では、基本的に質量兵器を廃絶して、魔法という技術を代わりに推進している。魔法はファンタジーなんかじゃなく、科学的に立証された一つの技術体系となっているから」

 

「質量兵器とは察するに、銃や爆弾?」

 

「当たり。広義では鋼糸や飛針、小太刀なんかも質量兵器とか言いかねないね」

 

「うわ……」

 

 美由希が嫌な顔をする。

 

「とはいえ、地球は連中にとって管理外世界だから、管理局のルールを押し付けられる謂れは無いよ」

 

「管理外世界とは?」

 

 

「自力で次元世界を航れない上、住民が碌に魔法を使えない〝管理してやる価値も無い埒外な世界〟を略して管理外世界とか?」

 

 ピキリ……

 

「それはまた、何様な組織だよ」

 

 リスティが静かに怒り、他にも忍やさくらが怒りに打ち震えていた。

 

「尤も、地球は目を付けられてるだろうけどね」

 

「何故だい?」

 

「半世紀前、英国で魔力の大きな子供が見付かって、管理局の魔導師になった。だから、稀に強大な魔力を持つ者が居るんじゃないかってね」

 

 それは、ギル・グレアムの事である。

 

 使い魔を二匹を保持し、維持が可能な魔力を持った時空管理局の提督。

 

「そして高町なのはには、強大な魔力がある」

 

「なのはに?」

 

「きっと管理局に勧誘してくるだろうね。断ったら、自分達の法律を持ち出して連れ去ろうとするかも」

 

「どういう……?」

 

「例えば、魔導師が故郷とはいえ管理外世界に住むのは違法だ……とかね」

 

「バカな!」

 

「そんな法律が無くても、でっち上げるとか……」

 

 最早、言葉もない。

 

 この場の全員、管理局に対する印象は最悪だ。

 

「問題なのは、管理局員の全てが悪意ある人間ではないって事。トップが自らの法を破る反面、末端は真面目に頑張っていたりね」

 

「トップが法を破るのは確かに問題だが、後者はどういう意味だい?」

 

「それだけを見て、貴方の娘さんが管理局を次元世界の平和を守護する素晴らしい組織……なんて勘違いをするかもね。向こうにとっては、顔良しで魔力最高な人材なんて客寄せパンダ、プロパガンタの為の道具でしかない」

 

 STSの後も問題は無く管理局が運営されたのも、全ての罪をスカリエッティに擦り付け、管理局はテロを防いだくらいにしか思われていないから。

 

 寧ろ、都合の悪い情報は全く露出していない可能性の方が高いだろう。

 

「兎も角ね、僕が貴方達に接触したのは先ず、ジュエルシード探索で現れるであろう組織、時空管理局に対する法的根拠を補強したいからなんだ」

 

「例えば?」

 

 刑事のリスティ・槙原が挙手しつつ訊ねてきた。

 

「それは……」

 

 ユートは自身の考えを、この場に居る全員に判り易く伝える。

 

 聖域という名の守護組織を設立し、国連で異次元人やその魔法に対する法整備を行うなどだ。

 

 全てを聞き終え、ユートのサポートをするべきだと考えたらしく、その申し出は満場一致で可決された。

 

 これで色々と動き易くもなるであろう。

 

 話も終わり、ユートが邸を出ようとすると、忍から声を掛けられた。

 

「少し待って欲しいの」

 

「何か?」

 

「貴方、夜の一族について知っているわね?」

 

 嘘を吐いても仕方ない、ユートは首肯する。

 

「なら、掟については?」

 

「確か、外部の者に知られた場合は契約を持ち掛けるんだっけ? 友達でも恋人でも良いから、一族の秘密を守りずっと傍に居る事……だったっけ?」

 

「その通りよ」

 

「すずかの事?」

 

「ええ、ずっと気にしているわ」

 

「今夜は槙原動物病院で、一仕事があるんだ。だから後日……ああ! すずかが今晩、抱き枕代わりになってくれるなら、答えは帰ってから聞かせよう」

 

 そう言って、ユートは出ていった。それを確認して口角を吊り上げ、隠れていたすずかに言う。

 

「良かったわね、すずか。契約、オッケーみたいよ」

 

 柱の影に隠れて聴いていたすずかは、真っ赤な顔で頬に手を添えると、ユートが出ていった扉をジーッと見つめていた。

 

 

 

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 取り敢えず、手直しは後回しにします……


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