◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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アイドルへの道


 アイドルとは、基本的に民衆の憧れであり輝きを持つ素材の事を言う。元々は偶像という意味を持つ言葉だったのだが、今では変わって若者の人気者というのが一般的な解釈だ。

 昨今、このアイドルという物は基本的に若い少女達がなる傾向にある。勿論男性アイドルというものもあるし、彼らも一部の一般女性から人気を得ている。だが基本的に現代に存在するアイドルは比較的女性が多いのだ。

 今でいうA○B48やモ○クロなんかがそれに当たる。彼女達は今や現実世界での大人気アイドルであり、そのメンバーの中からは女優やソロデビューを達成した者もいる。

 

 さて、そんな現実世界でも普及しているアイドルという存在。珱嗄はそれを二次元世界のキャラクターで作ろうとしていた。メンバーはどれをとっても美少女である四人。黒死斑の魔王を始め、純血の吸血鬼、白夜の精霊、火龍の主権者と選り取り見取りな有名人揃いである。彼女達のどれもが格ある実力者であり、その力は箱庭の中でも上から数えた方が早い方だろう。

 そしてその四人をまとめ、育成していくのはこの物語の主人公。もはや語るまでもない人外の泉ヶ仙珱嗄である。かつては2000京のスキルや言葉によるスタイルという凄まじいまでのチートを持っていたのだが、今ではそれらは神によって回収され、別のギフトを与えられている。とはいえチートには変わりないのだが。

 

 そんな珱嗄のプロデュースする四人の少女達は今日も懸命にレッスンしていた。

 

「とは言っても、白夜叉ちゃんはまだなんだけどねぇ」

「はっ……はっ……!」

「ふっ……!」

「はぁ……はぁ……!」

 

 珱嗄の目の前で色違いながらお揃いのトレーニングウェアを着て汗を流しながらダンスレッスンに励むのは、白夜の精霊白夜叉を除く、黒死斑の魔王ペスト、純血の吸血鬼レティシア、火龍の主権者サンドラの三人だ。かなり疲弊しているようだが、流石の高スペックの様で、まだ余裕がありそうだ。

 膝に手を着いて汗を拭うペストやトレーニングウェアの胸の部分を引っ張って汗を拭うレティシア、タオルを使って汗を拭うサンドラの瞳は輝いており、レッスンをかなり楽しんでいるようだった。

 

「はいはい、それじゃあ少し休憩なー。サンドラちゃんはそろそろ戻らないといけないんじゃね?」

「はぁ……はぁ……あ、はい。それでは私はそろそろ戻りますね。お疲れ様です」

「お疲れ、フロアマスター」

「お疲れ様だ、サンドラ」

「うん! 二人共頑張ってね!」

 

 サンドラはそう言って帰って行った。彼女は珱嗄の所有物という訳ではないので、こうして時間の合間合間でレッスンに参加しているのだ。最近では十六夜達が火龍誕生祭の後仲間となったラッテンフェンガーの群体精霊、飛鳥命名メルンの力で土地の命を復活させようと畑を耕したり肥料を集めたりと頑張っている中、そのアイドルとしての実力を伸ばしていた。

 

「最近では大分動けるようになってきたねぇ」

「ごく…ごく……ふぅ……そう?」

「うむ……ぷはっ……私もそう思う。マスターの思い付きから始まったけれど、これは中々楽しい物がある」

「それには同意するわね。結構楽しいじゃない、アイドルも」

 

 珱嗄は二人の言葉、特にペストの言葉にクスッと笑った。疫病の魔王であるペストが健康的なアイドル活動をしているというのは中々に滑稽だった。

 

「それにしても、白夜叉ちゃんをどうやって引き込むかねぇ……」

「白夜叉を仲間に引き込むのは難しいわよ?」

「マスターなら強引にやり遂げてしまうのだろうけど」

 

 レティシアの言葉にペストが苦笑する。珱嗄は何処吹く風で口笛を吹いた。

 

「それに、いざとなれば2000京のギフトでどうにでも出来るだろう?」

「初耳なんだけどそれ、ねぇ2000京ってなに? 私はそんな化け物相手に玩具にするとか言ったの? ねぇねぇ」

「今更何言ってるんだペスト。マスターは最初から言ってたじゃないか、人外だって」

「なんで貴方はそんなこれくらい常識でしょ? みたいな反応するの? 私がおかしいの?」

「2000京のギフトなんて序の口だぞ。なんとこのマスターは3兆歳を超えた爺なんだ」

「3兆歳? どんだけ生きてるのよ。とっととくたばりなさいよ」

「ははは、言ってくれるなダブルロリ」

「「その呼び方は止めろ!」」

 

 珱嗄の人外性を知って更にキャラクターを崩壊させるペストだが、レティシアはその上を行った。いや下に行ったのか。

 

「とはいえ、俺はもう2000京のギフトは持ってないけどな」

「え? どういう事だ?」

「いやー、俺のギフトは元々スキルって言ってね、神様がくれたもんなんだけど……回収されちゃったんだよ。今俺の持ってるギフトは一つだよ」

 

 珱嗄はギフトカードを2本の指で挟んでそう言った。ゆらゆら笑いながら見せるそのギフトカードの中心に書かれたギフトネームは二人には見えなかった。だが珱嗄はそのギフトネームを見て心底面白そうに笑う。早速使って見たいと思うが、別に実験しようとは思わなかった。

 

「でも3兆歳っていうのは本当なんでしょう?」

「本当だよ。少しばかり生き過ぎた気もするけど」

「いや生き過ぎでしょう。精々1億年辺りで死んでおけば良かったのに」

「ほぉ、生意気言うじゃないかシングルロリ。今じゃそんな爺の所有物の癖に」

「貴方に対して奴隷の様に振る舞っても貴方は面白くないんでしょう? レティシアに聞いたわ」

「良く分かってるじゃないか」

 

 どうやらレティシアとペストは名前で呼び合う位には親睦を深めている様だ。珱嗄もメンバー同士の交流が深まった事に関しては良い事だと頷いた。

 

「ふぅ、さて休憩は此処までだ。さぁ続きを始めよう。Bメロの部分とサビの部分、少し動きが合ってないから練習しようか。ほれ、ポジション付いて」

「ええ」

「分かった」

「サンドラちゃんと白夜叉ちゃんも一緒に踊る事になるんだから、ある程度考えて動く事、いいな?」

「「分かった」」

「じゃ、スタート」

 

 珱嗄の合図と共に、二人は同時に動きだした。

 

 


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