魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第1話:テンプレ 誘拐された少女達

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「……う?」

 

 慣れはしたがやはり意識を保つ事は出来なかった。

 

 いつの間にかブラックアウトしてた意識を回復し、漸くユートの目が覚める。

 

「此処は……着いたのか? だとしたら、海鳴市なんだろうけど」

 

 街の郊外、それも廃ビルが建ち並ぶ少しアウトローな場所だ。

 

 とらハ3のアリサ・ローウェルが監禁され、犯されて殺された場所みたいだと思えば、ユートにも可成り解り易い。

 

 呑気に寝ていたら、財布や着ている物は疎かア○ルの純潔や生命までも奪われるだろう。

 

「げっ、無印に併せたのか身体が縮んでる?」

 

 見た目が10歳前後。

 

 間違いなく【純白の天魔王】の仕業だろう。

 

「まあ、良いか。だけど、何でこんな碌でもない所に送られたんだ?」

 

 どうせいつもの事。

 

 頭を掻きながら辺りを見回すが、特筆するナニかが在るようにも見えない。

 

「待てよ、送られる場所には意味がある。そして二次創作では“とらハのアレ”の影響か、こういう場所に連れ去られて来るご令嬢が2人ばかり居るよね?」

 

 言わずもがな月村すずかとアリサ・バニングスの事である。

 

「いやぁぁぁぁぁっ!」

 

 言った傍から絹を引き裂く悲鳴が上がった。

 

「ひょっとして今のフラグ踏んだ? まったく、原作に近いんだから8歳か9歳くらいだろうに、ロリコンが多いのか? この世界にはさ!」

 

 誘拐されただけならば、こんな悲鳴は上げない。

 

 という事は、今の声の主にナニやら有ったのだと、そう見るべきだ。

 

「テンプレ乙……」

 

 ユートはボヤきつつも、悲鳴のあった場所へと急ぎ駆け出した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 廃ビルの一角に大学生くらいの男が数人と、縛られている少女が2人居る。

 

 少女達は白い制服に身を包んでおり、1人は金髪碧眼で勝ち気そうな雰囲気を持って、もう1人は光の加減で紫にも見える黒髪に、白いカチューシャを頭に着けていた。

 

 縛られてはいるが、轡はされていない。

 

 2人が叫ばないのは下手に声を上げたらド頭に風穴を空けると、此れ見よがしに拳銃を突き付けられて脅されたからだ。

 

 自分だけならまだしも、友達を巻き込みかねないとお互いに自重していた。

 

「すずか、大丈夫?」

 

「うん、アリサちゃん」

 

 気遣い合っているアリサとすずかだったが、先程から誘拐犯の1人の視線が剰りにも厭らしくて不快感を感じる。

 

 主に、胸や太股の辺りに集中する視線。

 

 正直、成長途中で碌に脹らんでない胸なんか見て、ナニが愉しいのか理解に苦しむが、大人の中には小さな娘に異常な執着を見せる【ロリコン】なる変態が居ると聴く。

 

 この男は恐らくその類いなのだろう。

 

 だとするなら、身の危険を感じてしまう。

 

「にしても、ガキを2匹浚うだけで二千万はボロいよな?」

 

「ああ、実際に浚う必要があったのは月村のガキだけだが、バニングスのご令嬢までくっ付いて来て、追加報酬が出たからな」

 

 隣の声から察するなら、実際に誘拐される予定なのはすずかだけだが、近くに居たアリサも序でに浚われたらしい。

 

 すずかはそれを聴いて泣きたくなった。

 

 自分がアリサを巻き込んでしまったのだ……と。

 

「すずか、アンタが考えてる事は判るわ。だけどね、今回はすずかだったってだけで、アタシがすずかを巻き込む事だってあるのよ。だから気にしちゃ駄目! 判った?」

 

「アリサちゃん……うん」

 

 弱々しいが、涙を目尻に浮かべながら頬を朱に染め確りと頷く。

 

 だが、それがいけなかったのだろう。

 

 まだ小学生とはいえど、すずかは可成りの美少女である。

 

 そんなすずかの態度は、この場の変態(ロリコン)には興奮剤にしかならない。

 

 ガタッと椅子をひっくり返して立ち上がった変態、股間のナニも勃ち上がらせて舌舐めずりする。

 

 そんな男の豹変に、恐怖を覚えたアリサとすずか。

 

 位置的に見せ付けられている股間の盛り上がりに、自身の昏い未来を幻視して青褪める。

 

「ひうっ!」

 

 息を呑むすずか。

 

 そんなすずかの制服を乱暴に掴むと、男は強引に引っ張り上げた。

 

「キャア!?」

 

 ビリィッ!

 

 男に力任せに引っ張られた所為か、白い制服が高い音と共に引き裂かれる。

 

「すずか! アンタ、何すんのよ!?」

 

 周りをチラリと見ると、他の男達は『またか』なんて態度だ。

 

 こいつらはこういう事を何度もしているのだろう。

 

「へっ、バニングスのお嬢ちゃんも後でたっぷり可愛がってヤるから、楽しみにしてなよ!」

 

「なっ!?」

 

 好色な目だと思ったが、もう我慢の限界なのか自重を棄てている。

 

「おいおい、遊び過ぎて壊すなよ?」

 

「まったく、アイツの趣味は理解出来んな」

 

「そう言うなよ。ありゃ、アレで楽しめるぜ」

 

「ビデオ回して売りゃあ、稼げねえか?」

 

「良いねぇ」

 

 犯罪者にモラルを説いても意味が無く、彼らは変態男を咎めるでもなし、寧ろ娯楽の様に楽しんでいる節があった。

 

 男はすずかを押し倒し、スカートの中に手を突っ込みショーツに手を掛ける。

 

「いやぁぁぁぁぁっ!」

 

 恐怖と羞恥から、すずかは到頭、堪らず大声で悲鳴を上げた。

 

 今、正にショーツをずり降ろされる直前……

 

 ガッシャーン!

 

 軽快な破壊音が響く。

 

 音がした方向を男が振り向くと、すずか達と変わらない年齢の子供が、割れた硝子を踏んで立っていた。

 

「これからお楽しみって処で何だ、てめえは!」

 

 性的獣欲を満たさんとしていたのを邪魔され、男は怒り狂って子供──ユートに襲い掛かる。

 

 アマレス崩れか、ボディビルダーなのかは伺い知れないが、筋肉隆々の変態な大男が力に任せて殴り付けてきた。

 

「危ない!」

 

 アリサが叫ぶ。

 

 相手の身体は2mくらいはあり、体格差なんて論じるのもバカバカしい程だ。

 

 だが、大凡の想像を裏切りズドンッ! という鈍い音と共に大男が沈む。

 

「がっ! あ、嗚呼……」

 

 白眼を剥くと、泡を吹いて気絶した。

 

 流石に驚愕するアリサとすずかと誘拐犯達。

 

「雅司! てめえ、雅司に何をしやがった!?」

 

「ただ、殴っただけだよ」

 

「巫山戯るな! あの雅司が餓鬼に殴られた程度で簡単に沈む訳がねえだろ!」

 

「力の全てを相手の内部に徹して収束させてやれば、筋肉の鎧を抜いて内臓にダメージを徹す事が出来る。それだけの事だよ」

 

 何処ぞの戦闘民族たる、TAKAMACHI家の面々が使う【徹】という業と同じ様なものだ。

 

 技術的には少し違うのだろうが……

 

 有り得ない戦闘力を見た男達は、一斉に拳銃を構えると引き金を引く。

 

 BANG!

 

 ドラマなんかにある様な鈍い音ではなくて、軽快で何処かしら間抜けな銃声がビル内に響いた。

 

「ご高説どうも。んで、死んどけやボケがぁ!」

 

 舌を出し、ニヤつきながら罵倒する。

 

 今度こそ死んだ。

 

 すずかとアリサはそう思って顔を伏せるが、ユートは倒れていない。

 

「残念、生きてるんだよねこれがさ」

 

 それ処か、指先で鉛弾を摘まんで見せる。

 

「な、莫迦な? 漫画じゃねえんだぞ。チャカの弾ぁ掴むなんて出来る訳……」

 

「出来るんだよねー、出来ちゃうんだよねー、実際に出来るんだからしょうがないっしょ?」

 

等と、某・四次元人間さんのお友達なピンク髪の少女みたいな言い方で、誘拐犯達を挑発した。

 

 某・四次元人間さんのお友達なピンク髪の少女が言うなら未だしも、ユートの様な男に言われるとイラッとするのか……

 

「糞が! 死ね、死ね!」

 

 叫びながら拳銃の引き金を引いた。

 

 BANG! BANG!BANG! BANG! BANG!

 

 カチッ、カチッ!

 

 マガジンに入っていたのがフルで六発らしく、最初の一発で減っていたが故に五発で弾切れとなる。

 

 だが、五発も撃ったというのにユートは倒れない。

 

「な、何で倒れねえんだ? くっ、化物がぁっ!」

 

 もう一挺、リボルバーを持っていたらしく、懐から取り出して喚く。

 

「てめえらも撃て!」

 

 呆けていた男達が、ハッと気付いて拳銃を向ける。

 

「化物……ね。思考停止した愚者の言いそうなセリフをありがとう」

 

「こ、殺せぇぇっ!」

 

 それを合図に一斉に放たれる弾丸。

 

 だが然し、ユートの目に弾丸の軌跡は揺ったりとしてスローで見えている。

 

 一発一発を丁寧に躱す。

 

「う、嘘だ……」

 

 ワナワナと震えながら呟く誘拐犯A。

 

 彼らから見れば、ユートの身体を弾丸がすり抜けていたのだ、本人は全く身動ぎすらもせずに。

 

「チキショー、何なんだよてめえは! こんな化けもんを助けるのかよ?」

 

 紫の髪の毛の少女を指差して言う。

 

「な? 言うに事欠いて、すずかを化物って……」

 

 アリサが憤慨をするが、それに反してすずかが脅えている。

 

「はっ! 月村ってのは、人間じゃねえんだ。人間の血を吸う吸血鬼なんだよ」

 

「やめてぇぇぇっ!」

 

 自棄になって暴露する様に叫ぶ誘拐犯Aの言葉を、すずかは遮る様に絶叫して頭を抱える。

 

「す、すずか……?」

 

 その態度が誘拐犯の言葉が正しいのだと、何よりも雄弁に語っていた。

 

 

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