IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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74話目。

さぁ、現実を見よう。


考えると言うこと、現実

 

 

 

新華の引き分け宣言でラウラとスウェンの機体が停止すると同時に、管制室の中も静まり返った。歓声も、ざわめきも無かった。しかしそんな静かな空間の中で新華の笑い声が響く。

 

 

 

 

 

「くっ、くくくっ、ははははははは!」

「し、新華君?」

「あーあ、始まった」

「いいねぇいいねぇ! これだから技術屋は止められない! 相手より劣る機体の性能を引き出し食らいつく! 技術屋として嬉しいことだねぇ!」

「し、新華? だ、大丈夫か?」

「大丈夫さ! だけど今すぐストライクを弄りたくてしょうがない! スウェン、ラウラ! 直ぐに戻ってこい! ストライクはこっちで回収しとくから、お前らはドクターの所行ってきな!」

『!? 新華、なんだそのテンションは!?』

『………了解、です』

「くくくっ! さぁ~て、回収しないと! 行くぞハロ、サヤカ!」

「リョウカイ、リョウカイ!」

『------』

「これが止められずにいられるか!」

 

 

 

 

 

一夏達が呆然としているのを放っておいて新華は管制室から飛び出してしまった。残されたのは、一夏達、生徒会メンバー、実と真。微妙な空気が管制室を包む。

 

 

 

 

 

「えぇーっとぉ。取り敢えずスウェンの所に行くか?」

「…………」

「…あ、あれ? 俺たちどうすれば…」

 

 

 

 

 

 

実が額を抑え一夏達がオロオロしている中、新華は回収する為にストライクへ駆け寄っていた。

 

 

 

 

 

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ソレスタルビーイング、孤児院側食堂。

 

 

 

 

 

「いやぁストライクの戦闘データは強敵でしたね…」ホクホク

「霧が出てきたな…って馬鹿な事言ってんなよ。さっきからおかしいぞ新華」

「い、今まで見たことない程に清々しい笑顔だな」

「なんなのよアレ…」

「「………」」/////

「簪ちゃん、デュノアちゃん、気持ちは分かるけど戻ってきなさい。っていうかデュノアちゃんいつの間に…?」

「あ、布仏さん、ここどうぞ」

「ありがとうございます」

「虚ちゃんもちょっとおかしくなってるし…」

 

 

 

 

 

新華がストライクを回収した後、一行は孤児院の方の食堂で夕食を取ろうとしていた。食堂には外から帰ってきた家族や子供達が居た。ラウラとスウェンは合流済み。

 

 

 

 

 

「しっかし、本当に人が集まっているな。見た感じ外国人の方が多いけど」

「そりゃ、世界中から来てるからな。あ、でも殆どの人が日本語喋れるぞ。ネイティブの国で暮らしているから自然と覚えるもんだ。な、鈴」

「え、…まぁそうね。あたしの場合は来る前に勉強したけど」

「そういう事だ。あ、でもISは展開するなよ」

「ん、どうしてだ?」

「………その返しは予想外だった。ISが原因でここに来るしか選択肢が無かった人も居るからだ。その人からすればお前らは敵だからな」

「て、敵って」

「お前らが思っている以上にISに対する闇は深いんだぞ? まぁ、だからこのソレスタルビーイングは成り立ってるし、MSも開発出来るんだけどな。頂きます」

 

 

 

 

 

新華は言うことだけ言うと自分の食事を食べ始めた。そこに1人のロングの綺麗な黒い髪を持った大人が近付いて来る。

 

 

 

 

 

「おい、青木 新華」

「ん? ああ、カナードさん。お疲れっス。どうかしました?」

「そこのガキども、IS学園の生徒だろ。聞いてはいたが、本当に問題無いのか?」

「んぐんぐ、大丈夫ですよ。それに、女子が多いんで明日には返るでしょうし」

「まぁ、更識のガキどもならまだ信頼出来るらしいが、一応警戒はさせてもらう」

「むしろお願いします。あ、そろそろ新型が完成するので、出来次第、連絡いれます」

「分かった。劾の機体はどうなっている?」

「ブルーは改造による汎用性を、主に近接仕様で強化する予定です。そちらも新型と並行して作るので、劾さんに言っておいてください」

「わかった。俺は警備に戻る」

「お疲れさまです。お願いします」

 

 

 

 

 

新華と話してさっさと食堂を出ていった警備員兼ジンパイロット、カナード・パルス。その後ろ姿は歴戦の戦士を思わせた。

 

 

 

 

 

「………はっ! し、新華、今の人誰?」

「ん? 今の人は『カナード・パルス』。このソレスタルビーイングの警備員の1人だ」

「へ、へぇー…。でも、話していた内容から、MSのパイロットだと思ったんだけど?」

「そうだぞ。工房にあった機体のうちの1機、『ジンハイマニューバ2型』のパイロットだ。あともう2人ほどパイロットで警備員している人が居るな。今は居ないみたいだけど」

「そ、そうなんだ…」

「…あの人物も、軍人に見えたが…」

「その通り。今のカナードさんに、もう2人の警備員と真、スウェン、実を加えた計6人が主に戦闘用MSのパイロットをしている」

「ろ、6人も…!」

「まぁ、今居ないから紹介はしない。もう時間的に遅いし、孤児院のガキ共にお前ら紹介して解散かな?」

「まぁ、もう外も暗くなってきたもんな。人も多くなってきたし」

「そうだなぁ…今なら丁度いいか。ご馳走様」

「「「「「「早っ!」」」」」」

 

 

 

 

 

そう言って新華は早くも食べ終えた食器を置き、椅子の上に立つ。

 

 

 

 

 

「はい、ちゅーもーく! お前らこっち見ろ!」

「ん? あ、新華さんだ! もう仕事終わったんですかー?」

「新華さーん、ハロお返ししますねー」

「ハロッ! ニイサン、ニイサン」

「ハロッ!」

「あれ? 新華さん、そこに座っている人達誰ですかー?」

「新華さん、また夜食作って下さいねー」

「お前ら自由過ぎるだろ…。取り敢えず今は黙って聞け!」

 

 

 

 

 

新華の怒鳴りで食堂が一斉に静まる。新華は静かになり全員が聞く体勢になったのを確認して、1度頷いた後、口を開く。

 

 

 

 

 

「今質問があった様に、コイツらを紹介する。更識家メンバーの事は知ってるだろ? だから、それ以外の連中だ。まず虚さんの隣に座っている完全一般人の五反田兄妹だ。仲良くしてやってくれ。兄貴が弾、妹が蘭って言うんだ」

「よ、よろしく」

「よ、よろしくお願いします」

「「「「「「よろしく~」」」」」」

「で、次だ。紹介する最後の男子が、巷で噂の『IS男性操縦者』織斑 一夏だ。惚れないように注意するように」

「「「「「「………、………え?」」」」」」

「ほら、挨拶しろ」

「あ、ああ。織斑 一夏です。よろしくお願いします」

「はいよく出来ましたっと。次は人数多いから纏めて、ポニテが篠ノ之 箒、ツインテが凰 鈴音、金髪ブロンドがセシリア・オルコット、金髪ストレートがシャルロット・デュノア、銀髪で真みたいな赤目がラウラ・ボーデヴィッヒだ。全員IS専用機持ちな」

「「「「「「!?!?」」」」」」ガタタッ

「うおお!?」

「落ち着け」

「新華さん!? 専用機持ちを連れてきていいんですか!? 何されるか分かったもんじゃありませんよ!」

「そうですよ! 何で連れて来たんですか!?」

 

 

 

 

 

新華の紹介で、さっきまで和気あいあいとしていた食堂が剣呑な雰囲気になる。あまりの反応に一夏達は戸惑うしかない。

 

 

 

 

 

「なんで俺達の孤児院を焼いたIS操縦者を連れてきたんだ! 新華、なんで!」

「「「「「「!?」」」」」」

「…落ち着けトラッシュ。コイツらは敵じゃないし、お前の孤児院を焼いた奴でもない」

「っ! だからって、ソイツらが何かしない保証は無いだろう!」

「アニキの言うとおりだぜ、新華! それにソイツらが敵じゃないって何で言えるんだ!」

 

 

 

 

 

オッドアイの少年と奇妙な帽子をかぶった少年が新華に詰め寄る。だが新華は表情1つ変えずに答える。

 

 

 

 

 

「この一夏が正義感の塊で、専用機持ちがその正義感に感化されてるからだ。そして連れてきても問題無いと判断した」

「正義感なんて関係ない! アイツ等は…ISの操縦者は平気で人を殺せるんだ! それを分かっているだろう!? 新華!」

「それが出来ない正義感を持っているのがコイツらだと言ってるんだ。それに、そこまで堕ちてない。堕ちれない奴等だ」

「でもっ!」

「お前みたいに騒ぎ出す奴が居るから今言ったんだ。いいかお前ら! 一夏達は他のIS操縦者達と違って、良い意味で馬鹿な奴等だ。お前らが危惧しているような事は起きないだろう。だが内4名は代表候補生、感情に任せて襲撃しようと思うなよ」

「新華!」

「…お前の気持ちは理解しているつもりだトラッシュ、フリッツ。だが、こうして連れてくれば、少なくともコイツらは味方になる、ないしは攻撃出来なくなるんだよ。そういった類の馬鹿なんだ」

「だけど!」

「…じゃあお前は、IS操縦者だからといって他人の全てを否定するのか? 何も見ずに、話もせずに」

「そ、それは…」

「それに最近泊まっている更識当主達もIS操縦者だろうが。お前は見ず知らずのIS操縦者なら関係無く差別するのか?」

「………」

「割り切る事を覚えろ。そして、よく見て見極める目を付けろ。でないと、何時まで経っても、(かたき)にたどり着けないぞ」

「っ! くっ」ダッ

「あ、アニキ!」

「………すまん、トラッシュ。だが俺がお前らにマイナスになるような奴を連れて来ると思ってるのか…?」

 

 

 

 

 

オッドアイの少年『トラッシュ』と奇妙な帽子をかぶった少年『フリッツ』が食堂から駆け出し出ていってしまった。未だに食堂はざわめきが収まらない。

 

 

 

 

 

ざわ・・ざわ・・

 

 

 

 

 

「……さっきも言ったが、此処に居るIS操縦者はお前らが思っているのとは違う、良い意味の馬鹿だ。恐怖を覚える必要は無い。ゲストルームに泊まる事になっているから、話したい事が有れば尋ねるのもいいだろう。だが、間違っても害したりやましい事をしようとするな。その時はそれ相応の対応をさせてもらう」

「「「「「「………」」」」」」」

「………言わなくてもコイツらが居る事は直ぐに広がっただろう。だが言わない事でお前らに変な誤解を生みたくないんでな。………すまん、食事の邪魔したな。食事を続けてくれ」

 

 

 

 

 

ざわ・・ざわ・・

 

 

 

 

 

新華が椅子から降りて座る。食堂の殆どの視線が新華や一夏達に向いていた。

 

 

 

 

 

「お、おい新華、大丈夫なのか…?」

「ああ。一応言っておかないと、後で色んな奴に怒られるからな。さっきのトラッシュ然り、フリッツ然り」

「…新華、先程の、トラッシュという男子の事だが…IS操縦者が孤児院を焼いたと言っていたが」

「本当だ。アイツも元はとある国に有った孤児院に居たんだが、ある理由でISの襲撃を受け孤児院が破壊されたんだ。あいつの孤児仲間と共にな」

「なっ、そんな事があったのか!?」

「ああ。そして、その後俺がこのソレスタルビーイングに連れてきて、以降作業用の方のMS開発を手伝っている」

「そうなのか…」

「そして、これが俺がお前らに一番言いたかった事なんだが…」

「「「「「「………」」」」」」

 

 

 

 

 

新華が一夏達の顔を見渡し、口を開く。

 

 

 

 

 

「聞くって事は知らなかったって事だろ? ………お前らは現実を甘く見すぎている。ISによって乱れた世界を。自分達が当たり前のように使っているISによって、どんな事が起きているか、自分の住んでいる世界くらい、自分の目で確かめてみろ。繰り返すが、ここに居る人間の殆どがISや女尊男卑が原因で居場所が無くなった奴だ。どれだけ自分達が恵まれているか、どれだけ自分達が守られているか、どれだけ自分達が特別なのか(・・・・・)を知れ。それが、今日お前らを招待した最大の目的だ。ISにまだ関わってない弾や蘭だって他人事じゃないぞ」

「「?」」

「ISに関わってなくても、女尊男卑に染まった馬鹿女なら簡単に他人の人生を潰してくるんだ。1歩間違えれば、お前らは此処に居る人間の仲間入りする事だって有り得るんだよ」

「えっ!?」

「ま、マジか!?」

「マジだ。よく見るんだ。どれだけ自分達の知っている世界が平和か、どれだけ自分達は優しい世界に居るのか、どれだけ自分達の家族が居る環境が恵まれているかを」

 

 

 

 

 

一夏達に沈黙が生まれる。特に一夏と箒は、ISを『何かを守る為の力』としか思って居なかったから。千冬や束が近くに居たせいで、全く思った、考えた事も無かった世界を突きつけられたから。

 

 

 

 

 

「…もし知って何かを思ったなら、普段から無断のIS展開を自重してくれ。お前ら、他学年と、1年3組からの嫉妬に気付いていないだろ」

「「「「「「…へ?」」」」」

「だと思ったよ。1年生なのに専用機を持ち自由にISを使用する。自分達のクラスだけ専用機持ちが居ないとか、色々あるんだぜ? 専用機持ちの責任やら苦労なんて知るわけないんだから、むしろ当たり前だろ? 千冬さんが居てよかったな。千冬さんの御陰で秩序が強引なりとも守られているんだから」

「………そ、そうだった、のか?」

「…一夏、お前は知らなさ過ぎだ。まぁ知らせて貰えないってのもあるが、他人の気持ちに気付けないってのは致命的だぞ? 日常でも、戦闘でも、恋愛でもさ」

 

 

 

 

 

すっかり一夏達の手は止まっていた。新華はそのまま立ち上がり食器を片付ける。楯無も食べ終え食器を片付けに立つ。虚も食べ終え、弾の隣だからか少し躊躇うような素振りを見せてから立ち上がった。

 

 

 

 

 

「…まだ受け入れ切れなければ、ゆっくり飯と一緒に噛み砕いてけ。…部屋は分かるな? 先に家に帰るわ。実、お先」

「わかった」

「私達も先にゲストルームに戻るわね。何か有れば相談に来てもいいわよ? 先輩として、聞いてあげる」

「「「「「「………」」」」」」

「………(空気が重いな)」

 

 

 

 

 

食堂から新華と楯無、虚が居なくなる。新華が居なくなった事で一夏達に視線が集中する。一夏達は慌てて目の前の食事を食べるが、先程とは違い、あまり美味しく感じられなかった。

 

 

 

 

 

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---side 一夏

 

 

 

 

 

一夏は自分と弾と共に宛てがわれたゲストルームに居た。ゲストルームはIS学園の寮に似た内装で、ちょっとした旅行感覚になっていた。本来なら。

 

 

 

 

 

「………なぁ、一夏」

「…何だ、弾」

「…いや、やっぱ何でもねぇ」

「…そっか」

「………」

「………」

 

 

 

 

 

一夏も弾も新華から突き付けられた現実を知りいつもの元気が無かった。これは一夏と弾だけでなく、他の専用機持ちもそうだった。

特に実の体の事と、トラッシュという少年の叫びが響いていた。

自分達が知らない事、自分と同じくらいの少年の叫び、新華がしている事、招待の意図。

一夏達の年齢で知るには重すぎて、兵器を持つ者が覚悟していなければならない事だった。

 

 

 

 

 

「………新華はさ」

「………」

「IS学園で一緒に居る時、今までと変わらずに、色々知らなかった事は多かったけど、まぁ今まで通りに過ごしていたんだ」

「…前に遊びに来た時にそれは分かった。だが…」

「ああ。まさかこんな事になっているなんて、知らなかった…。一体新華は、何を見てきたんだろう…」

「…わっかんねぇ。ぶっ飛びすぎて頭おかしくなりそうだ…」

 

 

 

 

 

一夏も弾も頭を抱えていた。完全に親友が理解の向こう側を爆走しているせいで頭が痛かった。

 

 

 

 

 

「…そういえばこの間、弾の家に行った時に子供がどうのとかIS操縦者がどうのとか言っていたな」

「ああ。アレってやけに実感篭ってると思ったけど、この…ソレスタルなんたらで証明されたな。一夏達を新華が紹介した時の荒れっぷりが、なぁ…」

「あそこまで騒がれるとは思ってなかった…。ISって、思ったより嫌われてるんだな…」

「そうだな…。新華の言うとおり、考える必要がありそうだな…」

「ああ…」

 

 

 

 

 

男2人が、人として急激に成長を促されていた。新華の思惑通りに、今の世界について考えだした。

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 




カナードさん登場!
そしてゲーム『ガンダム トゥルーオデッセイ~失われしGの伝説~』の主人公、トラッシュの登場!
他のキャラを押しのけての登場! このゲームってガンダムブレイカーの原型だと思うんですよね。裏ステージが鬼畜でしたけど。ちなみにガノタはトラッシュをνガンダムに、フリッツをサンドロックに、イーチィをW0に乗せてました。あとは、ハクホウをGガンですね。9999ダメージが主力でしたwww
ちなみに、フリッツは後にトラッシュが戦闘用MSに乗る時の専属メカニックにする予定です。いつになるか、はたまた本当に書くかは未定ですが…

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