IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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83話。
82話をリメイクしました。まだ読んでない人は読んでください。2013/11/29
今回は短めです。


経験の差

 

 

---早朝6:00、訓練場。

まだ暑い気温の中、いつも通り訓練場には銃声が響いていた。

 

 

 

 

 

「………」ダァン、ダァン、ダァン

「………」pipipipi

「………」ダァン、ダァン、ダァン

 

 

 

 

 

新華が手に持つ拳銃から銃弾が放たれターゲットの頭、心臓部に次々に命中する。新華の視線もターゲットを射抜くように鋭かった。

 

 

 

 

 

「………」ダァン、ダァン…

「…メイチュウリツ98.02%、メイチュウリツ98.02%」pipipipi

「…これが限界か。ん」ガチャン

「オツカレサマ、オツカレサマ」テーン

『------』

 

 

 

 

 

銃弾を全て撃ち終え分解をし始める新華。ハロ兄は台の上でデータを記録し、ハロ弟は飛び跳ねてハロ兄の新華を挟んだ反対側に乗り、サヤカは新華の頭に乗る。福音事件以降での基本的な風景だった。

 

 

 

 

 

「………」カチャ、カチャ、カチャ

『------』

「ん、そうだな。組み立た後に見ておくか」カチャ

 

 

 

 

 

分解し終え、再び組み立てる。動作確認し弾を込めて元あった棚に戻すと、スペースを確認してP・V・Fエゴ・アームズ『ストーリーズ・イレギュラー』を展開する。

ハロにもスキャンさせて見るが、期待した結果は得られなかった。

 

 

 

 

 

「シュウフクカクニンデキズ、シュウフクカクニンデキズ」

「ハソンノシンコウカクニン、ハソンノシンコウカクニン」

「治るどころか傷が進行してるのか…。今までなら傷が治る以前に傷付かなかったのにな…」

『------』

「そうだな…やっぱり」

「やっぱり、どうしたのですか?」

「!」

 

 

 

 

 

気付かない内に裏理事長、轡木 十蔵が居た。頭の上に居たサヤカは驚いて待機状態に戻る。

 

 

 

 

 

「おやおや…いけませんね。部分とはいえISを展開するなど…」

「すいません。すぐ戻しますね」

「あぁいえ、そのままでいいですよ、聞きたい事が出来たので」

「はぁ、そうですか。時間掛かります?」

「ええ、おそらく」

「まぁ今は時間あるので大丈夫です。で、何ですか?」

「では聞きます。それは何ですか?」

 

 

 

 

 

轡木は新華のP・V・Fを指差し問いかける。新華は思わず息を飲みそうになるが耐えてポーカーフェイスを貫く。

 

 

 

 

 

「何ってクアンタの武装『P・V・F』ですよ。ご存知の筈です」

「ええ、提出された情報通りなら。ですが私にはそう思えないんですよ」

「…自分が提出した資料が間違っていると?」

「どうでしょうねぇ…。確かにあなたのIS『Evolveクアンタ』の武装としてそれは登録されています。ですが私にはそれがカモフラージュに思えて仕方無いのですよ」

「そんな馬鹿な。カモフラージュって、何をカモフラージュするんですか」

「さぁ…私は青木君とISの事を全て知っている訳ではないので、予測しか出来ません。ですがISの装備と言うには違和感が多いのです」

「違和感?」

 

 

 

 

 

新華はポーカーフェイスで表情をなるべく違和感無く変えながら、内心焦りつつ会話をしていく。対する轡木は人の良さそうな笑みを浮かべたまま表情を変えない。

 

 

 

 

 

「ええ。ISの武装にしては展開が遅いのですよ。0.07秒程ですが、それがいつまで経っても改善される事が無いのに気付いたんですよ」

「改善されない、ですか」

「ええ。青木君、ISの搭乗時間はどれくらいで?」

「………覚えてないです。何せ小学生の頃から乗っているので」

「でしょう? それだけ乗っていれば武装の展開が早くなる筈です。現に青木君は他の武装の展開は0.0002秒間隔で未だに早くなっているのですから」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。自分では自覚出来ないでしょう? なのにそのP・V・Fに限っては展開までの時間が0.07秒のまま。もう既にこの時点でおかしいのですよ」

「…でも、それはP・V・Fが特殊だからではないのですか? セカンドシフトしても唯一変わらなかった武装ですし」

「それなら、尚更展開時間が短縮されてもおかしくないでしょう? 変わってないということはイメージが定着したままで展開出来るのですから、展開時間が短縮されても可笑しくない、いや短縮されていないとおかしいのです」

「………」

「それだけではありません。ISには多少ながら自己修復機能が備わっています。ですがそのP・V・Fだけは、見た感じ修復されていませんねぇ。先程も青木君は『傷が治るどころか進行している』と仰ってたみたいですし」

「…聞いていたんですか」

「ええ」

 

 

 

 

 

新華は内心、冷や汗ダラダラだった。P・V・Fの展開方法はISのように取り出す(・・・・)のではなく心から引き出す(・・・・)のでやり方が違う。そして0.7秒というのは新華がP・V・Fを展開出来る最速のタイムだった。それこそ最初は一夏や一兎と同じく何秒も掛かっていた。

そして先程のサヤカ、ハロ兄弟との会話を聞かれていると知った事で焦りは増加した。揚げ足を取られればクアンタの役割を看破されかねない。

 

 

 

 

 

「普通はISの武装が展開もしていないのに傷付くなどありえない事です。例えあなたのISが第1世代のベースになった『白騎士』と肩を並べて戦った時代のものだとしても説明がつきません」

「………」

「それにあなたはIS学園に対してこう言ってます。『自分でもこのISの事は分からない事が多過ぎる。出来ればそちらで調べてくれると有難い』と」

「…ええ」

「では、何故『サヤカ』と呼ばれる自我が発生した筈なのに情報を公開させない(・・・・)のですか? 見たところ彼女は幼く純粋な子供でした。しかし彼女は頑なに情報を公開しようとはしない。あなたが言えば公開する筈なのにも関わらず、です」

「………」

「加えて、あなたは普段ISの性能に振り回されず、なおかつ性能を引き出している。この間のクラス対抗戦で見せた光もワンオフアビリティーの応用、本来の使い方と聞きました。おかしいですね、あなたは『Evolveクアンタ』には知らない言が多いと言った筈なのに、どうして『本来の使い方』などと言えるのですか?」

「………」

「…ふふふ、全てを隠し通せるとは思わないことです。隠す事が多ければ多い程、ほころびというのは増えるのですから」

「………」

 

 

 

 

 

的確に指摘を受け沈黙する新華。サヤカは待機状態のままだったが、2人の駆け引きに出された事もあり静かに待機していた。

 

 

 

 

 

「…ふふふ。今日はこのくらいにしておきましょう。青木君にも予定があるでしょうし」

「………」

「では………ああ、1つよろしいでしょうか」

「…なんですか」

 

 

 

 

 

轡木が射撃レーンから出ようとしたが、扉の前で振り返る。

 

 

 

 

 

「平常心でいようとするほど硬い笑みを深め、殺気を放つ癖は直した方がいいですよ?」

「!?」

「ふふふ…では」

 

 

 

 

 

今度こそ射撃レーンから出ていく轡木。新華はしばらくそのままの体勢だったが

 

 

 

 

 

「………はあああぁぁぁー…」グッタリ

 

 

 

 

 

P・V・Fを解除して大きなため息を付き脱力する。

 

 

 

 

 

「くっそ、やられた…。清々しいくらいに格が違ぇ…」

「オツカレ、オツカレ」

「ハラグロ、ハラグロ」

「しかも最後の一言から察するに、完全に感づかれてる…。まさか戦闘データから気付かれるとは思わなんだ…」

『------』

「ああ、サヤカは気にしなくていいからな? これは完全に俺のミス。しっかし年の功は怖いねぇ…。ああ緊張したー」

 

 

 

 

 

新華はその場で伸びをし、緊張で堅くなっていた体を解す。

 

 

 

 

 

「んー…。………あー、嫌な汗かいた。早く部屋に戻ってシャワー浴びなきゃな。あ、あと指摘された癖も直さなきゃ…ハァ」

 

 

 

 

 

ため息を付き憂鬱になって射撃レーンを出る。普段より多くかいた汗を早く流したかった。

 

 

 

 

 

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---放課後、生徒会室

 

 

 

 

 

「会長、1年の招待状申請これで全部です」サッ

「ん、ありがとう。新華君、簪ちゃん、本音ちゃん、お疲れ様」

「うん…」

「お安い御用だよ~」

「んじゃ俺は仕事に入ります」

「ええ。書類は纏めてあるから」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

新華は自分の席に座り簪と本音はソファで寛ぐ。生徒会は概ね普段通りだった。

 

 

 

 

 

「…そういえば新華君は誰を招待するのかしら?」

「何ですか行き成り。取り敢えず両親と実の誰かを呼ぶつもりですけど」

「そう。いやね、織斑君が五反田君を呼ぶみたいだから気になっちゃって」

「…!」

「あー、一夏は弾と蘭ちゃん以外に呼ぶ知り合いが居ませんからね…。千冬さん箒と鈴は居るし、一夏に両親は居ないし…」

「そうね…ところで虚ちゃん?」

「なんでしょう」

「「どうしてそんなにそわそわしているの(んですか)?」」

「そっそんな事ないですよ」

「「ほぅ…?」」

「…お2人はどうしてそんなに息が合うんですか!? 笑わないでください!」

「「282828282828」」

 

 

 

 

 

新華と楯無は手を動かしながら虚をからかう。更に

 

 

 

 

 

「おねえちゃんね~最近誰かと頻繁にメールしてるんだよ~。そのたびに表情が変わって面白いんだよ~」

「本音…!」

「おお、中々に弾と上手く行っているみたいじゃないですか」

「虚ちゃんにも春が来てるわね~。で、どんな内容のメールをしているのかしら?」

「いくらお嬢様とはいえ教えられません!」

「でも最近、虚さん明るくなったよね…。弾さんともやっぱり上手くいってるみたい…」

「妹様まで…!」

「あははー。まぁ、頑張ってね♪ 皆応援しているわ」

「俺もです。友人の恋は応援するものでしょう? 弾もそろそろ報われてもいいと思うんだ…」

「もう! からかわないでください!」

 

 

 

 

 

生徒会は通常運転。

 

 

 

 

 




以外と轡木さんが出てる小説ってありませんよね。原作でも空気ですし。
虚×弾が俺のジャスティス→アスラン→トゥ、ヘアァー!
今回の轡木さんはドラマ『相棒』の右京さんをイメージしました。ガノタはやはり亀山さん時代が良いと思ってます。

さーて、次回からはようやく学園祭ですよー!

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