魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第9話:一念発起 聖域創設開始

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 デビット・バニングスと月村 忍の2人は、ユートを伴って自家用ジェット機でギリシアへと向かう。

 

 ユートの生まれた地球で聖域が存在した土地を購入するべく、値段交渉やその他の諸々を行う為に。

 

 ギリシアのアテネ市内、午前5時と割かし非常識な時間帯を選んでの交渉は、それ自体は割とすんなりといき、凡そ壱億二千万円……百万ユーロ程でその土地を売却された。

 

 完全な自治区とするなどを鑑みれば余りに安いが、元より何の資産価値も無い土地であり、ギリシア共和国政府も持て余していた事が幸いしたというか、先回りで何処ぞの白い魔王様がそうなる様に、細工したと視るべきかも知れない。

 

 ただ、このギリシアにはギリシア正教が普通に在る筈だったが、政府はアテナ神像を造る予定を話すと、可成り良い笑顔で話を進めてくれたのは何故だろう?

 

 この地に聖域が存在しないのは、あの土地に行って理解はしていたが、一応はスニオン岬に行って何処かに岩牢が無いか捜す。

 

 よもや、海皇ポセイドンの三又の矛が存在していたらちょっと事だし……

 

 実際に行ったら、そんなモノは無かった。

 

 どうやら聖闘士星矢的な世界は混ざってないらしい……といってもこの先で、自分から混ぜるのだが。

 

 だとするならば、中国は廬山・五老峰にも老師が居た場所に大滝など無いという事になり、中国とインドの国境付近の標高六千メートルの山岳地帯ジャミールも存在しないという事。

 

 無ければ創れば良いじゃない……とはいかないし、聖域だけで事足りる。

 

 若し必要ならダイオラマ魔法球を使い、其処に再現してしまえば良い。

 

 ユートはギリシアの奥地たる此処に、大きな結界を展開して【錬成】を用い、小宇宙を全力全開で放って聖域を創り上げる。

 

 黄金十二宮、教皇の間、アテナ神殿、スターヒル、聖闘士や雑兵の居住区など全ての施設を完成させた。

 

 また、現在まで所有者が決まっていない黄金聖衣に関しては、聖衣に対応した宮にオブジェ形態で飾っておく事にする。

 

 金牛宮に牡牛座聖衣。

 

 魔羯宮に山羊座聖衣。

 

 二つだけだが……

 

 何気にこれまで渡ってきた世界に、自分も含めれば合計で十名の黄金聖闘士が決定していた。

 

 後は無印が終了してから順次、使徒たる黄金聖闘士を喚べば良い。

 

 現状で喚べるのは一名、牡羊座のシエスタのみだ。

 

「雑兵には田中さんの外見を変えたモノを使うか」

 

 【脱げビーム】を使える田中さんなら、女性魔導師はそれだけで逃げ出すだろうし、男も裸族でもなければ好んで脱げたくはないだろうから使えそうだ。

 

 彼ら管理局がお好みで、ご自慢の非殺傷な魔導兵装でもあるし……

 

 ジャミールが存在しない以上は、聖衣の修復施設も必要になる訳だが、それは白羊宮にでも備え付けておけば良かろう。

 

 シエスタも貴鬼から修復を教わっているし、どうせ形だけでも良いのだから。

 

 形に拘るのは、場合によってアースラのスタッフを案内するかも知れないと、そう考えての事だ。

 

「田中さんは取り敢えず、百機ばかり雑兵装備でもさせて運営させるか」

 

 数が必要なら、超 鈴音と葉加瀬聡美を喚ぶというのもアリだが、喚べるのは最短でも二ヶ月は先。

 

 それまでは、茶々丸型を十機ばかり出して田中さんを統轄させるしかない。

 

 茶々丸型を一機につき、田中さんを十機纏めさせる算段である。

 

「はぁ、これが聖域か」

 

「成程な、これは……」

 

 同行してた忍とデビットが感嘆の声を上げながら、聖域を見て回っている。

 

 この2人には聖域の仕事を各国に承認させるべく、働き掛けをして貰う為にも実際に聖域を見せていた。

 

 つまり、国連を動かそうという訳である。

 

 勿論、月村とバニングスの企業だけではどうしょうもない話だが、彼らの伝手やコネクションも最大限に活用して貰うし、交渉材料としてユートの持つ最先端技術もある程度は解放する心算だった。

 

 少なくとも、ユートが所持する超技術(チャオ・テクノス)やマジックアイテムの数々を、各国が無視するには大き過ぎる。

 

 事実として、ギリシア共和国政府も某・特別救急捜査隊御用達な特救ツールに興味津々だった。

 

 また、生まれた世界での財団法人【OGATA】を此方でも設立し、聖域でのバックアップとする。

 

 超技術(チャオ・テクノス)も【OGATA】財団の一部門として設立して、トップにあの2人を持ってくる心算だ。

 

 外食部門はさっちゃんに頼み、超胞子(チャオパオズ)を設立する。

 

 あの世界では使徒にこそならずとも、ユートを慕って若さを保ち着いてきてくれる者も多く、必要とあらば喚ぶ事も出来た。

 

 ユートも、彼女らの非常識なまでの高性能な能力に一目置いている。

 

 勿論、親しき仲にも礼儀アリという事で、出来得る限りの対価は支払うが……

 

 兎に角、組織として体裁を整えておかねば管理局に舐められるし、何より個人では色々やり難い事も多々あるのだから。

 

 将来的には、レジアス・ゲイズを引き込む為にも、超と葉加瀬に開発を頼んだ量産型鋼鉄聖衣を此方でも用意しておきたい。

 

 鋼鉄聖衣はユートの使徒候補だった者以外に聖衣を与える為、あの2人に開発を依頼した経緯がある。

 

 その中でも、魔導衣と名を変えた量産型鋼鉄聖衣を世に出した。

 

 通常の物と違い、超小型魔導炉を搭載した鋼鉄聖衣であり、デザインも量産型に相応しく没個性。

 

 低コスト化と、整備性の向上を目指した魔導衣は、魔法を扱えない人間に魔法を与えるとはいかないが、魔力による身体強化と単純な魔力弾を放つ事は可能。

 

 戦隊で使われてる銃と剣のコンパッチ型の武装で、魔力弾と魔力刃を飛ばす。

 レジアスもこれならば、採用し易いだろう。

 

 混ぜるな危険というか、あの2人に加えてユーキが入ると、正に狂気のマッドサイエンティストだったという訳である。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 国連との交渉などに関しては、忍とデビットに任せる事にして、ユートは早々と日本に帰還する。

 

 原典の第二話で、子犬に憑いたジュエルシード回収をする為だ。

 

 出来るだけ管理局に渡さない為にも、高町なのはには回収させないようにしておきたい。

 

 どうせ、管理局が回収していったとしても、知らない間にジェイル・スカリエッティに盗まれて、ガジェットの動力原にされるだけなのだし、渡す意味などは何処にもなかった。

 

 八束神社へ子犬の散歩に来ていた女性、子犬が拾ったジュエルシードが発動して怪物になってしまう。

 

 ジュエルシードの発動に気付き、なのははユーノと神社まで走った。

 

 先日の槙原動物病院での一件の事も気になったが、街のご近所であんな物騒な代物が発動しては困ってしまうからと、なのはは協力する事にしたらしい。

 

「あれは! 現住生物を取り込んでいるみたいだ!」

 

「ど、どうなるの?」

 

「実体を取り込んでる分、手強くなってるよ!」

 

 単なる思念体だった前回より、現地生命体を取り込んだ分、あやふやな思念体より強いのだという。

 

「どうしよう……」

 

「なのは! レイジングハートの起動を!」

 

「ふぇ! 起動って?」

 

 突然、そんな事をいわれてもどうすれば良いのか、なのはは判らなかった。

 

「『我を使命を』から始まる起動パスワードを!」

 

「えぇっ? あんな長いの覚えてないよぉ!」

 

「それじゃ、もう一度教えるから繰り返して!」

 

「わ、判ったの!」

 

 だけど、怪物がそれを待ってくれる保証など無い。

 

 テレビのヒーロー番組ではあるまいし、変身シーンを大人しく黙って見ている訳がなかった。

 

 怪物はなのはにその鋭い牙で襲い掛かる。

 

「ヒッ!」

 

 凶悪なケダモノが、牙を剥き出しにして涎を滴ながら襲いくる様は、まだ9歳かそこらの少女には耐えられない恐怖を与えた。

 

「い、イヤァァァァッ!」

 

 マスターを危機より護るべく、レイジングハートが起動しようとしたその時、なのはと怪物の間に人影が躍り出る。

 

「死之遠吠(デッドハウリング)!」

 

『ギャワン!』

 

 音速に達する拳の勢いが鎌鼬を呼び、ジュエルシード・モンスターの躰を切り裂いて吹き飛ばした。

 

 その姿は、夜中の事だったがユーノも覚えている。

 

「き、君は昨夜の!」

 

「下がっていろ」

 

 ユーノの言葉に応えず、下がる様に促すがなのはは食い下がってきた。

 

「だ、駄目だよ! あの子は昨夜のより強いんだし、協力をしよう!」

 

「怪物のプレッシャーに負けて悲鳴を上げる様じゃ、足手纏いだ」

 

「そんな事、無い!」

 

 尚も言い募って近付いて来るなのはだが、ユートは右腕を一閃……

 

「キャッ!?」

 

 すると、なのはがまるで壁に阻まれたかの如く弾かれてしまう。

 

「え? 何?」

 

 驚くなのはは、その透明な壁に手をペタペタと添えて首を傾げた。

 

「これは、障壁なのか? 魔法……じゃない。魔方陣も出なかったし、何よりも魔力を全く感じなかった」

 

 魔導師のユーノは当然、魔法を中心に考える。

 

 故にこそ、ユートの技を不可思議に感じていた。

 

「結晶障壁(クリスタル・ウォール)。ちょっとやそっとの衝撃ではその壁を壊せはしない。其処で大人しく見ていろ」

 

 ユートは防護服を着るでもなく、生身の侭で怪物に対峙している。ユーノは、余りにも危険な行為だとも思ったが、こんな障壁を張れるなら……とも思う。

 

 ジュエルシード・モンスターがユートを襲う。

 

「危ない!」

 

 なのはが叫ぶが……

 

「星屑革命(スターダスト・レヴォリーション)!」

 

 ユートが右腕を突き出しながら叫ぶと、幾条もの光がジュエルシード・モンスターを貫いていた。

 

 所詮は序盤の怪物では、相手になどならない。

 

 ジュエルシードが関わらないなら、なのはの経験値稼ぎに良かった気もする。

 

「妙なる響き闇にて沈め、赦されざる存在(モノ)を封印の輪に……ジュエルシード・シリアルⅩⅥ封印!」

 

 倒れたモンスターに闇が突き刺さり、ジュエルシードが浮かび上がってきた。

 

 ユートはそれに、小宇宙による厳重な封印を掛け、封印匣(シーリングボックス)へと仕舞う。

 

「凄い、彼は戦い慣れてるみたいだ」

 

「そ、そうなの?」

 

 余りに鮮やかな手並み、ぎこちなさを感じさせないそれは、何年も戦い続けた熟練者を思わせる。

 

「お喋りフェレット」

 

「へ? 僕?」

 

「お前がジュエルシードをどうしたいのか、どうして現地の一般人を巻き込んだのかの是非は問わないが、その子にやる気と才能が有るにせよ、ちゃんと家族に伝えるくらいはしておけ。万が一に、家族の知らない所でその子に何かしら遭ったなら、その子の家族に殺されても文句は言えんぞ」

 

「うっ……」

 

 ユーノ──管理世界の住人にとって、管理外世界では基本的に魔法は秘匿せねばならないが故に、秘密にしてきた。

 

 だが然し、殺される云々は置いておくにしてもだ、危険な行為をさせているのに家族へ告げないというのは不誠実だと考える。

 

「其処の子もだ、やる気があるのは結構な事だけど、家族には許可くらい取れ。それと戦場に向かうのに、己れの力すら把握していとは何事だ? 敵を知り、己れを知れば百戦危うからずだろう! 況してや、敵を前に目を閉じるな。シャカじゃあるまいし」

 

 戦う直前にどうすれば良いのかオロオロしていたという事実がある故、なのはも反論のしようがない。

 

 一方的に言うと、ユートはその場から直ぐに姿を消してしまう。

 

 障壁はユートの姿が見えなくなると、勝手に自壊して消えた。

 

 なのはとユーノは呆然となり、ユートが消えた先を見つめる事しか出来なかったという。

 

【封印されたJS】

ユート=10個

なのは=1個

○○○○=0個

 

残りのJS=10個

 

 

 

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 少しご都合だけど……



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