◇4 問題児たちが異世界から来るそうですよ?にお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、珱嗄達と十六夜達は無事に合流したのだが、その場所は耀を向かわせた場所では無く、コミュニティ【サラマンドラ】からの呼び出しが有った場所だった。
理由は十六夜と黒ウサギが追いかけっこの中で建造物を壊し、通行人を危険に晒した事をとがめる為。珱嗄達は何も関係していないが、白夜叉が十六夜達を連れ込んだので共に行く事になったのだ。
そして珱嗄達はサラマンドラの今代リーダーに対面したのだが、
「またロリか!」
珱嗄はそう突っ込んだ。
それもその筈、最初は白夜叉、次はレティシア、珱嗄にとっては未来形で襲来してくる魔王、そして今度はサラマンドラのリーダー、現11歳の少女サンドラと来た物だ。この世界はロリキャラが上位ポジションを取り過ぎている感が否めない。
「え、な、なんですか?」
「いや、もういいや。なんでもないから話を進めろお嬢ちゃん」
「貴様! その態度はなんだ!」
「うるせぇよ。この世界の法則的な物に触れたんだよ」
珱嗄のサンドラに対する態度に、側近らしき男が食い掛かってきたが、珱嗄は面倒そうに手を振って応じた。その態度に更に青筋を立てた男は腰の剣を抜こうとするが、その剣は珱嗄の手に握られており、腰にはもう無かった。
「な……!?」
行動を起こす前に機先を取られる。いくらなんでも先読みしすぎている。
だが、これはスタイルの基礎中の基礎。相手の気持ちを理解して言葉を届かせる力故に、相手の行動が読める。気持ちが分かるから、行動の先を取れるのだ。
「物騒な事は止めようか。今は話の途中だぜ」
「く……」
珱嗄は剣を放り投げて側近、サンドラの兄であるマンドラに返した。マンドラは剣を受け取り、少し不満気に自粛した。
その様子を見ていたサンドラは少し唖然としていた物の、咳払いを一つした後話を再開した。
「ノーネームの皆様。この度は火龍誕生祭に足を御運びいただき、ありがとうございます。それで、今回の件に関してですが、建造物の崩壊による怪我人はおらず、建造物に関しても白夜叉様が修復して下さるという事で、私はこの件に関しては不問と処すところです」
「……へぇ、そりゃ太っ腹なことで」
「まぁおんしらを連れて来たのは他でも無いこの私じゃし、報酬の前金とでも思っておけ」
サンドラの言葉に十六夜が反応したが、白夜叉がそう説明したので、黒ウサギやジン達はホッと肩の力を抜いて安堵する。
とはいえ、白夜叉は珱嗄に話した依頼の件の報酬の前払いとして不問としてくれと頼んでくれたのだ。それはつまり、この件は不問にしてやるから依頼は絶対こなせよと言外に言っている。流石は白き夜の王、その幼い外見とは違って頭は回る様だ。
「……つまんないなぁ」
十六夜達のやった事に対する話は終わったが、今は白夜叉達が部下を下がらせて珱嗄に話した依頼の件を十六夜達に話している。既に聞いた話故に聞き流すが、こういう事務的な、業務的な話は元々性に合わないのだ。
キョロキョロと周囲を見渡す珱嗄だが、特にこれといって興味の湧く様な物は無し。溜め息を吐くばかりだ。
(……さっき考えたアイドルユニット、サンドラちゃんも入れようか……どうせロリキャラ集めただけのユニットだし、色的にも白髪、金髪に加えて赤髪ってのも悪くないだろうし。でもあのシスコンお兄ちゃんが邪魔だ。立場的にも面倒そうだし………まぁその辺は追々考えておくか)
もはや珱嗄にとってアイドルユニットは確定事項の様だ。
「―――別に、どっかの誰かが魔王を倒しちまっても問題は無いんだろ?」
「なるほど……いいじゃろう。この私が許す。じゃが、珱嗄の目当ては今回の魔王らしいから、珱嗄よりも早く魔王を倒せる自信が有るのなら……まぁ頑張るがよい」
「……珱嗄、それマジかよ」
「ん? うん。なんなら今すぐ倒して来ても良いけど?」
「珱嗄さんは襲来してくる魔王が何処に居るのか分かっているのですか?」
「おいおいウサギちゃん。俺を誰だと思ってんだよ。魔王の所在、目的、襲来のタイミング、プロフィール、ギフト名、実力に至るまで全部俺は知ってる」
珱嗄はそのギフトの数々を駆使して未来を知った。故に、今回に限り珱嗄はカンニングしながら確実に正解の道を進む事が出来る。元々未来予知のギフトは珱嗄にとってあまり面白くは無いギフト故に使う事は無いのだが、ちゃんとイベントが起こるのか確認する為に使わせてもらったのだ。
それはつまり、この場にいる全員の中で、尤も状況を把握している人物と言う事になる。
「ならば何故その情報を開示しない? その情報が有れば、この件を尤も安全に対処出来る筈だ」
「おいおい、そんなの決まってるだろ?」
マンドラは珱嗄の言葉に不満を隠せないようだが、珱嗄はそんなマンドラに対してゆらりと笑って両手を広げた。
「そっちの方が、面白いからだ」
娯楽主義者。その生き様は、他人に対して良い方に進む事が殆ど無い。悪い言い方をするのなら『人類最低の遊び人』、最低故に有害である。そして最低故にぶれないのだ。