時々ランキングにも載り有難い限りですがまだまだ未熟な部分も多いです。
今回は番外編。93話は次回になります。
いつかは書きたかったシーンです。不快にならなければ、どうぞお楽しみください。
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とある墓地。多くの墓石が並んでいる広大な敷地の1角にある墓石に、1人の女性が花と線香を供えて手を合わせていた。
「………」
「…先生」
「! あら、こんにちは」
「こんにちは」
「お久しぶりです」
「そうですねぇ」
女性を先生と呼んだのは2人の男女。1人は世界でも有名なアイドルで、もう1人も知らない人は居ないという大物だった。
「あいつが死んでから丁度4年ですか…花は先生が?」
「はい。今日は休暇を取って掃除の方を。もうお2人のお墓もしっかり綺麗にした所です」
「私達も忙しくてなかなか来れませんけど…先生が居てくれる御陰で安心出来ます」
「いえいえ…私に出来るのはこのくらいですから」
「そんな事ないですよ! 先生が居なかったら私達は今頃どうなっていたのか…」
「そういって頂けると、有難いですね」
先生と呼ばれた女性は赤茶の長髪に眼鏡を掛けた童顔で、身長は低いものの年齢に見合う以上の女性の象徴を持っていた。
対する2人の男女は、男性の方は黒髪で案外どこにでも居そうな外見、女性の方が薄い赤の髪で身長が男性と同じだった。
2人は先程の女性と同じように墓に手を合わせる。
「…そういえば最近、よく彼の夢を見るようになったんです」
「え? 先生もですか?」
「え? ということはあなた達も…?」
「はい。私達もここ最近、同じ夢を見るんです。聞いてみたら部長も同じらしいんですよ」
「そうなんですか…。もしかしたら、私の見た夢も同じかもしれませんね」
そう言って先生は夢の内容を語る。
「彼が別の世界に生まれ変わって、私達の事を忘れられずにたった1人で苦しんでる夢」
先生の言葉を聞いて男女は同時に頷く。
「…私達も同じです。私達の知らない兵器が有る世界みたいですよね」
「あいつ、アニメの機体に乗ってるんですよね…。ただ、あいつのオリジナルみたいですけど、気になったのは…」
「…彼の隣に、私に似た姿の子が居るんですよね…。不思議な事に大きさが変わるみたいですけど」
「それだけ先生の事が忘れられないんでしょう。戦争が終わってからずっと一緒に居たんですよね、あいつと先生は」
彼という人物について話が進んでいく。
「ええ。あの戦争が終結してから数年間、色々と未熟だった私に付いてきてくれた生徒でした。でも…」
「…4年前に、俺が目覚めるのと入れ替わるように新生人類の残党と戦って戦死した。俺も目覚めた後に聞いてショックでしたよ」
「部長も凄く残念にしてたよ。『一兎君と一緒に映画に出てほしかったのに』って」
男性---佐々木 一兎---は隣の女性---
「それに先生が今も運営している孤児院の子達も悲しんでいましたし…。本当に、亡くすには勿体無いやつだった」
「本当に、そうですよね…」
先生---宮田 彩香---も一兎の言葉に同意する。彼は経験から子供達を纏め慕われていた。彩香先生も彼の第2の家となったかつての『城戸高校』である『城戸孤児院』を運営する傍ら、彼に生活面や精神面で支えられていた。
彼が死んでから、その支えを失った事で酷く深い悲しみに陥ったが、彼を慕い彼女を慕う子供達や他の教師の励ましで何とか立ち直り、今も孤児達の面倒を見ている。
「それに、人生何が役に立つかわかりませんね。彼、夢の中でも子供達の事を思って孤児院を作ってたようですし」
「ああ、確かにそうでした。後で気付いたんですけど、あの場所って俺が眠っていた『サード・プロメテウス・ファイア』と同じ場所に作られてるんですよね。よく覚えていたと思いますよ」
「忘れられなかったのかもしれないけどね…。子供だけじゃなくて大人も集めてましたし、ほっとけないんでしょ」
「だな」
3人で彼の事を思い出してみる。もう既にこの世界に居ないとしても、その存在は皆の心に刻まれていた。
その証拠に孤児院には彼の銅像が建てられていたりする。
「………あいつ、夢の中だけど、モテてたなぁ」
「あー………そうでしたねぇ…」
「でも全部断ってるんだよね…。もっとモテる子も居るし」
「あっちはおかしい。断言できる。いくらなんでも鈍感過ぎるだろ」
「…それ一兎が言う?」
「…俺はちゃんと答えたぞ。それに俺は告白されても気付かないなんて事は無い」
「まぁ、そうだけどさぁ…」
「…ふふっ。夢の筈なのに夢じゃない事前提で先程から話してますね、私達。でも、皆で同じ夢を見るなんて偶然、そうそうありませんしね…」
「でもP・V・Fって精神的なものが存在するんですから、もしあいつも夢の通りにP・V・Fを持ったままなら、夢じゃないって事もありえますよ?」
「でも、私はパラベラムではありませんよ? なのに佐々木君達と同じ夢を見るなんて、おかしくないですか?」
彩香先生は首を傾げ疑問を口にする。一兎には何となく推測が出来た。
「…もしかしたら、アイツと長く一緒に居て絆を育んだからじゃないでしょうか」
「…彼との絆、ですか」
「ええ。P・V・Fは精神、心の武器です。もしあいつが先生の事を強く想っていたなら、P・V・Fが何らかの作用を起こしてあいつの夢、いや転生後の人生を覗けてもおかしくないと思います」
「一兎、根拠はあるの?」
「俺、目覚める前に、今の俺じゃない自分らしきビジョンを沢山見たんだよ。何度も色んな理由で死んでたけどな。でも、もしアレが本当に別世界とはいえ俺なら、あいつの転生後を見ても可笑しくないと思う」
「そ、そんな事があったんですか…。でも、もし夢でないとしたら………彼、どうやったら救われるんでしょうか…」
「………幸い、夢の中のアイツは両親を含めて人に恵まれてますから、何かしらの切っ掛けがあれば大丈夫だと思いますよ。時間的な余裕は無視すれば、ですけど」
「…何か、私達に出来る事は無いのでしょうか…」
彩香先生は悲しそうに顔を歪める。一兎には
「………信じましょう。あいつの回りの人間があいつを助けてくれる事を。あいつが心を開いて誰かと幸せになれることを」
「…そうですね。信じましょう。私にとっての彼のような誰かが見つかるように」
「私みたいに、誰かを一途に愛せるように」
3人でもう1度墓に手を合せる。
「…それでは、俺達はこれから先輩達のお墓に行きます。また会いましょう、先生」
「ええ、また」
「今度はお土産を持って行きますからね!」
「はい、楽しみにしています」
そう言うと一兎と志甫は彩香先生と別れ歩いていく。その後ろ姿を見送った後、彩香先生はもう1度墓に向き合って彼を想う。
「………また来ますね
彼---青木 新華---の名前が刻まれた墓石に語りかけ墓地を後にする。そして彩香先生が去ると、1人のゴスロリ服を着た少女が何の前触れも無く新華の墓の前に現れた。
「………やはり、彼はここには居ない。だからと言ってどこに行ったかも分からない。おじいさまですら分からない事が起こるなんて…」
彼女の名前はシンクロニシティ。選択戦争で審判を務めた存在で、数多くの世界を渡り歩き一兎のような『アンフォーギヴン』をスカウトしたり世界を監視する者達である。
「忽然と消えた魂。どの世界を探してみても見つからない『
そう呟いたかと思うと、再び忽然と姿が消える。新華の墓は、色鮮やかな花と線香の煙で彩られていた。
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「………ぅ」
『------』
「…先せ…サヤカか。………まだこんな時間なのに、起きてしまったな…」
夜中の4時、新華は突然目を覚ました。サヤカは新華の枕元に座っており、外は雨が降っていた。
『------』
「…表情が柔らかくなってる? 俺の顔が? …確かに、何か幸せな夢を見た気がする…。なんだろう、こう、心が満たされてる感じだ…」
そう言う新華の顔は、確かに優しく柔らかい物になっていた。新華はベットから降りてカーテンを開け窓の外を見る。雨はだんだんと収まってきており、朝には完全に止むと思われた。
「………無性に外を走り回りたくなったな。P・V・Fを展開したままで」
『------』
「わかってる。流石に今から行くだけの気合は無いさ。サヤカの言う通り風邪を引くだろうし」
カーテンを戻し部屋を見る。さっきまで自分が寝ていたベットの向こう側にあるもう1つの布団では、楯無が静かに寝ていた。
「………」
楯無の元へ歩いていき手を伸ばす。しかし楯無の顔に触れる直前でその手は止まってしまい、新華はそのまま自分のベットに戻る。
「………何してんだ俺は。こっちから拒絶しておいて他人との温もりが恋しくなるとか…」
頭を振りベットに横になる。
「さっさと寝よ。サヤカもあんまり福音との長話しは程々にな」
『------』
「ああ。おやすみ」
新華は直ぐに眠りに落ちる。サヤカはそんな新華を見て悲しさを感じられずにはいられなかった。
キャノンボール・ファストまで、あと少し。
名前はバレバレだったとしても最後まで隠したかったなぁ…。ガノタの我慢弱さのせいで、途中で名前をバラしてしまいました。
いつか書きたかったんです、パラベラム世界視点。ちゃんと閻魔様は仕事しました。シンクロニシティには見つかってません。というか見つかったら乾燥者が流れてきそうで怖いっす…。
新華が居たために一兎は原作より早く起きたという事にしてあります。まぁ原作では何時起きたかは分からないんですけどね…。
夢の話云々は自己解釈です。絆があれば世界を超える! そういうのって、いいですよね。
物理法則なんて無視出来るんですよ、愛があれば!