ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第十八話

「ギャスパー、出てきてちょうだい。無理して子猫に連れて行かせた私が悪かったわ」

ギャスパーはまた引きこもってしまった。なんでも子猫のお得意様の所に一緒に行ったらしいのだが、そこで怖い目にあい、神器を無意識に使ってしまったらしい

扉の前でリアスが謝る

「眷属の誰かと一緒に行けば、あなたの為になると思って………」

『ふぇぇええええええぇぇぇぇぇえええんっっ!』

一向に泣きやむ気配がない

「ねえ、一誠。もし、あなた、時を止められたら、どんな気分?」

「別に何ともおもわねぇな」

俺の答えを聞いて驚いているリアス

「なぜ?」

「特にこれと言った理由はないな。いくら強力だろうが、俺からしたらたいしたことねぇし」

『こんな神器なんていらない! だ、だって皆停まっちゃうんだ! 停めると皆僕を怖がる! 嫌がる! 僕だって嫌だ! もう友達を停めたくないよ……停まった大切な人の顔を見るのは……もう嫌だ……』

ギャスパーは人間の妾との間に生まれたハーフだった。吸血鬼は悪魔以上に純血かそうでないかを意識する。幼少より兄弟はむろん、実の父親にですら軽視され侮蔑されてきたと言う

更には、類稀なる吸血鬼の才能と人間との才能―――――特殊な神器を宿してしまっていたため友達もできなかったらしい

「困ったわ……。この子またを引きこもらせるなんて……『王』失格だわ……」

「――――くっだらねぇ」

「一誠?」

「なんでそんなに脅えるんだ?たかが時間を止めるだけだろう?」

本気でわからない。何故その程度の力に脅える?使いこなせなければ使いこなせるようにすればいいだけなのに何故途中であきらめる?

『あの、一誠さん』

いつの間にか泣きやんでいたギャスパーが話しかけてくる

「なんだ?」

『一誠さんは人間なのにフェニックスや堕天使の幹部を圧倒できるほど強いと聞きました。………更には十三種の『神滅具』の内の一つ『赤龍帝の籠手』を持っているとも……

恐くなかったんですか?自分が他と違って異常であることが……』

……考えた事もなかったなぁ

「俺は周りの事とか気にしないからなぁ。そんなこと、考えたことすらなかった。――――ただ、お前と違って俺は自分の力から逃げたりしなかったけどな」

『逃げない?』

「そうだ。俺は逃げたりはしなかった。もし、力を使いこなしたいのなら、逃げるな」

『逃げない……。 僕にもできるでしょうか?力を制御して他の皆と同じように普通の人生を送ることが……』

「そんなのは知らん。だが、少なくとも今のように逃げていたら絶対に無理だな」

行動を起こさなければ結果は来ない

ギィ……

鈍い音を出しながら扉が開かれる

「……僕、がんばってみます。今までのように諦めずに、今度こそ……」

「ギャスパー……」

リアスがギャスパーを抱きしめる

「これからも私に力を貸してちょうだい……」

「はい!」

そう答えるギャスパーは男らしさを感じさせた

 

 

休日

俺は神社に来ている。ミカエルから『この前のお礼も兼ねて貴方に渡したいものがあるのですよ』とか言われたのだ。

「いらっしゃい一誠君」

目の前に巫女服を着た姫島がいた

「お前、悪魔なのに神社にいていいのか?しかも、巫女服まで着て……」

「大丈夫ですわ。先代の神主が無くなり、無人となった神社(ここ)をリアスが私の為に手配してくれた物ですから」

ピトッ

俺に抱きつてくる姫島

「ところで、私のこの姿、似合いますか?」

「別に変ではないな」

ガッカリしたように肩を落とす姫島

「お久しぶりですね」

「よぉミカエル」

ミカエルから声を掛けられた

「この前はイリナとゼノヴィアのサポートをしていただき、感謝します」

「それで?俺に渡したい物ってなんだ?」

「見ればわかりますよ」

そう言って神社の中に入るミカエル。俺もその後に続く

「これです」

「……アスカロンかぁ」

そこにはデュランダルに負けずとも劣らない聖剣が鎮座されていた

「そうです。ゲオルギウス、聖ジョージが龍を退治するときに使った聖剣です」

俺は籠手を出現させ、聖剣を収納させる

「なんで俺にこんな物をくれるんだ?」

聖剣騒動のお礼としては余りにも大きすぎる

「私は今回の会談はチャンスだと思っているのですよ。我々聖書に記された存在は互いに争ってきました。しかし我々の主である神が亡くなっているのですからこれ以上の争いは不要だと私達は考えています。そこで中立の貴方に贈り物と一緒に我々は二度と争いをしないと誓うのですよ。」

「つまり、もしお前らがまた戦争が始まったら俺が全員ぶちのめせばいいわけだ」

「そういうことです。天使の中には今回の会談を快く思わないものいます。しかし、貴方のように、強大な力を持つ存在から身を守るためだと思えば納得もしてくれるでしょう」

俺ってゆうストッパーを設けることで二度と争いが起こらないようにするわけだ

「私は、まだ、やることが有るのでこれで失礼します。」

その言葉を最後に俺とミカエルは別れる

 

 

「アザゼル、明日の会談に俺も出席しなければダメかい?」

「当然だ、ヴァーリ。お前は白龍皇だからな」

「……なあ、アザゼル。もう戦争は起こらないのかな?」

「ただ戦いを求める。典型的なドラゴンに憑かれた物だな。お前は。長生きできないタイプだ」

「いいさ。長生きなんて興味が無い。ただ、俺はもっと早く生まれてきたかったよ。神がいない世界―――俺は神を倒してみたかった」

「白龍皇らしい限りだ。で、強いやつを全部倒したあと、お前はどうするんだ?」

「死ぬよ。そんなつまらない世界に興味ないんだ」

「そうか……。そういえばよ、兵藤からお前に伝言を預かってるんだ」

「赤龍帝から?なんだ?」

「『あまりにも無様だったら息をする暇も与えずに殺す』だとよ」

「―――それは、楽しみだ」

 

 

<木場視点>

「―――さて、行くわよ」

部室に集まるオカルト研究部の面々が部長の言葉にうなずく

今日は三勢力の会談の日だ。さっき外を見てきたけど学園全体を強力な結界が覆っていて会談が終わるまで誰一人として帰れないように成っている。更には悪魔、天使、堕天使の軍がそれぞれこの学園前に待機していて、今にも戦争が勃発しそうだ

『ぶ、部長!み、皆さぁぁぁぁん!』

部室に置かれている段ボールの中からギャスパーくんの声が聞こえる

「ギャスパー、今日の会談は大事な物なの。時間停止の神器を制御できない貴方は参加することはできないのよ?」

部長が優しく告げた。ギャスパ―君はまだ神器を制御できていない。もし、会談中に発動してしまっては問題なので今回は留守番だ

「ここにあるお菓子は好きなだけ食べていいわ。時間を潰せるようにゲームや本を買っておいたから好きにしていいのよ?会談が終わったらちゃんと部室にもどってくるから」

「は、はいぃぃぃっ!」

これなら大丈夫だろう

 

 

コンコン、部長が会議室の扉をノックする

「失礼します」

部長が扉を開けて中に入るとそこには……

特別に用意したであろう豪華絢爛なテーブルを囲むように各陣営のトップの方々が真剣な表情で座っている。

悪魔側は部長の兄、サーゼクス・ルシファー様。生徒会長の姉、セラフォルー・レヴィアタン様。

それと給仕係のグレイフィアさんもいた。

天使側は頭の上に金色の輪を漂わせている、十二枚の羽を持った青年ミカエル。それ真っ白な羽の女の子

堕天使側は総督のアザゼルと白龍皇のヴァーリ。

僕達とは別に来ている一誠さんは机の上に足を乗っけて本を読んでいる。

その事について誰も注意をしない。見れば部長がその事について何か言いたそうな表情をしている

「私の妹と、その眷属達だ」

サーゼクス様が他の陣営の方に紹介してくれる

「先日のコカビエル襲撃で彼女達が活躍してくれた」

「報告は受けています。コカビエル襲撃の件はありがとうございます」

ミカエルが部長へお礼を言う。

「悪かったな。俺のとこのコカビエルが迷惑かけた」

あまり悪びれた様子もなく、アザゼルが言う。そんな態度に部長は目元を引き攣らせていた。

「そこの席に座りなさい」

サーゼクス様の指示を受け、先に座っていた会長の隣に部長、朱乃さん、僕、アーシアさん、ゼノヴィア、小猫ちゃんの順で座った。

サーゼクス様は全員が席に着いたのを確認してから、口を開いた。

「全員が揃ったことで、会談の前提条件がひとつ、此処にいる者は全員最重要禁則である事項である『神の不在』を認知している」

その言葉に誰も驚かない

「では、それを承知しているとして、話を進める」

サーゼクス様のその一言で三大勢力の会談が始まった

 

 

「と言う様に我々天使は……」

「そうだな、その方が良いかもしれない。このままでは確実に三勢力とも滅びの道を……」

悪魔、天使、堕天使のトップたちが貴重な話をしている。

これから三大勢力が手を組むという事だから、慎重になっているんだろう。

「では、リアス。先日の事件について話してもらおうかな」

「はい、ルシファー様」

部長が立ち上がり先日のコカビエル戦での一部始終を各陣営に話した。

「―――以上が私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件です」

「ご苦労、座ってくれたまえ」

「ありがとう、リアスちゃん☆」

部長は席に座る。

「さてアザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

その言葉に皆が注目すると、アザゼルさんは不敵な笑みを浮かべて話す

「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが単独で行ったものだ。奴の処理は『赤龍帝』と後から来た『白い龍』がおこなった。その後、組織の軍法会議でコカビエルの刑は執行された。『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑だ。もう二度と出てこられねえよ。その辺りの説明はこの間転送した資料にすべて書いてあったろう?それで全部だ」

ミカエルさんが嘆息しながら言う

「説明としては最低の部類ですね。しかしあなた個人が我々と大きな事を構えたくないという話は知っています。それは本当なのでしょう?」

「ああ、俺は戦争になんて興味ない。コカビエルも俺のことをこきおろしていたと、そちらでも報告があったじゃないか」

サーゼクス様がアザゼルに問う

「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが、どうしてここ数十年神器の所有者をかき集めている?最初は人間たちを集めて戦力増強を図っているのかと思った。天界か我々に戦争を仕掛けるのではないかと予想していたのだが・・」

「そう、いつまで経ってもあなたは戦争を仕掛けてこなかった。『白い龍』を手に入れたと聞いた時には強い警戒心を抱いたものです」

ミカエルもサーゼクス様と同様の様子でした。 その二人の言葉にアザゼルは苦笑する

「神器研究のためさ。なんなら、一部研究資料もお前たちに送ろうか?って研究していたとしても、それで戦争なんざしかけねえよ。戦に今更興味なんてないからな。俺はいまの世界に十分満足してる。部下に『人間界の政治にまで手を出すな』と強く言い渡してるくらいだぜ?宗教にも介入するつもりはねえし、悪魔の業界にも影響を及ぼすつもりはねえよ。――――ったく、俺の信用は三すくみの中でも最低かよ」

「それはそうだ」

「そうですね」

「その通りね☆」

サーゼクス様たち息が合いすぎじゃないだろうか?少しアザゼルが可哀想に思えてきた

「ッチ! 神や先代ルシファー達よりもマシかとかと思ったが、おまえらもおまえらで面倒くさいやつらだ。コソコソと研究するのもこれ以上性に合わねぇか。あー、わかったよ。―――和平を結ぼうじゃねえか。元々そのつもりで来たんだろう?天使も悪魔も」

まさか堕天使の総督から和平を申し出るとは……

「そうですね。私も悪魔側と堕天使側に和平を持ちかける予定でした。このまま三すくみの関係を続けても、何の得も無い。天使の長である私が言うのもなんですが──戦争の元凶である神と魔王は消滅したのですから」

そして、何より他の神話体系の神に介入されない為にも、和平は必要なことだった。

「言う様になったじゃねぇか。あの堅物なミカエルさまがよ。神、神、神と、狂信していたのにな」

「……失ったものは大きくとも、悲しんだから戻ってくる訳ではありません。過去ではなく今を見据え、信者達を導いていくのが我らの使命です

神の子を見守り、先導するのが一番大事なことだと、私は思います。セラフ達の同じ意見です」

それを聞いたアザゼルは苦笑する。

「おいおい、その発言は『堕ちる』ぜ? ──と、思ったが、システムはお前が受け継いだんだったな。俺らが『堕ちた』頃とは違う。全く羨ましいぜ」

サーゼクス様も同調する様に頷く。

「我ら悪魔も同じだ。魔王がいなくとも、種を存続させる為には先へと進む必要がある。我らは戦争を望まない──次の戦争が始まれば、悪魔は滅ぶ」

「そうだ。次に戦争をすれば、三すくみは仲良く共倒れになっちまう。そして、人間界へと多大な影響を及ぼし、世界は滅ぶ。俺らはもう、戦争を起こせないのさ」

おちゃらけた雰囲気だったアザゼルが、真剣な様子で話し出す。

「神がいない世界は間違いだと思うか? 神がいない世界は衰退すると思うか? 残念ながら世界はそうじゃなかった。俺もお前達も、今こうやって元気に生きている」

 アザゼルは腕を広げながら、言った。

「──神がいなくても、世界は回るのさ」

―――確かにそうだ。僕は悪魔だから実際に神が存在していた事も知っている。けど、普通の一般人は神はおろか僕達悪魔が存在してることすら知らない

その後各勢力の戦力や勢力図の事を話しあった

「――――と、こんなところだろうか?」

サーゼクス様その一言で各勢力のお偉い方は大きく息を吐く

「さて、と。そろそろ俺達以外の世界へ影響を及ぼしそうな奴らの意見を聞こうか。無敵のドラゴン様にな。まずはヴァーリ、お前はどうしたい?」

「俺は強い奴と戦えればそれで良い」

アザゼルの問いに、ヴァーリはにべも無く答える。本当にそれ以外には望んでいないといった様子だ。

次に一誠さんへと視線が向き、問われる。

「次はお前だ、兵藤。お前はどうしたい? 何を望む?」

アザゼルは真剣な表情で一誠さんを見ている。アザゼルだけではない。サーゼクス様もミカエルも真剣な表情で一誠さんを見ている

会談が始まる前以上の緊張感が会議室に漂う

少しして一誠さんは本を閉じ

「特にこれと言ってないな。お前達が生きようが死のうが興味がないからな。それこそ俺に迷惑かけないんなら世界を滅ぼそうが俺は関与しない」

「……お前の友達が死にそうでもか?」

「そしたら守るし、お前らが全員俺と敵対するって言うんなら、叩き潰すだけだしな」

「簡単に言ってくれるな」

アザゼルは苦笑している

「お前らさ。アリを踏みつぶすのに大変だと思うか?」

一誠さんが面倒くさそうにそう言う

「大丈夫だよ☆イッセーくんはいい子なんだから☆!!」

セラフォルー様の、その発言にサーゼクス様達は苦笑していらっしゃる

その瞬間何かが僕達を襲った。―――この感じ!!まさか!!?

そう思った直後、僕の『時』は止まった


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