IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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84話
ようやく、ようやく学園祭までキタ━(゚∀゚)━!
今回のメインは新華というより弾×虚です。
かなり力入れました。おかげで書いてる間に砂糖吐きそうになって書き直しとか何度かありました。


学園祭開始

 

 

 

 

 

 

---学園祭当日。

ついにやってきた学園祭。一般開放はしていない筈なのに生徒達のテンションはうなぎ登りだった。普段クールな楯無や千冬も祭りの熱に当てられたのか、少し楽しんでいるようだった。箒も何かを吹っ切ったのか明るく振舞っている。

 

 

 

 

 

「うそ!? 1組であの織斑君と青木君の接待が受けられるの!?」

「しかも2人とも執事の燕尾服!」

「それだけじゃなくてゲームもあるって?」

「勝てば写真も撮ってくれるって! ツーショットよツーショット! 行くしかないわ!」

 

 

 

 

 

1年1組は『ご奉仕喫茶』。皆メイド服を着て男子2名は執事服を着ている。ただお客が来るのはそれだけではない。

 

 

 

 

 

「イラッシャイ、イラッシャイ」

「ユックリシテイッテネ、ユックリシテイッテネ」

 

 

 

 

 

ハロ兄弟が入口に置かれた宣伝用の机の上に陣取ってアピールしているのと

 

 

 

 

 

『------』

「ありがとうサヤカちゃん」

『------』ニコニコ

 

 

 

 

 

人形態で、服装(?)の見た目をメイド服に合せ厨房と接客の間に入り手伝っているので物珍しさによるものがあった。加えて

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ♪ こちらの席へどうぞ、お嬢様」

 

 

 

 

 

シャルロットやラウラといった一級品の美少女達が機嫌良さげに笑顔で接客してくれているというのもある。無論新華と一夏が無意識に格好を褒めたからいい笑顔だが。

更に

箒は特別に刀を腰に下げた武士っ娘スタイル、本音は犬垂れ耳のカチューシャを装備した獣っ娘スタイル、ラウラは以前使っていた眼帯を付けて新華の指導の元で身に付けたツンデレスタイル、セシリアはメイド服を少し変えフリルを沢山つけ裾を長くさせてドレスっぽくお嬢様スタイル(スタイルもなにも本当にお嬢様なのだが)、シャルロットはよりメイドらしさを追求し原点回帰したメイドスタイルになっている。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー。席まで案内します」

「ご注文はお決まりでしょうか? …ゲームですね? じゃんけん、神経衰弱、ダーツがありますがどれに致しますか?」

 

 

 

 

 

そしてイケメン執事(一夏)見た目ドS執事(新華)のレベルが高い事でも勿論人気が上がっていた。まぁこちらは言う事は無いだろう。

一夏はいつも通りのニコポ、新華は

 

 

 

 

 

「(いやぁ虚さんに指導してもらって正解だったな。これなら問題無く客を捌けられる)」

 

 

 

 

 

本物の従者である虚に振る舞い方の指導を頼み、今日という日に臨んでいた。つまり完全に振る舞いは執事のソレ。

そもそも新華は前世以前も接客などした事は無かった。バイトでは厨房や新聞配達など他人と真正面から関わる事など無いに等しかった。今こそ人並み以上に接する事が出来るものの、店で行う接客は初めて。しかも執事スタイルときた。何かに縋りたくなるのも当然であろう。

 

閑話休題

 

伝説とも言える『蒼天使』であるドS執事に『お嬢様』と言われエスコートされた女子達は夢見心地だった。更に一夏も居て完璧な布陣。人気が出るのは当然だろう。

 

 

 

 

 

「はーい、こちら3時間待ちでーす!」

「ええ、大丈夫です。学園祭が終わるまで開店していますから」

 

 

 

 

 

外に並んでいる人数も凄まじく、待ち時間に対するクレームも多かった。だがその分利益の回収は容易であることは想像出来る。同時に従業員の疲労も蓄積されていく。

 

 

 

 

 

「あ、あおきー。流石にヘロヘロだよ~。休みたいぃ~」

「本音さん、それは皆思ってる事だから我慢しなさい。俺だって今すぐ一夏に丸投げして警備に行きたいのに…」

「む~。あおきーが変な所で頑張るのもいけないんだよぉ~」

「まぁ、そうなんだけどさ」

 

 

 

 

 

本音と厨房寄りで会話をする新華。その間も視線は集まる。傍から見れば『先輩執事と新入りメイドの団欒』に見えるからだ。

…どちらかと言うと『駄目先輩メイドのフォローに苦労している新人執事』なのだが、まぁそこは置いておこう。

 

 

 

 

 

「モッピー達の衣装を変えたりぃ~、ハロハロを宣伝にしたりぃ~、さっちゃんを手伝わせたりぃ~」

「さっちゃんって、もしかしなくてもサヤカの事か? …本音さん、いつになく文句が多いな今日は。そんなに疲れてるのか?」

「もう無理ぃ~。ねぇあおきー、おぶって休憩所まで運んでよぉ~」

「馬鹿言わないでくれ。ほら、みんなから見られてるから仕事仕事。サヤカからデザート受け取って運びなさいな。俺も呼ばれたし」

「む~」

 

 

 

 

 

本音はダラダラと作業に戻り、新華も仕事に戻る。しかし丁度その時

 

 

 

 

 

「あ! 織斑君だ!」

「あ。あの馬鹿なにやってるんだ。すみませんお嬢様、あの馬鹿を連れ戻すので少々お待ち頂けますか?」

「え? あ、はい」

「ありがとうございます。その代わりと言ってはなんですが、あの馬鹿(一夏)とゲーム及びツーショットが撮れるよう手配しておきましょう」

「ほ、本当ですかっ!?」

「ええ。それまでしばらくお待ちを。失礼します」

「はい!」

 

 

 

 

 

さらりと素人と思えない対応をして騒がしい一夏の元へ向かう新華。しっかり一夏に面倒事を押し付けるのも忘れない。

何やら女子達が騒いでいるのを見て辟易する。一夏の後ろから襟を掴み引っ張る。

 

 

 

 

 

「おぅわぁ!?」

「おいこら馬鹿、何サボってるんだ。仕事をしろ仕事を」

「し、新華!? わ、分かったから離せ!」

「ならよし」パッ

「うおぅ!? …とと、危ないだろ」

「ならきちんと仕事に集中しろ。休んでいる暇は無いぞ」

「…新華だってさっきのほほんさんと休んでたろ」

「あれは本音さんが休んでた所に発破掛けに行っただけで休んじゃいねぇ。それよりいいのか? お前に注文が殺到しているが」

「うぇっ!? うぁ本当だ! ってあれ? あれ鈴か?」

「らしいな。ほら行ってこい。その後でいいからあのテーブルの客とお前ゲームとツーショットな」

「わかったよ」

 

 

 

 

 

一夏は急いでテーブルへと向かった。新華と一夏の2人のやり取りを見ていただけで満足気に笑顔を浮かべる者や黄色い悲鳴を上げる者も多かった。

 

 

 

 

 

「やれやれ…俺も行くか」

「あ、居た居た。兄貴ー」

「ん? お、実か」

 

 

 

 

 

新華が仕事に戻ろうとすると、店になっている教室の外から声が掛かる。新華の招待で来た青木 実だった。背に大きめのリュック、手にガンカメラ(単体)を持ち首元にはCBマークのアクセサリー(W0の待機形態)があった。

列には並ばずに新華の様子を見に来ただけらしい。

 

 

 

 

 

「おお兄貴、その服装似合ってるじゃん。だが…」

「…何も言わないでくれ…」

「で、でも人気みたいじゃね。忙しいんじゃ?」

「ああ、うん。だから案内は…いるか? 後で警備兼ねて案内出来ると思うけど」

「いや、大丈夫。パンフレットもあるから。あ、そうそう。兄貴、頼まれてた物」

 

 

 

 

 

実が背負っていたリュックを下ろし、中からある物を取り出す。

 

 

 

 

 

「ほら、ハロ3号機。新しいユニットも入ってるから細かい設定はソッチでしてくれ」

「「「「「「!?」」」」」」

「ああ、スマン。サヤカ!」

『------』

「ハロ兄弟はそのまま宣伝しててくれ。後で設定済ませたら正式にお前らの弟として稼働させるから」

「リョウカイ! リョウカイ!」

「オトウト、タノシミ! オトウト、タノシミ!」

「ああ、そうだな。さて、俺は営業に戻るから楽しんでってくれ。ジャッ」

「わかった。頑張って」

 

 

 

 

 

新華は白いハロ3号機をサヤカに持たせ控え室に戻すと、自分も戦場と化している接客に戻った。生徒達は新華の弟に好奇心の目を向け、手にもつガンカメラに興味を示した。

新華は呼ばれた席へと向かいお客を見る。が、お客の顔を見た瞬間げんなりした。

 

 

 

 

 

「警備はどうしたんスか会長ェ…」

「あら、今の私はお客様よ執事さん?」

「リアルなお嬢様は自分の家でやってください。虚さんという従者が居るでしょうが」

 

 

 

 

 

お客は警備をしている筈の楯無。腕には『生徒会』の腕章を付けている。耳にはインカムも付けていた。

 

 

 

 

 

「うふふ、試しに着た時も思ったけど似合ってるじゃない。惚れ直したわ♪」

「馬鹿言ってないで警備に戻りなさいなアンタは。こんな所で油売ってていいんですか?」

「今は大丈夫よ。『織斑君争奪戦』のステージも整ったし、先生方も見回りしているし問題無いわ。それよりもさっきの、実君…だったかしら?」

「ええ。ちなみに実は無論ゼロを持ってきてます。でないとまだ生活に支障が出るんで」

「…もしそれがバレれば大騒ぎね。で、サヤカちゃんが持っている白いハロは?」

「AGEシステムで新規に開発していたものです。試合用に開発した新ユニットも搭載してるんで、後日披露しますよ」

「そう」

「で、注文は?」

「…執事のはずなのに態度が悪いわね」

「今の俺は『ドS執事』ですからお嬢様。使える物は何でも使いますよ。今までも、これからも」

「…そう。なら『執事とご奉仕セット』をお願いね。勿論相手は新華君で♪」

「畏まりました。では、ゆっくりしていってね!」

「「「「「「ぶふっ!?」」」」」」

 

 

 

 

 

新華の最後の一言で一定範囲内に居た全員が吹いた。新華が言うとは思えなかったのと、服装と全く合ってないセリフだったから。

 

 

 

 

 

「ああ、俺は警備以外に用事があるから早めに上がるわ。一夏、後は任せた」

「えっ!?」

 

 

 

 

 

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しばらくして一夏達が未だに地獄を見ている中、新華は執事服から通常の制服に着替え、『生徒会』の腕章を付ける。サヤカを頭の上に乗せ控え室を出る。

 

 

 

 

 

「あ、ほ、本当に逃げる気だ…!」

「失礼な。お前と違って俺には正式な仕事があるんだよ馬鹿一夏。生徒会って言う正式な仕事がな。いいからお前は働け。ほらまたお前にオーダー来たぞ」

「うっ、く、ちくしょう」

「アキラメロン。後で連絡、ちゃんとしろよ? ハロ兄弟、行くぞ」

「リョウカイ、リョウカイ」

「ユクゾッ、ユクゾッ」

「「ユクユクユクゾッ、ユクユクユクゾッ」」

「ハロ兄弟、自重しなさい」

 

 

 

 

 

ハロ兄弟が宣伝机の上から飛び降り新華の足元に転がる。新華は恨む目で見てくる1年1組を無視して教室を後にする。

 

 

 

 

 

「さて、会長と虚さんに連絡するか」

 

 

 

 

 

携帯にIS学園側から至急された、楯無のしていた物と同型のインカムを接続し、まずは楯無をコールする。実に届けさせたハロ3号機は現在クアンタ(サヤカ)に格納させている。調整をしていないので使用するのは学園祭後になるだろう。

 

 

 

 

 

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---side 五反田兄妹

 

 

 

 

 

IS学園の正面ゲート前。2人は予定よりも早く来ていた。

 

 

 

 

 

「くっくっく…遂に、遂に来たぞー! J○J○ー!」

「お兄なに馬鹿な事言ってるの? 死ぬの?」バキッ

「ゴフッ」ベコッ

 

 

 

 

 

蘭がうるさい弾の背中を、腰の入った回し蹴りで飛ばし、弾が顔面から地面にめりこむ。とある死後のビーツ世界のようにスローになって音楽が中途半端に流れた気がしたが気にしない。

 

 

 

 

 

「ぐおおおお………お、俺の妹がこんな(ry」

「ほら早く行くよお兄」

「ネタは最後まで言わせろよ!?」

「はいはい、いいから早く一夏さんの教室に行かないと」

「無視か!? 俺は兄貴だぞ!?」

「で?」

「なん…だと…? お、お前には兄に対する労りというものは無いのでせうか!?」

「はぁ? あると思ってんの?」

「デッスヨネー」

 

 

 

 

 

簡単に漫才をして周りから人が離れていく2人。一夏が招待したのは人数的な問題で弾のみだったが、蘭がそわそわする弾を見て勘づき見学という名目で付いてきたのである。本来なら入れないのだが、蘭が女だというのと責任は弾が持つことという条件に、加えて一夏と新華の知り合いということで認められた。

 

 

 

 

 

「しかし蘭もよく来る気になったな。一夏が居るとはいえ新華に言われた事もあって来ずらいだろうに」

「うん。でも、IS学園に対して興味はあるの。確かに新華さんの言う通り危険が多いISだけど使う人次第だと思うし、それに新華さんの言ったように考える時間もあるから」

「そうだな」

「それに」

「ん?」

「今ライバルは鈴さん以外にどれくらい居るのか気になるし…」

「…お前な、そのためのカメラか」

「う、うるさいわね! それにこれは新華さんの写真が欲しいって子から借りた物だし!」

「そ、そうか」

 

 

 

 

 

 

新華が蘭に言った言葉はきちんと届いていた。もしIS学園に入学しても一夏や箒以上に安心して見ていられると言えるくらいに。ちなみに新華の写真が欲しい女子とは、一夏が夏祭りの時に会った娘である。

2人でゲート前で騒いでいたせいで誰かを呼ばれたらしく、1人の女子生徒が手にファイルを持ち近付いてくる。そしてその生徒は2人を確認すると少々顔を赤くしながらため息を付いた。

 

 

 

 

 

「…あなた達でしたか、騒がしい2人組は」

「あっ、布仏さん…!?」

「あ、布仏さん。お久しぶりです。私は一夏さんに用があるのでお兄をよろしくお願いしますね」

「ら、蘭!?」

「あ、ちゃんと見学ってのとお兄の付き添いって事で許可は取ってますから! では!」

「あっ」

 

 

 

 

 

蘭は虚を確認した直後、脳内で最善の選択を導き出し弾を置いて校舎へと走った。そしてパンフレットを配っている生徒から地図を受け取り目を通す。一夏の居る筈の1年1組を見つけルートを確認、カメラを持つ手に力を込め観察に入る。

 

 

 

 

 

「さて、一夏さんの所の出し物は…ご、『ご奉仕喫茶』ァ!? これは…マズイわね。絶対に混んでる…ってか新華さんが執事服なのはいいとして、素直に奉仕する光景が全く思い浮かばないんだけど…」

 

 

 

 

 

迅速に、そして目標に向けて人混みの中へと突入する。生徒会長は伊達じゃないとか愛は偉大とかそういった物が蘭を動かすのだろうか?

 

 

 

 

 

「えっと…」

「…ハァ。取り敢えずここに居るのもなんですし、移動しませんか?」

「は、はいっ!」

「…ふふっ」

「な、なんでしょうか」

「いえ、なんでもありませんよ。では行きましょうか」

「わ、わかりました」

 

 

 

 

 

虚の前だからだろうか、弾は緊張してガチガチになっていた。メールで今までやり取りを何度もしていたが、やはり直接会うのは2度目なので緊張してしまう弾だった。

そしてそんな弾を見て自分の緊張が解け、自分が緊張していた事に虚は気付いた。自分も弾も緊張していたという事実に、何だかおかしくなって少し笑ってしまうくらいに虚は自然体になっていた。

 

 

 

 

 

「あ、あのっ布仏さん!」

「なんでしょう?」

「も、もし何か欲しい物があれば言ってください! 今日の為に色々と頑張って貯めたんで!」

「…………」キョトン

 

 

 

 

 

弾のセリフで虚は(きょ)を突かれ足を止め弾を見る。虚にとって今まで言われた事の無い類の言葉だったからだ。

虚は、両親が心配するくらい男気が無い。理由としては

・楯無の従者で、完全に楯無の存在に食われて目立たない

・目立たないのを利用してサポートに回って更に目立たない

・本音が対照的で、一緒に居ると逆に堅いイメージが強くなる

・どう見てもキャリアウーマンです。本当にありが(ry

・IS学園には男が新華(楯無、簪、シャルロット、その他諸々のターゲット)、一夏(鈍感)、轡木 十蔵(既婚者)くらいしか居ないし無茶言うな

などである。

それに加え虚の実家は更識家に使える家。それなりに所持金もある。故に近くに来る男性は皆無で買い物も自分で何とか出来た。

しかし弾はそんな事は知らない。弾からしてみれば『見た瞬間に美人ではなく可愛いと思った人。メールも楽しいし文句無し』という砂糖生産出来る印象だ。そして初めての『気になる異性』。見栄を張りたいのは男として当然の帰結だろう。

そして弾は小遣いを貯めていた。何故か。それは新華が友人への応援として学園祭の情報を弾に与えていたからだ。

新華としては、友人などの近い人が真っ当な幸せを手に入れて欲しかっただけのお節介。だが弾にとっては十分だった。

 

 

 

 

 

「………」

「あ、あのー…?」

「………」

「…俺、変な事言いましたか…?」

「…あっ、い、いえ。何でもありません。そんな事言われたのは初めてですから」

「そうなんですか?」

「ええ。自分で言うのもなんですが、私は目立たないし堅いイメージがあるので」

 

 

 

 

 

虚は自分に男気が無い事を自覚している。だが自分は更識の当主の従者であり、そういった事は後回しでいいだろうと思っていた。

 

 

 

 

 

「そんな! 布仏さんは堅いって言うより可愛いですよ。自信持っていいですよ」

「か、可愛い、ですか?」

「え、ええ(やっべ、勢いで言っちまったけど、すっげー恥ずい! 気持ち悪いとか思われてねぇかな…?)」

「そ、そうですか…」///

 

 

 

 

 

可愛いと言われた事で虚は頭がフリーズ仕掛けていた。頬も少し赤くし普段は見られない状態だった。

しかし突然虚の耳に付けられたインカムに通信が入る。

 

 

 

 

 

『虚さん、青木です。聞こえますか?』

「!? は、はい。聞こえます」

「? どうしたんですか?」

「いえ、少し待ってくださいね」

『…今クラスを抜け出して会長に連絡を入れました。巡回警備を始めるのでローテーションの変更をお願いします』

「わかりました。先生方にも連絡を入れておきます」

『お願いします。あ、それと余談なんですが…』

「? なんでしょう」

『弾のやつ、今日を楽しみにして頑張ってたみたいなので、見栄張らせてやってください。虚さんも楽しめると思いますよ?』

「へっ?」

『あ、虚さんでもそんな声出すんですね。傍に居る(・・・・)弾に声の感想を聞いてみたらどうですか?』

「っ!?」バッ

 

 

 

 

 

虚が新華のセリフを聞いて校舎の窓の1つに視線を向ける。そこにはインカムが付いていると思われる耳を抑えて弾と虚の2人を見る新華の姿があった。

 

 

 

 

 

「…趣味が悪い。近くに居るなら直接来て言えばいいものを」

『馬に蹴らたくないんでヤです。俺は巡回始めるんでローテーションの変更をお願いします』

「わかりました。先生方にも連絡しておきます」

『お願いします。あ、弾に『楽しんでって』と伝えておいてください。では』

「はい。…お待たせしました」

「えっと、今のは?」

 

 

 

 

 

虚は新華との通信を終え弾に向き直す。弾は虚の行動が読めず通信相手を聞く。

 

 

 

 

 

「青木君です。クラスを抜け出して見回りをすると連絡がありました。『楽しんでって』と伝えておいてくださいとも」

「新華、抜け出したのか…って見回り? 先生とかの仕事じゃないんですか?」

「ここIS学園では生徒会も見回りをするんです」

「へぇ…ん? 生徒会って事は、新華は…」

「ええ。最近生徒会に入ったんですよ。『会長補佐』という肩書きですね」

「おおう…とうとう新華も生徒会入りか。中学じゃ頑なに断っていたのに」

「…そうなんですか。意外とすんなり入りましたけど」

「きっとそれなりの理由があったんですね。でなきゃ『めんどくさい』とか言って絶対に入らないでしょうから」

「ですね」

「ええ」

 

 

 

 

 

そこでお互いに顔を見合わせて笑う。弾の緊張もいい感じで解れた。ついでに虚の笑みにドキッときてた。

 

 

 

 

 

「さて、ローテーションの変更は…あ」

「? どうしたんですか?」

「い、いえ」

 

 

 

 

 

手に持っていたファイルを捲りローテーションを確認した虚は、変更した後の自分の役目が『校内警備』なのに気付いた。楯無と新華の仕業である。ゲートには先生の1人がつく予定になっていた。

 

 

 

 

 

「え、えっとですね…」

「?」

「青木君が警備に加入したので、私の警備担当がこの『ゲート前』から『校内警備』に変わったので、その…」

「は、はい」

「…一緒に行きませんか? 案内も出来ると思うので丁度いいかと思いますし」

「……えっ!? い、いいんですか!?」

「迷惑でしたか?」

「とんでもない! むしろ願ったり叶ったりですよ! よろしくお願いします」

「…ええ。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

お互いににこやかになって握手する。いやぁ青春ですね…

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

----

-------------

--------------------------

 

 

 

 

 

「いやぁ青春ですね…」

『そうねぇ。事前調査で彼には問題無いと判明しているし、安心して見ていられるわ』

「最終的には弾が婿養子になるって感じですかね?」

『虚ちゃんは長女だし、本音ちゃんに後を任せるには、ねぇ?』

「あの調子で後を任せられるくらいに能力があれば『詐欺だっ!』って叫びたくなりますよ。でも裏社会から見れば恐いタイプなのは間違いないですけど」

『まるで轡木さんみたいなタイプね。想像するだけでゾッとするわ』

「ですね。まぁ無いですね」

『ええ、無いわ』

 

 

 

 

 

虚が弾と話していた頃、新華は楯無と通信していた。だが新華はIS学園の男子なので視線が集中する。腕に『生徒会』の腕章を付けているのも更に視線を集める結果になっていた。

 

 

 

 

 

「んじゃ俺も警備を開始します。と言っても腕章付けてぶらつくだけでしょうが」

『新華君なら大抵のトラブルは何とかなるでしょう? 適材適所よ。そのおかげで虚ちゃんのデートのセットも出来たのだしいいじゃない』

「それ以前にクラスを抜け出せた時点で有難いんですけどね。まぁ適当に過ごしますよ。何かあれば直ぐに連絡してください」

『わかったわ。なんなら、私と一緒に回ってデートでもする?』

「ご遠慮しておきます。会長も自分の所の警備に集中してください。アンタは会長なんですから仕事も俺以上にあるでしょうに」

『あら、じゃあその会長の『補佐』として手伝ってもらいましょうか?』

「これ以上仕事を増やさないでください。というかいい加減に切りますよ。仕事を受けたならきちんとやらなきゃならないですし」

『真面目ねぇ』

「真面目なくらいが丁度いいんです。んじゃ切りますね。どうせ『一夏争奪戦』でまた通信するんですから、話があればその時に」

『そうね。それじゃあね』

「はい」

 

 

 

 

 

新華が通信を切ると横からシャッターの音がする。見ると蘭がカメラを構えていた。

 

 

 

 

 

「あれ、蘭ちゃん。来てたのか」

「ラン、オヒサシブリ、オヒサシブリ」

「ヨウコソ、ヨウコソ」

『------』

「はい、新華さん、ハロちゃん、サヤカちゃん。いや一夏さんのクラスに行ったんですが混んでて…」

「ああ、もう行ったのか。何時間待ちだった?」

「えっと、私が行った時は4時間待ちでした」

「なん…だと…? 俺が居た時より1時間伸びてる…!?」

「…そりゃ一夏さんの居る出し物ですからね。外から見るだけで我慢しました」

「おお…! こんな所に気遣いの出来る娘が…! 俺は感動した…!」

「…新華さん、お兄と似た反応ですよね」

「いや、一夏のハーレムで気遣い出来る娘って貴重だからさ。シャルロットも気遣い出来るけど一夏から離れ気味だし…」

「へ、へぇ…」

「ところで、どうやって入ってこれたんだ? 招待券は1人1枚だし招待出来るのも1人につき1人だし」

「あ、見学とお兄の付き添いって事にしてあります」

「成程」

 

 

 

 

 

虚と通信していた所から未だに1歩も動いていない新華。これでは警備の意味が無くなってしまう。

 

 

 

 

 

「あ、蘭ちゃん。俺警備の仕事があるから歩かね?」

「へ? 警備? って新華さんその腕章…」

「ああ。最近ちょっとした事情で生徒会に入ったんだ。まぁお陰様でクラスから抜け出せたんだけどな」

「サボリ? サボリ?」

「ちげぇよ」

「ニゲタ、ニゲタ」

「否定出来ん」

「あ、あはは…」

「それで、そのカメラは?」

 

 

 

 

 

新華は歩いて蘭に聞く。蘭は新華が食いついた事で友人の恋をサポートをダメ元で始める。

 

 

 

 

 

「実は私の生徒会の娘の1人に、新華さんに会いたがっているのが居まして。その子から預かっているんですよ」

「俺に?」

「はい。何でも不良に絡まれて裏路地に連れ込まれたのを助けてもらったって言ってました。覚えてません?」

「んー…なんとなくは覚えてるかな?」

「そうですか! それでですね、1度でいいのでその子と会ってくれませんか?」

「あー…それなら忙しくない土日のどっかに時間を空けるか。会うだけでいいのか?」

「ええ。本人はそう言ってます。一夏さんと1度会った事があるんでどんな子かは一夏さんに聞くといいですよ」

「あー、一夏か。分かった。検討しておく」

「ありがとうございます! いやーこれで肩の荷が降りましたよ」

「そうか。そういえば何でIS学園に来ようと思ったんだ? 前に俺が言った事もあるだろうに」

「それはですね…」

 

 

 

 

 

蘭と会話しながら人混みを歩く。蘭は新華の位置に一夏が居れば最高だと思いながら、新華は話をしながらも視線を動かして警備をきちんとしていた。ハロ兄弟は上手く人混みの中、足を避けながら遅れて新華の後を追う。サヤカは新華の頭の上に乗ったままキョロキョロと周りを観察していた。

しばらく歩き、蘭はもう1度一夏の様子を見に行くと言って別れ、新華はそのまま単独で警備を始めた。

 

 

 

 

 

「さて、『一夏争奪戦』まで適当にぶらつくか。さーて、仕事を増やさないでくださいよ皆さん」

 

 

 

 

 




ガノタはポケモンルビー&サファイア時代の人間です。そこで待ち時間に関するトラウマを1つ。
サファイアにはまって親と東京のポケモンセンターに行った時、列に『待ち時間3時間』のプラカード。しょうがないからと近くの東急で30分程買い物をして再び列に行くと『待ち時間4時間』。
恐いですねぇ…炎天下でしたよ、ええ。

あと全く関係ない事を1つ。最近アニメの更識姉妹の画像を見るだけで 姉 妹 に 殺意が湧いてしまうガノタはもう末期でしょうか…
なんだかガノタの中で2次小説の主人公達とのカップリングでないと許せなくなってきてます。

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