魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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 これは、魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】外法典:黄金転生 闇に吼える嗤い聲 を加筆修正したモノです。

 倍くらいのボリュームになってしまった。





外伝噺:転生 斯くして新たな黄金は目覚めた

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 とあるアホ毛を伸ばした銀髪の神が、リリカル世界に転生者を送り込む。

 

 己れの目的の為に。

 

 既に幾つかのファクターは送り込み、干渉値はある程度だが満たしているし、とある場所にとあるモノを送り込んであるが、やはり愉しく遊ぶのなら自分自身を送り込みたい。

 

 その為にこそ再び干渉値を満たすべく、転生者という存在を送り込む。

 

 世界の容量を増やす為、己が自身を送る為に。

 

 

 

 

『いや〜、すみませんね。貴方達を殺してしまいましたよ』

 

 少年と少女は唖然とし、銀髪アホ毛を見つめる。

 

 人を殺しておいて軽すぎる態度に呆れていたのだ。

 

 この見た事のある少女、だが然し記憶に在るモノと比べて、何処か邪悪にも見えて不気味だった。

 

『まあ、あれですよ。貴方達にはテンプレ通りに転生して貰いましょうかね』

 

 ドヤ顔でサムズアップしてくる銀髪アホ毛に、軽くイラッときた少年と殺意を覚える少女。

 

 少年と少女が死んでしまった切っ掛けは、交通事故というやつである。

 

 二人は兄妹で、両親を亡くして親戚にそれぞれ引き取られて暮らしていた。

 

 特に虐げられておらず、兄妹が会うのにも障害がある訳でもない。

 

 よくある盥回しでなく、親戚は親切心で引き取ったのだから当然だ。

 

 兄の方は、一人暮らしの母親の姉の伯母と暮らし、夫に先立たれてしまい子供も居なかった伯母は、兄妹によくお小遣いを上げて、遊園地などに遊びに連れていってくれたりもした。

 

 妹も父親の弟夫婦に引き取られ、生まれて二年しか経っていない義弟が出来、楽しく暮らしている。

 

 どちらかが両方を引き取れれば良かったが、流石に両方を引き取るには経済的に難しかったらしい。

 

 幸せに暮らして、互いに成人した時に独立したら、どちらかが結婚するまでは一緒に暮らそうと話して、その日……妹の成人式の日にアクセル全開で突っ込んでくる車が……

 

 妹を庇ったは良いが諸供に轢かれて死亡した。

 

 そして兄妹は今、此処に──真っ白な何も無い空間に来ている。

 

『まあ、転生特典を三つ付けて上げますから、言って下さいな』

 

 顔を見合わせる兄妹。

 

「待ってくれ」

 

『何ですか?』

 

「俺達、何処に転生をするんだ? 一応、知っておきたいんだけど……」

 

『何故ですか?』

 

「例えば、ファンタジーな世界に機械技術を持っても余り意味が無いし、竜騎士がステータスな世界で魔法の才能だけじゃ片手落ちになるからだよ」

 

『成程、確かにそうです。魔法少女リリカルなのはの世界ですよ(他にも混じってますが)』

 

「おお! 原作ブレイクとかハーレムとかヤっちゃってオッケーなのか?」

 

『ええ。所謂、平行異世界のリリカルなのはですし、ヒロインが欲しければお好きにどうぞ?』

 

「っしゃー! 俺の時代がキタァァァァァァァァ!」

 

 両腕を上げながら叫ぶ。

 

「お兄ちゃん、恥ずかしいんだけど……」

 

 ヒートアップする兄に、妹は真っ赤になる。

 

 とはいえ、妹も兄に無理矢理? アニメを観せられていて原作は知ってたし、翠屋のシュークリームには憧れていた。

 

 女の子故に、体重を気にしながらも甘いものは大好きだからだ。

 

 それに魔王や天然や子狸と友達になるのも、面白いかも知れないと考える。

 

『それで、どんな特典が欲しいですか?』

 

「じゃ、じゃあ……」

 

 兄が欲した特典は……

 

・自分と妹を再び兄妹として転生させて欲しい。

 

・自分と妹に射手座と獅子座の聖闘士の力を。

 

 上記は兎も角、もう一つは願いが二つ分になると言われてそれを承諾した。

 

「ちょっと、お兄ちゃん? 何してんのよ!」

 

「これでお前が簡単に死ぬなんて無いだろ?」

 

「……お兄ちゃん」

 

 少しばかり感動した妹、兄が自身の特典を使ってまで自分を慮ってくれて。

 

 銀髪アホ毛は特典についての説明を行う。

 

『小宇宙は使えますけど、セブンセンシズに至るには要修業になります。修業さえすれば、必ず目覚める様に才能を付加しましょう』

 

 妹も訝しみながら願いを三つ、確かに頼んだ。

 

『願いは叶えました。では佳き人生を……」

 

 パカッ!

 

「へ?」

 

「ひあ?」

 

 足下に行き成り穴が空いたかと思うと、兄妹は重力に惹かれて(誤字に非ず)落ちてしまう。

 

「こーれーもー、テーンープーレーかーーっ!」

 

「きゃぁぁぁぁっ!?」

 

 兄はドップラー効果を残しながら、妹は悲鳴を上げて落ちて逝くのだった。

 

 なのは達が誕生する一年前に、相生(あいお)家へと誕生した兄の呂守(ろす)。

 

 翌年、両親が夜の運動を頑張った末に、年子として妹の璃亜(りあ)が誕生。

 

 既に意識がハッキリしているとは露にも知らずに、隣のベビーベッドで呂守が寝ている──実際には隣で『アンアン』と母親の嬌声が煩くて眠れていない──中で、夫の身体の上で母親が腰を振りながら嬌声を上げているのを、『妹の為、妹の為……』と念じながら叫びたいのを我慢していた呂守は、自分を誉めてやりたい気分だったとか。

 

 それにしても親父殿……美人で五歳も年下な妻を貰ったからと、『毎夜毎夜が激しすぎるだろう』と文句をというか、隣で息子が寝てるのだから自重しろと、声を大にして言いたい。

 

 況してや、生まれたばかりの息子の食事(ぼにゅう)を飲んでんじゃねーよ! と叫びたかった。

 

 そして苦節一年、ようやっと妹が産まれてくれる。

 

 因みに、妻の懐妊で自重するかと思ったら、大きくなるお腹に悦びを感じて、『腹ボテプレイだ!』などと興じており、入院をする二ヶ月前までヤりまくっていた父親に、呂守は呆れるより先に妹が流産しないかハラハラしたと云う。

 

 そして、此処に相生呂守(アイオロス)と相生璃亜(アイオリア)が揃い踏み、兄は日本人離れをした顔立ちだが金髪ではなく赤毛、妹の方はアイオリアというより、寧ろエピソードGに登場したリトスな顔立ちであり、髪の毛は茶髪を短めにしてある。

 

 リトスっぽい外見の所為ではあるまいが、一人称が『ボク』となっていた。

 

 然しこの兄妹には一つ、大きな誤算が……

 

「う、海鳴市じゃねーし」

 

「原作に関われそうに無いねぇ、兄さん」

 

 此処は海鳴市ではなかったという。

 

 果たして兄妹は無印にも間に合わず、A’sの時期に転校という形を採るしか無かった、妹の転生特典(ギフト)【OHANASHI】──ある程度の意見を通す能力──によって……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

『ふふふ、上手く潜り込ませる事が出来ましたね』

 

 邪悪な笑みを浮かべて、銀髪アホ毛は生まれ変わった兄妹を見遣る。

 

『介入条件は整いました。さあ、張り切って遊びましょうユートさん。何度も何度も、無限螺旋も斯くやのシミュレーションと思考誘導で造った転生者ですよ。お仲間にするなり、踏み台にするなり御好きどうぞ。何しろその為だけに〝殺した〟んですから。うふふ、あはは……アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!』

 

 銀髪アホ毛はダークヒーローの如く漆黒の鎧兜の姿になると、その額には燃える様な第三の眼が不気味に輝いていたと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 呂守は四歳になった頃、原作に関わる為の修業に精を出し始める。

 

 妹のリトス……でなく、璃亜も同じく一年遅れながら四歳で修業を始めた。

 

 聖衣に関しては、家に伝わるアーティファクト的な扱いで簡単に手に入るが、小宇宙に関しては鍛えて身に付けるしかない。

 

 どんな修業をするべきなのか判らなかったが、取り敢えずは肉体を普通に鍛えながら、小宇宙を引き出す為に瞑想をしたりした。

 

 三年間もの修業の成果なのか、小宇宙を感じ取れる様になった呂守と璃亜は、近くの森の中で模擬戦などをやっている。

 

 呂守は七歳で璃亜が六歳となっており、原作の開始まであと二年くらいだ。

 

 才能は与えられている筈だけど、二人は未だ第七感(セブンセンシズ)には目覚めておらず、取り敢えずは聖衣を纏ってみようという話になり、その日は各々が射手座と獅子座の黄金聖衣を持って来ていた。

 

「う〜ん……」

 

「どうしたの、兄さん?」

 

「いや、これだと目立つんだよな」

 

「それは……まあ、ね」

 

 背中から降ろした聖衣櫃(パンドラボックス)を二人は見遣り、呂守は溜息を吐いてしまうし、璃亜も苦笑いしか出せない。

 

「聖衣の形状はこの侭で、聖衣石(クロストーン)だったら持ち運びが楽なのに」

 

「聖衣に関してはお任せって感じで頼んだからね」

 

 聖衣櫃を背中に背負っていたら、果てしなく目立っていたので溜息を吐くのも仕方ないだろう。

 

「けど、そろそろ模擬戦もやっていかないとな、他の転生者が居たらバトルになる可能性もあるし……」

 

「他の転生者か……ボクは楽しみだけどね。それに、喧嘩になるとは限らないと思うんだ。それとも兄さんはヒロインを先に奪われたからって、喧嘩を売る心算なの?」

 

「んな事する訳無いだろ」

 

 ヒロイン云々で言えば、ハッキリといって後手に回ったとしか思えない。

 

 少なくとも、高町なのはは堕ちている可能性大だ。

 

 転生者の能力次第だが、高町士郎の怪我を治療して高町恭也への御説教、このテンプレな行動で好感度は駄々上がりする事だろう。

 

 他に二次創作よろしく、月村すずかとアリサ・バニングスの誘拐事件の解決。

 

 フェイト・テスタロッサであるなら、プレシアとの和解やアリシアの蘇生。

 

 八神はやて、【闇の書】事件でリインフォース救済とかだろうか?

 

 好感度アップイベントは原作開始からだし、多少の遅れは取り戻せる筈。

 

「そういやさ、どうやって海鳴市に引っ越すんだ? 任せろと言っていたけど」

 

「うん、ボクが貰った転生特典のOHANASHI。ある程度の無理を通して、道理を引っ込ませる能力」

 

「ならすぐに引っ越せなかったのか?」

 

「それは不可能なんだよ。だって、それだと明らかに不自然だからね」

 

「不自然?」

 

「ボクのOHANASHIってのは、飽く迄も可能なレベルの無理を通す能力。不可能な事は押し通せないんだよ」

 

「? よく解らないが」

 

 璃亜の説明に首を傾げる呂守、莫迦ではないのだが若干ながら脳筋気味。

 

「そうだね、例えばだよ。五〇キロの重量を持ち上げられる人が、無理をすれば七〇キロなら持ち上げられるかも知れない。だけど、だからって二〇〇キロもの重量は持ち上がらない」

 

「そりゃ……な」

 

「ボクのOHANASHIというのは、七〇キロの物を無理して持ち上げろと言って持ち上げさせる能力なんだよ。必要なら身体を鍛えて万全の状態で。行き成り二〇〇キロを持ち上げろと言っても無理だよ?」

 

「成程な。つまり今は準備中って事なのか?」

 

「うん! 取り敢えずは、お母さんに交渉してみた。何とかなりそうだよ」

 

「そっか。子供だけじゃ、どうしょうもないからな」

 

 時間を掛ければ海鳴市に行けそうだと知り、呂守も少し安心をする。

 

 ヒロイン争奪戦は勝てないかも知れないが……

 

 だけど前世から続く可愛い妹の頑張りを否定する程に狭量ではなく、『まあ、良いか』と考えていた。

 

「然しな、此処って本当に【魔法少女リリカルなのは】の世界なのか?」

 

「間違いないよ。お母さんがミッドチルダ出身の騎士だもん」

 

「へ?」

 

「アイラ・レオンフィード・相生。海外の人処か異世界人だなんてね」

 

「まぢ?」

 

 目を点にする呂守の問いに頷く璃亜。

 

「時空管理局じゃなくて、聖王教会の魔導騎士だって言ってたよ」

 

「おいおい、何だよそれ」

 

 気付きもしなかった呂守としては、あのエロ親父がどうやって知り合ったのかが気になる。

 

 何しろ、流石に最近だと情操教育上には宜しくないからと自重を覚えてくれたものの、まだ璃亜が物心付く前は──物心はとっくに付いていたが──お猿さんの如くヤっていた。

 

 正しくエロ親父。

 

「お母さんは、地球に任務で入り込んだらしいんだ。この地球は何か特殊なモノが在るらしくて、その調査って事みたい」

 

「何でそんな事を知ってるんだよ?」

 

「聖王教会に連絡を入れていたのを見てたから」

 

「って、母さんは聖王教会のスパイかよ!? 何で、父さんと結婚したんだ?」

 

「ああ、それは……埼玉県のとある場所に入り込んだ時に傷を負ったらしくて、それでお父さんに助けて貰ったのが出逢いだって」

 

 割とベタな出逢い方だ。

 

「にしても、何で埼玉県? 彼処に何が在るんだ?」

 

「埼玉県……麻帆良学園都市が有るよね? 【魔法先生ネギま!】だったら」

 

「世界樹か? だけどな、麻帆良が存在しないから、世界樹なんかが在れば大騒ぎだろうに……」

 

「それ以前に世界樹なんて無いけどね」

 

「だったら?」

 

「通信中の内容しか判らなかったけど、ロストロギアが在るかも知れないって」

 

「ロストロギア……か」

 

「しかも聖王所縁の」

 

 聖王教会もロストロギアを集める事はしているが、よもや地球に聖王と関係のあるロストロギア発見と、有り得ない情報に呂守は頭を抱えたくなった。

 

「むっ! 妖怪か!?」

 

「……みたいだね」

 

 いつの間にか囲まれて、二人は背中合わせになる。

 

 最近の事だが、この世界には妖怪が居るらしいと、それが判明した。

 

 灘杜神社と霞ノ杜神社が存在する事を、強大な霊力を持っていると璃亜をスカウトに来た事から判る。

 

 小宇宙を鍛えて霊力が強くなったからだろう。

 

 すわ神楽シリーズかよ! と、呂守は突っ込まずにいられなかった。

 

 そして【はぐれ妖怪】とも云える妖怪が、この森に現れたのか気配──妖気が幾つも周囲に在る。

 

「はん、実戦経験には丁度良いぜ!」

 

「そうだね……」

 

 二人は聖衣櫃を開く。

 

 黄金色の聖衣櫃が開き、その中から黄金に煌めきを放つオブジェが現れた。

 

 テュポーンとエキドナの間に生まれた、ギリシアはペロポネス半島のネメア谷に棲まう雄々しい獅子。

 

 彼の英雄ヘラクレスと闘ったネメアの獅子を象る、獅子座の黄金聖衣。

 

「来て、獅子座聖衣(レオ・クロス)!」

 

 半人半馬のケンタウルス族の賢者ケイローン。

 

 戦闘、薬剤、医術、音楽などに精通したケイローンは英雄の育成をしたのだと云われている。

 

 ネメアの獅子とケイローンには共通点があった。

 

 それは理由はどうあれ、ヘラクレスに殺された点。

 

 そんなケイローンを象る黄金聖衣……

 

「来い! 射手座聖衣(サジタリアス・クロス)!」

 

 金色の光を放った聖衣が分解され、獅子座は璃亜、射手座は呂守に鎧う。

 

「征くぜ、妖怪共!」

 

「貴方達を街には出して上げない!」

 

 呂守と璃亜は二手に分かれると、各々で黄金聖闘士として妖怪退治を始めた。

 

「原子崩雷(アトミック・サンダーボルト)!」

 

 黄金聖衣を纏って漸く、白銀聖闘士並みの力であるとはいえ、相手は雑魚妖怪なだけに拳の一撃で叩き潰せる程度でしかなく、軽く屠っていく呂守。

 

「雷光放電(ライトニングプラズマ)!」

 

 一方の璃亜も、実力的に呂守と変わりないのだが、危なげ無く妖怪を屠る。

 

 二人は光速にはまるで足りない、それでもマッハ五〜七という驚異的な速度、妖怪達は呂守と璃亜の放つ拳すら見えず、その穢らわしい躰を砕かれていった。

 

「キャッ!?」

 

 他の妖怪達の背後から、大蜘蛛が強靭で粘着力の強い糸を吐き出すと、璃亜の身体を絡め取ってしまう。

 

「璃亜っ!?」

 

 璃亜の悲鳴を聞いた呂守が叫ぶが……

 

「だ、大丈夫……兄さん。このくらい!」

 

 呂守を止めた璃亜が胸元に両腕を添えると、瞑目をして小宇宙を燃焼させる。

 

「ハァァァァッ!」

 

 そして一気に爆発させ、糸を断ち切ってやった。

 

「雷光大鎌(ライトニングクラウン)!」

 

 自由を取り戻した璃亜は右腕に小宇宙を籠めると、鎌の如く星の並びをイメージした技で、大蜘蛛の生命を文字通り刈り取った。

 

 死屍累々とはこの事か、闘いが終わって辺りを見回せば、妖怪達の死骸で一杯になっている。

 

 とはいえ、その内に死骸は妖力も消えて消滅をしてしまうのだろうが……

 

「さて、剥ぎ取りだな」

 

 妖怪が消える前に使えそうなパーツを剥ぎ取ると、そのパーツだけは消えないという不思議。

 

 呂守は大蜘蛛から【蜘蛛の糸】を、河童から【尻子玉】を、大蛇から【毒線】といったアイテムを剥ぎ取ってしまう。

 

 これを灘杜神社に持って行けば、結構なお小遣いになるから美味しい。

 

「さて、剥ぎ取り終了! 何か修業って雰囲気でもなくなったし、帰るか」

 

「そうだね、兄さん」

 

 こんな生活を続けながら更に二年の時が経つ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 OHANASHIの成果が漸く出て、呂守と璃亜の相生兄妹は遂に念願だった海鳴市に引っ越した。

 

 本来ならもっと遅くなっていて、どう上手く立ち回っても【空白期】に突入をしそうだったが、どうやら聖王教会からの指令を受けた母親──アイラが急いで海鳴市に向かう事となり、引っ越しが早まったとか。

 

 四月に入ってすぐに世界に変化があった。

 

 聖域(サンクチュアリ)のギリシアへの設立、英国はグリニッジに【グリニッジ賢人議会】の設立などと、何処の【聖闘士星矢】や、【カンピオーネ!】だ? などど思ったものだ。

 

 しかも【グリニッジ賢人議会】のトップであるというのが、長い金髪に広々としたオデコ、宝玉にも似たサファイア色の瞳な十代の前半の少女グィネヴィア、ハニーブロンドを短めに刈っており、揉み上げ部分を三つ編みとした空色の瞳の十代後半の美しい少女──ランスロット。

 

 何が起きているのか? どうやら母親の急な引っ越しにも関わるらしい。

 

 七月二五日……

 

 海鳴市のマンションへと移動をした呂守と璃亜は、引っ越しの手伝いや挨拶もそこそこに、結界が展開されているのに気が付いて、現場に急ぎ駆け出した。

 

「おかしいなぁ、ジュエルシードの事件は時期的には終わってるし、闇の書事件には早過ぎるぜ……」

 

「なのはちゃん辺りが魔法の練習してるんじゃ?」

 

「バカ言え、幾らなんでもこんな市街地に近い場所でする訳が無いだろ?」

 

「それもそっか……」

 

 すぐにも廃棄ビル群にて展開された結界の場所まで移動した二人は、結界へと干渉をして入り込む。

 

 ヴォルケンズの封鎖領域だった為、小宇宙の使い手である二人は簡単に干渉をして、結界内に入れた。

 

「な、何だこれ?」

 

 ヴィータらしき少女と、黒髪の少年が闘っている。

 

 ヴィータと少年の声が聞こえてきた。

 

「てんめー! アイゼン、カートリッジロードだ!」

 

《Explosion》

 

 ヘッド部が上下に動き、薬莢を排出する。

 

《Raketen form》

 

 その場でハンマーの片方に穿角、もう片方に何故かブースターが顕れて、名前の通りロケットの如く魔力を噴き出す。

 

 その勢いを利用した強烈な攻撃が少年を襲う。

 

「喰らえ、ラケーテン……ハンマァァァァァァァァァァァァーーッ!」

 

 クルクルと回転をしながら少年に近付く姿は、少し間抜けにも見えるのだが、その猛烈な一撃は喰らうと危険な技。

 

 少年は危なげ無くヘッド部分を掴んだ。

 

「なっ、にぃ!?」

 

「守護騎士強襲型ユニット・ヴィータ。魔力によった攻撃が効かない以上、物理的な攻撃しかない訳だが、個人で来るのは言語道断! 一対一でベルカの騎士に敗けは無いか? 巫山戯た幻想だな」

 

 バキン!

 

「アイゼンが?」

 

 掴んでいたグラーフアイゼンのヘッドを、握力を籠めて少年が砕く。

 

「終わりだ、金牛のパワーを見るが良い……威風激穿(グレートホーン)!」

 

 腕組みからの居合い拳とも云うべき技で、凄まじいばかりの衝撃を生んだ。

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 威風激穿に吹き飛ばされたヴィータは、地面に打ち据えられてクレーターを作りながら跳ねる。

 

「そもそも、折角の四対一なのに何でわざわざ一人で向かってくるかねぇ?」

 

 へらへらとした笑い声、あんな技を使うのはどういう訳か?

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「アイツ、転生者か!」

 

 呂守は当たりを付けた。

 

「兄さん、あっちに!」

 

「な、何で!?」

 

 現在はまだ七月の下旬、六日もすれば八月に入る。

 

 ヴォルケンズが居るのは理解も出来るが、なのは達が彼女らに既に会っている筈はない。

 

 本来ならヴォルケンズがなのはチームと出逢うのは十二月の初旬、数ヶ月は先の話だと云うのに……

 

「何で、なのは達が?」

 

 呂守は呆然と呟く。

 

「あれ? あの青い髪の毛をポニーテールにした子、タバサにそっくり」

 

「って事は、あれも転生者って訳か?」

 

「だろうね。ボクがアッチを押さえるよ」

 

「判った、頼むぞ璃亜」

 

 向こうはシグナムが闘いを始めており、シュランゲ・フォルムからの一撃を、少年へと放つ。

 

 転生者だからか、少年は軽々とシュランゲ・ヴァイセンを躱すと、すぐに技の体勢に入った。

 

「させるかよ! 喰らえ、無限破砕(インフィニティブレイク)!」

 

 黄金の煌めきを放つ矢、それが数百本もの数となり少年を射止めるべく、高速で飛翔した。

 

 璃亜もまた、なのは達の許へと向かう。

 

 そして事態は【闇の書の終焉事件」へと続く……

 

 

 

.




 このオリキャラ二人は、この世界の護りを担う事になります。


【オリキャラ】
名前:相生呂守
年齢:一〇歳
髪の毛:赤毛
瞳の色:青色
身長:一五八センチ
体重:五六キロ
見た目は赤毛のアイオロス
転生特典(ギフト)
妹の玲於奈と転生
自分が射手座の黄金聖闘士の力を得る
玲於奈が獅子座の黄金聖闘士の力を得る

名前:相生璃亜
年齢:九歳
髪の毛:茶髪
瞳の色:青色
身長:一四二センチ
体重:??キロ
見た目は茶髪のリトス
転生特典(ギフト)
OHANASHI
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