魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第10話:集結開始 リリカルな聖闘士候補

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 なのはとユーノは俯き、どうしたら良いのかが判らずにいた。

 

「家族に話せ……か」

 

「理屈としては間違ってはいないよ、なのは」

 

「けど、それって駄目なんだよね?」

 

「うん、管理外世界で魔法を扱うのは本来駄目だし、当然だけど教えるのも厳禁なんだよ」

 

 緊急避難的になのはへとレイジングハートを託したユーノだったが、本当であれば管理外世界の原住民に接触も余り許可されない。

 

 自分で何とかなるなら、そうしていたのだが……

 

「だけど尤もでもあるし、なのはのご家族には話しておこう」

 

「でも……」

 

 なのはの懸念……それは反対をされる事。

 

 嘗ての時、父である士朗が〝事故〟で大怪我をさて入院した際、まだ小さかったなのはには何も出来ず、母親は兄と翠屋を盛り立てていき、姉は士朗の世話をしていたというのに、自分は公園で独りぼっち。

 

 何も出来ない無力感と、たった独りの淋しさが幼いなのはの心を苛んだ。

 

 それは数年が経った今でも変わりなく、仲良くしている家族を見て少し浮いているなんて思うくらいに、ジワジワと闇が侵食した。

 

 なのはが闇の虜にならなかったのは、偏に親友達との交流と魔法という特技の確立にあるだろう。

 

 だから怖い、家族に話して魔法を取り上げられてしまうのが。自分自身、危険な事をしているという自覚があるし、逆の立場であれば止めると思うからだ。

 

 だが然しだ、あの少年は家族に話せと言っていた。

 

 若しも話さない侭で続けていたら彼はどうするか? きっとなのはが関われないようにするに違いない。

 

 今日の夕方と同じ様に。

 

 そうなれば自分は……

 

「(ヤクタタズ)」

 

「どうしたの、なのは?」

 

「っ!? あ……な、何でも無いよ」

 

 一瞬、頭を過った言葉を振り払う様に頭を振って、「にゃはは」と笑顔を貼り付けながら言う。

 

 ユーノはほんの僅かに、フラットになったなのはの表情が気に掛かるものの、「そう」と首を傾げながら話題を移す。

 

「兎に角だよ、僕としてはなのはの家族くらいには話しておこうと思うんだ」

 

「……判ったの」

 

 内緒にした侭、何かしら遭ったらそれこそ魔法を取りあげられかねない。

 

 そう判断したなのはは、ユーノの提案に乗る。

 

 その後、家族の前で魔法について語ったら、士郎は『覚悟はあるのか?』と訊ねてきた。

 

 それは怪我をする覚悟、失敗をして後悔する覚悟、そして万が一にも死ぬ覚悟である。

 

 士郎は語る、嘗ての士朗は御神裏・不破流という剣の使い手で、ボディガードという仕事で糧を獲ていたという事を。

 

 数年前の〝事故〟による入院も、ボディーガードでとある人物を護る為にテロリストの仕掛けてきた爆弾の爆発を受けた所為だと。

 戦いはほんの僅かな判断ミスが死を呼び、判断ミスをしなくても場合によって大怪我をする。

 

 戦えば誰かしら怨む者も出てくるし、御神と不破も自分達を怨む裏の人間達が爆破事件を起こして、当時は風邪で寝ていた美由希とその看病をしていた士郎の妹の御神美沙斗、風来坊をしていた士郎と恭也だけしか生き残らなかった。

 

 美沙斗は仇討ちの為に、美由希を自分に預けて旅に出てしまい、今は何処で何をしているかも判らない。

 

 魔法に関わるというのは裏に関わると同義、そんな覚悟が小学生のなのはにあるのかを問う。

 

 一緒に風呂に入った事もあるから、士郎の身体中に傷があるのを知るなのは、士郎の言葉が嘘なんかではないと、実感していた。

 

「その覚悟があるというのなら好きにしなさい」

 

 士郎はそう言って席を立つと部屋を出ていく。

 

 考えさせられはしたが、取り敢えず許可だけは得たなのは。

 

 これで自分もジュエルシードに関われると、胸中で安堵していた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 深夜になって忍が家に帰ってくると、そこに居たのは妹のすずかとファリンの2人だけ。

 

 ノエルは忍自身の護衛と秘書を兼ね、ギリシアまで連れて行っていたし、その後も様々な伝手やコネクションを使って、国連事務総長などとの会談に付いて来ていた。

 

「優斗君は?」

 

「はぁ? 昨日は兎も角、優斗君はホテル暮らしの筈だよね?」

 

「あ、そっか……」

 

「優斗君、家に呼ぶの?」

 

 何処か期待する目で見てくる妹に苦笑し……

 

「そうね。すずかが一緒に住みたいなら構わないわ。でも、そういえば優斗君に彼女とか居るのかしら?」

 

 余計な一言と共に言う。

 

 その後、忍はユートが泊まるホテルに電話を掛けてみたが、内線に出なかった事から寝ているか、風呂にでも入っているのだろうと判断する。

 

 それから暫くして、電話が掛かってきた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 備え付けのユニットバスから出たユートは、内線があった事に気が付き、直ぐにフロントへ連絡する。

 

 フロントは『月村 忍』と名乗る人物から、外線があったと教えてくれた。

 

 フロントに礼を言うと、ユートは直ぐにも月村家へと電話する。

 

 ややあって、電話に出たのは果たして忍だった。

 

「もすもす、ひねもす」

 

〔いや、もしもしは此方の科白だと思うんだけど?〕

 

「まあ、ラビットジョークってヤツだよ」

 

〔ハァ?〕

 

 意味が解らないと、忍はきっと首を傾げているだろうと想像する。

 

「それは兎も角、外線があったって聴いて電話をしたんだけど?」

 

〔ああ! あのね、優斗君はホテル暮らしよね?〕

 

「そりゃ、今正にホテルで電話してるくらいだし」

 

〔家で暮らさない? 歓迎するわよ。すずかも私も〕

 

「月村の邸で?」

 

〔そうよ〕

 

「まあ、別に僕は構わないんだけど……」

 

〔何かしら?〕

 

「すずかが僕を歓迎するって理由は?」

 

〔……本気で言ってる?〕

 

 呆れていると言おうか、少し怒りを含んでいるというのか、そんなニュアンスで訊いてきた。

 

 ユートは別に鈍感難聴のオリ主ではないから、理解はしている。

 

 とはいえ、ユートとしては今更……であった。

 

〔優斗君は浚われて、貞操の危機にさえあったすずかを救い出したのよ。謂わばナイト様ってやつね。あの子はその手の、騎士がお姫様を救うとかの本が好きだもの。あの時の状況を重ね合わせたでしょうね〕

 

 切っ掛けは些細な事。

 

「すずかの気持ち云々は、取り敢えず置いとくけど、明日チェックアウトする」

 

〔少し納得がいかないけど……判ったわ。私も明日、聖闘士候補になれそうな子を連れて帰るから、ノエルに入れて貰ってね〕

 

「了解」

 

 そう言うとユートは受話器を置いて、すっかり乾いてしまった身体をバスタオルで拭くと、トランクスだけ穿いてベッドに転がる。

 

「やれやれだね、シエスタを招喚して昨夜の昂りを鎮めて貰おうと思ったんだけどな……」

 

 明日から月村邸に行くのなら、今から招喚して連れ立って行くのも拙い。

 

 結局、その日はすぐ寝てしまった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ピーンポーン……

 

 月村邸のインターホンを鳴らして名乗ると、ノエルとファリンが挙って歓迎をしてくれる。

 

 忍は大学、すずかも学校に通っているから帰ってくるのは夕方だという。

 

 また、忍は昨夜に言った通りに聖闘士候補となれる人材を連れて来るとか……

 

 ユートもプロバイダ契約をしたパソコンを使って、ネットワークに接続すると専用サーバーを立ち上げ、まほネットを構築する。

 

 これの構築に関しては、詳しい人間に教わっているから、直ぐにも構築する事が出来た。

 

 財団法人を創設するとはいっても、直ぐにどうにかなる訳でもないし、差し当たりの処でアイテム売買によって稼ぐ事にする。

 

 密林みたいなモノだ。

 

 実際に、ユートは彼方側でも本物のまほネットを使って、同じ事をして小遣いを稼いでいた。

 

 直ぐに効果が出るとも思えないし、後で茶々丸型を出して管理を任せようと、そう考えている。

 

 夕方になって、ユートはノエルとファリンを相手にお茶を飲みつつ、愉し気に会話をしていた。

 

「ただいま!」

 

 我が主の妹なら我が主も同然……

 

「お帰りなさいませ」

 

 ノエルはすずかを玄関先で出迎えた。

 

「ノエル、優斗君は来てるかな?」

 

「はい、優斗様はサロンにてすずかお嬢様と忍お嬢様をお待ちです」

 

「ありがとう」

 

 直ぐに部屋へ鞄を置き、聖祥大付属小学生の制服から私服に着替えて、サロンへと向かう。

 

「優斗君!」

 

「やあ、すずか。お帰り」

 

 笑顔で『お帰り』などと言われると、何だかユートが自分の旦那様にでもなった気がして、すずかの頬に朱が差す。

 

「ファリン、私にもお茶をお願い」

 

「はい、すずかちゃん」

 

 すずかは忍が帰ってくるまでは、ユートと他愛ない会話を楽しもうと思った。

 

 暫くは学校の話をしたりしていたが、すずかはふと気が付いた様に訊ねる。

 

「ねえ、聖闘士ってどんなものなの?」

 

「前にも言ったけど、邪悪が蔓延る時に必ずや現れる希望の闘士。星座の聖衣を纏い、地上を狙う神々やら侵略者と闘うのが仕事だ。勿論、霞を食べて生きてる訳じゃないから、各国首脳とは繋がりがあってボディガードなんかをしてお金を受け取ったりしてるけど」

 

「星座の聖衣?」

 

「ああ、それはまだ言ってなかったか。聖闘士は死に直結する様な厳しい修業により、常人を遥かに越える力を持つけど、所詮は生身の人間に過ぎない。ずっと昔の事、アテナは武器を嫌う自分の為に素手で闘って傷付く少年──稀に少女も含まれる──達に悲しみ、海皇ポセイドンが擁している海闘士(マリーナ)が纏う鱗衣(スケイル)を参考に、神々の秘法をムウ大陸の者に与え、宇宙の星々の形を模した鎧……聖衣を与える事にしたんだよ」

 

 流石にいつの話かまでは判らないのだが、少なくとも二千年前の軍神アレスと邪闘士(バーサーカー)との闘いでは、既に聖衣を纏っていた筈だから、更に前なのは間違いないだろう。

 

「厳しい修業って、私もしないとダメかな?」

 

「いや、この世界でも神の闘士が出てくるかは判らないし、僕の造る聖衣のレプリカには纏うだけでパワーアップする機能もあるし、必殺技だってオリジナルから再現してあるからね」

 

 ぶっちゃけ、聖衣を纏えば誰でもある程度であれば闘えるのだ。

 

 己が生命を危険に晒し、敵の生命を断ち、赤い血に塗れる覚悟さえあれば……

 

「聖衣には階級があって、一番下に青銅聖衣、二番目に白銀聖衣、そして最高位に黄金聖衣だ。また、精霊を象る精霊聖衣が白銀相当で存在している。それと、青銅相当にマシーンを用いた鋼鉄聖衣が最近、完成をしているよ」

 

 聖衣には限りがあるが、同じ星座の聖衣を量産など出来る訳もなく、それ故に麻生博士が完成させられなかった鋼鉄聖衣を、超一味を使って完成させた。

 

 元よりユートは小宇宙が使えずとも闘える聖衣というのを造っていた訳だし、超と葉加瀬とユーキを加えてマシーンの鎧、鋼鉄聖衣を造るのは決して難しい話ではなかったのだ。

 

「一応、戦闘訓練はして貰うけどね。死ぬ程のキツいものじゃないよ」

 

「そっか……」

 

 そんな話をしていると、忍が帰ってくる。

 

「ただいま〜!」

 

 ノエルは夕飯を作っている為、玄関に迎えに出たのはファリンだった。

 

 ファリンに案内される形でサロンに入って来た忍の後ろには、2人の女の子が一緒に居る。

 

 青い短髪、ボーイッシュな感じの少女。

 

 同じく短髪だが、緑色の少女は雰囲気が柔らかい。

 

「(城島 晶と鳳 蓮飛)」

 

 晶とレン……

 

 それは、とらいあんぐるハート3に登場したヒロイン達であった。

 

 

 

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