魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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 イチ様の転生後の名前は瑞葉市乃としました。





第2話:鬼神楽 天神乱舞

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 天乃杜神社──日上市に存在する神社で、十数年前に祭神であった神様が役目を終えて消えてしまった。

 

 それでも尚、天乃杜神社ではそな神様……市寸島比売命を祀る。

 

 市寸島比売命──通称をイチ様、気安い者であればイっちゃんと呼ぶ水の女神であり、彼女は恥ずかしがりながら弁財天の分御霊であると語っていた。

 

 よって、水だけではなく伎芸の女神でもある。

 

 まあ、より正確に云うなら仏教の弁財天と習合された神格なのだが……

 

 役目を終えたというのは即ち、喚ばれた理由となる鬼神の消滅だった。

 

 鬼神は昔に大暴れをし、それを鎮めるべく当代達が祭神を召喚、喚び出されたイチ様は神器の鏡を用いて鬼神をコピーすると、互いに相食ませる。

 

 最終的に相討ちとなり、封印された鬼神。

 

 戦いの際に落ちた右腕とともに永らく眠りに就く。

 

 その右腕が独自の意志を持ち、人型を執った存在が芳賀真人である。

 

 戦闘狂である芳賀は様々な手法で強い存在と戦い、その中で木島 卓の両親を殺害、妹の歩は犯しながら喰い殺すという残虐な現場を彼に見せ付け、その後に木島へ自分の血を飲ませて姿を消した。

 

 生きて自分を殺しに来ればそれで良し、来なければそれはそれで構わないといういい加減な感じで居り、復讐者となった木島に対して喜んだものだ。

 

 芳賀はユートと木島が殺した訳で、だからこそ役目を果たしたと云えた。

 

 そんなイチ様の唯一とも云える心残りを慮ったか、〝座〟に在った本体が彼女を瑞葉家へと転生させる。

 

 瑞葉市乃として転生したイチ様は、十五歳になって訪れた天乃杜神社で働く事となり、そして一年後には一番会いたかった青年との再会を、海鳴市で果たす。

 

 お土産に精霊聖衣を神友のナツ様の分まで貰って、意気揚々と天乃杜神社まで帰ったは良いが、ユートと再会が出来た事を話すと、天神かんなが落ち込んだ。

 

 天神かんなは天神姉妹の長女で、次女の天神うづきが木島 卓と結婚をしたのだが、未だに忘れられないユートを想って三十路過ぎても独り身を貫いており、なのに当のユートは全くの音沙汰無しときて、確かに無理からぬ事なのだろう。

 

 今や数えでは三十四歳の『伯母かんな』である。

 

 むつきと皐月と歩という姪が居る身としては。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「二百年以上振りかな? 天乃杜神社に来たのは」

 

 とはいえ、それはユートの主観時間での話であり、この世界の住人からすればまだあれから十六年。

 

 当時は十八歳くらいだった天神かんなもその妹たる天神うづきも木島 卓も未だに健在、水杜神社の方にはあの時は会わなかったが滝峰葉子も居る。

 

 石造りの階段を登り切ると箒で落ち葉を掃いている少女が居り、緋袴の巫女装束を着ているのを見る限りは神社の巫女さんだろう。

 

 そして、天乃杜神社とは管理する人間が住む場所も在り、つまりは彼女はこの神社の管理者と関係している場合もあった。

 

「こんにちは」

 

「え? ああ、こんにちはですね優斗さん」

 

「何? どうして僕の名前を知ってるんだ?」

 

 初顔合わせの筈だが……

 

「確かに初めましてです。私は木島 歩……貴方と共に鬼神と戦った木島 卓と木島むつきの三女ですよ。そして前世ではお父さんの妹だった木島 歩です」

 

「──は?」

 

「くすくす、成仏する時に『ありがとう』ってお礼を言ったじゃないですか」

 

「っ!」

 

 それを聞いていた対象は自分と木島 卓のみ。

 

 だから、自分達以外で知るのは確かに木島 歩だけ

という事になる。

 

 木島 歩が成仏したのは芳賀を斃した後、それまでは木島 卓に憑いていた。

 

 当時、ユートは最終決戦で全ての力を使い果たしていた為、歩の存在には気付いていなかったのだけど、鬼神との闘いに於いてイチ様とナツ様から神氣を受け取り、完全復活をして気付く事が出来たのである。

 

 目の前で微笑む木島 歩とは、木島 卓の妹だった木島 歩の転生体という。

 

「因みに、皐月という双子の姉が居ますけど……彼女も木島 歩の転生ですよ」

 

「何? つまり君と皐月という娘は同じ魂が二つに分かたれた双子か?」

 

「はい。尤も、歩としての記憶は有してませんけど」

 

 どうやら記憶のに関しては殆んど、大部分を歩の方で受け取ったらしい。

 

「皐月には、芳賀に犯されながら喰われた記憶は要らないんですよ」

 

 芳賀が恐かった。

 

 芳賀のモノが怖かった。

 

 それを捩じ込まれて凄く痛かった。

 

 なのに、暫くしたら勝手に身体が順応してしまい、気持ち良くなっていく。

 

 そして生命の輝きが費えるまで快楽と痛みの狭間、もがき苦しんだのだ。

 

 そんな苦い記憶を双子の姉は持たなくて良い。

 

 歩は記憶を持つ代償に、高いチカラを得た。

 

 尤も、皐月は皐月で実は力を持っている事を歩は知っている。

 

 故にこそ、退魔巫女として今まで母親や伯母かんなとは違い、妖怪との戦いに於いて敗けた事は無い。

 

 二人はそこら辺の妖怪が相手なら強過ぎた。

 

「さ、伯母かんなさん達もきっと会いたがってます。上がって下さいな」

 

「……姪からもおばかんな呼ばわりか、憐れなり」

 

 元は木島 卓の妹なれど今は姪である。

 

 しかも、幽霊時代ユートがよくかんなをおばかんな呼びしていたのを知っていたし、伯母である事を掛けて【伯母かんな】だ。

 

 勿論、短気なかんなだから奇声を上げる訳で……

 

「あ、伯母かんなさん!」

 

「うきぃぃ! おばかんな言うな!」

 

 手を挙げて堂々とバカ呼ばわりされ、黒髪を腰にまで伸ばして額にはバンダナを巻いた巫女装束の女性、天神かんなが憤る。

 

「あれ?」

 

 だけどすぐに気付いた。

 

「ゆう……と……?」

 

「拝啓、ボンジュール、こんにちは」

 

 ズシャッ!

 

 余りにも悪巫山戯が過ぎる挨拶に、かんなは思わずずっこけてしまう。

 

「な、何を寄りにも寄って芳賀みたいな挨拶を!?」

 

 嘗ての宿敵たる芳賀真人も同じ挨拶で人を喰った──本当に人喰い鬼だが──態度で接してくる。

 

 所謂、戦闘狂(バトルマニア)戦闘中毒(バトルジャンキー)の類い。

 

 ハッキリ言えばイカれている、ユートが演った様な挨拶を木島相手にかまし、怒りを誘う辺りがまた……

 

 芳賀真人のイカれ具合、それは木島家を腹を満たすべく襲撃し、夫妻を殺害して木島の妹の歩は御自慢の操縦棹で犯しながら喰い、憎しみに染まる木島が復讐者となるならと、毒にも等しい自らの血を飲ませた。

 

 生き残れば鬼の力を持つ人間──鬼人となるだろうと考えたからだ。

 

 勿論、木島 卓に関してはお遊び半分、だからこそ天乃杜神社を襲撃して御鏡を奪取したのだし。

 

 御鏡の力は映した存在の分身を〝正反対〟の性格で顕現する事、自分を映して生まれた芳賀真人なら楽しめると思ったのである。

 

 まあ、期待外れに終わってしまったけど。

 

 そんなイカれ野郎の挨拶を真似られては、かんなも膨れっ面になるだろう。

 

「バカ!」

 

「うおっ! おばかんなにバカとか言われただと!? 地味に傷付くなぁ」

 

「うるっさい! バカ! バカ! 大バカ 女誑し! 何で此方の世界に来たなら会いに来ないのよ!」

 

「まあ、女誑しは否定出来ないけどね……」

 

 愛人百人デキるかな? 百人じゃ足りないなとか、正に女誑しの権化だから。

 

「それともアレ? イチ様が言うには小さな娘を侍らせてたとか、三十路越えの年増には用は無いって? そうよね、イチ様とナツ様を嬉しそうに抱いてたし、私なんて妖怪に処女を喰われた年増のはした……」

 

 ガバッ!

 

「ひあっ!?」

 

 最後まで言わさずに抱き締めるユート。

 

 歩は紅くなりながらも、そんな二人をガン見する。

 

「ちょっ、放しなさい!」

 

「ごめんな? 確かに……イッちゃんがこの世界に居た時点で、嘗て僕が関わった世界だと解っていたよ。だけど僕にはやるべき事が幾つもあった。すぐに君の所には、天乃杜神社には来れなかったんだ」

 

「小学生を侍らせる事が、優斗のやるべき事?」

 

「……」

 

 ジト目で言うかんな。

 

「この世界に落ちた災厄、更には別の災厄が内包されていた地……海鳴市」

 

「海鳴市……」

 

「それに地球連邦成立と、君らみたいな力を持った者──退魔巫女や退魔剣士、魔法使いやHGSの総括。特にHGSは差別や迫害の対象や、あまつさえ身体実験を受けたりもする。早い内に対処したい事だった」

 

 それがゲートを守護する目的の序でだとしても。

 

 言わずもがな高機能性遺伝子障害病──通称HGSとは、名前の通り遺伝子に障害を持った病気とされているが、高機能性と云われるのは病気を患っている者達がリアーフィンを展開、超能力としか呼べない能力を扱える特徴を持つ。

 

 故に、心無い人間達には高機能性遺伝子障害病者は兵器を造る材料だとしか見えないらしく、事実としてクローンを製作して量産をしようとしていた。

 

 海鳴市に住むリスティ・槙原やフィリス・矢沢が正にそうで、リスティは嘗てリスティ・シンクレア・クロフォードと自称──実際にはエルシーと呼ばれていた──していた【劉機関】で高機能性遺伝子障害病者同士を、人工受精にて掛け合わせ造られた生体兵器。

 

 フィリス・矢沢、そして海鳴市には居ないセルフィもそうだ。

 

 何処の世界でも有りがちな事象に過ぎない。

 

 以前の世界も人造魔法師が造られていたし……

 

 元は三十路処女で死んだ彼女を権能で蘇生をして、取り敢えず高校入学まではヤりまくった。

 

 本人は死ぬ時期を選べて良かったと考えていたが、元主の子供達が気になったからと誘いに乗ったのだ。

 

「兎に角、海鳴市から出る選択肢は選べなかった」

 

「ハァ、解ったわよ」

 

 取り敢えず、おばかんなとはいえある程度は納得もしてくれたらしい。

 

「じゃあ、行くわよ」

 

 皆の所へ案内をするべく先導するかんな、ユートと歩は黙って後に続いた。

 

 市乃もこの神社に住み込みでバイトみたいな扱いであるらしいから、久し振りに──とはいえどかんなやうづきや木島に比べれば、僅か二ヶ月か其処ら振りでしかないが、会う事も出来るだろう。

 

 そして、歩の双子の姉の皐月と長女たるむつきとは初顔合わせになる。

 

 住居区となる場所にまで来ると、木島 卓が嘗ての復讐者とは思えないくらい穏やかな表情で庭の落ち葉を箒で掃き、歩にそっくりな少女が塵取りを構えて、うづきがにこやかにそれを見ており、どちらかと云えばむつき似の少女だが木島にも面影が重なる少女が、うづきの肩を揉んでいた。

 

 何ともアットホームというか、穏やかな日常風景を見た気分である。

 

 市乃は見当たらない。

 

「うづき、木島!」

 

「あ、お姉ちゃん?」

 

「どうした、かんな?」

 

 此方を見た二人だけど、すぐにかんなの後ろで歩いて来るユートに気付く。

 

「お前、優斗か!?」

 

「ああ、久し振りって言うか十六年振りだね……卓」

 

 目を見開いて驚く木島、そして同じく右手で口元を覆いながら驚くうづき。

 

 初の顔合わせなだけに、むつきと皐月は首を傾げるに留まった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「粗茶ですが……」

 

 コトッ、置かれる湯飲みは十六年前にユートが使っていた物に相違無い。

 

 むつきが全員分の麦茶を淹れてくれた。

 

 八月上旬の真夏だけに、冷たい麦茶で涼を取るのだろうが、何故にユートの分が湯飲みなのやら?

 

 口を付けてみれば普通に氷の利いた麦茶だ。

 

 まあ、湯飲みとしてみれば大きめだからグラスでなくとも構わない。

 

「改めて、久し振りだね。卓にうづき」

 

「そうだな、久し振りというには間が空き過ぎだが。何せ十六年だからな」

 

「本当に、もう二度と会えないんじゃないかって思っていたんですよ?」

 

「悪かった。でも、僕自身が此処に来る術が限られていたからね。今回の来訪は正に偶々ってやつさ」

 

 とはいえど、某・次元の魔女は『全ての事象に偶然は無い』と言うだろう。

 

「然し、建物の方は変わらないが……君らは随分と変わったか? 復讐者の木島とオドオドしたうづきが、三人の子持ちだからね」

 

「うっ……」

 

「あうっ!」

 

 二人は紅潮してしまう、何しろ木島ときたら芳賀への復讐心で一杯、うづきは男が苦手で最初の頃は木島やユートを相手にかんなの背後へ隠れる始末。

 

 正確には対人恐怖症だ。

 

 そんな二人が手を取り合って子を成し、神社を事実上で継いでいるのだから。

 

 ユート的にも感慨無量と云うべきか。

 

「そういや、お前は変わっていないな……性格云々よりも見た目が」

 

「そういえば、十六年前に別れたっ切りでしたけど、あの頃とまるで変わりませんね? 容姿が……」

 

「ま、色々とあってね」

 

「いやいや、寧ろ色々とあったなら変わるだろうに」

 

 木島の当然なツッコミ。

 

「僕はハルケギニアに帰った後、百五十歳越えて生きていたけど……とある闘いの後遺症から死んだんだ」

 

「「「は?」」」

 

「んて、ハルケギニアという地球に似た異世界から、正真正銘の地球……とはいってもこの世界じゃなく、別の地球だけどね。転生をして、ユート・オガタ・シュヴァリエ・ド・オルニエールから、ユート・スプリングフィールドになった。今は基本的に【緒方優斗】と名乗っているよ」

 

 三人──否、事実として転生した経験を持った歩を除く全員が唖然となる。

 

「驚く事か? イッちゃんだって、実際に転生をして市寸島比売命から瑞葉市乃になっているじゃないか」

 

「そりゃ、市乃は元とはいえ神様だったからな」

 

「神様が転生出来るなら、人間にだって出来るだろ。事実、輪廻転生という概念は仏教に存在しているし」

 

「む、そうだが……」

 

 木島は何と無く納得がいかない表情となるものの、それでも理解はした様だ。

 

「後遺症というのは?」

 

「うづき……僕が時折に、黒血を吐き出していたのは覚えているか?」

 

「あ、うん」

 

「【混沌の種】──【這い寄る混沌】に埋め込まれた人を蝕む欠片。百五十歳まで生きられたのは、生ける炎たる這い寄る混沌の天敵……クトゥグアの焔が有ったからだね。まあ、流石に限界がきて死んだんだよ」

 

「クトゥグアの焔って……若しかして黒血を吐いた時に飲んでいた?」

 

「そう、あれはクトゥグアの焔を凝縮したカプセル。傍にクトゥグアが居なかった場合、あれを飲んで当座を凌ぐんだ」

 

 クトゥグア星人のクー子がよもや、あの場で招喚をされるとは思わなかった訳ではあるが、ユートはそもそもクー子が登場する作品を知らなかったり。

 

 それは兎も角、ユートはクー子からあのクトゥグアの焔のカプセルを千単位で作って貰っていたが故に、クー子が居ない世界行脚にも堪えられたのである。

 

 まあ、元がクトゥグアの焔なだけに解放すれば凄まじい爆発力を持つ。

 

 だから攻撃に使う事も。

 

「今はどうなのよ?」

 

「大丈夫だよ、かんな……転生して古い肉体は喪われたからね。幸いにも魂にまで干渉されていなかった。だから転生して肉体を蝕む【混沌の種】は最早無い」

 

「そっか……」

 

 胸を撫で下ろすかんな。

 

 いつからだったろう?

 

 かんなは鬼が大嫌いで、当然ながら生粋ではないが鬼である木島 卓とは正に犬猿の仲、うづきやイチ様が間に入らねば……若しもあの頃に二人きりだったら間違いなく破綻したと自信を持って言えるくらいに、かんなと木島の仲はかんなが一方的に嫌っていたとはいえ、最悪の二歩くらいは手前の仲だった。

 

 木島も木島でかんなの事を殊更、嫌ってはいなかったのだろうが歩の仇討ちに凝り固まった精神状況で、余裕が無かった事から決して歩み寄りはしない。

 

 本来の世界線では時間が解決したし、場合によっては木島が姉妹の治療に当たるから、仲違いなどしてはいられずにズルズルとなし崩しで改善されたが……

 

 勿論、木島が彼女らと共にトラウマやら何やらと、改善をしたのも大きい。

 

 妻のうづきはカマイタチに関する事、ペットとして飼っていたカマイタチを、誤射してしまって弓を使えなくなっていた。

 

 かんなは芳賀の事件より以前、親友が百目鬼によって意識不明となった。

 

 尚、この世界線でうづきの一件に木島がドップリと浸かり、ユートがうづきに【暴君の魔銃】のレプリカを渡している。

 

 また、かんなの親友の件はユートが首を突っ込み、本来なら床島 霧は死んでいたが、力を喪っていたとはいえマジックアイテムの製作は可能だったユート、見事に霧を救っている。

 

 まあ、半妖化は免れなかった訳ではあるが……

 

 それでも無事に社会復帰も成され、かんなと霧は抱き合って涙を流していた。

 

 思えば、ユートに霧が込みだとはいえ自分の意志で抱かれたのはあの時が初めてであり、その時からだろうか……ユートへの想いが変化してきたのは。

 

 一応、おバカだといっても容姿は悪くないかんな、両親が見合い話を持ってきたのも一度や二度でなく、然し決して結婚には踏み切れなかったのは、いつの日かユートが戻ってきた時、結婚していたらもう見ては貰えないのが怖くて、戻らない可能性が高いと知りながら、どうしても受け容れられなかった。

 

 幸い、天乃杜神社に関してはうづきと結婚した木島が二人で継ぎ、かんな自身はその手伝いをするだけに留まれたので、割と堂々と未婚の侭に過ごす。

 

 そして今年の春、かんなは市乃からの報告で自分の判断が間違っていないと、確信が出来た。

 

 会いに来てくれないが、それでもユートは戻ってきているのだと、市乃が興奮気味に話してくれたのだ。

 

 そして今日、かんなは遂にユートと再会をして想いの再確認も出来た。

 

 天神かんな三十四歳……この日こそ女を賭ける瞬間であったと云う。

 

 

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 この世界、不思議パワー持ちが割と多目です。



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