その朗報は司令官を悩ませた
なぜならスクール水着の指定は司令官の双肩にかかっているからだ
健全で機能性に優れたスクール水着を求め司令官は旅に出る
念願叶いついに私の鎮守府にも潜水艦が着任することになった
これまでは水上戦力のみであったが潜水艦が編成に加われば戦術の幅が広がる
他の鎮守府では潜水艦を資材集めや囮に使用し、心の痛むような惨状となっているそうだが、私の鎮守府でそれは断じて許さない
ただ一つ困っていることがある
潜水艦の新規着任に際して、その手続きに関する資料を読んでいるのだが装備要綱を見る限り
『水着及びセーラー服上衣を着用の事』
ふむ、年頃の少女の水着と言えばスクール水着であろう、布地も多く決して派手ではないな
私の10歳になる娘も学校で着用しているものだ、これが最善の選択であろう
『なおスカートを着用させることは禁止する』
『もしそのような行為が発覚した場合には厳罰に処する』
『但し海外艦にあってはその限りではない、また水着については当該鎮守府司令官が指定すること』
スカートがいらない?そんな馬鹿な!
早速、大本営人事課に問い合わせると女性職員から思いがけない言葉が返ってきた
「失礼ですが提督、貴方は潜水艦娘にあろうことかスカートを着用させるつもりなのですか、大したご趣味ですね、軽蔑します」
電話を一方的に切られ、私は自分の無知を恥じた
かくも自身の常識というのは世間の常識と一致するとは限らない
ましてや男である私には女性の服装に関する知識は皆無である
しかし急がねば、潜水艦娘の着任が明日に迫っている
隣に座る秘書艦に聞くのが手っ取り早いのだが、残念ながら今日の秘書艦は駆逐艦不知火である
戦艦のような眼光と、隙の無い立ち振る舞い
普段でさえ彼女との話題が見つからず苦悩しているのだ
「不知火、今日はいい天気だな。スクール水着の話をしないか?」とでも日本男児が言えるものか!
憲兵の世話にならずとも、非常に気まずい
加えて季節は雪の舞う冬である
そうであった!!!
こういう時こそインターネッツがあるではないか!
モニターを不知火の視線に入らないように移動させ、人差し指で慎重に『女性 スクール水着』と入力する
すると『大本営規制検索項目 この端末では検索結果を表示することは出来ません』
私は再び自分の無知を恥じた
このパソコンからは業務に関係のないギャンブルやわいせつな画像などを検索することは出来ないのだ
加えて大本営は各鎮守府のパソコンのログを常に監視している
つまり私は仕事中にスクール水着について検索するような輩だとマークされたに違いない
万事休すかと思われたが、不知火とて業務上の話であれば嫌な顔はしないだろう、日本男児はさておき、ええいままよ!
出来る最大限の笑顔をもって不知火に話しかける
「不知火、今日はいい天気だな。スクール水着の話をしないか?」
「は?」
笑顔が足りなかったのだろうか
普段、駆逐艦たちから顔が怖いと評判の私だが作り笑いなど造作もないはずなのだが
いや、笑いながらする話ではなかったか司令官たる者は威厳が重要である
私は表情を直し、今度は真剣に低めの声で問いかける
「聞き取れなかったか、スクール水着について聞きたいのだ」
「・・・ぬい。うっ、ぐすっ」
なぜか不知火は目の端に涙を溜め、私が可哀想な人物であるかのような眼差しで見ている
やはりこの話題はまずかったのか、いや私に非はないはずだ、業務上必要なことだからこそ勇気を出して口にしたのだ
「済まなかった不知火、言い方を変えよう。不知火はどんなスクール水着が着たいのだ?」
「失礼しまーす!青葉、遠征から帰還しましたー!って不知火さんどうして泣いているんですか?」
「司令官が・・・不知火に、ぐすっ。スクール水着を着せようと・・・するのです」
な、なんだと・・・
「青葉聞いちゃいました!」
「待て青葉!誤解だ!私はただ・・・」
私はすがるように手を伸ばしずいっと青葉に迫る
「やめて下さい司令官!青葉にもスクール水着を着させて変なプレイをさせる気ですか!」
何を言っているのだこいつは、私はつい声を荒げてしまう
「私はスクール水着について知りたいだけなのだ!!!」
「ひっ・・・、あ、青葉に乱暴する気ですか?エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」
えろどうじんとはなんだ?
そこはさておき私は妻子ある身、他の女性に手を出そうなどと考えただけで虫唾が走る
よく分からんが不知火は本気で泣いているし、青葉は戦々恐々と叫び声をあげている
ええい、こうなったら強硬手段だ
「青葉!私についてこい!」
青葉の手を取り、執務室の外へ連れ出す
「いやーーー!青葉、司令官に手籠めにされます!誰かーーー!」
◇
なんとか不幸な誤解は解け、青葉と二人でショッピングモールのスポーツ店にやってきた
ただし誤解を解く代償として青葉に一眼レフを買い与えることになってしまったが
「司令官、最初からそう言って下さいよ。青葉、貞操の危機を感じました」
先ほどとは打って変わって嬉しそうにカメラをいじる青葉
「ふん、勘違いをしたのは貴様らだろうが」
スポーツ店に入り水着売り場に向かおうとすると女性店員が声をかけてきた
「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか?」
「スクール水着だ」
「は、はい。こちらの娘さんが着用されるのでしょうか」
「いいや違う。これは娘などではない」
女性店員の顔が怪訝なものに変わると同時に目線が右上を向き、何かを想像している
一拍の間をおいて何かを理解したようだ、以心伝心とはまさにこのことだな
不知火や青葉にも是非見習ってもらいたいものだ
「でしたらこちらです。ごゆっくりどうぞ」
売り場まで案内とすると女性店員はそそくさと退散してしまった、まあいいか、青葉がいるからな
「して青葉、潜水艦たちにはどんな水着が適すると思う?」
「そうですね。まずスクール水着ですが現在まで2回の変遷がありました。旧旧スクール水着から旧スクール水着へ、旧スクール水着から現在のスクール水着へといった形です。このお店にはその3種類が揃っていまして、いいですか?旧旧スクール水着はスカート状の上半身部とブルマー状の下半身部の布が分割化しているように見えます。上下は水着の内側で縫われているので分離することは出来ません。続いて旧スクール水着ですがこれはスカート型と呼ばれまして、後ろから見ると現在のものと変わりませんが、前方から見るとスカートのように見えます。へその下あたりでスカート裾が縫われています。新型はみなさんご存知でしょうから説明は省きますが、他には競泳タイプや上下がトップスとボトムスが分離できるセパレートタイプや肌の露出が少ないスパッツタイプがあります」
「ううむ、そうか分かった」
「本当に聞いていましたか?司令官必要とあればもう一度最初からご説明しますが」
「いや結構だ。それで青葉、潜水艦たちにはどんな水着が適すると思う?」
「さっきとセリフが全く一緒じゃないですか、司令官、いいですか?スクール水着は現在まで・・・・・」
ふいに携帯電話が鳴る
「私だ」
「もしもし司令官でち?わたしはゴーヤといいます」
「ゴーヤか、明日着任予定の潜水艦娘だな。何用か」
「装甲のスクール水着は新型スクール水着がいいでち。鎮守府に行ってから明石さんに作ってもらうようお願いするでち」
「ふむ、そうか、言われてみればそうだな。ただのスクール水着は装甲たりえない・・・青葉帰るぞ。む?いないぞ。あいつどこにいった?店の外に行ったのか」
5分後
「ふふ、司令官。青葉のスクール水着姿見ちゃいます?カメラ買ってもらいましたし、これくらいはサービスしてあげても・・・あれ、司令官?いない・・・」
(スク水)
お読み頂きありがとうございます
スクール水着も体操服も時代の流れと共に変わっていきます
けれでも唯一変わらないものがあります
それは貴方のスクール水着を、体操服を愛するその心です