魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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 それはきっと愉しい一時だったと思う。

 八神はやての初めての友達である月村すずか、そのすずかの友達のアリサ達。

 そして初めての男友達のユート。

 6月4日の誕生日の前日に開いた前日パーティー、それに招いて遊んだ。

 ご宿泊は良いが、流石に男のユートはリビングの方で寝ると言い、部屋は女子に譲った。

 午前0時、そろそろ寝ようかという時……

 突如としてはやての机の棚に仕舞ってあった、鎖で雁字搦めにされた高そうなハードカバー装丁に金色の剣十字の本が動き、はやての目の前まで浮かんできて表紙が何故か脈動して……

《Ich entferne eine Versiegelung(封印を解除します)》

 鎖が弾け飛び、ページが開いていくと喋った。

《Anfang》

「な、何や?」

「これ、何なの?」

「また、古代遺失物(ロストロギア)絡み?」

「ハァー、また何かが始まっちゃうんだね……」

「厄介事でしょうか?」

「この本はいったい?」

 はやてが驚愕し、なのはもアリサもすずかも那美も壱も本に目が釘付けだ。

 尚、テスタロッサ姉妹は別の部屋を使っている。

「ひうっ!?」

 はやての小学生相当──休学中だから──胸からは白い光が顕れ、それが本の中に取り込まれる。

 その衝撃の所為か、それとも思考の限界を超えてしまったのか、はやては遂に意識を手放した。

 そんな時に漆黒の三角形を二つ重ね合わせた魔方陣がグルグルと回っており、その中にはまるではやてに跪くかの如く四人の何者かが顕れる。

 ピンク髪をポニーテールに結った女性が言う。

「闇の書の起動を確認しました」

 金髪ショートボブの女性が次ぐ。

「我らは、闇の書の蒐集を行い主を護る守護騎士にて御座います」

 獣耳に尻尾の生えた筋肉質な男が口を開いた。

「我らは夜天の主の許に集いし雲……」

 最後に小柄で紅い髪の毛をお下げにした少女が……

「ヴォルケンリッター……なんなりと御命令を」

 などと言って締め括る。

 だけどそんな一番大事な名乗りなんて、誰も聞いてはいなかった。

 気絶したはやてに近付くなのは。

「はやてちゃん!」

 様子を見るアリサ。

「うわ、完璧に気絶してるじゃない?」

 オロオロとするすずか。

「こういう時、どんな顔をしたら良いんだろう?」

 すずかに応える壱。

「笑えば良いと思います」

 苦笑いの那美。

「壱ちゃ〜ん、何でも笑えば解決するなんてないよ」

 ヴォルケンリッター達は気絶する主を見て、其処に群がる少女達を敵と判断したのか……

「貴様ら、我らが主に何をしている!」

 ピンク髪の女性が激昂して行き成り剣を出す。

「デバイス!?」

 なのはの言葉が如何にも拙かったらしく、ヴォルケンリッターは魔力持ちにしてデバイスを知るなのはを魔導師だと見た。

「てめえ、管理局の魔導師だな? 早速、主を斃しに来やがったか!」

 どう見てもそんな訳の無い光景だが、基本的に戦う事ばかりであり主が管理局に斃される光景だけは半端に覚えていたのか、敵意を剥き出しにする紅い少女。

「あ、アンタらこそ何者なのよ!?」

「黙れ、最早問答無用! レヴァンティン!」

《Jawohl》

  女性の声に応える剣。

「グラーフアイゼン!」

《Ja》

 紅い少女の命令に、ペンダントが応えて長柄の金槌へと変化。

「うわ、アリサちゃん並に短気だ!」

「な〜の〜は〜? アンタとは一回、OHANASHIが必要かしら?」

 ブンブンと首を横に振るなのは。

 漫才には構わず、女性と少女が襲い掛かって来る。

「チッ! この侭じゃあ、はやての家が壊されるわ。外に出るわよ!」

「判ったの!」

 アリサとなのはは女性と少女に体当たりして、窓をぶち破ると強引に夜の外出と洒落込んだ。

 追い掛ける金髪の女性。

 獣耳の男は残って那美と壱を睨んでいる。


第6話:封印解除 聖闘士+αVS雲の騎士団

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 当然ながら原作知識持ちのユート、この事態を俯瞰して確りと気付いていた。

 

「フェイト、アリシア」

 

〔何?〕

 

「なのは達が古代遺失物(ロストロギア)の本から出てきた存在と戦い始めた。援護に行ってくれ」

 

〔うん、判った〕

 

〔了解だよ、お兄ちゃん〕

 

 フェイトとアリシアは、ユートに応えて……

 

「バルディッシュ」

 

《Yes Sir. Barrier jacket Lightning form》

 

 それは正に阿吽の呼吸、名前を呼んだだけで相棒のバルディッシュは、その意を反映してくれた。

 

「大地聖衣・山羊(ランドクロス・ゴート)、スタンバイ!」

 

《Ready Setup》

 

 一方のアリシアが機械的な腕輪に填め込まれた緑色の宝玉に命じると、返事を返して光り輝き頭上に山羊を象るオブジェが顕れて、分解装着が成された。

 

 フェイトとアリシアは、互いに頷いて外に出る。

 

 ユートは今の処、戦闘をする気は無かった。

 

 ベルカの騎士とはいえ、白銀聖闘士までならばまだしも、純正ではないにせよ黄金聖闘士のユートが出れば簡単に終わる。

 

 折角だからなのは達の為の経験値になって貰おう、それがユートの考え。

 

 純正古代ベルカの騎士と戦闘なんて、そうそう経験出来る事は無いだろうし、何より条件的に勝てる戦いなのだから。

 

 理由は簡単で、原作とは違って既に強化処か魔改造済みのなのフェイのデバイス達に、同等のアリサ達が随行しており、戦闘要員も此方が多い。

 

 しかも彼女らは起動したばかりで本調子ではなく、何より主から騎士甲冑を賜ってはいなかった。

 

 今のヴォルケンリッター達は、『装甲が薄い、当たれば墜ちるぞ』なフェイトの痴女(ソニック)フォーム以上に防御力が低い。

 

 それこそ、ディバインバスターの一発、プラズマスマッシャーの一発も当てれば軽く墜とせるのだ。

 

 この状態では防御魔法が使えるとはいえ、余りにも心許ない。

 

 何より現在、戦っているアリサは不完全な状態で降せる程……

 

「でりゃぁぁぁぁっ!」

 

「ぐっ、己れ!」

 

 決して弱くはない。

 

 アリサは本物の小獅子星座の蒼摩の動きをトレースした動きで、ピンク侍へと拳を叩き付けていた。

 

 聖闘士模者符(セイントレーサーカード)。

 

 聖闘士の戦闘法をインプットされたカードであり、インストールした人間の中にアウトプットして焼き付けるシステム。

 

 パライストラの聖闘士候補生達はいまいちな者も多かったが、光るものを持つ者も少なくなかった。

 

 その中の一人が蒼摩で、南十字座(サザンクロス)の一摩の息子である。

 

 アリサの中には、蒼摩の戦闘技術がインストールされており、それをアリサの肉体で行える様に慣らされていた。

 

 故に、単純なコピーという訳でもない。

 

 解り易いのが、師匠の動きを弟子が真似るという、師弟的な感じだろう。

 

 素人を安易に闘わせるという外道な手法であるが、修業で身体を慣らした上で実戦向きに変えていく為、アリサも確りと弁えて動いている。

 

 すずかは金髪の女性と、なのはが紅い少女と闘っており、フェイトはアリシアを伴って壱と那美を睨んでいる、獣耳で筋肉質な男を相手にしていた。

 

 ユートは出ていない。

 

 また、先程まで睨まれていた壱を那美が護る様に立っている。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「くっ、やるな……だが、これ以上はやらせん!」

 

《Explosion》

 

 剣の柄から弾丸らしき物が排出され、ピンク侍から緋色のオーラが立ち上る。

 

「紫電……一・閃っ!」

 

 燃え盛る刀身を大きく振り被って、アリサへ向けて振り下ろした。

 

それに対し、アリサも全身に灼熱の炎を纏い……

 

「此方もやらせないわ! 小獅子爆裂(ライオネット・ボンバー)!」

 

 タックルを敢行した。

 

 紫電一閃と小獅子爆裂がぶつかり合う。

 

 ピシィ!

 

「な、なにぃ!?」

 

 押し合う中、レヴァンティンの刀身に罅が入る。

 

 元より聖衣の持つ強度はデバイスなど遥かに凌駕しており、それは青銅聖衣といえど変わらない。

 

 所詮は世界に当たり前に存在する金属と、神の金属を混ぜた稀少金属では相手にならないという事だ。

 

 レヴァンティンの様な、アームドデバイスといった種類は、インテリジェントデバイスに比べれば強度も高いのだろうが……

 

 パキィン!

 

「ば、莫迦な? レヴァンティンの刀身が砕け……」

 

 最後まで驚愕している暇など無く……

 

「ガハァァァァァアッ!」

 

 ピンク侍はまともに攻撃を受けて吹き飛んだ。

 

 一方、なのはは紅い少女と闘っている。

 

 今や空戦も慣れたもの、紅い少女のハンマーを上手く躱しながら、反撃の機会を窺っていた。

 

「貴女、何処の子?」

 

「うっせー!」

 

「話してくんなきゃ、判んないってば!」

 

「知るかよ、アイゼン! カートリッジロードだ!」

 

《Explosion》

 

「え、カートリッジ?」

 

 紅い少女のハンマー……グラーフアイゼンのヘッド近くから空薬莢が排出されると、紅い魔力がオーラとなって放出された。

 

「吹っ飛べ、テートリヒ・シュラァァァーークッ!」

 

 横薙ぎ一閃、なのはを襲う一撃だったが……

 

「レイジングハート、カートリッジロード!」

 

「なっ!?」

 

《Load cartridge》

 

 マガジンからカートリッジを炸裂させ、魔力を引き出すと空薬莢が排出され、桜色の魔力が溢れ出て……

 

《Protection Powerd》

 

 通常の防御魔法など及びも付かない強度となって、なのはを護る。

 

「ミッドの魔導師がベルカ式カートリッジだと?」

 

 自分達と出会う以前から積まれていたのは確実で、紅い少女は驚愕した。

 

「か、硬ぇ!」

 

「ほ、本当だ……」

 

 今まではユートやユーキを相手に、パリンパリンと何処ぞの研究所のバリアの如く割られていた所為か、いまいち自信が無かったのだが、充分な強度で自分を護ってくれて安堵する。

 

「レイジングハート、新しいモード……イケる?」

 

《Yes my Master. Load cartridge》

 

 ガコン、ガコン! と、何度か空薬莢を排出しながら形態を変化する。

 

 バスターキャノンモードから、なのはとレイジングハートは更に別の形態を編み出していた。

 

《Lancre mode》

 

 見た目にはエクセリオンに近いが、これは中・近距離の攻撃形態……

 

 最近の猛特訓には御神流のフィジカルなものも混じっており、魔法を併用すれば基本技や奥義も付け焼き刃程度には扱える。

 

 ランサーモードはそれを扱う為の形態だ。

 

「さあ、征くよ!」

 

《Divine lancre》

 

「ディバイーン・ランサァァァァァァァァーーッ!」

 

 余りの収束魔力を見て、紅い少女は慌てる。

 

「ヤベェ! アイゼン!」

 

《Panzer Hindernis》

 

 ぶつかり合う桜色の魔刃と紅い壁……

 

 ピキ。

 

「う、嘘だろっ!?」

 

 紅い少女の防御魔法は、可成りの堅牢さを誇る。

 

 それに罅を入れたのだ。

 

 少女の護りを貫く男の聖剣の如く、徐々に魔刃が壁の中に侵食していき……

 

「A・C・Sドライブ!」

 

《Divine》

 

「ディバイィィィン……」

 

《Buster》

 

「バスタァァァァーッ!」

 

 内部から砲撃を撃たれては堪らず……

 

「ウワァァァアアッ!」

 

 紅い少女は桜色の爆光をモロに浴びて、吹き飛びながら気絶してしまった。

 

 すずかの方も始終、優勢だと云える。

 

 元より補助型の金髪女性では、たったの一人で戦闘を熟す事は普通無い。

 

 すずかによる氷結攻撃にすっかり翻弄されており、反撃すら侭ならなかった。

 

「氷之弾丸(アイセス・ゲショス)!」

 

「キャァァッ!」

 

 まるで弾丸の如く音速の倍の速さで放たれる氷に、何とかかんとか防御魔法で防ぐものの、勢いのある尖った氷は幾つかが防御を抜けて、金髪女性の肉体を穿ってくる。

 

 金髪女性がダメージに伴って目を閉じ、身体の重要器官を思わず庇った。

 

 それは決定的な隙。

 

 すずかは訓練中にユートから言われている。

 

 相手が隙を見せたなら、罠でないと判断した場合は透かさず攻めろ……と。

 

 すずかは瞬時に距離を詰めると、孔に手を突っ込んで更に攻撃した。

 

「冷却之霧(カルト・ネーベル)!」

 

「な、何? これ、寒っ」

 

 防御魔法の孔から普通の水では有り得ないくらいに冷却された霧を注入され、肉体が徐々に凍結する。

 

「嘘! こ、凍る!?」

 

 展開していたのがフィールド系だったのが災いし、霧を逃がす事さえ叶わなかった金髪女性は氷の中に閉じ込められた。

 

「終わりっと!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 別の場所では獣耳な男とフェイト、アリシアのコンビが闘っていた。

 

 獣耳の男の防御は高く、簡単には防御を抜けない。

 

「喰らえ、鋼の軛! でぇぇぇぇぇぇぇい!」

 

 敵を拘束する事が目的ながらも、鋭いパイルの如く突き出してくる魔力槍。

 

「バルディッシュ!」

 

《Defenser plus》

 

 フェイトはそれを防御魔法で防ぎ……

 

「そや! てや!」

 

 アリシアは、ピョンピョンと跳ねて躱していた。

 

「くっ!」

 

 それを忌々しげに睨んでくる獣耳に対し……

 

《Crescent》

 

「セイバー!」

 

 フェイトはバルディッシュの魔力刃を飛ばす。

 

 ジャリン! 甲高い音を響かせてベルカの魔方陣を顕現し、獣耳がクレッセント・セイバーを弾いた。

 

「こんなものか!?」

 

 だが、そこへアリシアも攻撃体勢に入る。

 

 アリシアは、ユートから小宇宙の扱い方を習って、黄金聖衣の山羊座(カプリコーン)を獲る為、シュラからユートが習った必殺技の【聖剣抜刀】を修得するべく修業をしていた。

 

 今はまだ、アリシアでは完全処か未熟も良い処でしかない刃でしかない。

 

 それでも、真面目に修業をしていたアリシア故に、それなりな出来の技には成っていた。

 

 もっと薄くもっと鋭く、イメージするはアーサー王が揮ったという聖剣。

 

 何物をも妨げる事の叶わない絶断の刃の……

 

「聖剣抜刀(エクスカリバー)ッッ!」

 

 左腕を降り下ろす。

 

「我は盾の守護獣ザフィーラだ! この程度の攻撃は凌いで見せる!」

 

 だけど、獣耳改めザフィーラは勘違いをしている。

 

 これは一対一ではない、敵には相方が居るのだ。

 

「フルドライブ……クロスアップ・エイパス!」

 

《Cross up Apus. Zamber form》

 

 暗黒聖衣とはまた別物の黒い金属製の鎧、大空聖衣・風鳥の鋼鉄聖衣がその躰を覆い、バルディッシュの形状が大剣となる。

 

 白いマントをはためかせつつ、フェイトはバルディッシュ・ザンバーを大きく振り被り……

 

「疾風迅雷!」

 

《Jet Zamber》

 

 天から落ちる金色の雷撃を収束し振り下ろした。

 

 先に盾へと当たっていた聖剣(エクスカリバー)に、十字を切るが如くジェットザンバーが重なり……

 

「ば、莫迦な!」

 

 パリィン!

 

 盾が木端微塵に砕けて、ザフィーラの強靭な肉体を斜め十字に切り裂いた。

 

「ガハァァッ!」

 

 フェイトの攻撃なら未だしも、アリシアの聖剣抜刀に非殺傷設定なんて便利なものなど無く、右肩から左胸に掛けて裂傷が出来て、大量の出血が生じる。

 

 吹き飛んだザフィーラはその侭の勢いで壁に衝突、それきり動かなくなった。

 

 消滅しないから生きてはいるのだろうが、それなりのダメージだろう。

 

 フェイトがライトニング・バインドで拘束すると、ユートが小瓶を出して傷口に掛けてやると、みるみる内に傷が塞がった。

 

「二人共、よく頑張った。それじゃ運んでしまうか」

 

 フェイトとアリシアの頭を軽くポンポンと叩いて、ザフィーラを持ち上げると八神邸へと運ぶ。

 

 そんなユートを見送り、二人は自分の頭を両手で撫でながら、互いに顔を見合わせて『えへへ』と笑顔を浮かべ、ユートを追い掛けるべく空を舞った。

 

 気絶をしたヴォルケンズを改めて縛って、ユートは未だに意識を取り戻していないはやてを起こす為に、八神邸の中に入ると起きたはやてを連れて、庭へと戻ってきた。

 

 

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 流石に黄金聖衣は早いという意見があった為、暫くアリシアの聖衣は鋼鉄聖衣の山羊座に変更します。

 それに伴い、内容を少し増量したので前書きを利用して対応しました。


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