魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第24話:会談 残酷な現実となのはの疑問

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 信じ難いがそれが現実。

 

 なのはの目の前に仮面を外して立つのは、アリサ・バニングスと月村すずか。

 

 自分の大切な親友……の筈なのに、なのははまるで知らなかった。アリサが、すずかが、こんな風に自身の前に現れるなどと。

 

「どうして? 私、何も知らない……アリサちゃんとすずかちゃんがどうして、聖闘士なんてしてるの?」

 

 困惑気味に訊ねると……

 

「なのはに教える訳にはいかないじゃない。一応は、秘密にしておけというのが教皇の指示だしね」

 

「そんな……だって私達、友達なのに!」

 

「友達だからって、何でも話す訳じゃないでしょ? 現になのはだって、自分が魔導師なのを隠してたし」

 

「あ……」

 

 此処で盛大なブーメランを喰らい、茫然自失となるなのは。

 

「けど、それはユーノ君が魔法の事は本来、原住民には秘密にしないといけないからって言うから、仕方無かったの!」

 

「それなら此方も、アタシとすずかは教皇から指示をされたって言ったわよ?」

 

「う、それは……」

 

「第一、何よ? 原住民だか現地人だか知らないけれどね、アタシ達は未開大陸か何かの原始人扱いなの? ユーノ・スクライアだっっけ? それと管理局……地球人を無礼めるな!」

 

 それは最早、弾劾。

 

 時空管理局の定めた法律であるのだろうが、勝手に地球に入り込んでサーチャーなんて覗き道具をあちこちにバラ撒いて、ユートの説が正しければ魔導師になれそうな地球人を監視していた事になる。

 

 下手をすれば、管理局の人間がコンピューターなどを弄くり回して、戸籍やら何やらを改竄して暮らしている可能性もあった。

 

 それ処か、神隠しに遭った人間の一部は時空管理局乃至、その前身となる組織がそれこそ誘拐したという可能性も捨て切れない。

 

 ユートが時空管理局への印象を操作してたからか、悪い方向へ悪い方向へ考えがいってしまう。

 

 まあ、当たらずも遠からずといった処だろうが……

 

「わ、私達は決して第97管理外世界の人々を舐めている訳ではないわ」

 

「そうやって、勝手に数字を付けて呼ぶ事自体が下に見てる証拠じゃないの! 数字で呼べば嘸や管理し易い家畜よね?」

 

「そんな事!」

 

 リンディは否定するが、〝管理物〟に名前など要らない、数字で呼べばそれで良いというのは基本的に、誰でも考える事だ。

 

 因みに、ユートが茶々丸型を数字で呼ぶのは本人達からの要望であり、実際には個体名がちゃんとある。

 

 茶々拾号は絡繰桃花。

 

 拾号までは数字に因んだ名前だったりするが、彼女らは真名としてユート以外には呼ばせないし、聞かせたくないらしい。

 

 閑話休題……

 

「まあ、隠してたとかに関してはお互い様だろうし、此処までにして貰おうか」

 

 ユートがそう言って2人を止め、管理局への弾劾もやめさせた。

 

「それでは、貴方に訊きたい事があります」

 

「何? リンディ提督」

 

「貴方は、聖域はジュエルシードをどうする心算なのですか?」

 

「よく訊かれる質問だね。封印して仕舞っておくよ、使う必要も無いし」

 

 言ってみれば死蔵するという事である。

 

「なら、管理局に渡して頂けませんか?」

 

「断る」

 

「なっ! 何故ですか?」

 

「有り体に言えば、管理局を信頼も信用もしてないからだね。管理局がジュエルシードを手に入れたなら、きっと研究でもするんだろうし、それで地方に貸し出して犯罪者に盗まれでもしたらどうする? 大人しく仕舞っておかないだろ?」

 

 それを聞いて、クロノが激昂した。

 

「君は管理局を莫迦にしているのか! 確かに研究の為にそういう事もあるだろうけど、犯罪者になど盗ませる訳がない!」

 

「果たしてどうかな?」

 

「なにぃ!?」

 

「管理局が万が一、そんな事態に遭遇した場合だと、どういう措置を執る?」

 

「即刻、犯罪者を検挙して取り返すに決まってる!」

 

「違うね。恐らく管理局の上層部はその不祥事を隠蔽してしまうだろう」

 

「巫山戯るな! 管理局を何だと思っている!?」

 

「少なくとも、人間の運営する組織だね」

 

「っ!?」

 

 クロノは息を呑む。

 

 そう、人間の運営している組織である以上は、絶対的な正義の組織などある訳がなく、組織が大きくなれば上も下も腐敗するもの。

 

 それは、原作知識に頼るまでもない事だ。

 

 それに原作知識で語ってみるなら、ジュエルシードはスカリエッティに盗まれているし、どういう訳なのかジュエルシードが、ガジェットに使われている事が判明するまで、盗まれている事を執務官が知らないという事態にになっており、某・執務官は事実を知っても懐かしがるだけで慌てていないという体たらく。

 

 時空管理局がそうするのだと、そうする組織なのだと知っている以上、預けるなど愚の骨頂。

 

 未来を知っているとか、原作知識とか言っても理解は出来ないだろうし、尤もらしい事を言って煙に巻く心算だが……

 

「それに先程も言った筈、欲しければ初めから輸送に管理局が就けば良かった。そうすればジュエルシードは管理局が手に出来たし、事故も起きなかったろう」

 

「それは……」

 

 リンディは呻く事しか出来なかった。

 

 尤も、事故ではなく事件だったなら、どちらにせよ起きていただろう。

 

「それに訊きたいんだが、ジュエルシードを渡したとして、持ち主は誰という事になる?」

 

「管理局に決まっているだろう! 管理局が責任を持って保管するさ!」

 

「ならば、渡した場合だと管理局に賠償責任があり、報奨をする義務が生じるって訳だな?」

 

「ハァ? 何を言っているんだ君は!」

 

 呆れた表情で言うクロノだったが、リンディはその意味に気が付いたのか……

 

「それはどの程度です?」

 

 逸早くそれを訊ねた。

 

 クロノは驚愕に目を見開くが、それをリンディは敢えて無視する。

 

「公道や公共施設の破壊、私的財産の破壊と信用失墜による精神的、経済的苦痛に対する賠償なども含め、数十億。危険物の早期発見と回収による報奨で数億を最低限に求めるね」

 

「な、何を巫山戯た事を! 何で管理局がそんな額を支払わねばならない!?」

 

「ジュエルシードにより、槙原動物病院が破壊され、その周辺の公道が可成りのダメージを受けた。それにプール施設が破壊されて、その施設で起きた出来事で客足が遠退いているんだ。ジュエルシードの持ち主に賠償を求めるのは当然だ」

 

「だったら、其処のフェレットモドキに言え!」

 

「管理局が持ち主になるのなら、ユーノ・スクライア個人ではなく、時空管理局という組織に賠償を求めるに決まっている。ユーノはジュエルシードの取得権を放棄するんだからな」

 

 そこまでは言っていないのだが、賠償と報奨の話が本気なら放棄した方が無難だと考えて何も言わない。

 

「言っておくが、有耶無耶に出来るとは思うなよ? それと、管理外世界だから管理世界の通貨は地球では通用していない」

 

 場合によっては可成りの支出になってしまう。

 

 だいたい、この手の報奨に数億など管理局では法外としか言い様が無い。

 

 しかも賠償に数十億だ。

 

「当たり前だけど、支払いをするまではジュエルシードを渡す心算など無い」

 

 先渡しなどすれば踏み倒すのが目に見えている。

 

 そう言われたと感じたのだろう、クロノだけでなくリンディとエイミィも表情が堅くなった。

 

「それに、管理局が研究も出来ない石ころにそんな額を支払うのか?」

 

「どういう意味です?」

 

「ジュエルシードはもう、発動もしないし構造を調べる事も不可能だ」

 

「どうしてそう言えるのですか?」

 

「決まっている、封印したのは僕だ。僕の封印は魔導師では解けない」

 

 ユートはジュエルシードを一つ、リンディに投げて渡す。

 

「魔力を流してみろ」

 

「そ、そんな事をしたら、ジュエルシードが暴走してしまう!」

 

「良いから、どうせ発動はしないし、結界を張ってるから外に影響もしないよ。発動出来たらくれてやる」

 

 戸惑いながら、リンディはジュエルシードに魔力を流してみる。

 

「え?」

 

 魔導師ランク総合AA+のリンディ、その魔力を流されたというのにウンとも寸とも言わない。

 

 因みに、アースラの駆動炉に接続すればオーバーSランクの出力を出せる。

 

 今回は素の魔力だったとはいえ、ジュエルシードが発動する事はなかった。

 

 つまり、ユートの言っている事に偽りが無いという事が証明されたのだ。

 

 呆然となるリンディの手からジュエルシードを取り上げ、ユートは再び匣の中に仕舞うと、亜空間ポケットへと放り込む。

 

「これで理解出来たな?」

 

「くっ!」

 

 管理外世界で全く思う様にいかず、クロノは悔しさから表情を歪めた。

 

 別に莫迦にしていた訳ではないが、やはり技術力や魔導で上を往くという自負と矜持は有ったのだ。

 

「この先もジュエルシード探索は我々が行う。余所の世界の人間に関わって貰う話じゃない。だから即刻、地球から退去して貰おう」

 

 クロノ達、管理局は法的根拠に基づいてこの地球に居る訳ではない。

 

 普段なら、勝手に入り込んで勝手に捜したりするのだが、ユート達が組織的に動いていてはそうもいかないだろう。

 

 若し、ユートが個人で動いていたなら、管理局の法を持ち出せば良い。

 

 所詮は個人だから、どうにも出来ないのだろう。

 

 然し、国連を抱き込んだ組織というなら、時空管理局の法律など管理外世界の地球には意味を為さない。

 

 とても自分より年下──実際はずっと年上──とは思えないと、クロノはそんな風に思った。

 

「どうやって捜すのです? それに後、何個のジュエルシードが残っているのですか?」

 

 リンディの質問にユートはあっけらかんと答える。

 

「16個を集めてるから、残りは5個だね」

 

『『『え゛?』』』

 

 驚いたのはリンディ達、管理局組だけではない。

 

 なのはとフェイトとアルフの3人もだ。

 

 よもや、既に大半が集まっているとは思いもよらなかった。

 

「ユートさん、16個も集めていたのですか?」

 

「そうだけど、何か?」

 

 これでは本当にアースラチームに出番が無い。

 

「残り5個も【ジュエルンレーダー】を使えば、数日もあれば集まるだろうね」

 

「ジュ、【ジュエルンレーダー】?」

 

「ジュエルシードの波長を拾い、有る場所を教えてくれるんだ。これで海鳴市の達人達と聖闘士で協力し、残りのジュエルシードを集めてしまう。発動しなくてもレーダーには映るから、後手に回る事もないしね」

 

 どうやら、管理局として管理外世界に対して強硬するという愚行を犯さない限りは、本当に用無しであるとリンディは項垂れた。

 

「艦長、宜しいのですか? 古代遺失物(ロストロギア)は時空管理局が然るべき手続きを以て、然るべき場所に保管しなければならないのですよ!?」

 

「囀ずるな、小僧!」

 

「なっ? 誰が小僧だ!」

 

 自分より小さなユートの叱責にクロノは鼻白む。

 

「〝管理局が〟だとぉ? 僕に言わせりゃ管理局など然るべき場所なんかじゃ、決して無いんだよ。驕りが過ぎるぞ管理局! そもそもにして、地球への立ち入りが許されない管理局員がどうやってジュエルシードを捜す?」

 

「ぐっ!」

 

 今は飽く迄もユートから許可を得て、この地に招かれているに過ぎない。

 

 会合が終われば出ていかねばならないのだ。

 

 ユートも国連G7の承認の元、その権限を行使した上で招いたのだから、この先で管理局員が地球に降り立つのは許されない事。

 

「それとも、管理局の管理する世界では余所の世界の人間が武装して、勝手気儘に大挙して押し寄せたら、歓迎するのか? お前らの今の立場はそういう事だ」

 

「有り得ませんね……」

 

 静かに言うリンディ。

 

「あの、優斗君。ちょっと言い過ぎなんじゃ」

 

「なのは、僕達は常に最善の選択をしないといけないんだ。残酷に見えるかもしれないが、これが現実」

 

「う、うん。そう言えば、ロストロギアって何?」

 

 なのはは原作通り、基本的な事が解ってなかった。

 

 

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