IS~疾走する思春期の転生者~   作:大2病ガノタ

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65話目。
シャルルは最終的に新華とは結ばれないと言ったな。あれは嘘だ。

冗談はさておき、感想で『シャル新華のヒロインでいいよ』という感想が多かったので、この話から始まるイベントで完全に落とします。

早く新華の心を助けて!


1期終了
ヒトの心


 

 

「「「「………」」」」カリカリカリ………

 

 

 

 

 

8月。IS学園が遅めの夏休みに入り生徒の半分以上が帰省する中、生徒会の面子+新華+簪は生徒会室で書類に追われていた。新華もやる事があるのでさっさと帰省したかったが、新華に少なからず関わるものもあったので半ば強制的に残っていた。

 

 

 

 

 

「………会長、追加です」

「………そこに置いといて」カリカリカリ………

「了解です」

「………お嬢様、こちらはあと少しで一段落です」カリカリカリ………

「………分かったわ。簪ちゃんは?」カリカリカリ………

「………もうちょっと」カリカリカリ………

「本音ちゃんは?」カリカリカリ………

「あと~ちょっとだよ~」カリカリカリ………

「ん………2人共、終わったらこっちにお願いね」カリカリカリ………

「うん………」カリカリカリ………

「わかった~」カリカリカリ………

「あ、お茶入れますね」スタスタ

「「「「お願い」」」」カリカリカリ………

 

 

 

 

 

生徒会の仕事が終わるまであと少し………

 

 

 

 

 

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---side シャルル

 

 

 

 

 

シャルルは現在フランスのデュノア社でラファール・リヴァイブⅡの新装備のテストを行なっていた。

 

 

 

 

 

『いいかい? シャルロット君』

「はい。いつでも行けます」

『よし。では始めてくれ』

「はい。…発動!」

 

 

 

 

 

シャルルが言うとオレンジのラファール・リヴァイブⅡは各部から唸りを上げ全ての機能の出力を上げる。

 

 

 

 

 

「す、凄い…! 数値が一気に上がった…!」

『ふむ。では少し動いてくれないかい? 少しでもデータが欲しい』

「は、はい」

 

 

 

 

 

シャルルは指示通りに動く。一気に出力が上がった機体はシャルルの意思に普段以上の機動性で答える。

 

 

 

 

 

「凄い、今までの3倍もスピードが出てる!」

『よし、成功だ! シャルロット君、画面にタイマーが出ているだろう?』

「はい」

『そのタイマーはその状態で稼働出来る残り時間だ。タイマーが切れれば性能はガタ落ちしてしまうが、その状態のデータも取りたいのでそのまま稼働を続けてくれ。ドローンを出すから攻撃も行なってくれ』

「わかりました」

 

 

 

 

 

シャルルは指示に従い作業をしていく。

 

 

 

 

 

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「ふぅ…反動が凄い…」

「お疲れさま。で、どうだったかい? 気になる点があれば教えて欲しいんだが」

「そうですね………」

 

 

 

 

 

一通り作業を終え開発室に向かったシャルル。開発主任が聞きシャルルが幾つか思った点を挙げていく。

 

 

 

 

 

「…とまぁ、こんな感じですか? あと、タイマーが切れた後の機動が重かったんですが、どうにかなりませんか?」

「そうなんだがな…関節に新しく付けたバッテリーと連動しているから、どうにもな」

「関節にバッテリー、ですか」

「ああ。あのシステムの仕組みは、各関節に新設されたバッテリーにエネルギーを溜めて、システム発動時に一気に開放。各性能を一時的に向上させるって機能なんだが、その性能は試したんだろ?」

「ええ。凄く早かったです。それに心無しか武装の威力も上がっている感じでしたし」

「だろう? ただその反動でエネルギーが少なくなって、反応が遅くなっちまうんだ。正に諸刃の剣ってやつだな」

「はぁ…」

 

 

 

 

 

確かに凄いが反動をどうにかして欲しいとシャルルは思った。これで反動が無くなれば利便性は更に増す。ただ第3世代型と言えば特殊な武装がメインである。武装ではなくシステムを追加しても第3世代型と言えるのか。

 

 

 

 

 

「だがシステムを使わなけりゃ稼働時間は向上するし絶対防御の強度も上がる。第3世代型に搭載される予定だからデータがなるべく多く必要でな…」

「あの」

「ん?」

「どうして特徴的な武装ではなくシステムなんですか? 確かに強力ですが第3世代と呼べるのもじゃないんじゃ?」

「あー…俺もそう思ったんだがな」

「?」

「その後に追加された武装に必要なんだよ。このバッテリーが」

「追加された武装? なんですかそれは?」

「擬似『零落白夜』になるエネルギー砲だ。腕の装甲が大型化される変わりに装備されるらしい」

「………え、零落白夜ですか!? あの一夏の!?」

「らしい」

「…一体そのデータを何処で?」

 

 

 

 

 

シャルルは主任の言葉に不信感を覚えたが、頭を掻きながら話した主任の言葉に驚く。

 

 

 

 

 

「君になら言ってもいいか。『蒼天使』だよ」

「え」

「と言うよりその搭乗者の少年だな。ある時フラっと来たと思ったら、いつの間にか全員で開発の話で盛り上がってな。装甲にコストとエネルギーの伝達率に始まってこのシステムと武装まで、ノリノリで開発してたよ」

「新華が………」

「それに、『零落白夜を使えればシャルルは一夏とお揃いだな』とか言っていたな」

「そ、そうなんですか!?」

「あ、ああ。それにあのシステム、『蒼天使』、つまり『Evolveクアンタ』の単一仕様と仕組みが同じらしい」

「え、そうなんですか!?」

 

 

 

 

 

驚きが止まらないシャルルを見て主任は苦笑いしていた。当然である。彼も同じ様に驚いたのだから。

 

 

 

 

 

「そうならぁな…『どうせ誰かが思い付くし、友人の為になるなら良い』とも言っていたし、何だこの完璧人間と思ったな」

「そう、ですね…」

「まぁ、俺らは開発をして結果を残さなきゃいけないわけだから有難く使わせてもらうが。今日のテストは取り敢えず終わりだ」

「あ、はい」

「社長が呼んでいるらしいから、この後行ってくれ。お疲れさん」

「…お疲れさまです」

 

 

 

 

 

最後の一言でテンションが一気に下がるシャルル。新華が自分にしてくれた事が嬉しかったのだが、未だ慣れない父親と本妻にはあまり会いたくないと言うのがシャルルの本音だった。

 

 

 

 

 

「はぁ…新華が色々してくれたのは嬉しいけど、あの人達に会うのは憂鬱だなぁ…」

 

 

 

 

 

そう言いながらシャルルは会社の制服を身に付け社長室へ向かう。その足取りは重かった。

 

 

 

 

 

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次の日、シャルルはかつてIS学園に行く前に行っていた中学校を尋ねていた。

今シャルルのラファール・リヴァイブⅡは新システムと擬似零落白夜の搭載、調整作業で会社のラボに預けられ、今日シャルルがする事は無かった。しかし家に居てもする事は無く父親とも会う気にならなかったので、疎遠になった友人の事を思い出しゆっくりと歩く事にしたのである。無論何人かボディーガードは付いている。

 

 

 

 

 

「何か、凄く久しぶりな気がするなぁ…。IS学園(あっち)で色々あったし」

「あ、シャルロット! シャルロットじゃない!」

「あ」

 

 

 

 

 

近所に住むかつてのクラスメイトがシャルルを見つけ駆け寄って来る。

 

 

 

 

 

---side out

 

 

 

 

 

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「ふぅ。やっと明日帰れる…。箒に対する負の感情が夏休み前に向かわなくてありがたかったな。今後は知らんが」

「「ハロハロ」」

『------』

「いや、この夏休みの間にもこの寮に居るやつは居るんだ。そこから絶対情報が流れて負の感情が箒に向かう。それだけ人間は醜いし強くない。それに嫉妬とかの負は育ちやすいから虐めが始まる事も有りうる。いくら箒が辛い立ち位置に居たとしても他人は知らないし、知ってても変わらないだろう。免罪符にはならない。今箒が実家に帰っているのが幸いだな、噂が広がりにくくなってる」

『------』

「確かにそんな人ばかりじゃ無いが、そんなの目に見えて分かるのは一握りだ。そしてまだ成長途中なうえ嫉妬の対象が現れたんだ。嫉妬もするだろう」

『------』

「そりゃ俺もあるさ、嫉妬した事くらい。でも、一兎の場合は俺より酷かったんだ。あんな強大な力の代償がアイツの悲劇って言うんなら、やりきれねぇよ…」

 

 

 

 

 

生徒会室から1050室に戻り楯無がシャワーを浴びている間、新華はサヤカと会話を交わしていた。

一兎は母親、姉共に旦那からの暴力を受け父親は行方不明、姉の旦那は一兎が志甫と共に寄生型P・V・F『スキゾイド・ドーベルマン』の宿主として殺した。そしてその結果、一兎の当時の彼女であり旦那の妹が乾燥者として覚醒、一兎は自らのP・V・FのS・Sで乾燥者になる切っ掛けである自身との記憶を消したのだった。エゴ・アームズが発生したのは志甫がサードプロメテウスファイアに繋がれる前に殺され掛けた時。主人公的な覚醒の仕方だが盛り上がるには悲しみが多すぎた。嫉妬の感情も湧いたがそれも長くは続かなかった。戦争でそれどころでは無かったうえ、人類を生かす為にエゴ・アームズによる制御でサードプロメテウスファイアに繋がれ目覚めなくなった。その時新華が感じたのは嫉妬ではなく一兎に全てを託すしかなかった自分への無力感と喪失感だった。

 

 

 

 

 

「せめて、目覚めた後は志甫と幸せになってくれねぇと…」

『------』

「「ダイジョウブカ、ダイジョウブカ?」」

「………済まないな。最近、一夏達と一緒に居るとわからなくなってくる…。こう、何度も思い出してしまうとな。悲しみが、時間が経っても、癒えないんだよ…」

 

 

 

 

 

新華は力無く俯く。それをサヤカは人形態になって新華の背中に被さる。前とは違い今の生活には驚く程に殺しが無い。故に考える事が多くなり、更に生徒会の面子や一夏達と過ごすとかつての映画部を思い出し心が削られていく。

 

 

 

 

 

『------』

「…お前が彩夏先生の姿なのもその一因かもしれんな…。だが、その姿のお陰で俺は忘れずにすむ。あの世界で生きた事を。いつから罪を重ね始めたかを」

 

 

 

 

 

いつの間にかシャワーの音が消えていた部屋で『ストーリーズ・イレギュラー』を展開して眺める。その形は転生してから鋭さが増し、銃器としては欠陥が生まれていた。それに新華は気付き嗤う。

 

 

 

 

 

「くっ、あはははははは…! そうかい、P・V・Fは正直だな…」

 

 

 

 

 

P・V・Fには安全バーの『safe』、単発の『semi』、フルオートの『full』、スペシャルショットの『S・S』がある。しかし『ストーリーズ・イレギュラー』には安全バーの『safe』が忽然とその存在を消していた。

 

 

 

 

 

「やっぱ俺壊れてんな…。まさか形が変わらないうえに機能が1つ消滅するとか、尋常じゃあねぇ」

『------』

「もう駄目だな…。こんな壊れたヒトが人の中に紛れ込んでるなんて、自分でもゾッとする。何がキチガイだ、う詐欺の事偉そうに言えねぇじゃねえかよ………」

 

 

 

 

 

P・V・Fを解除し更に肩から力が抜ける新華。それを楯無はシャワールームの扉の向こうから聞いていた。

 

 

 

 

 

「壊れたヒト…分かっていて変わらないなら、どうしてそんな悲しい声なの? 新華君………」

 

 

 

 

 

きちんと着替えて聞いていたが、新華の深い悲しみを持った声に楯無まで悲しくなってくる。楯無は新華の正体が世間に広まる前に出会って付き合いも長い。新華のしてきた事も知っている為、一夏より新華の事を理解していた。しかし普段自分達に見せる明るさとは正反対の暗さを持っている新華を見聞きする度に、胸が締め付けられる。

 

 

 

 

 

「…それでも、私にすら何も教えてくれないのね。そうやって全部溜め込んで…」

 

 

 

 

 

新華は自分が抱えている負に対して意識が強すぎた。自覚しているが、罪と理解しながら苦しみ、それを感じさせない明るさを振りまく新華は、悲しいを通り越し痛々しかった。

 

 

 

 

 

「私じゃ、癒せないの? 新華君。私達じゃ、駄目なの………?」

 

 

 

 

 

いつも心を曝け出そうとしないで心を傷付ける新華の姿が見て居られなくて、せめてそれを忘れさせるように

 

 

 

 

 

「………上がったわよ、新華君」ガチャ

 

 

 

 

 

新華の前に姿を出す。新華はすぐいつもの真面目な顔に戻り普段通り振舞う。楯無はそうさせて新華の悲しみを増幅させないように努めた。

 

次の日の朝、新華はある情報を入手しIS学園から丸1日程姿を消す。楯無は焦るが新華が部屋に残したメモを読んで頭を抱えた。

 

 

 

 

 

『俺のせいでシャルルが誘拐されたようです。ちょっと友人を助けて来ます』

 

 

 

 

 

 




量産型の新型ラファールがチートにwww 新華何したwww
新華、いい男だがもうそろそろマジでヤバい。心が。
P・V・Fは新華の壊れた部分を忠実に再現したという解釈です。

ちなみに新華は心が救われた後は笑顔が一段階レベル上がり、姉妹とシャルルに毎回クリーンヒットするくらいになる予定です。
あ、新華に甲斐性はありますよ。

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