魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

12 / 84
第11話:襲名! 小犬と龍と鋼鉄の白鳥

 とらいあんぐるハート、それは【リリカルなのは】のパラレルストーリー。

 

 全部で三つナンバリングが存在していて、外伝やらドラマCDやらOVAやらでメディア展開された。

 

 2のOVAは黒歴史認定されているとか……

 

 先日の会合でも明心館の館長の巻島十蔵が居たり、綺堂さくらが居たりした。

 

 そう、明らかにとらいあんぐるハートの方の人物が可成り混じっていたのだ。

 

 ならば成程、城島 晶と 鳳 蓮飛の2人が居たとしてもおかしくはない。

 

 この2人の登場時期は、高町恭也を主人公としている【とらハ3】で、今から一年前を舞台に恋愛劇を繰り広げている。

 

 この世界でもそうなのかまでは判らないが、どちらにしても同じくヒロインであった月村 忍が恋人となったのがこの世界だというのは間違いない。

 

 この2人は同じ中学校に通うが、互いに【亀】とか【お猿】と呼び合う仲で、さざなみ寮に住んでいる。

 

 ボーイッシュな外見に、男勝りな性格、『オレ』という一人称の城島 晶。

 

 中華系な名前だが喋りは関西という鳳 蓮飛。

 

 どちらも格闘が得意。

 

 確かに聖闘士候補にハマり役かも知れない。

 

「痛っ?」

 

 暫し呆然と見つめていたらしく、不意に横腹に痛みを感じて我に返ると、少し不機嫌なすずかが抓ってきていた。

 

「何をするかな?」

 

「知らない!」

 

 頬を脹らませてそっぽを向くすずか。

 

 やれやれと再び2人の方を向くと……

 

「初めまして、緒方優斗という。一応訊いておくけど2人は何の為に此処に連れて来られたか、理解はしている?」

 

「ん? 侵略者をぶっ飛ばすんだろ?」

 

「なんや、違うんか?」

 

「いや、間違っている訳じゃないんだけど……」

 

 晶とレンの答えを聞いて頭を抱えたくなる。

 

 本当にざっくりと話しただけらしく、何をどうするかなどは忍も話してはいなかった様だ。

 

「まあ、概ねは間違ってはいないかな」

 

「後は、就職にも有利だとか聞いたけど?」

 

「は?」

 

 晶が意味不明な事を言ってくれて、思わず間抜けな声を上げてしまった。

 

「違うん? 忍さんはそう言うてたよ」

 

 どうやらレンも同じ認識らしい。

 

「忍さん?」

 

「あれ? 違ったっけ?」

 

「そりゃ、【OGATA】に属して貰う訳だからね、言ってみればスポーツ選手が企業に属して、スポーツで給料を貰う……みたいなものだろうな」

 

「じゃあ、大丈夫よね」

 

「せめて確認くらい取ってから言おうか」

 

 ユートは呆れ顔で言う。

 

 そうなユートにすずかが小首を傾げて問う。

 

「ねえ、優斗君」

 

「何かな? すずか」

 

「その【OGATA】ってどんな企業なの?」

 

「色々な物を扱う複合企業(コングロマリット)だね、今の処は科学部門と外食部門と農業プラントなんかを押し立ててる」

 

「科学……機械を扱うんだよね?」

 

「まあね」

 

 すずかは何処か決意をした様な表情となる。

 

「改めて自己紹介をする、緒方優斗。財団法人【OGATA】の設立者であり、聖域を統べる黄金聖闘士・双子座のユートだ」

 

「オレは城島 晶。明心館空手を習ってる。宜しく」

 

「ウチは鳳 蓮飛って云います。レンって呼んだって下さい」

 

 ユートが自己紹介を促すと、晶がサムズアップをしながら名乗り、レンも一礼をしてから名前と愛称を名乗った。

 

 早速というか、捌けているというか晶はユートへと質問をする。

 

「で、オレらは何すりゃ良いんだ?」

 

「基本的には普通に暮らしてくれて構わないけれど、非常時や仕事を頼みたい時なんか、連絡をするよ」

 

「ほうほう、派遣社員みたいなもん?」

 

 レンの言葉に苦笑して、ユートは頷く。

 

「ある意味でそうだけど、訓練を毎日して貰う事になるし、聖闘士になった時点で給料が支払われるんだ。さっきの〝呼ぶ〟というのは別枠で、危険手当てとかが入るんだと思ってくれれば間違いないよ」

 

「「おおー!」」

 

 喧嘩する程に仲が良いと云うが、普段は基本犬猿だというのにすっかり息を揃えていた。

 

「それじゃあ、少し動きを見せて貰えるかな?」

 

「なんだ? 亀と模擬戦でもすりゃ良いのか?」

 

「はん、お猿にゃ負けん」

 

「言うじゃねーか」

 

 何故か行き成り挑戦的な言動になり、晶とレンから闘志が沸き上がり……

 

「喰らえ!」

 

「やらせんわ、ボケー!」

 

 此方が何を言うでもなく始めてしまう。

 

「良いの? あれ……」

 

「まあ、動きを見たいだけだから相手は誰でも良かったんだよ」

 

 忍がタラリと大粒の汗を流しながら訊くが、ユートは止めるでもなく2人の動きを視ていた。

 

 一時間ばかり暴れて流石に草臥れたのか、晶もレンも座り込み肩で息を吐く。

 

「ゼー、ゼー! どうだ、こんにゃろー!」

 

「はん、ウチの動きに付いてきてから言いや!」

 

 何処までも不敵に言う。

 

 どうでも良いが、レンは心臓疾患は根治しているのだろうか? 随分と元気に見える。

 

「空手に拳法……か」

 

 ユートは亜空間ポケットに手を突っ込み、ガサゴソと探ると何やら取り出す。

 

「晶には、青銅聖衣の小犬星座(カニスミノル)だね。レンのは同じく青銅聖衣の龍星座(ドラゴン)」

 

「小犬星座(カニスミノル)……?」

 

「龍星座(ドラゴン)かぁ」

 

 聖衣石を渡されて、晶もレンもマジマジとそれを見つめる。

 

 子犬星座(カニスミノル)は造って間もない聖衣で、これまでに纏い手も居ないモノだった。

 

 一方の龍星座(ドラゴン)の聖衣は、ハルケギニアの時代にミイナが纏っていた聖衣だが、彼方側で新調していたモノで形状がΩ版の方に近い。

 

 但し、柔らかい布みたいな金属とか訳の判らない物では当然なくて、キチンと星座のオブジェ形態から、聖衣形態となる。

 

 だから実際にはΩ版とも少し形状が違う。

 

「マインド・トリガーといって、基本的にはキーとなる言葉を叫べば使える」

 

「叫ぶのか?」

 

「叫ぶんか……」

 

 晶もレンも戦慄したが、ノリが良いのか早速使ってみようとして……

 

「「マインド・トリガーって何?」」

 

 根本的に、マインド・トリガーを聞いていない事に気が付いて訊いて来た。

 

「聖衣の名前とフルセットって言葉だよ」

 

 ユートは苦笑いを浮かべて教える。

 

「っしゃー! 小犬星座(カニスミノル)……フルセット!」

 

「龍星座(ドラゴン)、フルセット!」

 

 聖衣石を着けた腕を掲げながら叫ぶと、山吹色に輝く小犬のオブジェと翠色に輝く龍のオブジェがそれぞれの頭上に顕れ、自動的に分解装着されていく。

 

「これが聖衣か」

 

「ほえ〜」

 

 自分に装着された聖衣を見つめ満足そうに呟く晶、感嘆の声を上げるレン。

 

「へー、中々に格好良いじゃない?」

 

 忍も関心が有るらしい。

 

「前の龍星座には付いていなかったけど、今回の新調した方には属性がある」

 

「属性?」

 

 ユートの説明に、レンが首を傾げ鸚鵡返しに訊く。

 

「土、水、火、風、雷という五つに加え、光と闇……合わせて七属性。今までは特定の聖衣に付けていた。それを龍星座にも付けてみたんだよ」

 

「オレのもか?」

 

「小犬星座聖衣(カニスミノル・クロス)は土属性。まあ、イメージ次第で出来る事が増えた感じかな」

 

 その辺は魔法に近い。

 

 クイクイと服の裾を引っ張られて振り返ると、瞳をキラキラと輝かせたすずかが居る。

 

「わ、私は?」

 

「すずか、本気で聖闘士になりたいのか?」

 

「うん!」

 

「どうして? 聖闘士になるってのは、平穏を捨てるという事に等しい。格闘家の晶とレンならまだしも、文系のすずかがなる必要は無いと思うんだけど?」

 

「それは……」

 

 モジモジと尻窄みになってしまう。

 

「なら質問を変えようか。すずかは僕が好き?」

 

「ふぇ!?」

 

 すずかは仰天した。

 

 余りにもぶっちゃけている質問だからだ。

 

「僕が好きだから、傍に居たくて聖闘士になりたいって思ってる?」

 

 明け透け過ぎてすずかの顔は真っ赤に染まる。

 

「言っておくけど、茶化している訳じゃない。真面目に訊いているんだ」

 

 確かに雰囲気的に茶化しているとは思えず、すずかも少し熱が冷めたか、まだ頬が赤いが真面目な目になって首肯する。

 

「うん、そうだよ」

 

「やめておいた方が良い」

 

「うっ!」

 

 間髪入れずに答えられ、フラれたのだと思い涙を浮かべた。

 

「私じゃ……ダメ?」

 

「勘違いしないで貰おう。僕はそもそも、恋愛なんて今更出来ないんだよ」

 

「どういう意味?」

 

「すずかは僕の年齢、幾つに見える?」

 

「同い年くらい」

 

「其処からして間違いだ。僕は今生だけで数十年を越えて生きている。前世や前々世で百七十年はプラスされるから、もう二百年以上の人生なんだよ」

 

「に、二百年!?」

 

 前々世は【受容世界】で二十歳まで生きて、ハルケギニアでは約百五十年。

 

 今生は幾つか世界を廻る内に数十年は過ぎた。

 

「前々世では二十歳で死んでしまったし、それまでに縁が無かったというより、妹に邪魔されてたらしくて彼女が居なかったが、前世では恋愛をして結婚だってしている。その記憶は継承されているし、使徒という形で今も存在して繋がってもいるんだ。そんな僕が、恋愛なんて出来ないよ」

 

 精神的にも、繋がり的な意味合いでも……だ。

 

「それでも気に入った娘と使徒契約を結び、増やしている訳なんだけどね」

 

 それは恋愛感情などではなく、性欲や所有欲を満たす為のものでしかない。

 

 勿論、その説明はする。

 

 今、正にすずかに対してしている様に……

 

「つまりはあれか、ハーレムなん?」

 

「レン、正解」

 

 困った様な笑みで言う。

 

「ハーレム要員は何人くらい居るのかしら?」

 

「数え切れない。という訳でだ、それでもすずかは僕と居たいのかな?」

 

 忍の質問を軽く流して、すずかに問うユート。

 

 すずかは少し戸惑いを覚えつつも……

 

「居たいよ、それって私が加わっても問題は無いって事なんだよね?」

 

 ハッキリと答えた上で、自分の枠について問い返して来た。ユートは瞑目し、ゆっくりと頷く。

 

 すずかを【夜の一族】と知りながら受け容れる剛の一般人は居ないだろうし、言ってみればすずかを受け止められて、尚且つすずか自身が好きになった相手。

 

 多少の問題点はあるが、躊躇う理由も無かった。

 

「ハァー、判ったよ」

 

「それじゃあ!」

 

「使徒候補としておく」

 

「うん!」

 

「すずかにはこれを」

 

 ユートがすずかに手渡したのは、青銅聖衣を与えられた晶とレンの聖衣石とはまた異なる物。

 

 何と言おうか、デジタル時計みたいな感じだ。

 

「それは鋼鉄聖衣(スチールクロス)の聖衣石。見ての通り、時計の役割も果たす代物だ。鋼鉄聖衣は他の聖衣みたいな神秘でなく、機械を詰め込んだマシーンクロス。それは大空聖衣(スカイクロス)の白鳥(キグナス)といって、青銅聖衣の白鳥星座(キグナス)とも別物の聖衣だよ」

 

「大空聖衣(スカイクロス)白鳥(キグナス)?」

 

「鋼鉄聖衣はその在り方により、大空聖衣(スカイクロス)、大地聖衣(ランドクロス)、大海聖衣(マリンクロス)の三種が存在する」

 

 空を飛ぶタイプが大空聖衣(スカイクロス)。

 

 地を駆けるタイプが大地聖衣(ランドクロス)。

 

 海を泳ぐタイプが大海聖衣(マリンクロス)。

 

 それぞれの星座のタイプにより、特徴を三つに分けているのである。

 

 鋼鉄聖衣に人間モチーフ──アンドロメダやカシオペアなど──の聖衣や器物──時計座や六分儀星座──の聖衣は無い。

 

 全て鳥獣系である。

 

「マインド・トリガーは、聖衣名にスタンバイだよ」

 

 すずかは首肯して叫ぶ。

 

「大空聖衣(スカイクロス)白鳥(キグナス)……スタンバイ!」

 

《Ready setup》

 

 聖衣石が輝いて、まるで尾羽が派手な飛行マシンの様なオブジェが顕れると、分解されてすずかの身体を鎧っていく。

 

「鋼鉄聖闘士……大空聖衣白鳥(スカイクロス・キグナス)のすずか!」

 

 

.


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。