魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第12話:衝撃的 それは余りに残酷な真実

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 ユートが光の矢によって吹き飛ばされたのを見て、ユーキは盛大な溜息を吐くと黄金の鎧を着た少年の方を見遣り、最大級の憐れみを籠め……

 

「莫迦な奴だねぇ、兄貴に問答無用で攻撃を仕掛けるなんて。殺されても文句は言えないよ?」

 

 寧ろ嘲笑いながら言う。

 

 擁護する気は無い。

 

 何を思ったかは何と無く想像は付くが、それは余りにも愚かな選択だった。

 

 ユートを相手にした場合だと、少年の行為など正に悪手と……否、愚行であるとしか言えない。

 

「誰を敵に回したか思い知るが良いさ」

 

 それを聞いていた璃亜は真逆と思いつつ、兄である呂守を見る。

 

 此方は黄金聖闘士。

 

 射手座のアイオロスと、獅子座のアイオリアだ。

 

 まあ、姓名を続けて読めばそうなるだけであって、実際は射手座の呂守と獅子座の璃亜ではあるが……

 

 相生呂守と相生璃亜……この兄妹は転生者である。

 

 兄妹は前世で事故に遇ってしまい、庇った兄諸供にトラックに轢かれて死んでしまった。

 

 両親の死後、優しい親戚にそれぞれが引き取られた後も、時々は会ってデートではないが愉しく遊んだりして、そこそこ幸せな日々を過ごしていたが、結局は死んでしまう。

 

 その後は、神様を名乗る長いサラサラな銀髪靡かせてアホ毛をピローンと伸ばした少女に会い、転生させてくれると聞いた。

 

 理由は訊かなかったが、転生して何とか口が利ける様になった後、呂守と話した結果だが単純にテンプレなのではないか? という結論に至る。

 

 兄の呂守は兎も角、自分は口調も少し変わったが、取り敢えず折角リリカルな世界に生まれ変わったのだから、高町なのはなど主人公達に会いたいと云うのが兄妹の共通した願い。

 

 だけど問題が一つ。

 

 生活の地が海鳴市ではなかった為、直ぐには動けなかったのである。

 

 何とか最悪でも原作までに転校したいと思っていたのだが、璃亜は自分自身が獲た転生特典(ギフト)で、【OHANASHI】──不可能でなければ状況などを調整し、道理を引っ込ませて実行する──によって呂守と共に転校をする話を成功させた。

 

 呂守と璃亜が海鳴市へと引っ越すのは、不可能な事ではなかったらしい。

 

 璃亜はある程度の説得を行える能力としてこれを頼んだ訳だが、使い勝手の方は余り良くなかった。

 

 この能力では余程の入念さを以て当たらなければ、説得などを行うのは困難な事になってしまうだろう。

 

 まだ他の二つの転生特典(ギフト)に関しては、試してさえいなかったものの、使い勝手がもう少し良かったらなぁ……なんて璃亜は考えていた

 

 いずれにしても、精神を操作するタイプの能力だと意味を為さない可能性が高いと考え、そんな転生特典(ギフト)にはしてない。

 

 呂守は流石に其処までの真理に辿り着いてないが、今や二次創作のテンプレな踏み台にならない為にも、決して地雷にならない転生特典(ギフト)を選んだ。

 

 先ずは見た目には銀髪とオッドアイ、能力的にならニコポやナデポ。

 

 これは明らかに地雷だ。

 

 更に、使い熟せるならば強力なのだが、普通ならば余りに役に立てる事が出来ない能力──無限の剣製、王の財宝、直視の魔眼に、魔力SSSなどだ。

 

 確かに原作では強力なのだろうが、熟練者ならまだ兎も角として、殆んどの者が修業もしないでギフトに頼り切る。

 

 結果、力に振り回されてしまうという訳だ。

 

 呂守はそれを避ける為、シンプルに黄金聖闘士の力のみを選ぶ。

 

 〝力〟とは小宇宙や聖衣

や必殺技など全てが該当するから、射手座と獅子座の黄金聖衣を持って、いずれセブンセンシズにも目覚めるであろう。

 

 能力に振り回されない様にするべく、兄と模擬戦をしたりして使い熟す為に、修業だってしている。

 

 兄が二つ分の願いで自分にも黄金聖闘士の力を貰ってくれた為、璃亜は戦闘系以外のギフトを貰えた。

 

 璃亜はそのギフトを以て兄のサポートをする。

 

 そう考えていた。

 

 目の前の長い青髪をポニーテールに結った少女を、璃亜は見つめた。

 

 髪の毛が長いという以外では、明らかにその容姿はタバサのもの。

 

「(この子、偶然似ているというには似過ぎてるし、タバサの容姿で転生を望んだのかな?)」

 

 恐らくは転生者だろうと当たりを付け、先程の少年の事を考える。

 

「(イレギュラーという事は彼も転生者。でも何故、シグナムと戦って?)」

 

 可能性として考えるなら家族を闇の書に殺されて、憎んでいるというものだろうが、少年は自分達とそう変わらない年齢に見えた。

 

 仮に少年が中学一年生だとしても、一歳かそこらで物心など付いてはいまい。

 

 もう一つ気になるのが、青髪の少女の少年に対する信頼感だろう。

 

「(〝兄貴〟と呼んでいたって事は、あの子と少年は兄妹だよね?)」

 

 其処まで考えていると、青髪の少女が自分に目を向けてきた。

 

「獅子座のアイオリアとか言ったっけ? アイツとは名前からして兄妹だね? つまり敵って事でファイナルアンサー?」

 

「闘う気? 君もボクと同じでしょう。なら知っているんじゃないの? ボクと兄さんの力が何かを」

 

「聖闘士星矢。黄金聖闘士だね。だから何? 真逆、聖衣を纏ったくらいで勝てるとでも思った? ボクも舐められたもんだね」

 

 ユーキは自身の内に在る小宇宙を燃焼させる。

 

「小宇宙? 君は!」

 

 ユーキは左腕を掲げて、その名を叫んだ。

 

鳳凰星座(フェニックス)……フルセット!」

 

 膨大な灼熱の小宇宙が、まるで空を覆うかの如く拡がり、ユーキの頭上に灼熱色をした翼広げる鳳凰の形のオブジェが顕現すると、各パーツに分解されユーキの身体に装着されていく。

 

「相手をして上げるよ……この鳳凰星座のユーキが」

 

「セ、聖闘士?」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 一方その頃、アイオロスはと言えば……

 

「(く〜っ、悪漢から護る男の図だ。今の俺、最高に輝いてるぜ! シグナムからはやてに俺の勇姿が伝われば、はやても俺に首ったけってな♪)」

 

 当のシグナムからすれば心踊る闘いを、行き成り現れて邪魔した金ぴかに対して怒りしか沸かない。

 

 事情も知らず気儘な介入をした結果、踏み台になりかねない地雷を踏んでしまったのだがアイオロス……否、相生呂守は自分の行為に酔って気付かなかった。

 

「随分と愉しそうだな」

 

「あん?」

 

 背後から話し掛けられて呂守が振り向くと、たった今さっきブッ飛ばした筈の少年が浮かんでいる。

 

「射手座の黄金聖衣って事はだ、お前と彼処でユーキと対峙してるリトスっぽいのが獅子座の黄金聖衣を纏っているのが、転生者か」

 

「なっ!? さっきの小宇宙はあのタバサ似の子?」

 

 小宇宙は感じていたが、自分に酔っていた事もあってか、特には気にしていなかった呂守は、やはり単に小宇宙と聖衣を持っているだけの感が強い。

 

 しかも灼熱色の鎧を纏った姿……形状こそ違うが、あれは正しく……

 

「フェニックスだと?」

 

 驚愕しながらユートへと顔を向ける。

 

「何を驚く? お前らは、そもそも僕らに併せて選ばれたに過ぎない」

 

「どういう意味だよ?」

 

 ユートはパルティータから獲た情報を元に構築した残酷な真実、それを冷酷に冷静に伝えてやった。

 

「お前らを転生させた神、あれの容姿で気付かなかったのか?」

 

「容姿? ニャル子に似ていたが……」

 

「ああ、そういう認識か」

 

 まあ、ユートからすれば【純白の天魔王】はなのはに似たナニかではなくて、〝高町なのは〟そのものだったから考えた事もない。

 

 目の前の少年は、アレをニャル子〝そっくりさん〟と認識していたのだ。

 

 だけどそれは違う。

 

 アレはユーキからの情報のみだが、八坂真尋に逢う運命を持つ事の無かった、ニャルラトホテプ星人であるニャル子そのもの……にアクセスしている。

 

 ほんの僅かな天秤の傾きにより、決定的に運命を変えてしまったニャル子とは同一存在だった。

 

 初めの初めに特別クラスに配置され、クー子と逢う事も無かったニャル子が、八坂真尋に逢わずにいた為かクー子と滅ぼし合うなんて不毛も、過去へと遡った八坂真尋がそれを目撃する事も無くて、クー子も自宅警備員をおじさんとらやに説得されてしまい、自発的に管理局入りした世界。

 

 八坂真尋も特異な世界に浸かる事無く、割と平々凡々──代わりにユートがとばっちりを受けている──な生活をしている。

 

 聞き齧る限り、八坂真尋は暮井珠緒なる少女に告白され、普通に結婚して幸せな人生を歩んでいるとか。

 

 本来なら邪神ハーレムを築き上げ──中に男の娘っぽいのやNTRでしか興奮出来ない変態が混じる──波瀾万丈な高校生活を送った筈の少年の運命は、派生世界に生まれたが故にある意味で幸福な人生を送る事になった訳だが、彼は原作の自分とを見比べたなら、果たしてどちらを幸せだと断じるだろう?

 

 今となっては議論する事にも意味がないIFだ。

 

 尚、彼の原作キャラクター達は基本的に聖闘士星矢を準拠とした設定を以て、邪悪な神々として二〇一二年の九頭竜との闘いで次々と現れた。

 

 クー子もユートが造って渡した炎衣(イグニス)を、邪炎衣として纏い行き成り現れたのだ。

 

 閑話休題……

 

「どうやら根本的に勘違いしているみたいだけどね、奴はニャル子と同一存在。別の可能性、IFの邪神生(じんせい)を歩んだね」

 

 

「何だと?」

 

「お前らは、何らかの運命を持っているとか、誤って殺したとか何かじゃなく、僕に当てる為に君らの人生を弄くって、敢えて殺したんだろうな」

 

「ど、どういう意味だ!」

 

「膨大なシミュレーション……それこそ無限螺旋並の労力を使い、聖闘士の力を獲たいと望むであろう人間を捜し出し、殺したんだ。一二人が居るのか、数人しか確保出来なかったのか、それは知らないけどね」

 

「莫迦な……じゃあ、妹は……玲於奈はそんなお遊びで殺された?」

 

 愕然となる呂守。

 

「這い寄る混沌がそういう存在なのは、君も知っているんじゃないか? 神々の世界のトリックスターで、最大の愉快犯。人間世界の悪徳を助長させて、自らが破滅する様に仕掛ける神。原典にせよペルソナにせよ無限螺旋にせよね」

 

「お前に併せてってのは、どういう事だよ?」

 

「僕が奴の興味の対象になったからだ。無限螺旋では九郎さん共々、奴の罠を食い破って、他にも色々と闘ったからな。奴がニャル子の姿と人格を選んだのは、未だに姿が曖昧だった頃、僕がクー子を招喚したからなんだろうけど、ともあれ奴は僕が聖闘士だからこそ聖闘士の力を望む君ら……否、君を選んだんだ。妹を共に殺したのも、そうすれば君が妹に聖闘士の力を与えようとするというシミュレーションの結果だろう」

 

「っ!?」

 

 余りにも衝撃的な事実を聞いて、呂守は守護騎士に格好いい所を魅せ、はやてへの印象を善くしよう何て考えた事など吹き飛んだ。

 

「お前の、お前の所為で……お前の所為で玲於奈が殺されたのか!?」

 

「違うな。三分の一はそうかも知れないが、三分の一は這い寄る混沌の所為だ」

 

「じゃあ、残りは?」

 

「誤魔化すなよ。気付いてるんだろう?」

 

「──っ!」

 

「奴は膨大な、数十億年を越えるシミュレーションを行い……」

 

「言うな!」

 

 呂守が叫ぶが、ユートは残酷な真実を突き付ける。

 

「他ならない、〝お前が〟聖闘士の力を望むと知ったからこそ、奴はお前と妹を殺したんだよ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっっ!」

 

 耐え切れない真実の重みに絶叫し……

 

「消えろ、無限破砕(インフィニティブレイク)!」

 

 無数の光の矢を放つ。

 

 全てがヒットして濛々と立ち込める煙。

 

 暫くしてそれが晴れると其処には、まるでダメージの無いユートが悠々と浮かんでいる。

 

「莫迦な? どうして!」

 

「お前も聖闘士なんだし、聞いた事くらい有るだろ? 聖闘士に一度視た拳など二度も通用しない……と」

 

「なにぃ!?」

 

 ユートは右腕を掲げて、人差し指を立て……

 

「此処に来て僕の躰を鎧え我が聖衣よ!」

 

 自らの聖衣を喚ぶ。

 

 光が立ち昇り、ユートの頭上に顕れたそれには見覚えがある。

 

「あれは……双子座(ジェミニ)の黄金聖衣!?」

 

 

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 ペガサスだけではなく、他の聖衣も進化……

 OPに併せた変化は僅か二回しか使われずに終わるとか、OPでの長い前フリは何だったのか?



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