◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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魔王詰め合わせセット=魔王連盟

 収穫祭最終日、サラ=ドルトレイクが無事階層支配者となり、『ヒッポカンプの騎手』で優勝したノーネームのメンバーには、白夜叉から恩恵が与えられた。

 今回与えられた恩恵は、十六夜が望んだこともあって鷲獅子のグリー。原作では翼を失った彼を、責任として十六夜が欲した結果だったが、今回は珱嗄のおかげもあってそんなことは起こっていない。

 つまり、今回は普通に欲しかったからということだろう。吸血鬼相手に共に戦ったからこそ、成し得た絆という物だろうか。

 まぁ、グリーも若干迷ったようだが、白夜叉の後押しもあってそれを承諾。晴れてノーネームへの出奔を決めたのだった。

 

 更に、白夜叉が務めていた東の階層支配者の座に、覆海大聖である蛟劉が就いた。白夜叉が魔王討伐の為に階層支配者の座から降りたことで、その後継者として彼が選ばれたのだ。

 

 

 そして、その階層支配者である蛟劉の権限で、珱嗄となじみはノーネームから一時的に『外された』。

 

 

 理由としては、まず単純にノーネームに置いておくには危険かつ強すぎるからだ。今はまだ下層に居を構えるノーネームに、これほどの存在がいるとなると、魔王よりももっと恐ろしい存在になる。しかも、珱嗄はノーネームに所属しているだけであって、その行動はノーネームの為というよりは、単独行動に近い。好き勝手に行動している分、半分魔王みたいなものだ。

 今や、階層支配者である蛟劉であっても、珱嗄が何か仕出かした時、上手く諌められる気がしない。

 

 故に、彼は珱嗄をノーネームから一旦除籍させた。とはいっても、ノーネームが今の七桁の外門から最低でも五桁の外門まで上りつめた時、その時は珱嗄を再度ノーネームに配属しようと考えての行動だ。そしてそれは珱嗄達にもしっかり伝達されている。

 何故五桁なのかと言われれば、蛟劉もノーネームの戦力を加味して考えた結果、そのくらいまでなら普通に昇り詰めるだろうと考えているからだ。

 

 十六夜は勿論、月の兎である黒ウサギ、珱嗄によって超強化された飛鳥や、地力でパワーアップを果たした耀、もっと言えばレティシアや五桁の実力を持つ魔王であるペストもいるのだ。これで五桁に行けないなど、考えられない。

 

 では珱嗄はどうなるのか?

 

 その答えは、『魔王連盟』に対応する人材として蛟劉の傍に置かれるになった。まぁつまり、一時的にサウザンドアイズに仮所属する事になったのだ。

 

 で、現在ノーネームは今の七桁の外門から六桁の外門へと上がる為に、自分達の旗を作ることにした。だが、自分達の旗が無い以上、新しく作るしかない。

 そこで思い至ったのが、三つ以上のコミュニティで作る連盟旗を作り、それを旗代わりにすること。

 そして、その同盟を組む為に蛟劉が『階層支配者』を招集して行う会談、ノーネームとその同盟コミュニティを招待した。場所は、サラマンドラが管理する、かつて火龍誕生祭が行われた『煌炎の都』。

 

 そこで、珱嗄となじみを欠いたノーネームの面々は、『魔王連盟』―――いや、『ウロボロス連盟』と呼ばれる、強大な魔王達を率いた組織の一端に触れることになる。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 さて、ノーネームが煌炎の都へと向かっていた時、珱嗄はというと、なじみと共に蛟劉の仕事を手伝っていた。

 なんだかんだ知らないが、蛟劉が引き継いだ階層支配者の仕事というのは存外多かったようで、白夜叉を恐れて引っ込んでいた面倒な輩を抑えつける事も含めて、多くの仕事に見舞われているらしい。

 

 珱嗄が手伝うのは、面倒な輩を力で捻子伏せること。

 珱嗄はサウザンドアイズの庇護下に置かれてはいるものの、ある意味無所属の様なものなのだ。箱庭に居る限りはコミュニティに所属しなければならない故に、サウザンドアイズに名前を置いているだけであって、珱嗄がサウザンドアイズに何か貢献しなければならないという訳ではない。

 

「あー面倒臭いなぁ……あのね? お前らがそういう風に出しゃばるなら、俺がこうして出張って来てんだっての」

 

 珱嗄はそう言って、手をパンパンと二度叩き、溜め息を吐く。

 

 その背後には、正座で項垂れている何処かのコミュニティ。珱嗄の拳を一人一発落とされた結果、全員が『あ、これ白夜叉よりやべぇわ』という感想を抱き、無謀な真似はしないことに決めた。これで数十件目である。

 

「全く……なんか知らないけど上の権限とかでノーネームから外されるし、そのせいでアイドル活動も出来なくなったし、相手といってもこんなチンケな弱小コミュニティしかいないし……散々だわー、マジそういうトコ融通利かないのは何処に行っても一緒かぁ……めんどくせぇなぁ……魔王出て来いよ……ウロボロス連盟とかいう魔王詰め合わせセットがあるんだろー? それ出て来いよっての」

「珱嗄、それはなんというかこの辺滅ぶと思うんだ。いや珱嗄が負けるとは思わないんだけどさ」

「はぁ……まぁいいや。帰ろうなじみ、もうじき蛟劉の開く『階層支配者』の会談があるんだし……せめてそこでくらいはマシなの出てくれば良いけど……」

「……まぁ、ノーネームの皆も来るんだし、そこそこ面白いことになると思うよ?」

 

 だといいけど、珱嗄はあまり期待して無さそうな表情で、そう呟いた。

 

 

 

 


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