ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第十七話

次の日の放課後

俺はリアスに引っ張られある部屋の前まで来ている。『KEEP OUT』のテープが幾重にも張り巡らされており、幾つもの刻印が刻まれている

この中にリアスのもう一人の「僧侶」がいるらしい。その「僧侶」はあまりにも強力な能力を持っているらしくリアス達の手では余るのでこの部屋に封印されている。

ただこの前の聖剣騒動や虫けら(ライザー)とのゲームなどで高評価をサーゼクス達からもらい、今のリアス達なら封印されている「僧侶」を扱えるだろうってことになったらしい。

「ここにいるの。一日中ここに住んでいるわ。一応深夜には術が解けて旧校舎内なら自由に動き回れるのだけれど、中にいる子自身がそれを嫌がっているのよ」

ただのヒッキ―じゃねぇか

「仕事はどうしてんだ?」

リアスが部屋に施されている封印を解除しながら答える

「人間の中には直接会いたくないって人もいるわ。彼はそんな人たちとインターネットを使って契約しているの。私達の中で一番の稼ぎ頭よ」

―――――人間も人外もいろいろと末期かもしれんなぁ

「―――さて、扉を開けるわ」

扉に刻まれている刻印も消え去り、ただの扉になった。リアスが扉を開く

「イヤァァァァァァアアアアアアアアアアア!!」

開門した直後、とんでもない声量の絶叫が中から発せられる。

―――――――うるせぇ!

少しイラっときた

『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』

『な、な、何事ですかぁぁぁぁぁぁぁ!!??』

姫島が中に入る

『あらあら、封印が解けたのですよ? もうお外に出られるんです。さ、一緒に出ましょう?』

まるで怯える小さな子供に優しく語りかけるような声で姫島が促すが、声の主は頑なに拒否する。

『やですぅぅぅぅぅぅぅぅ! 外に出たくない! 人に会いたくないぃぃぃぃぃぃぃ!』

アーシアとゼノヴィアが頭に疑問符を浮かべている

俺も気になっているので中に入る

そこにはキャンキャン吠えるアーシア達と同じ駆王学園の制服を着た見ため金髪の美少女がいた

「……おい、こいつ男だよな?」

「あら、よくわかったわね」

こいつどう見ても女だが実際には男だ

「何で女子の制服を着ているんだよ……」

「女装趣味があるのですよ」

隣に来ていた姫島が答えてくれる

「なんの意味があるんだ?」

「だ、だ、だって女の子の服の方が可愛いもん!」

男の癖にもんとか言うな

「と、と、ところで、この方たちは誰ですか?」

そう言って俺とアーシア、ゼノヴィアを指さす

「あなたがここにいるうちに増えた眷属よ。『騎士』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶』のアーシア。こっちの人間は兵藤一誠。私達の仲間よ」

「はじめまして!」

「ゼノヴィアだ。よろしく」

アーシアとゼノヴィアが女装少年に挨拶する

女装少年は俺の名前を聞いて何かを考えている

「この子が私のもう一人の『僧侶』。ギャスパー・ヴラディ。一応駆王学園の一年生でもあるわ

――――そして転生する前は吸血鬼と人間のハーフだったの」

「ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

俺を指さしながら叫ぶギャスパー

(こいつが俺を指さしながら叫んでいるのってやっぱりあれだよなぁ)

叫ばれる心当たりがある

「あ、あ、あ、貴方は10年前の!!!」

「あ~、やっぱりか………」

そんな俺達の姿を見えてリアスが俺に問い詰める

「ちょっと一誠!ギャスパーに何したのよ!!」

「別にこいつに何かをした事はねぇよ(たぶん)。ただ……」

「ただ?」

「ちょっと十年前に吸血鬼どもを叩き潰した事があってな」

十年前、たまたま吸血鬼の領域に侵入してしまったのだ。俺に宿っているドライグの気配で即吸血鬼どもにバレ、襲われたので返り討ちにしたのだ

「……何をやってるんですか」

搭城からジト眼でツッコまれた

他の奴らも呆れているようだ

「一誠の出鱈目が今に始まった事ではないものね。ともかくギャスパー。外に出ましょう?あなたはもう封印されなくていいのよ?」

リアスが優しく言うが

「嫌ですぅぅぅぅぅ!!! 僕に外の世界なんて無理だぁぁぁぁぁ!!! 恐い!お外恐い!!どうせ、僕が外に出ても迷惑かけるだけだよぉぉぉぉ!!!!」

何故こんなにも嫌がるのか……

「ほら、いきましょう?ギャスパーくん」

朱乃がギャスパーの腕を引っ張ると

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

何かがこの部屋を覆った

「―――――――へぇ 面白い能力だな」

見れば俺とリアス以外が動いていない。生物だけではなく生き物もだ

「な、な、何で動けるんですかぁぁぁぁぁ!!?」

ギャスパーが後ずさる

「おかしいです。何か一瞬……」

「……何かされたのは確かだね」

アーシアとゼノヴィアはさっきの現象に驚いている。他のメンバーはため息をついている

「ごめんなさい!!怒らないで!怒らないで!ぶたないでくださぁぁぁぁぁぁいッッ!!!」

尋常じゃない脅え方をするギャスパー

「その子は興奮すると、視界にうつしたすべての物体の時間を一定の間停止することができる神器を持っているのです」

姫島がさっきの現象を説明する。時を止める能力か

―――――グレイフィアがこれと投げナイフを使えば完璧だな

何故かそんなくだらない事を考えていると

「彼は神器を制御できないため、大公及び魔王サーゼクス様の命でここに封じられていたのです」

姫島はギャスパーが封印されている理由を説明してくれた

 

 

「停止世界の邪眼?」

「そう、それがギャスパーの持つセイクリッド・ギアであり、時間を止める能力を持つのよ」

「時を止めるね。………随分反則クセぇ力だな」

「あなたが宿している赤龍帝の倍加の力も白龍皇の半減の力も反則級の能力よ?」

籠手は使った記憶があんまりないけどなぁ

「彼は類稀な才能の持ち主で、無意識のうちに神器の能力を高めてしまうみたいなの。

――――上の話では、将来『禁手』に至る可能性もあるという話よ」

時間を停止させる神器が『禁手』になる可能性がある。しかも、自分でコントロールできていない奴が

リアスは困り顔で額に手を当てながら

「そう、危うい状態なの。けど、私の評価が認められたため、今ならギャスパーを制御できるかもしれないと判断されたそうよ。私が祐斗を『禁手』に至らせたと上の人たちは評価したのでしょうね」

「………うぅ、ぼ、ぼ、僕の話なんてしてほしくないのに……」

俺のすぐそばにある段ボールの中にいるギャスパーから情けない声が出てくる

「能力だけなら朱乃に次いで二番目でしょうね。ハーフとは言え、由緒正しき吸血鬼の家柄だし、強力な神器を人間としての部分で手に入れている。吸血鬼の能力も有しているし、人間の魔法使いが扱える魔術にも秀でているわ。とてもじゃないけど、本来の『僧侶』の駒一つで済みそうにもないわね」

『変異の駒』のおかげでギャスパーを眷属にできたわけか。

「こいつを日の下に出して平気なのか?」

ゼノヴィアがリアスに質問する

「彼はデイウォーカーなのよ。だから問題ないわ。ただ、苦手ではあるでしょうけどね」

「日の光嫌いですぅぅぅぅうう!!太陽なんか消えちゃえばいいんだぁぁぁぁあああ!!!」

(太陽を消し飛ばすことはできなくもないだろうけど、その前に地球が俺の力の反動に耐えきれないだろうしなぁ)

「お願いします! 僕の事なんかほっといてくださぃぃい!!僕にはこの段ボールなかで十分です!外の空気と光は僕にとって天敵なんですぅぅぅッ!!! 箱入り息子ってことで許してくださいぁぁぁぁい!!!」

…………重傷だな、こいつ。

「こいつ血はどうしているんだ?」

「ハーフだから、そこまで血に飢えているわけではないわ。十日に一度、輸血用の血を補給すれば問題ないの。もともと血を飲むのが苦手みたいだしね」

「血、嫌いですぅぅぅぅぅぅ! 生臭いのダメェェェェェ! レバーも嫌いですぅぅぅ!」

こいつ本当に吸血鬼か?

「……へたれヴァンパイア」

「うわぁぁぁぁぁん!小猫ちゃんがいじめるぅぅぅぅぅ!」

吐き捨てるような搭城の一言に大泣きするギャスパー

リアスは行く所があるようで話を続ける。

「私はこれから朱乃と一緒に三すくみトップ会談の会場打ち合わせに行ってくるわ。それまでの間だけでも貴方達にギャスパーの面倒を見ていてもらいたいの。それと祐斗、お兄様が貴方の『禁手』のことについて詳しく話を聞かせて欲しいそうよ」

「はい、部長」

アザゼルとかメチャクチャ興味持っていそうだよなぁ木場の『禁手』に………

「ギャスパーくん。そろそろお外に慣れないといけませんわよ?」

「朱乃お姉さまあぁぁぁぁぁ!そんなこと言わないでくださいいいいいぃぃぃぃぃぃ!」

「あらあら、困ったわね。」

とか言っている間にゼノヴィアが、

「まあ、とりあえずはこいつを鍛えるとしよう。軟弱な男はだめだ。それに私は小さいころから吸血鬼と相対してきた。扱いは任せて欲しいね」

段ボールに括り付けられた紐を引っ張りながらデュランダルを肩に担ぐ

「ヒィィィィッ!せ、せ、聖剣デュランダルの使い手だなんて嫌ですぅぅぅぅ!滅せられるぅぅぅぅぅ!」

「悲鳴をあげるな、ヴァンパイア。なんなら十字架と聖水を用いて、さらにニンニクもぶつけてあげようか?」

「ガーリックはらめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

悪魔のクセに悪魔払いとかギャグか?

 

 

「ほら、走れ。デイウォーカーなら日中でも走れるはずだ」

「ひぃぃぃぃぃぃ! デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇ!」

夕方に差しかかった時間帯、旧校舎の近くでヴァンパイアが聖剣使いに追い回されていた。「ブウゥゥゥン」と音を立てて聖のオーラを放出するデュランダルはギャスパーにとって何よりも怖いのだろう。必死で逃げてる。

ゼノヴィアもどこか生き生きしているように見えるのは普段の鬱憤の為だろう

「……ギャーくん。ニンニクは体にいい」

「いやああぁぁぁん!小猫ちゃんまでえぇぇぇぇぇぇ!」

搭城もギャスパーを虐めている。普段無表情なのに今は笑顔を浮かべながらニンニクを近づけている

「おーおー、やってるやってる」

ソーナの眷属がやってくる

「匙か」

「どうも、兵藤さん。解禁された引きこもり眷属が言って聞いてちょっと見に来ました」

シトリー眷属は全員俺に対して敬語で話しかけてくる

「そこでデュランダルに滅せられそうになってるのがそうだ」

「ゼノヴィア嬢聖剣を豪快に振り回していますよ。大丈夫なんですか? あれ。 ってか、女の子か!しかも金髪!」

ギャスパーの姿を確認して嬉しそうな声を上げる匙

「あれ女装趣味の男だからな」

俺の言葉を聞いて肩を落とす

「そりゃ詐欺ですよ。そもそも女装って誰かに見られるためにするものでしょう?矛盾すぎますよ。難易度たかいなぁ」

「そもそもお前は何してたんだ?」

匙はジャージ姿で軍手をしている。右手には小さなシャベルを持っている

「会長の命令で一週間前から花壇の手入れをしています。ここ最近行事も多かったですしね。それに今度魔王さま方もここにいらっしゃる。学園を綺麗に見せるのは生徒会の『兵士』たる俺の仕事です!」

胸を張って堂々と言う匙。………ただの雑用じゃねぇかよ

見知った気配が近づいてくる

「へぇ。魔王眷属の悪魔さん方は此処で集まってお遊戯をしているわけか」

「――――何しに来たんだよ。アザゼル」

俺のその言葉を聞いてゼノヴィアが警戒する

「兵藤さん。アザゼルって……」

「こいつが堕天使の頭だよ」

匙が神器を発動して構える

匙達の警戒を見て苦笑している

「やる気はねえよ。ほら、構えを解けって下級悪魔くんたち。兵藤を除いて俺に勝てる奴がいないのは何となくでもわかるだろう?俺は弱い者いじめをする趣味はねえし ちょっと散歩がてらに聖魔剣使いを見に来ただけだ」

「木場ならいねぇぞ」

「そうなのか?聖魔剣が見れると思って楽しみにしていたのに。――――それとそこに隠れているヴァンパイア!」

アザゼルに呼ばれ脅えながらも前に出てくるギャスパー

「『停止世界の邪眼』の持ち主なんだろ? そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。神器の補助具で不足している要素を補えばいいと思うが……そういや、悪魔は神器の研究が進んでいなかったな。五感から発動する神器は、持ち主のキャパシティが足りないと自然に動きだして危険極まりない」

ブツブツとギャスパーの両眼を覗き込みながら説明しているアザゼル。

相変わらずの神器オタクだ、興味津々と言った様子でギャスパーの事を見ている。

ふとした拍子に匙の方を振り返り、声をかけてきた。

「そっちのお前は『黒い龍脈』の所有者か?」

目を付けられたと思った匙が身構える。どうしても戦闘態勢を取ってしまう辺り、アザゼルへの恐怖心があるのだろう。

「丁度良い。そのヴァンパイアの神器を練習させるなら適役だ。ヴァンパイアに接続して余分なパワーを吸い取りつつ発動させれば、暴走も少なく済むだろうさ」

「お、俺の神器ってそんな事も出来るのか? ただ単に敵のパワーを吸い取るだけじゃ」

「ったく、これだから最近の神器所有者は自分の力(ちから)を碌(ろく)に知ろうともしない。まぁ、悪魔は堕天使と比べて神器の研究が進んでねぇから仕方ねぇといえば仕方ねぇな。『黒い龍脈』は赤龍帝にこそ劣るが、伝説の五大龍王の一匹『黒邪の龍王』ヴリトラの力を宿している。そいつはどんな物体にも接続することが出来て、その力を散らせるんだよ。短時間なら持ち主側のラインを引き離して、他の者や物体に接続させる事も可能だ。成長すりゃラインの本数も次第に増える」

長ったらしい説明を終え、匙が自分の神器の新しい可能性に気付いて何かしらの決意を固めている。ソーナの力になれると言う事が嬉しいのだろうか。

「ま、神器上達の一番の近道は赤龍帝を宿した者の血を飲む事だ。ヴァンパイアなんだし、一度やってみればいい」

そのままここから立ち去って行ったアザゼルを見ながら、匙がギャスパーの修行に付き合うと言いだした。

先程言われた事を試す機会でもあるし、丁度よかったのだろう。根っからの良い奴らしい。

余分な力を吸い取った『停止世界の邪眼』は、ある程度ギャスパーでも制御できるようになっており、アザゼルの言葉が真実だと告げていた。

訓練中に俺を無意識に止められようとしていたが、一度も止めることが出来なかった。

「どう一誠?おいしい?」

「ああ、美味いぞ」

「それはよかった。材料がそんなに無かったから簡単にしか作れなかったけど」

俺達はリアスが持ってきたサンドウィッチを食べている

搭城がアザゼルの事を話すと驚いたようだ

「アザゼルは神器に関して造詣が深いと聞くわ。神器に関してアドバイス……。他者に知識を助言するほど余裕と言う事かしら」

ただのお人好しなだけだと思うけどなぁ

「リアス先輩も戻ってきたし、俺は花壇の手入れに戻りますね」

匙がサンドウィッチを幾つか頬張りながらそう言う

「匙君。わざわざ私の下僕に付き合ってくれてありがとう。お礼を言うわ」

匙は頬を赤らめる

「こっちも収穫があったんですし、むしろお礼を言いたいくらいですよ」

嬉しそうにリアスに言う匙

「それじゃ、兵藤さん。俺はこれで」

「おう」

匙は去っていった

「ギャスパーまだ大丈夫よね?匙君にいい具合に力を吸われているようだし、時間いっぱいまで私もつき合うわ」

ギャスパーの神器を制御する練習をまた始める。

 




文才が欲しいです……

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