未来を導く天使に掲載されてない、本来の第15話となります。
ちと、えちぃです。
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「小獅子星座(ライオネット)……フルセット!」
アリサの声に応じると、聖衣石から茜色な唐獅子のオブジェが顕れ、カシャーンと甲高い音を響かせて、各パーツに分解され聖衣がアリサの美しく白い肢体を鎧っていった。
「う、ん……っ!」
うっとりとした表情で、炎を背後に噴き上げながら右脚では回し蹴りを放ち、更には両腕で軽くラッシュを繰り出す。
「小獅子星座(ライオネット)のアリサ参・上!」
プルプルと伸ばしていた右腕を震わせ……
「くはぁ! この大見栄を切るのって少し快感かも」
まだ小学生なのに、というより小学生だからこそ、中二を患っているアリサ。
どうやら少しお気に入りな様で、訓練の為にやって来たダイオラマ魔法球へと入るなり、小獅子星座聖衣(ライオネットクロス)を纏って感動に打ち震えた。
「にしても、魔法ってのは凄いわよねぇ。こんな空間を造って自然を閉じ込めちゃうなんてさ」
「うん、しかも時間加速で中と外の時間をずらして、逆浦島太郎状態だよ」
聖衣装着の後で、改めて周囲を見渡したアリサは、ダイオラマ魔法球なんていうイカした魔法空間に驚きの表情をすると、すずかがスクール水着の姿でアリサの隣に立ち、やはり魔法の齎らす効果に驚いている。
「って、アンタ……すずかは何でスクール水着なんて着てんのよ?」
「勿論、泳ぐ為だよ?」
至極当然だと言わんばかりに首を傾げ、普段着で来たアリサこそおかしいと、目が語っていた。
「折角の南国ちっくな海だもん、それに水泳は柔軟な筋肉を作るって、ユート君もお奨めしてくれたよ」
「む、そうなの?」
「うん、先ずは確りと泳いで女の子らしくしなやかな筋肉を作ろうよ!」
「ちょっ、すずか!?」
「水着ならアリサちゃんの分も用意してきたよ」
結局、この──ダイオラマ魔法球での──日は一日中を泳ぎ回ったという。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
カチャカチャと、ユートは機械を弄っている。
昔は科学的な物には触れていなかったが、いつまでもそれではいけないだろうと考え、周囲の科学大好きな連中に習った事により、超天才な連中程では無いにしろ、この手の開発が可能となっていた。
「優斗君、お茶が入りましたから休憩しませんか?」
「ん、ありがとう。そうしようかファリン」
ファリンはユートの邪魔をしない様に、いつもだと発揮するドジっ子メイドの本領を発揮せず、慎重を期してお茶を運んだ。
やれば出来る子なのに、普段は慌てたりハプニングに見舞われたりと、どうしてかファリンはドジる。
「どうぞ」
「ああ」
珈琲派の知り合いに付き合って飲む事も多いから、ユート自身もそれなりには珈琲を嗜むが、再転生では風体こそ日本人でも一応は英国人(ブリティッシュ)。
ティータイムを嗜むのも忘れはしない。
何よりトリステインでは普通に紅茶を飲んでいたのだから、特に違和感を感じるでもなく過ごせた。
「ほう、ティータイムか。ファリン、妾にも淹れては貰えるか」
「はい、アテナ様」
其処に現れたのはすずか達の紺色とは違う、白色のスクール水着を身に付けたアテナ。
白い肢体に銀髪が擬似的とはいえ、太陽の光を反射して目映い。
アテナは設置された機械を見遣ると問い掛ける。
「造っているのは妾の聖衣ではないな。誰のだ?」
「ノエルとファリンだよ」
「ふえ? 私とお姉さまのですかぁ!?」
意外なユートの返答に、ファリンは驚いたらしくて頬を朱に染めた。
「ああ、楽しみにしてろ」
「は、はい!」
感動したのかファリンはユートの腕に絡み付いて、アテナやすずかやアリサに比べればまだ成長している胸を、惜し気もなく押し当てている。
「ム!」
少しばかりアテナからの視線が鋭い。
そして〝何故か〟自分の薄い胸をペタペタと触り、ファリンの大して大きくもない胸を憎々しく見遣る。
ファリンも水着なので、それなりに躯のラインが露わとなっていた。
ノエルに比べれば小さな胸だが、今の少女バージョンなアテナはナインペタンである為に、太刀打ち出来るモノではない。
とはいえど、ファリンは自動人形(オートマタ)で、究極の偽乳なのだが……
「コホン、ああ……何だ。ユートよ、思えば妾は貴方とは血腥い闘争の中で絆を育んだものよな」
「うん? というよりは、基本的に神と神殺しの間柄なんだから、そうなるのも必然っちゃ必然だしね」
最初の闘いではユートも何とか戦闘回避の為にと、戦闘中止を呼び掛けた。
然し、沸き立つ闘争本能は刺激されるわ、アテナは止まらないわで結局は周囲を破壊しながら闘う事に。
「けど、あの時にアテナが神力(デュナミス)をくれたお陰で神聖衣の発現が少し簡単になったし、神力を基にアテナの鎌を顕現する事も出来たから助かったよ」
「そ、そうか?」
世界を飛び越え、理の違う地に居るが故だろうか、以前には感じた闘争本能がまるで感じられず、アテナは力の程は兎も角として、男の子の言葉に照れて頬を染めている辺りは、普通の女の子みたいだった。
アテナはユートの膝の上に座って、首に腕を回すと端から見れば恋人同士の睦み合う様な雰囲気で、紅茶を口に含んでユートの唇に自身の唇を重ね、口移しで含んだ紅茶を飲ませる。
その際、アテナの舌が潜り込んできて、ユートの舌と絡ませ合った。
それをつぶさに見ていたファリンは……
「はや〜」
目を手で覆いながらも、指の隙間から覗き見ていたりする。
「ふふ、どうだ? 優斗。妾の味は……」
艶かしい瞳で頬を朱に染めた侭、アテナはペロリとユートの唇の後味を味わい尽くすかの如く舐めた。
だが、ユートが答えるまでもなくアテナはそれを知って悦びの笑みを浮かべ、更に強く抱き着く。
「答えずとも貴方の身体が雄弁に語っておるぞ?」
「ああ、周囲の低年齢化で少し溜まってたからねぇ」
よもや、アリサやすずかに手は出せないし、デキる知り合いが居るでもなく、欲求不満は溜まる一方だ。
それでアテナが、女を感じさせる行為に及んだものだから自然とそうなった。
「ふふふ、草薙護堂が揮うは東方の軍神の雄弁な剣であったが、優斗の剣も性に関しては雄弁なのだな」
「誰が上手い事を言えと? とはいえ、流石にこれは困ったな……」
「妾の責でもあるし、少し鎮めてくれよう」
「は?」
「と言っても、妾とて古の女神であり、神話に於いては処女神と謳われた者よ。容易く陰を赦しはせぬぞ」
ウィンクしながら言うとアテナはユートの膝から降りて、その場で跪きズボンのチャックを降ろし、窮屈そうに脹れたソレを外気に曝してやる。
そして自らの可憐な唇を大きく開き……
「あむ!」
名状し難いナニかが背筋を駆け抜ける感覚を与え、ユートのソレを口に含む。
「どうだ? 奉るべき女王たる妾を跪かせた気分は」
クスクスと見た目には、アリサやすずかやなのはと大して変わらないながら、無垢と妖艶の相反する顔は不思議な気分だった。
だが、素直にそれを言うのは少しムカつくからか、間断無くクる刺激に耐えながらもそっぽを向く。
その様子をファリンは頬に手を添え、蒸気でも噴き出さんばかりな真っ赤な顔になって、オロオロと戸惑いつつ右往左往していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最後にコクリと喉を鳴らしたアテナは、頭を抱えるユートに含み笑いを向け、ちょっとだけ勝ち誇る。
「ふふ、それにしても優斗も随分な益荒男振りよな」
「何が!?」
ちょっと涙を浮かべて、悪戯された女の子みたいな反応をするユートに対し、噴き出したくなるのを抑えるアテナ。
思えば自分も丸くなったものだと……
嘗てのまつろわぬアテナであった頃ならば、決して有り得ない笑みを浮かべ、宿敵たる神殺しを相手にして睦み合っている。
神祖グィネヴィアの企みによって不死性を損なったアテナは、最期の闘いへと弓状列島に向かった。
二人の神殺し……どちらかでも決着を着けるべく。
結果は押し並べて類推すれば良いとして、それによってユートが執ったのは、彼女を生かす策。
よって、あの世界線では如何なる事があろうとも、此処に存在する人格や意識を持ったアテナが復活する事は有り得ない。
その際にまつろわぬ性質が損なわれたのか、本当に角が取れて丸くなった。
アテナはユートを見遣ってクスクスと笑い……
「貴方の精だけで妾の肚を満たすのだからな」
ポンポンと満たされた肚を軽く叩いて言う。
その言葉を聞き、ユートはガックリと項垂れたものだった。
「ふむ、妾も一泳ぎしてくるとするか。其処な下婢、妾は肚も脹れた事であるし昼餉は要らぬ」
「は、は、は、はい!」
立ち去るアテナ。
残されたのは項垂れた侭のユートと、ノエルと違い〝はぢめてじょうじ〟を見て戸惑うファリンだけ。
取り敢えずは、昼食後に何とか精神を持ち直して、アリサとすずかを鍛えた訳だが、やはり少しばかりは精彩を欠いたという。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
皆でプールに行く約束をしているユートだったが、アリサとすずかの二人と連れ立って、前日の土曜日の昼から三人だけでプールにやって来ていた。
目的はジュエルシード。
当然ながら二人の水着は前日の様なスク水でなく、アリサが赤いセパレート、すずかは淡い菫色の水着と少し気合いが入っている。
一応は普通に遊んでいたユート達だが、思っていた通りにジュエルシード・モンスターが現れた。
水着泥棒の思念を増幅、プールの水そのものが盛り上がって、まるでスライムみたいなモンスターとなって暴れ始める。
実は現在、プールに居る客は全員がサクラ。
バニングスグループ名義でプールを借り切り、客を装ったさざなみ寮の皆様や晶やレンが、遊んでいる振り──事実、事件が起きるまで全力全開で遊んでいた──をしてジュエルシード・モンスターに備えていたという訳だ。
本体が此処に無い事は解っているから、分体の方をさざなみ寮組やアリサ達に任せ、本体を叩くべく女子更衣室にユートは向かう。
因みに、今日の着替えは男は外で行い、女性陣だけ男子更衣室で着替えた。
「小犬星座(カニスミノル)……フルセット!」
「龍星座(ドラゴン)、フルセット!」
「小獅子星座(ライオネット)……フルセット!」
「大空聖衣・白鳥(スカイクロス・キグナス)、スタンバイ!」
《Ready Setup》
青銅聖闘士が三人。
鋼鉄聖闘士が一人。
聖衣持ちの全員が聖衣を纏い、氷結の力を持っているすずかを主軸に、この場の皆が力合して闘った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユートは本体の存在する空間で……
「麒麟星座(カルメパロダリス)……フルセット!」
本来のキリンではない、中国の瑞獣たる麒麟を象る闇翠色の輝きのオブジェを喚び出し、各聖衣のパーツに分解されたソレを纏う。
「さあ、邪なる思念に毒されし願望の器よ。今こそ、浄化してくれる!」
『ガァァァァァァッ!』
襲い来る思念体。
「浄化の焔、邪なる思念を灼き尽くせぇぇぇぇっ! ……燐氣煉獄覇!」
「ゴァァァァァァァッ!」
ユートが放つ焔は、黄金の色を以てジュエルシード・モンスターを灼き祓う。
余計な物は一切灼かぬ、浄化の焔……金。
神凪一族が千年の昔に、炎の精霊王から【炎雷覇】という神宝と共に授かった加護と同じ力。
別に神炎でも良かったのだがユートのは黒炎だし、ちょっとイメージが悪い。
「ジュエルシード、シリアルⅩⅦ……封印!」
小宇宙で固く封印を施して戻ると、何故か水着やら聖衣やらを脱衣して大事な部分を隠す面々が……
「ナニしてんだ?」
「脱がされた〜!」
アリサが悔しげに言う。
どうやら何体もダミーが出てきて手に負えなくなったらしく、結局は脱がされたらしい。
ユートは頭を抱えるしかなかったという。
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文字数が足りず、最後が相変わらず雑に……
アテナってこんなんか? と思うかも知れないのですが、一応の説明は本文中に入れてあります。