◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
「まさかおんしが私の事をここまで好いておるとは思わなんだ」
「ははは、随分と自意識過剰な態度だな真っ白チビスケ。お前を盗撮する理由は他にある」
「ふ、まぁそう言う事にしておいてやろう」
「勘違いも此処まで来るといっそ清々しいね」
さて、それからしばらくして、白夜叉は珱嗄の下へとやってきた。場所はノーネーム本拠の中庭。白夜叉はとても満足気な笑みを浮かべて仁王立ち、珱嗄はそれをスルーしつつ普段通りの立ち振る舞いを見せいる。
「でもまぁ何の理由も無く盗撮されるのは私としてもあまり面白くない。故に止めさせてもらいに来たぞ」
「へぇ、どうやって?」
「力ずくでも、じゃ」
今この時、この時系列ではまだ珱嗄はギフトが2000京丸々存在しているのだ。何せ、神様に返上する以前のグッズ作りの話だ。ちなみに今日はギフトを返上した前日だったりする。
故に、白夜叉といえど珱嗄のギフト量に対して勝利をもぎ取れるとは到底思えない。
「なるほど―――……」
珱嗄はちらりと視線を別方向へと向けた。白夜叉はその珱嗄の視線の先を見るが、そこには何も無い。そしてそれを確認して視線を珱嗄に戻すと、珱嗄の姿はそこには無く―――
「―――っ!?」
―――自分の下から自分を見上げる珱嗄が、そこまで踏み込んで来ていた。
一歩、下がる。だがもはや間に合わない。白夜叉はここで咄嗟に、迫りくる珱嗄の掌底に対して左手を掌底の通り道に入れた。
そしてそれが自分の左手に触れた瞬間、全力でその左手を引き、自分の身体の位置を珱嗄の力を利用してずらした。そして頬が抉られたかと思う位の力が白夜叉の左頬を掠めたが、なんとか直撃を避ける事が出来た。そのまま転がる様にして距離を取り、咄嗟にまだ痛みの残る頬に手をやる。
「お、恐ろしい速さじゃな………!」
血は出ていない。怪我も無い。だが、漠然と切り裂かれたと勘違いする程の激痛のみを感じる。掠っただけでこの結果。凡人ならば直撃し、痛みも感じる間もなく、ただただ何をされたかも分からない内に死んでいるだろう。
そして、これが本気では無いというのだから更に恐ろしい。白夜叉は、なにが力ずくだと自身の台詞を一瞬で後悔した。
「ん、まぁこの程度は避けられるか……うん、でも確認する場所が違うぜ」
「え?」
白夜叉は頬を咄嗟に確認して、珱嗄への恐怖に感覚が麻痺していたのだ。そして珱嗄の軽い口調に幾許か余裕が戻ったのか、身体にすーっと風が通り抜ける感覚を感じ、自分の身体を見た。
「え!?」
「さて、それじゃあ――――」
珱嗄はその手に持った自分のとは違う、随分と小さい着物をひらひらとさせながら
「―――撮影を、始めよう」
◇ ◇ ◇
「私達って本当に何をやってるのかしらね」
「撮影だろう。ほら、マスターが
「なんで私復讐の相手の痴態を撮ってるのかしら……」
さて、珱嗄が白夜叉の衣服を次々と剥ぎ取っていく中、呼び戻されたレティシアとペストはその光景を動画と写真に納めていた。
レティシアはカメラのシャッターを軽快に切って、ペストはビデオを回す。先程珱嗄がちらりと見た先にはこの二人が居たのだ。尤も、珱嗄の隠蔽ギフトのせいで白夜叉からはバレなかったが。
「さて、マスターから貰ったこの参加者残機計測機を見る所によれば、白夜叉は此処に来るまでに全員見つけて来たようだ。流石と言うか、同類……ましてにわかの変態達のやる事は簡単に分かるということか」
「寧ろあの白夜叉を子供扱いしてるマスターの方が化け物染みてない?」
「仕方ないだろう。あのマスターは私達の常識の範疇を超えている。故に、人外なんだ」
「まぁ分かるけど……はぁ、私も面倒な人の所有物になったものね……いや、面倒な人外、かしら。人を外れているのだから」
ペストとレティシアは深く長い溜め息をついた。
「でも、あんなマスターで良かったと思うのだ。今がこんなにも楽しい」
「………そんなの、分かりきった事じゃない」
レティシアとペスト、この二人は恐らく今後とも珱嗄と共に馬鹿をやっていくのだろう。そう考えるだけで二人は頬を緩ませ、ふしぎと笑みを浮かべてしまうのだった。
そしてこの後、白夜叉は珱嗄によって散々弄ばれた挙句、風呂場に投げ込まれたり水着を何時の間にか着せられたりした後、日が変わった頃、解放された。
その後、珱嗄がギフトを神様に返上した後、白夜叉のグッズは完成した。他三人と同様、水着カード、お風呂ポスター、プレミアムブロマイド、フィギュアを作成し、白夜叉がこのユニットに入った後、ボイスCD『白夜の精霊白夜叉ちゃんの! ご奉仕メイドボイスCD』が録られ、同時収録は泣き虫妹ボイスとなった。
第三部 完!!