IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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85話
簪の4組の出し物って、原作で出てませんよね。原作でヒロインとして追加されたくせに。
だから自己解釈で考えてみました。もしどっかに4組の正式な出し物が書かれていれば教えてください。修正するんで。


警備と言う名の青春

 

 

 

---side 簪

 

 

 

 

 

簪は現在廊下を歩き回り新華を探していた。簪の4組は一夏と新華の居る1組から流れてくるお客でそこそこ賑わっていたが、それ程忙しくなかった為に早めに警備に回る事が出来た。腕には生徒会の腕章と耳には支給されたインカムを付けている。

ちなみに簪のクラスの出し物は『学生によるプログラミングで制作したゲームコーナー』。簪が中心となりクラスの全員でプログラムを組み立て、外部の人間でも簡単なゲームが出来るというものだった。

 

 

 

 

 

「新華君は…」

 

 

 

 

 

簪の警備担当は決まっていない。理由は新華や楯無とは違い裏への関わりが少ないのと、専用機持ちとはいえ赤の他人の起こすトラブルを治めるには性格的に押しが足りないというのだ。故に誰かと2人で警備に当たる事になっている。本音も同じ扱いだが、現在は1組で客を捌いていて警備に回れなかった。

しばらく歩いて簪は新華の姿を見つける。

 

 

 

 

 

「あ、居た…」

「サヤカ、問題は無いな?」

『------』

「なら良し」

「新華君…」

「ん? 簪さんか。4組はいいのか?」

「うん…。1組の方はいいの…?」

「ああ、今は一夏がヒイヒイ言ってると思う」

「え、いいの…? それに、本音は…?」

「置いてきた。まぁ時間が経てば連絡が来るだろ」

 

 

 

 

 

新華と合流し並んで歩く。2人ともルックスが良く腕に腕章を付けてるからか視線が集まる。

 

 

 

 

 

「さて、ただぶらついてるだけでも暇だな。簪さんは会長の所でも行く?」

「ん、大丈夫。一緒に居る」

「そうか。じゃぁ生徒会として各出し物の視察に行くか? 暇だし」

「え、大丈夫なの…?」

「何かあれば直ぐに向かえばいいさ。で、どうする? 行くか?」

「…うん」

「決まりだな。じゃあ近場から入ろうか」

「ん」

「ハロ兄弟も着いてこい。兄は俺の所へ、弟は簪さんの方へ」

「「リョウカイ、リョウカイ」」

「サヤカは現状維持で。あ、たまには頭じゃなく肩に乗るか? それか人形態になって一緒に歩くか」

『------』

「ん。じゃあほら、乗れ」

『------』

 

 

 

 

 

新華が頭の上のサヤカが乗れるよう手の平を挙げ、サヤカを肩に乗せる。簪はそれを見て、サヤカが可愛いと思うと同時に

 

 

 

 

 

「いいなぁ…」

「何が?」

「な、なんでもない…あ、あれ?」

「だから、どうした?」

「な、なんでもない、なんでもないっ…!」

「?」

 

 

 

 

 

可愛いサヤカの存在と、新華に甘えられる事を羨ましく思った。そして気を取り直してどこに行くか考えようとしたとしたとき、新華との距離が近いのと軽いデートと変わらない事に気付いた。だからといって今の距離を離す気は無かったし、デート気分を味わいたいと思った。サヤカやハロの存在は恋の前では些細な事らしい。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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サヤカを肩に乗せた新華は、移動して適当に教室に入っていく。

 

 

 

 

 

---一般教室

 

 

 

 

新華と簪が入ると女生徒達が反応する。

 

 

 

 

 

「あ、青木君に更識さん! 生徒会の見回り?」

「ああ。そこそこお客さんは来てるみたいだな」

「え、何2人でデート?」

「でっ!?」

「いや、少なくとも俺はそんなつもり無い。一夏とは違ってなんとなくは分かるけど、俺は彼女とか作る気は無いから」

「「「「「「えっ!?」」」」」」

「俺は色々と立場が複雑だからな。下手にそういうのを作る訳にはいかないんだ。だから、悪いけど下心は無い」

 

 

 

 

 

新華の言葉で教室の空気が凍る。簪は姉の楯無と新華が以前から仕事をしている事を知っていたから多少の覚悟はしていた。しかし、いざ新華の口から直接聞くのはキツイものである。

 

 

 

 

 

「まぁそっち方面は一夏が担当だからな。俺は自分の事で精一杯なんだよ。で、ここは何をやってるんだ? 解説頼む」

「あ、う、うん。ここは…」

 

 

 

 

 

なんとも言えない空気の中、新華は簡単に出し物を見る。簪はショックだったが、だからと言って諦める訳ではない。更識の女性は良くも悪くも諦めが悪いのだ。だがそれは姉の楯無も同じである。

 

 

 

 

 

---吹奏楽部

 

 

 

 

 

いくつかのクラスを回り、次に来たのは『吹奏楽部の楽器体験コーナー』。新華と簪は取り敢えず中に入る。ここでも女生徒達の反応があった。

 

 

 

 

 

「あ! 青木君に更識さん!」

「何なに? 2人でデート?」

「その気は無いから。で、ここは見たまんまか。異常も無さそうだし、次に行くか」

「「「「「「いやいやいや」」」」」」

「折角来たんだから何か弾いてってよ!」

「ここに有る楽器ならどれでも弾けるからさ!」

 

 

 

 

 

新華が部屋を出ようとすると吹奏楽部の女子達が一斉に止めた。生徒会に所属しているとはいえ新華は男子に変わり無い。ここで逃すものかと言わんばかりに新華を包囲する。

 

 

 

 

 

「えー…。今そんな気分じゃ無いんだが…」

「そしたら1回! 1回でいいから!」

「織斑君達からピアノが得意って聞いたから、弾いてみない? 更識さんもどれか弾く?」

「え、えっと…私は…」

「………ハァ、しょうがない。1曲だけ弾くよ。弾いたら見回りに戻るからな」

 

 

 

 

 

簪が困っているのを見かねて新華は1曲弾く事にした。どうせ時間はあると思い、わざわざ強引に包囲を突破する必要も無いと判断したからだ。ハロ兄に楽譜を出させ、いつかのレゾナンスの時のようにピアノの上に乗せる。

 

 

 

 

 

「やった! ねぇねぇ! 何を弾くの?」

「アニソンでABの『一番の宝物』。あのアニメは泣けるからな」

「あー、あれかー。でもなんでその曲? OPでもいいんじゃない?」

「なんとなく、弾きたくなった。それにピアノ単体で弾ける曲がアニソンには少ないからな」

「え、アニソンじゃなくても問題無いんだけど」

「いいんだよ。宣伝になるだろ? 生徒会は警備をすると同時に、各出し物のサポートをする役目もあるからな」

「へぇー」

 

 

 

 

 

新華はピアノの椅子に腰掛けハロを上に乗せる。サヤカは新華の肩に邪魔にならないように座りハロ弟は簪の足元に転がっている。

 

 

 

 

 

「さて、FULL Ver.で弾くぞ。1曲だけだからな。それと下手の横好きだからあまり期待はするな」

「うん。あ、サヤカちゃんを預かってようか?」

「いや、自分の機体(IS)を整備員でない他人に預ける訳ねぇだろ。別にこのままでいい。な」

『------』

「それじゃさっさと弾くぞ。なんなら皆で合唱するか?」

「えっ…」

「冗談だ」

 

 

 

 

 

新華はその言葉を最後に楽譜を見続け、鍵盤を押す。滑らかに動く指で音色が流れる。曲の感じもそうだが、新華が弾くと悲しさが増すようだった。

 

 

 

 

 

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---side シャルロット

 

 

 

 

 

シャルロットはようやく休憩時間をもらうと、メイド服姿のまま新華を探していた。同じく休憩を貰った一夏は、箒、セシリア、ラウラの順で2人きりになって出し物を見て回る事になっていた。

 

 

 

 

 

「新華はどこだろ? ハロとサヤカが一緒だから目立つと思うんだけど…」

 

 

 

 

 

シャルロットも簪と同じく警備に向かった新華と一緒に回ろうと思っていた。折角の学園祭、自由に動ける休み時間に好きな人と一緒に居ない道理は無い。それに新華がクラスから抜け出したせいで忙しさとクレームが増した事もあり文句の1つも言いたかった。

 

 

 

 

 

「もう、本音さんもどこかに行っちゃったし、休憩だから着替えてる暇無いし! 簪さんはもう新華と一緒にいるだろうし…。はぁ、完全に出遅れてるなぁ…」

 

 

 

 

 

シャルロットは新華と出会ってから更識姉妹が大きくリードしている事に焦っていた。新華と同じクラスであるものの、寮に戻れば新華は楯無と同じ部屋であり、生徒会には姉妹の両方が居る。新華と共に過ごす時間が少ない為、シャルロットが焦るのは当然と言えた。

 

 

 

 

 

「もう、どこに居るのさ新華…。…あれ、この音は…」

 

 

 

 

 

シャルロットの耳にピアノの音が聞こえてきた。何故かその曲をシャルロットは寂しいと思い、同時に何となく新華が弾いているものだと思った。

 

 

 

 

 

「…新華? これが新華だとすると、楽器を弾いてるから吹奏楽部かな? 行ってみよう」

 

 

 

 

 

シャルロットは新華が居ると思われる吹奏楽部の教室へと向かった。近付くにつれ人混みが濃くなっていく。そして教室に着き中を伺う。教室内にはハロ弟を持った簪と吹奏楽部と思われる女子達、居合わせた客と

 

 

 

 

 

「な、何あれ…」

 

 

 

 

 

背中から銀色の羽を生やしピアノを弾く新華の姿があった。いや、よく見ると羽を生やしているのは新華ではなく、新華の肩に乗っているサヤカだった。以前移動教室の最終日に羽を出したのを見たことがあったが、新華と同じくらいの大きさになれるとは思わず驚いた。

 

 

 

 

 

「サヤカ、あんな事も出来るんだ…」

 

 

 

 

 

シャルロットは今になって新華の持つ2つ名を思い出す。『蒼天使』。今の新華の姿は天使の名に相応しいものに見えた。しかしいくら装飾しても新華本人の後ろ姿は悲しそうに見えた。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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演奏は最後に差し掛かっていた。新華は歌詞を思い出し心に痛みを感じる。

 

 

 

 

 

「(2回目に死んでから、随分経ったなぁ…。もうあれから16年か)」

 

 

 

 

 

前世で新生人類の残党2人と相討ちになり転生し、一夏達と過ごした16年。

 

 

 

 

 

「(この曲の歌詞と違って、思い出せるけど)」

 

 

 

 

 

歌詞とは裏腹に、鮮明に思い出せる記憶。一兎達と出会った日の事。シューリンが居た時の事。映画撮影の時に起きた事。宮田 彩香先生と少し仲良くなった事。文化祭で戦った事。選択戦争が起きた日の事。決戦の最後に一兎を犠牲にして生き残った事。彩香先生が居場所を作ってくれた事。

 

 

 

 

 

「(…シューリンが居た頃は映画部の皆で笑えたよな…)」

 

 

 

 

 

映画部で、乾燥者に覚醒する前のシューリンと笑っている自分達の声。

 

 

 

 

 

「(…何故でもなくて、あの思い出(経験)は俺の宝だ。今の生活も悪くないが、やっぱり隠し事があるか無いかで全然違うからな)」

 

 

 

 

 

心に鈍痛が走っているが、思い出という『宝物』と一緒に痛みも持って今を生きる。今がどれだけ恵まれようとも、前世の思い出が新華にとって、掛け替えの無い宝物だった。辛かった事も、楽しかった事も、苦しかった事も、何も無かった事も。

最後に残りを弾き、席を立つ。立った時にサヤカが翼を広げていた事を知り収めさせる。

 

 

 

 

 

「…ピアノで演奏してたからって、別に羽を出さなくてもよかったのに」

『------』

「…福音を変な方向に染めるなよ?」

『------』

「ならいいんだがな…」

「新華君…お疲れさま」

「オツカレ、オツカレ」

「ああ。ハロ兄は通常モードに戻れ。もう警備に戻ろう」

「うん…」

「いいだろ?」

「え? あ、うん十分十分!」

「本当に上手かったね! 吹奏楽部に来る気は無いの?」

「俺が生徒会と知った上でスカウトしようとするその根性は評価に値するけど、どこの部活に所属する必要はないから。男手が欲しければ頑張って一夏争奪戦に勝つことだな」

 

 

 

 

 

新華と簪はハロ兄を回収して人が集まっている出入口に歩いていく。その先頭にシャルロットが居る事に新華は気付いた。というか気付かざるをえなかった。なんせ一般客の先頭に金髪メイドが居るのだ。目立つ。

 

 

 

 

 

「シャルロット、どうしたんだ? クラスの方は大丈夫なのか?」

「あ、えっと…今休憩時間で、新華を探していたら曲が聞こえて」

「聞いてたのか。しかし、着替えなかったのか?」

「…新華、自分が抜け出してから僕たちがどれだけ大変だったか知らないからそんな事言えるんだよ。新華が居ないせいで人手が足りないのに、新華目当てで来るお客さんからのクレームも増えるし、本音さんからは黒いオーラが流れ出すし」

「ああ、すまんすまん」

「それで探してみれば警備しないでピアノ弾いてるしさ! そんな時間があったら戻って少しでも手伝ってよ!」

「いや、本当に悪い。お詫びに何か奢るよ」

「…………本当に?」

「ああ。そんぐらいはしないと悪いからな。簪さんにも何か奢るよ」

「えっ、いいの…?」

「「フトッパラ、フトッパラ」」

「ああ。と言ってもあまり高い物は勘弁な。それとこの学園祭の中で頼む」

「私はいいけど…」

「…ああ、もうっ! それでいいよ! ほら、早く行こう! ちゃんと奢ってもらうからね!」

「はいはい…」

 

 

 

 

メイド姿のシャルロットが新華の腕を引っ張る。一連のやり取りを見ていたお客達は、生暖かい眼差しを贈る者と、新華に嫉妬の視線を贈る者と、シャルロットに共感して新華に非難の視線を贈る者に分かれていた。

 

 

 

 

 

「で、どこに行くんだ?」

「料理部! 日本の伝統料理を作ってるみたいだから、作れるようになってみたいしね!」

「そうか。でもそれなら簪さんに教われば…」

「それだと負けた気がするの!」

「何のだよ」

「…新華、まるで一夏みたいな事を…」

「冗談だ。分かって言ってる」

「え、えぇー…」

 

 

 

 

 

---料理部

 

 

 

 

 

シャルロットを先頭に3人+2機+1体は料理部のクラスに入る。ここでも女子は(ry

 

 

 

 

 

「あ! 青木君と1度は男子だったと噂になっていたデュノアさん!」

「更識さんにハロちゃん達! 専用機持ちが3人も! なんて豪華な…!」

「ど、どうも」

「こ、こんにちは…」

「ちはー見回りです。繁盛してますか?」

「ええ! あ、食べていって! なんならタダでもいいわよ? その代わり写真撮らせてもらうけど」

「生徒会がそんな事したら問題でしょうが。写真は諦めてるんで好きにしてくださいな。さて、シャルロットと簪さん、好きなもの選んで」

「え…? 本当に、いいの…?」

「いいのいいの。シャルロットだけじゃなく1組のメンバーには罪悪感感じてんだぜ? 簪さんも腹減ってるだろ? 纏めて奢ってやる」

「「「「「「おおおおおーーー!!!」」」」」」

「凄い甲斐性! 纏めて奢るなんて言葉初めて聞いた!」

「これが伝説の『蒼天使』の、実力…!」

「…何馬鹿な事言ってんだ。ほら、食べたいもの選んで」

 

 

 

 

 

新華の促しでシャルロットと簪の2人は料理を取ろうとする。そこへ

 

 

 

 

 

「なら、私も奢ってもらいましょうか♪」

「…会長、持ち場を離れないでください」

「「「「「「っ!?」」」」」」

「サボっている部下の様子を見に来たのよ。演奏、聞いたわよ? なかなか上手かったじゃない」

「それはどうも。というかサボリで言うなら会長だって今サボリでしょう?」

「私は虚ちゃんと五反田君のデートルートをうまい具合に変更させて飽きが来ないようにしたからOKよ♪」

「成程、それなら大丈夫…なんて言うと思いましたか。仮りにも生徒の長がそう公私混同して良いとでも思ってるんですか」

「もし公私混同したいのなら、私を倒して生徒会長になることね。その分責任もセットだけど」

「でしょうね。俺ならぜってーにヤです。というか既に責任とか負ってますけど」

「そうね。あ、これ美味しそうね」

「せ、生徒会長!? きょ、恐縮です」

「いいのよ。もっと楽に、ね?」

「は、はい」

「新華君、お会計、頼めるかしら?」

「はぁ…アンタも十分な額を持ってるでしょうに。で、いくらですか?」

「「「「「「払うんだ…」」」」」」

 

 

 

 

 

なんだかんだで楯無の分まで払い、新華は何も買わない。

 

 

 

 

 

「あれ? 新華は何も食べないの?」

「まぁ、金がな。奢ると言ったものの流石に使う量を考えないとな…。何度か戦闘中に食えなかった事もあったし大丈夫だ」

「あ、あら? 私のせい?」

「気にしなくていいです。それより、飯食うだけに来たんじゃないでしょう? 何か用事があったんじゃないんすか?」

「ええ。あと少しで時間だから」

「ああ…招集ですか」

「ええ。でもまだ時間が微妙にあるし、新華君からの点数を稼がないとね」

「…本人を目の前にして言わないでくれませんか? それで、内容は俺にすらまだ内緒なんですか?」

「だって楽しめないじゃない。主に私が」

「言うと思いました。まぁ気長に待って楽しまさせてもらいますよ」

「そうして頂戴。あ、あれもいいわね…」

「…これ以上俺の財布を軽くさせないでもらえると有難いのですが」

「流石に今度は自分で払うわよ」

「そうっすか」

 

 

 

 

 

新華(蒼天使)楯無(生徒会長)が居るという事で料理部には多くの生徒が集まり、料理部の面子は嬉しい悲鳴を上げる事になった。だが面白く思わない人間が1人。

 

 

 

 

 

「むー…なかなか新華と2人きりになれない…。こういう時にアピールするチャンスなのに…」

 

 

 

 

 

そう、ここ最近新華との絡みが少なく、姉妹と比べ大幅に遅れているヒロイン3人目のシャルロットである。メイド服でパルってる姿は可愛いが本人にとって新華に見てもらえなければ意味が無いのである。

とはいえ接する時間的には、生徒会と寮で同じ空間に居る楯無に勝る者など居ないのだが。

 

 

 

 

 

「せっかく薄目だけど(お母さん仕込みの)お化粧して気合入れたのにさ。会長や更識さんの方がいつも近いし…」

 

 

 

 

 

ブツブツと呟くシャルロットにハロ兄弟が転がってくる。

 

 

 

 

 

「ガンバレ、ガンバレ」

「オシテダメナラ、モットオセ! オシテダメナラ、モットオセ!」

「あ、ハロ…。…ありがとう。うん、そうだよね。諦めちゃだめだよね」

「「アキラメタラソコデシアイシュウリョウデスヨ!」」

「あ、あはは…。うん、お母さんからも応援してもらってるし、頑張らなきゃね」

 

 

 

 

 

シャルロットは気合を入れ直してハロ兄弟を連れて新華へと近付く。内容は何でもいいから何か話そうと、そう思いながら。

 

 

 

 

 

「ああそういえば…シャルロットはどっか部活入ってたっけ?」

「あ…そっ、それはね!」

 

 

 

 

 

と思えば、新華の方から話題を振ってきた。新華としては箒以外の所属を知らない(かなりどうでもよかった)が黒いオーラをシャルロットから感じた為に話題を振っただけであった。

だが新華は何か漠然とした嫌な予感を感じ始めていた。あの城戸高校よりも危険度は低いものの、同じような嫌な予感を。

 

 

 

 

 

「(…俺は、今世も平和に文化祭を終えられないのか…?)」

 

 

 

 

 

そんな事を考えながら、何やら頑張っているシャルロットと会話をする。新華はただ

 

 

 

 

 

「(どちらにせよ、最低でもこいつらの平和は守ろうか。犠牲になって泣くのは、もう俺だけでいい)」

「…ねぇ新華、聞いてる?」

「聞いてる聞いてる。それで…」

 

 

 

 

 

そう思って、また(P・V・F)に痛みを走らせる。だがそれを表に出す事はしない。転生してから、誰にも心配を掛けたくなかったから。この歪んでて優しい世界に住む自分の大切な者達に迷惑を掛けたくなかったから。

 

 

 

 

 

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その頃、一夏に装備の提供を申し込んだ『巻紙 礼子』と名乗った赤髪の(・・・)女性は、人気のない場所で一息付いていた。

 

 

 

 

 

「くっくっく…IS学園と言っても、警備はこんなもんかァ…ハッ、大した事ねぇなぁ」

 

 

 

 

 

その顔は一夏に見せた柔らかそうな笑みではなく、獰猛な狩人の危険な笑みだった。胸元には、胸に挟まれる形で隠されていた鍵のようなキーホルダーがあった。

 

 

 

 

 

「…もうそろそろか。さて、始めようじゃねぇか」

 

 

 

 

 

笑みが深くなる。彼女の持つ赤い髪が燃えるような熱い印象を与える。

 

 

 

 

 

「IS同士による、とんでもねぇ戦争って奴をよぉ!」

 

 

 

 

 

戦争屋。紛争地帯にて多くの戦果を上げるも基本的な思想は戦いで染まっている危険人物。

そんな人物が今、IS学園を、一夏と白式を狙っていた。

 

 

 

 

 




さて、襲撃者はオータムではありません。というかセリフと前後の文で誰か分かりますよね? あのひろしの女版です。きょぬーです。
次回、シンデレラ(笑)です。ただそう簡単に終わる訳がない。
というか新華が切れるかも。ラウラの時以上に。
あと、最後のキーホルダー云々の表現はギアスR2のカレンをイメージしました。あれエロいですよね。普通に考えて。

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